竜×龍、出産表現有りです。
*零話 混血龍
今から百年以上前、王座を息子に譲った祖龍ミラボレアスは妻に先立たれた後、下僕の極ナルガクルガを連れて名も無き場所に隠居することにした。その極ナルガクルガは人間の父を持っていて、新たな王にあまり気に入られて無かったことから逆に母とも親しかった先代に独り付いて来たのだ。
下僕とてやることと言えば狩りに行ったり話し相手になったり散歩したりするぐらい。他の下僕がいないので寂しさもあったが、先代王がいるので孤独ではなかった。
祖龍「いつも悪いな。」
下僕の捕ってきた草食獣を食べながら毎日そう言う。
極ナルガクルガ「いえ、私の役目なので。」
「そうか…お前も良い年だろう、我のことなど気にせずそろそろ番を探しにいったらどうだ?我もお前を縛っているようで心苦しくてな。」
「私は祖龍様に仕えることができて幸せに思っています。それに私に釣り合う雄なんていないんじゃないでしょうか?」
「まぁ確かに同族でお前に勝るものはほんの一握りだろう。実力だけで言えばだが。我も先はそう長くないがお前が心配でならんよ。」
そう言うとナルガクルガは悪戯っぽく笑うと
「あなたが亡くなったらちゃんと探すのでお気になさらず。塔にも戻らないでしょう。」
「フン…確かに私の息子はあまりお前のことは好んでいないようだからな…親の片方が人間というだけで。そのような育て方をした覚えはないのだが…。」
普通、雌の下僕は身の回りの世話だけでなく、王の血を絶やさない為の苗床として扱われる。稀にそうしない王もいたが、下僕達にとって王の寵愛を受けることは大変名誉なことであり、その御子を産むとなれば言語道断。しかしこのナルガクルガは父親が人間ということでその寵愛を1度も受けていなかった。
「何故私の母は父を選んだのでしょう。それに何故それを認めてくださったのですか?」
雌の下僕が番を持つには王の了承が必要というのが暗黙の了解になっている。
「無論、我も下僕が選ぶ番に文句をつけようとは思っていなかったからだ。お前の母も強く気高い竜だ。その竜の心を動かす程の何かがその人間にはあったのだろうな。」
味気のない毎日と言ってしまえばそうだろう。しかしそれはあるとき一変するのだった。
隠居してから10年以上経っても極ナルガクルガは番を持つことはなく、黙々と世話を続ける。祖龍ミラボレアスはますます気の毒になってきてしまった。
「なぁ…ミスト(ナルガクルガ)よ、」
「また番の話ですか?」
「そうなんだがな、お前はこれからも我が死ぬまで我の側にいてくれるのか?」
「そのつもりです。」
「なら…そうだな…もともとお前は息子の下僕にしようと思っていたのだが息子が気に入らなかったからお前を連れてきたのだがな…。」
「それが何か?」
「褒美…になるかどうかは分からぬが、お前が望むなら寵愛を与えても良いぞ?」
「え…!」
余談かもしれないが竜の身体機能が衰え始めるのは死ぬほんの数年前からなので、老いたとはいえまだ150年以上は生きるであろうミラボレアスは、肉体だけで言えばそんなに変わらない。
「我より遥かに若いお前に我の精を受けさせるべきではないと思い、また息子の下僕になることを想定したから今まで我からは与えなかったが、息子からも与えられずそれを苦に思っているのなら我は構わん。お前次第だ。」
実際ミストは苦に思っていた。成体になった下僕の中で処女なのは彼女だけであったから。まさかこんな突然夢にも思っていなかったことを言われてかなり動揺するも、
「寵愛を…いただけますか…?」
「あぁ。」
ナルガクルガの繁殖期ではないが、強い刺激で宿すこともあるし何よりミストにとってそれは褒美だった。
「では…失礼します。」
