リンとランの運命やいかに…?
(あれ…あぁラン…いつもより激しいですね…お陰で気を失っちゃいました……?)
交わっている感覚。洞穴にいるだけだったのに、良い番に出逢えたなと思い…。意識が徐々に戻ってくる。
(違う…ランじゃない!ここは…?)
振り向こうとして頭に激痛を感じて呻いた。角が折り取られているのだ。すると
「お、気がついたか。」
そう言って一旦雄を抜かれる。もう何度もされているのか力の抜けた秘裂から粘液が汚ならしい音を立てて溢れた。自分は仰向けに宙吊りにされていて、口も縛られほとんど開けられない。それに拘束具にかなりの雷耐性があるようで、力の入らぬ体で必死に雷を練って纏おうとするがそちらに吸いとられてしまった。
「よし、大丈夫そうだな。」
と言い行為を再開される。
「言葉分かるんだろ?教えてやるよ。心配しなくてもお前をこれ以上傷つけるつもりはねぇ。お前は貴族に性奴隷として売っ払う。でもその貴族は拘束してヤるよりもお前にフェラとかキスとかで甘えられたいって言っているからこうして調教するって建前で犯してんだよ。」
なんとか逃れようと暴れるが意味はない。体内のみに電流を流そうとしても体が雄を受け入れているため無理だった。
「動くな突きにくい…あっでも締まって良いかも…いくぞ。」
中に出される感覚。ランではないのに、汚れた見知らぬ相手なのに無性に伸びがしたくなって
(所詮私も生き物…本能には逆らえないのね…)
と思い知る。
「終わったぞ。交代だ。」
「待ちくたびれたぜ。」
今度は別の男が入ってくる。私はせめてと体内に雷を流した。私の皮膚で絶縁されるため吸いとられることはない。流れた電流は私の一部の神経を麻痺させ、快感を感じなくさせることに成功する。いくらなんでもそう長々と快感を与えられ続ければそのうち精神がおかしくなってしまうかもしれない、そう思った故の苦肉の策だった。しかし本音はラン達が助けに来てくれて、そして再びランが身を重ねてくれるときのため。そのためにこんなところで快感に溺れるわけにはいかないのだ。
快感を感じないとはいえ異物感や精神的苦痛は感じる。この日は最初の男を含めて3人に犯された後、口の拘束具を少し緩められるとよく分からない物を無理矢理飲まされた。
翌日目が覚めると、今日はまだ犯されてないらしい。少し自分のいるところを見回してみればここは小さな部屋で、揺れていることから恐らく移動しているのだろう。どうやらランと依頼に行ったときに乗った竜車というやつらしい。駄目元で暴れたり雷を練ったりしたがやはり駄目だった。
その日から4日間その場所で犯され続け、5日目に目を覚ますと全く違う場所にいた。どうやらもう移動していないらしいが相変わらず仰向けで宙吊りにされている。しばらくして男がやって来ると口の拘束具を少し緩められ、
「起きたか?自分でねだってみろ。」
もちろんそんなことはしない。黙って睨んでいると
「駄目だ。あいつを連れてこい。」
入ってきたのは
「それは止めて!それは──」
聞き入れられるはずもなく、獣は乱暴に私を突いた。快感というせめてもの気休めも感じないのでひたすら異物感と精神的苦痛に耐え、人間のものよりも遥かに多い精を注がれ涙が落ちる。
(きっとくる…きっと来てくれます。)
そう信じるしかなかった。この施設には
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レイム「状況は分かった。すぐに痕跡をたどるので竜車と食料等を貰えますか?」
村中への聞き込みをもとに辺りを探索すると観光車のルートとは全く違う方向へ向かう竜車の車輪跡があったので、それをたどることにしたレイム。
ギルドマネージャー「ではワシから他の守人へ連絡しておこう。」
「お願いします。」
ラン「俺も行きます。連れていって下さい!」