ミストは礼儀に従って祖龍の股間のスリットを舐めた。通常とは異なり注いで"いただく"のだから祖龍の準備も雌が行うのだ。やがて巨大な雄槍がそそりたつと向きを変えて自分の秘所をさらけ出す。祖龍も下僕とて最低限の敬意は払うので、ただでさえ初めてで緊張しているミストの秘裂を丁寧に解した。十分過ぎるほどに濡れるとミストに覆い被さり
「我のことは気にせず辛かったら遠慮なく言ってくれ。褒美なのだからな。」
「はい…。」
ゆっくりと、慎重にその巨根を沈めていく。体を押し広げて入ってくるソレを感じミストは熱い吐息をもらした。やがて尖端が子宮口を押すと
「苦しくないか?」
「平気…です。」
「動くぞ。」
やはりなれているからなのか理性を消すことなく、ミストが気持ちよくなってくれることだけを考えてゆっくりと動く。お陰でミストは予想していたよりも少ない痛みで快感を感じることができた。最初は恥じらって我慢していた声も興奮が高まるにつれ大きくなる。彼女の中が慣れて柔らかくなってくると少し動きを速めた。
「辛くないか?」
「はぁっ!…いっ!」
ミストがビクッと痙攣して達し、しばらくしてその中に精を放った。行為が終わるとミストは初めての激しい快感に震えながら
「ありがとう…ございました…」
「いつでも言ってくれ。我は応じよう。」
その次の日も彼女は王に求め交わり、味気の無かった日々は明るくなる。そして4日後、交わろうと王がミストに覆い被さったとき、
「なぁミスト。最初は褒美のつもりで身を重ねていたが…どうだ?我の最後の番として交尾しても良いか?」
「番…?私があなたの…?」」
「そうだ。どうだ?」
「私にはもったいなさ過ぎませんか?…でもあなたがそうおっしゃって下さるなら…私は嬉しいです。」
「決まりだな。これからは我を名前で呼んでくれ。」
「はい…ヴェント様…」
番を申し込んだとて残りの寿命の間に子供が出来るとは正直期待していなかったので、2年後に早々とミストが身籠ったときは年甲斐もなく喜びはしゃいだ。このときばかりはさすがにミストに狩りに行かせることはなく、ヴェント直々狩りをする。
おおよそ1年で元気な極ナルガクルガの雄が生まれた。生まれた子供はリヒトという名をもらう。流石は祖龍の子、たくましく育ち4年もすれば狩りも出来るようになる。しかし独り立ちをすることはなく両親の暮らしの手助けをすることに決めた。何故なら、リヒトに交尾を教えるため久々に交わったのをきっかけにかつての習慣を復活させたのだが、しばらくしたらそれによってまたしても身籠ったからだ。
「申し訳ありません。私の役目なのに。」
「お前の役目は、今はとにかく安静にすることだ。では母さんを頼んだぞ。」
「はい。父さん。」
ヴェントが狩りに行くのももはや普通となりつつある。まぁこの辺りに人間はいないのでさほど問題はないだろうが申し訳ない。とはいえリヒト独りではまだ心配だし、連れていくとミストが独りになってそれも心配なので致し方ない。
「あっ、動いた。」
弟か妹のいる母親のお腹を舐めながら嬉しげに呟いた。
「ありがとうって言っているのよ。」
「俺が独り立ちをする前に出来てくれて良かった。どんな子かな。俺や母さんみたいな迅竜かな、それとも祖龍かな?」
「祖龍…かもね。」
「分かるの?」
「あなたより大きい。それは確かよ。だからそう思ったの。」
まだ半年しか経ってないのにミストのお腹はすでに10ヶ月くらい妊娠している用な感じだったのである。そしてそれから3ヶ月もすれば起き上がるのが少し大変なくらいに大きくなり、さらに2週間後、ついにその時がきた。
「母さん頑張れ。」
産道から血と粘液の混ざった液体を噴き出して数分。絶えず呻きながら踏ん張る。やはりお腹の子はかなりの大きさらしく、中々出てこない。ヴェントとリヒトがお腹や腰を舐めたり擦ったりし続けて、ようやく頭が出てくると異変に気づく。万が一出産の長期化によってへその緒が切れたときに備えて先に顔にかかっていた膜だけを破ったのだが、その顔はヴェントすら見たこともない竜だった。しかし今はそこを気にすることなくミストを励まし続ける。