レイム「駄目だ。ハンターの仕事ではない。ハンターは人に刃を向けてはならない。」
ラン「でも非常時は良いはずです!」
「駄目だ。僕がいる。君が手を汚す必要はない。」
「付いてくだけでもダメですか…?お願いです。」
涙目で懇願され続け、ついにレイムが折れた。
「…なら命令には従ってもらうよ?」
「勿論です。」
「リンを置いて逃げろと言っても聞けるな?」
「…!それは……」
「諦めろと言っても聞けるな?」
言葉に詰まる。だがやがて小さな声で
「分かりました。絶対守ります。」
こうして夜の森の中彼らは捜索へ向かった。
確かに痕跡はあるものの、雨などでいつ消えてもおかしくない。それに狩猟認可外区域を通っているのでモンスターに襲われないか気を張り続ける。5日経っても見つからず、しかしそのルートの近くの植物が少し荒らされていたり、茸を採取した形跡があったり人間の足跡があったりと間違ってはいないようだ。夜になり野宿の準備を進め終わり休憩していたときのこと。
「そうか、分かったぞ。」
地図を見ながらレイムさんが呟いた。
「何がですか?」
「奴等の行き先だ。このままのルートだとあと8日ぐらいでドントルマに着く。だが大きな街だけあって密猟の警備も厚い。このルートを少し西に逸れて4日程進むと旧闘技場がある。今は廃墟だが牢などの設備はそのままだから竜を閉じ込めておくにはうってつけってことだ。」
「…大丈夫かな、リン。」
「殺されてはないだろうね。わざわざ催眠ガスを使うぐらいだから調教して貴族に売るんだろう。1度売られると商売記録でもない限り追うのはかなり難しくなる。」
そうは言っても気持ちでアプトノスが速くなるわけじゃない、そうぼやくと
「君を運ぶだけなら飛んであっという間なんだけどね。ただそこに行ってもリンを乗せて帰らないといけないからしょうがない。」
あぁそうか。この人は竜になれるというかそっちの方が楽って前言ってたな。どうせ出来ることがないのでレイムさんの今までのことを聞いていたら少し気持ちが紛れた。
レイム「着いたぞ。人間は僕が処理する。狙撃手がいるかもしれないから合図するまで隠れてて。」
そう言いながら守人の紋章の入った黒い羽織を脱ぐ。すると純白のナルガクルガ装備が現れた。武器は俺と同じ太刀。この状況でもみとれてしまう程美しかった。
入り口らしきところから人が出てくると一気に距離を詰め、剣とハンマーを持つ二人を、一人は気絶させもう一人は剣を突き付け動きを止める。レイムの予想通り破裂音が響きレイムは冷静にその場を離脱することでボウガンの弾を回避し、それと同時にポーチから閃光玉を取りだし炸裂。目の前の男を気絶させると、今度は上にいる狙撃手に向かって瞬きするよりも速く太刀を振った。青白い刃のようなものが飛んでいき、上から悲鳴が上がる。
「今だ!走ってこい!」
全力で走って追い付き、中へ入った───。
レイム「遅かったか…。」
10人程の武装集団を全員捕らえて捜索した結果、♂ケチャワチャ3頭、♂アオアシラ2頭、♀ケチャワチャ1頭、リオレイア1頭が見つかり、♂は調教されているようで、♀は明らかに性的暴力を振るわれていた。しかしどこを捜してもリンはいない。
レイム「ご親切に商売記録があった。リンの買い取り先も記録されてる。これはかなり良い収穫だ。1度ドントルマに行って応援を呼んでから助けにいこう。」
ラン「今すぐじゃダメですか?」
レイム「気持ちは分かるけどあいつらを引き渡さなきゃいけないし、買い取り先の貴族は過去にナルガクルガ亜種も買っているからもう少し仲間がいた方が良いだろう。そうすぐに転売するとも思えないしね。」
ラン(もう少し…もう少しの辛抱だリン…。)
──────────────────
目が覚めるとまた場所が移動したようだ。前にいたところよりも少し綺麗なところ。拘束は相変わらずだが口は自由だった。
「あ、目が覚めた?」
声の主は隣の
「ここは…?」
「人間の住みかよ。久しぶりに話せて嬉しいな。人間とは言葉通じないからね。私独りだと相手が大変だから助かるし。」
「相手…?」
「勿論交尾の相手よ。あなたもわかっているでしょ?」
「…。」
「そんな格好ってことは抵抗したんでしょうね。私も最初そうだったけど受け入れちゃえばどうってことないわ。むしろ前よりずっと良いわよ?安心して眠れるし、食べ物には困らないし、あとは気持ちよくなれば良いだけだからね。」
「好きで…いるんですか?」
「そうよ。…それに私1回流産しちゃったの。たくさんの人間と交尾してるから誰の子かは分からないけど宿した時は嬉しかったわ。人間もちゃんと介抱してくれた。でも死んでしまって…今度はちゃんと元気な子を産まないと。」
「…そう。…大変…だったわね。」
でも私にはもう番の相手がいる。そう言いたかったが言えなかった。心の底では諦めていたのだ。それに早くこの拘束から解放されたいという思いも日に日に強くなってきている。
「あ!来た!」
5人くらいの男達がやって来た。皆既に裸で、たたせている者もいる。
「おっ!キリンも目を覚ましたぞ。こいつは人間とも話せるからな、これからは楽しめそうだ。」
「勿論ナルニャンも忘れてないよ~。」
そう言って緑迅竜の檻に入ると彼女は自ら仰向けになり、甘えた声を出して誘っていた。
「おいおい待て、キリンちゃんを買ったのは俺だ。最初は俺がヤるぞ。」
一人の男が私の檻にも入ってきて
「やっぱ改めてみるとカワイイなぁ。」
「…放して。」
「駄目に決まってるだろぉ?。幻獣なんて人生でお目にかかれない人の方が圧倒的に多いんだから。大丈夫、良い子にしてればそれも外してやるからな。」
こうしてまた犯された。緑迅竜の方は嬉しげに鳴きながら交わっている。確かに竜車や前にいた牢よりは優しい。
行為が終わり人間達がいなくなると
「あなたまだ受け入れてないの?ずっと仰向けのままになっちゃうわよ?まぁ、私も他者のこと言えないんだけどね。」
2日後、リンは犯されながら
「そうだキリンちゃん知ってる?ユクモで最年少夫婦の記録更新だって。何でも夫の方はセルレギオスって竜と人間の間に生まれた子で相手も竜らしいぜ?何でも前にいた彼女がいなくなったから別の、雌のタマミツネと結婚したんだとか。」
と聞かされる。勿論嘘だが、今の彼女にはトドメとなった。
その翌日、
「ようキリンちゃん。随分おとなしくなったね。やっとここを気に入ってくれたかい?」
「…。」
「気に入ったなら放してもいいぞ?いつまでもそんなんじゃ可哀想だからな。」
「ほんと…?」
「あぁ。俺達だって拘束プレイはあんまり好きじゃないからな。不自由はさせないよ?ほら、隣のナルニャンを見てみなよ。」
緑迅竜は幸せそうに喘いでいる。
「子供ができたら育ててやるしな。キリンちゃんとの子供欲しいなー。」
そう言いながら私を抱き締める。そして耳元で
「どうだい?ここならみーんな愛してくれるよ?誰もキリンちゃんを捨てたりしないよ?」
「放して…。ずっとここにいるから放して。」
何かが壊れてしまった。でも何だかは思い出せない。
「分かった。でも…」
「でも…?」
「ちゃんと誓ってくれなきゃ。ほら。」
そう言って口を近づける。
「キリンちゃんから舌を入れて。」
成る程、信用させるというわけか。言う通りにした。自分から口を重ね、相手の口の中を舐めまわす。すると彼も舌をいれてくれた。
「よーし。じゃあ次は…」
と雄を差し出され舐める。指示通り舌を絡めたり吸ったりすると吐精した。
「うぉっキリンちゃんうまいぞ!よし、ご褒美だ。今までよく頑張ったな。」
ついに拘束が解かれる。長い間仰向けだったせいか中々立てなかったが問題ない。彼の方を見て尻尾を振れば注いでくれて、思いっきり伸びをした。神経が麻痺してるのでまだ快感は感じないが、時間が経てば徐々に回復するだろう。その日の夜、私と緑迅竜を隔てていた格子も取り除かれたので寄り添って眠りにつく。