「グウゥゥオアァ!!ハァ…クゥゥ…」
リヒトの時はほとんど声をあげなかったのだが、一番体周の大きい肩から胴体にかけて出始めると悲鳴をあげ続けた。
「母さん…」
「大丈夫だ。お前の母さんは強い。」
見守っている者にとっても気が遠くなる程の時間ミストは苦しみ続け、その様子はこのまま死んでしまうのではないかと思うほどだった。ミストも夫と我が子の声を頼りに必死に意識を繋ぎ止め力を振り絞る。日が暮れ月が登り始めた時に始まった難産は、夜が白み始めた頃にようやく終わりを告げたのだった。腰全てが出ると足もその勢いででて、同時に大量の血と羊水を流した。
「母さん!大丈夫か!?」
「こど…もは?」
「生まれたぞ。あとはへその緒を噛み千切るだけだ。」
それを聞くと満身創痍の体に鞭を打って起き上がりへそのを噛み千切る。すぐに呼吸し始めたのでホッとした。さすがに全身の膜を食い破る元気は残っておらず、母親の特権をヴェントとリヒトに譲り、胎盤を出した記憶も曖昧なまま眠りに落ちた。
太陽が高く昇った頃に目を覚ますとリヒトがすぐ近くで眠っている。徹夜だったのだ、仕方がない。ハッと自分の腕の中に暖かな物を感じ見て見ればなんとも不思議な仔龍がスヤスヤ寝ていた。形は祖龍に似ているが全身は純白の体毛に覆われ、トレードマークとも言える角がない。代わりに迅竜を連想させる、紅いラインの入った柔らかな耳がある。その寝顔はなんとも愛らしく、優しげだった。
「あ、母さん起きた?大丈夫?」
リヒトが目を覚まし心配そうに話しかけてくる。しかしその顔は喜びその物だ。ミストが何かを言うよりも早く
「弟だ!」
「そう…乳は?」
「飲んだよ。母さんが寝てる間に。」
「お父さんは狩り?」
「うん。張り切って行った。」
子供を起こさないようにゆっくり伸びをする。まだ下半身に鈍い痛みが残り力が入らない。
「かわいいね。やっぱり独り立ちしなくて良かった。」
「そうかもね…よろしくねお兄ちゃん。」
そう言うとリヒトは照れ笑いをする。ヴェントが帰ってきてその肉を食べ終わると
ヴェント「不思議なことも起こるものだな。普通我々祖龍と他の竜が交わっても姿形まで混ざることはないはずなのだが。まぁそれを言えば、そもそもこんな立て続けに祖龍とそうでない竜との間に子供が生まれること自体極めて稀なのだがな。何か…意味でもあるのだろうか。」
ミスト「さぁね。でもまさに私たちの子供って感じですね」
リヒト「名前、どうするの?」
ミスト「どうしましょうか。」
ヴェント「おや?先程お前がコソコソ考えていなかったか?」
ミスト「そうなの?何て名前にしたい?」
照れながら
リヒト「レイム…なんてどう?」
ミスト「レイム…良いわね。あなたはどう思う?」
ヴェント「うむ。決まりで良いと思うぞ。」
そのレイムは数時間後に大事件を起こす。
リヒト「父さん!父さん!来て!」
駆けつけると同じく驚いた顔をしているミスト。その腕の中には小さな人間の子供がいた。
ヴェント「なっ…!これはいったい!?」
ミスト「人間になったの…突然よ。」
しばらくするとプルプルっと震えて元に戻った。なんとも信じがたい光景だったが
ヴェント「お前の中の人間の血が特殊な形で発現したのだろう…使い分けれるようになったら人と竜の架け橋になれるかもしれん。それに今、微かに龍雷を纏っていた。この子は将来、もしかしたら今の王を越える力を持つかもしれぬ。」
レイムは強い兄にも負けない強い力を持っていたが、勇敢なリヒトとは対照的に気弱だった。だからこそこの兄弟はとても仲が良く、後にその絆で人間と竜の命運を懸けた戦いに大いに貢献することとなる。
零話『混血龍』完結。
次話『舞うは嵐、奏でるは災禍の調べ』
次回を投稿するまでは時間がかかると思います。そのときまで、また。