「これからよろしくね。」
「はい。」
久しぶりにぐっすり眠ることができた。それからというものの、私達は毎日多くの人間達と互いを求め合う。そこに嫌悪感など微塵も無く、徐々に戻ってきた僅かな快感を貪った。日にち感覚もとっくに狂ったがそんなものは必要ない。寝て、食べて、交わる。それだけで十分だ。
そんな幸せな毎日が続いていたある日。
ナルガ「あれ、なんか上が騒がしいわね。」
交わっている途中でふと緑迅竜がそう呟く。通訳すると、
「あぁ、今日はいつもより多くのお客さんを呼んだからな。なんか揉め事でもあったんだろ。」
そっかー。とまた行為に集中しようとしたとき、奥で爆発音が響いたと同時に誰かが走って来る音がする。
「な、なんだ!?」
彼らが交尾を中断し近くにあった槍や、黒い玉を手に持つ。と、
「動くな!ギルドだ!」
赤い衣を纏った人間が3人、武器を構えている。
「な…!ナ、ナルニャン、キリンちゃん殺してくれ!もうここにいれなくなっちゃうぞ!」
そう言われ檻を出ると人間達は少し後ずさる。邪魔をするなんて許さない。雷を練り、どうやって殺そうか思案していると別の足音が聞こえて若い人間が2人入ってきた。うち若い方の1人が私を見るなり
「リン!」
と叫んで駆け寄ろうとするともう1人が抑えた。その青年は
「助けに来た。警戒を解いてくれるかな?」
と私と緑迅竜に向かって言う。驚くことに緑迅竜も理解できたらしい。だがそんなことはどうでも良いし、まず助けなど求めた覚えはない。
リン「助け?そんなことを言って私達を邪魔しないでください。すぐに出ていくと言うならば危害は加えません。」
何を思ったのかその金髪の少年は愕然とした。よく見ると蒼い竜の瞳を持っているので雄竜との間に生まれた子なのだろうか。青年の方も深紅の龍眼を持っている。
「う…そ…だろ…?リン…何で……遅れて…悪かったから…だから…か、帰ろうよ…リン…。」
その少年、ランは今にも溢れそうな涙を浮かべて訴える。周りの者、レイムとギルドナイトはそれを見守った。
リン「帰る?どこに?それに初対面のあなたに何か頼んだ記憶はありませんが。」
一同「…!」
レイム(やはり洗脳か…厄介だね…)
よろよろとリンに向かって歩き出すラン。レイムはいつでも飛び出せるように身構える。願わくばここで洗脳を解いてほしい。元々愛し合っていた相手がいるのだから解くこと自体はそこまで苦労しないはずなのだが…。
ラン「忘れたの…?俺を…?リン…」
レイムはさりげなくランの名前を呼びながら事実を伝えることにした。
「ラン、いくら番だからって今は洗脳されてるから油断するな。」
リン「番…?洗脳…?」
やはり反応してくれた。するとナルガクルガ亜種が食いつく。
ナルガ「洗脳?何を言っているの?」
男「無視しろ、俺達を引き離そうとしてるんだ。」
だが2匹は続きを促す。
「君らは無理矢理捕まった後、玩具にするために洗脳されたんだよ。」
2匹とも目を見開いた。ナルガクルガはまだ混乱しているようだがリンは何かに気づいたようだった。視線をランに戻し凝視する。ランはもはや泣きながらそっとリンに指を伸ばして首に触れた。
「リン…。」
知っている。私はこの少年を知っている。この少年は、少年は─────
「…ラ………ン…?」
ナルガ「し、知り合いなの!?」
「ラ…ン…私の……私の…」
氷水に入ったかのような衝撃。
「ランは…私の…いやあぁぁぁあ!!!!」
部屋の角まで全力で逃げた。秘裂から汚ならしく粘液を垂らしながら、壁に穴が開けられないと知ると部屋の角に全力で縮こまった。
リン「来るな!出ていけ!見るんじゃない!!消えろ!消えろ!!」
ランは再び絶句。ここで感傷に浸る暇はない。
レイム「取り押さえろ!ナルガクルガとキリンは僕が。ランは竜車に戻って報告してくれ。」
裸の男達はたちまち取り押さえられ、レイムは竜達に話しかける。
「さぁ落ち着いて、野生に返してあげよう。リン、お前をユクモのみんなが待ってる。」
「…。」
「さぁおいで、大丈夫だから。」
リン「私は…ユクモには帰れない…会う顔がない…。」
レイム「それは君の思い込みだよ。さぁ。」
ナルガ「あなたは何者なの?」
「僕は竜の味方だよ。」
その後も説得を続け、この豪邸の設備で2匹を洗ってから竜車へ。ナルガクルガ亜種も途中で我に返り、泣きながら洗われていた。ランは1度も姿を見せなかったので
「ラン、僕はナルガクルガと話してくるからお前はリンと話してやりな。」
「…。」
「子供だねぇ。まさかあんなの本気にしてるの?」
「…。」
「本音の訳ないでしょ?今リンはお前を一番求めてるハズだよ。…まぁどうしても嫌なら中で大人しくしてな。」
そう言い残してレイムはナルガクルガ亜種の竜車へ行く。
「やぁ、少しは落ち着いたかい?」
「そうね…。」
そして彼女の過去の話を聞き、あることに気がついた。
「その流産…多分わざとだよ。」
「なに!?どういうこと!?」
「竜殺しの実を見つけた。これを妊娠中や抱卵期の竜に与えると流産したり卵が育たなかったり、死卵になったりするんだ。餌に混ぜてあったんだろうね。奴等にとって君たちは快感を与えてくれる道具に過ぎない。妊娠なんかしちゃったらその間交尾できないし、産まれたら食費も嵩張る。だからこういうやつらは大抵流産させるか生まれた子供を売るかのどちらかなんだ。」
「うるって?」
「あぁ。雌なら君らと同じような目にあわせるために他の人間に渡すだろうし、雄ならある程度まで育てたら解体して武具にしてしまうだろう。勿論守人の僕らはそれを認めていない。狩人でさえ素材やその体目的の竜の生産は極刑としている。」
「じゃあ…私の子供は…わざと殺された…あいつらに…あいつらとの子なのに…産みたかったのに…許せない…」
「人間はそういう生き物だ。今は随分少数になったけどね。それでも根強く残っているのも事実。完全に無くすのは無理だと思うけどなるべく少なくしつつ被害者を助けるのが僕らの役目だ。」
「あいつらはどこ?」
竜は縄張りを荒らされようが追い出されようが怒ることはあっても敵を憎んだり恨むことはほとんどない。むしろそれがきっかけで番になることだってある。しかし、親や子供、兄弟や番の相手などを傷つけられたり殺されたりすると復讐に走ることもある。
「復讐は後にしてくれ。どうしてもやりたければあいつらに罰を与える人間と相談して、その極刑を君にやらせて貰えないかお願いしてみるよ。」
「うん…ねぇその…ありがとう。助けてくれて。洗ってくれて。汚かったのに。」
レイムは笑いながら
「きれいにするために洗ったんだよ。こっちこそ、初対面の僕に、この装備をしている僕に秘部まで洗わせるぐらい信用してくれてホッとした。こう易々いかないときもあるからね。」
「なんかね、あなたは信頼できるって直感で思った。それ、そんな白いの見たことないけど迅竜のよね?とっても美しくて、それになんだか優しい感じがした。きっとその竜はあなたのこと怒ってないんだと思う。」
その後色々な話をしているうちにナルガクルガとは打ち解けていき、しばらくすればナルガがレイムを囲み、レイムはそれにもたれかかるように座って話を続けた。問題はランの方だ。散々迷って、勇気を振り絞って会いに行った。黙って扉を開けるとリンがビクッと怯えた表情でこちらを見る。
リン「あぁラン…」
ラン「思い出した?」
「えぇ…全て。まさかあなたのことを忘れるなんて…。酷いことを言ってしまいましたね…。」
リンは危険なものを感じながら答える。
「ほ、ほんとだよ!違う幻獣かと思ったよ!!どうして…消えろなんて…助けに行った…会いたかっただけなのに…。」
「そ、それは…あなたにこんな姿見せたく───」
「ねぇ、好きであそこに居たって本当なの?」
「それは…あのときの私が…」
違うとはっきりは言えない。確かにあのときの自分はずっとそこにいたいと思っていた。
「本当…なんだね?」
「でもそれは───」
「ユクモに帰りたくないの?」
「…。」
「じゃあレイムさんには僕から言っておくから…あそこであいつと暮らすと良いよ。」
「なっ…!そんな…酷いわ!ねぇ待ってよ!待って!」
「ごめん。」
ランは自ら作ったこの空気に耐えられず外に出た。
「待ってよラン…」
力なく外へ呼び掛けるが反応はない。繋がれてる訳ではないので出ようと思えば出れるのだがそんな気力はなかった。自分を堕とした貴族を恨み、自分を捕まえたやつらを恨み、これなら元の雪山で暮らしたままの方が良かったとさえ思った。
レイム「ラン…どうやら大失敗したようだね。」
人用の竜車にうずくまるランを見てレイムがやや冷たく言う。
ラン「どうしようレイムさん…慰めに行ったはずなのに…多分…相当傷つけた…」
レイム「どうしようと言われても…何を言ったかは知らないけど一番心の支えだったはずのお前に傷つけられたらたまったもんじゃないよね。全く、捜してくれって泣きついてきたお前はどこに行った?」
最後の一言を言って後悔した。
レイム(いやだからこそランも傷ついて平常心を保てなくなったと言えばしょうがないかもしれない。どうやら会わせるべきではなかったようだね。)
レイム「取り合えず僕が話してくるからお前は休んでろ。」
ため息をつきながらリンの竜車へ。
「リン、レイムだけど。入って良いかな。」
「…はい。」
入るとまさにげっそりした、半ば放心状態のリンが縮こまっている。
「ランが随分酷いことを言ったんだって?具体的には聞いてないけど。あいつも子供だよねぇ。『リンが拐われた!お願い助けて!』って僕に泣きついておきながらいざ助けたら傷つけるって、人としても竜としても番としても最低だよねー。」
軽く、冗談らしく微笑みながら言うとリンも少し顔が楽になる。
「いえ…酷いことを言ったのはお互い様です。私にも落ち度はあります。というかランがあぁなったのも私が原因なので。」
「…そこが洗脳の怖いところなんだよ。解けた後、罪悪感と強い自己嫌悪に陥る。君は何にも悪くない。誰かが悪いとしたら洗脳した人間さ。」
「…恐ろしいですね、人間は。」
「あぁ。」
「初めて会ったときから思ってはいたのですが…あなたは…人間ではないのですね?ランとも違って人間との子でもない。直感ですが、あなたは…古龍…それもかなり強い古龍。」
「そう。さすがに同じ古龍にはこの姿でも分かるか…。でもこの姿も偽というわけではないんだ。人間の血は流れてるからね。人と竜の平衡を保つ役割をもつ守人にはうってつけって訳だ。事実僕は試験なしで守人になったんだから。」
「便利ですね…」
「だろ?でも君も同じようなもんだけどね。ランが嫌になったら守人においでよ。きっとみんな大喜びだ。竜と話せる青年と人と話せる幻獣!活動の場も広がるだろうね。あ、勿論本気にしなくて良いよ。そりゃあ入ってくれれば嬉しいけど。」
いつの間にか私は笑っていた。なれているんだな、こういうのに。
次の日、私は食事を運んで来てくれた人に頼んでレイムさんを呼んだ。
レイム「どうした?」
リン「決めました。今後のこと…。もしこのままランが会いに来てくれなかったら、私を元いた場所に返してくれませんか?」
「…よく考えたのかい?」
「えぇ。このままの状態でユクモに戻ってもお互い苦しいだけ…。」
「だいたい後4日ぐらいで大きな街に着く。そこの仲間に言えば連れてってくれるだろう。ユクモまで待たなくて良いのかい?」
「えぇ。4日で十分です。あと、ランにはギリギリまで言わないで貰えますか?彼の本当の気持ちを知りたいんです。」
「分かった。」
それから4日間。レイムはさりげなく行くように促したがランは勇気を出せず、ついにレイムは事実を伝える。それでもランは渋った。行かなきゃいけないことは分かってる。行って謝らなきゃ行けないことは分かってる。でも勇気がでない。何故?それは自分でも分からない。そしてリンが旅立つ当日、渋りに渋って、勇気を振り絞って会いに、引き留めに行った。もう一回やり直そう。そう伝えたかった。飛行船場へ行くとレイムが立っていて一言、
「遅いんだよ大馬鹿。」
そこにリンを乗せた飛行船は無かった。出発したのだ。レイムはランを怒鳴り付けたい衝動に刈られるが、ランの焦燥しきった顔をみて抑える。
「『助けに来てくれてありがとう。さようなら。愛しています。』だってさ。さぁ、ユクモに向かうから戻るよ。」
「…。」
「自分で選んだ道だ。リンも、お前も。」
「…リンはどこに?」
「僕も知らない。船長にだけ言った。」
「そうですか…」
「僕は夜中に飛んでユクモに知らせてくるから、お前はあのギルドナイト達とユクモに戻りな。あとあのナルガクルガだけど、渓流に棲みたいらしいから一緒に連れてきて。それじゃ。」
ユクモに戻ると誰も責めたりせず、慰めもしなかった。本人にとってはありがたかったが、気遣うというよりかける言葉が見つからないというのが本音である。また、表向きはリンが人間に性奴隷として売られ、あげくの果てに洗脳されて人間が信用できなくなったから自然に戻った、という風に広められたこともある。勿論レイムがリンと相談して決めたことであり、本音でもあった。
一方ナルガクルガ亜種は特定狩猟禁止生物に認定されてユクモ村からそう遠くない場所に巣を造り新しい生活に胸を踊らせ、またレイムはあの組織の持っていた商売記録を元に他の竜達を保護するべく他のギルドナイトや守人と共に旅立ったのだった。
ランはランでギルドに頼み込み、リンと出逢った雪山の洞穴へ行ったのだがそこにはギィギの卵塊があるだけで、リンがいた痕跡は無かった。ユクモに戻り、夜な夜な泣く日が続く。
ゴン「おーい大丈夫かー?魂抜けてんぞ?」
ラン「あぁゴン…抜けちゃったかも。魂。」
「それもう死んでんじゃん(笑)…盛大な失恋だな。いや離婚か。その組織のやつとか貴族はどうなったんだ?」
「あのナルガクルガが1人ずつ気が済むまで、死なない程度にいたぶったらしいよ。そのあとは終身刑だって。」
「ほう、じゃあ恨みはナルガクルガが晴らしてくれたって訳か。だけどお前は目を腫らしすぎだぞ。」
「…そんなに腫れてる?」
「うん。いかにも大泣きしてましたぁーって感じ。」
「パトロールしてこようかな。僕がいない間先輩とか旅行にきたハンターがやってくれたみたいだし。頭も冷やしてくる。」
「そうか。じゃあよさそうな材木あったら取ってきてくんね?」
「ん。分かった。」
久々に渓流をほっつき歩く。良質な材木を見つけたので引きずって運べるようにツタの葉を巻き付けながら、分かる筈もないリンの居場所を考えていた。
第1章『幻獣と少年』完結
引き続き第2章『平衡を守るもの』
第壱話『舞うは嵐、奏でるは災禍の調べ』
へ続く。
次回予定しているのは第2章零話で、外伝のような感じにします。なのでこの続きは第2章壱話とし、内容としては1章3話『一寸先は闇』から2~3年後を予定していて登場キャラクターもあまり変わりません。新キャラが出るくらいです。
そしてそして第2章では、察しているとは思いますが私の中でナルガクルガと常に大好きモンスターランキング1位を争っているアマツ様に登場して頂きます!イェイ\(^o^)/え?題名パクった?違います手抜きじゃないです敢えてです"敢えて"です。実際に↑の予告みて「おおっ」て思った人もいる筈です。…名前だけにならないよう頑張ります。