今回はスピーディーです。内容が薄いといったらそれまでですが…。
※ランの出身地について、ポッケ村と表記してしまう大きな誤りがありました。ランの出身地はココット村です。また、前話でランの先輩ハンターの名前を紹介する部分に「ベイン、トーマ」とありますが正しくは「ベイン、カール」です。お詫びとともに訂正いたします。
──ある時、ある町外れで──
黒の衣を纏った者「あぁ、あなたがこの辺りで腕利きと有名な太刀使いのG級ハンターですね?」
「ん?確かにそうだがお前は誰だ?」
「私はある者に仕えているのですが、その方があなたの実力を称えてこちらの武具を差し上げたいということで参りました。」
「ほう?」
「こちらは、恐らくこの世界のほとんどの人間が目にするどころか知ることもない代物で、その辺の武具とは天と地の差でございます。この武具はただの物ではありません。これはある偉大な古龍に授かったもの。これを装備していただければその古龍の絶大な力を得るでしょう。それを、是非あなたに。」
「よくわからんが、まぁ貰っておこう。」
そしてこの男は武具の入った大小2つの箱を受け取り自宅へ戻って開けてみた。その男はそれが何の古龍の武具か聞くべきだった。
「ほう…確かにこりゃ凄いな。」
小さい箱にはまるで生きているかのごとく禍々しいオーラを放つ黒く怪しく煌めく防具があり、それは確かに男が今までみたどの装備よりも不気味な美しさを持っている。そして大きな箱にはみたことのない形の、太刀というより大鎌が入っていてこちらは紫色のラインがあり男はその危険な美しさに魅入られた。
「確かに不思議な力を感じる…」
男は装備を着けてみて再び感嘆の声を漏らす。と、
"……セ"
「ん?」
"殺セ…"
「誰だ!?」
"人間ヲ…殺セ…"
「誰だ!どこにいる!?」
"人間ヲ…殺セ…ソレヲ守ル者ヲ…殺セ…邪魔ヲスル者ヲ…殺セ…"
「くそ!うるさい!…おい…やめろ!黙れ!…やめてくれ…」
"殺セ…"
「人間を殺す…それを竜が守るならその竜も殺す…」
こうして煌黒龍の防具を纏った男は同志達と共に行動を起こすのだった。
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──霊峰にて──
アマツマガツチ(何か来た…何か…良からぬものが。)
──ユクモにて──
ナルガ亜種「改めて礼を言うわ。今度こそおしまいかと思ったもの。」
レイム「不思議な偶然もあるものだよね…あ、痛かったら言って?」
雄ナルガ「痛いですはい。」
「分かった。」
「いやわざわざ聞くならもうちょっと手加減してくださいよ!」
「手加減も何も水かけてるだけだよ?」
「グム……」
レイムは先日助けたナルガクルガを洗っていた。まだ傷は深いものの軽口を叩けるくらいまでは回復していて、亜種の方の子供も順調だ。ランの農場には仮設の竜舎が建てられていて2匹ともそこで過ごしている。神々しいキリンとは違い、カッコ良いで定評のあるナルガクルガ達を見に毎日子供達が来ていて、もちろん大怪我しているので触らせるなんてことはしないのだが無邪気な子供は飽きないのかとこちらが呆れるほど観察していた。もちろん、ハンター兼生物科学者のベインも一緒になって観察している。
ベイン「すごい何言っているか知らないけど確かに会話してるし何よりこんなに表情が豊かなんて知らなかったしなんというか夫婦愛と言うかもあからさまでいやそれが野生なのか…ブツブツ」
ナルガ亜種「変わった人間もいるのね。すごい目で見られてる。」
レイム「確かに変わってるね…」
ベイン「ヘックシュン!何か噂しましたー?」
「いや別にー(棒)」
サクラ「あ!見つけたニャ!ほら旦那さん!ラン君が待ってるのニャ!パトロール行く約束なのにゃ!」
「もうちょっと…」
「それにそんなに凝視してたらニャルガクルガが可哀想ニャ。」
「う、うるさい!わかった、わかったから!」
レイム「どうしたの?」
ナルガ「いや、なんだか嫌な予感がしてな。」
レイム「そう…」
渓流にて
ラン「なんだかピリピリしてません?」
ベイン「確かに、イビルジョーでも出たかな…?」
ラン「それは嫌だな…」
何となく張り詰めた空気が漂っている。草食獣達もまるですぐ近くに大型モンスターがいるようにそわそわしていて、今回のパトロールは平和に終わりそうにないことを伝えていた。
ベイン「天気も良くない…あのアマツマガツチは約束を守ってくれてるのかな…?」
ラン「今にも降りそうですもんね。アマツマガツチもピリピリしてるとか?」
「やめて。古龍がピリピリするモンスターとか想像したくない。」
そのままいつもの通り時折採取しながら見回っていると異変に気づいた。
ラン「魚が浮いてる…」
ベイン「特に外傷もないから毒とかかしら。ロアルドロス亜種でも出たかもしれないわね。」
「ロアルドロス亜種か…解毒薬少ししか持ってないや。」
「フッフッフ。私は常に10個持ち歩いてるわ。」
「えぇ…」
「凍土でイビルジョー狩猟のとき、ギギネブラと鉢合わせして以来はそうしてるわ…」
「納得しました。」
「ちょっと待って。」
少し遠くの地面を指差して
「あれなんだかわかる?」
「え?あ…」
足跡。それも真っ黒な…
「何で煙が出てるんだ?」
「あれは煙なんかじゃない。この目で見るのは始めてだけど…急ぐわ!」
そして第6区域に入ると、ついに渓流の緊張感の正体がわかった。
「タマミツネ…?なんか…凄く嫌な感じ。」
「これか…ラン、何がなんでも倒すのよ!なるべく早く!」
「何なんですか?亜種ですか?」
「違う!狂竜ウイルスに感染してるの!!早く倒さないと生態系がズタズタになる!」
口から紫色の煙を吐いているタマミツネはこちらに気づいてじっと見つめる。
ラン「えっ…」
ベイン「どうしたの?」
答える前にタマミツネが力尽きてバッタリ倒れた。
サクラ「ニャ?死んじゃったニャ?」
が、体が不自然に痙攣するとゆっくり首をもたげる。その目は怒ったナルガクルガのように光っていた。謎の威圧…というより恐怖。
ラン「ベインさん…逃げないと…」
ベイン「駄目よ!あれは伝染するの!放っておけばあいつと関わった竜がみなあんな風になる!」
そういわれ剣を取り相手の出方を伺った───
ナルガ亜種「本当にまずい気がするわ…」
レイム「うーん…僕は特に感じないけど…それなら様子を見に…行く必要もなさそうだね。」
ナルガ夫婦「え?」
ラン「ぐぁぁぁ!うぅ…ゲホッ…」
ベイン「ラン君大丈夫!?」
結論を言えばかなり強い。おまけに物凄く体調が悪く、ベインさんの援護を受けて何とか渡り合っているという感じだ。打消しの実も食べてはいるのだがあまり効果はなくて徐々に押されている。さらに雨も強くなって視界が悪い。
ベイン「やむを得ない…逃げるわよ!」
が、
「ア゙オ゙オ゙ォ゙ォ゙ン゙!!」
「嘘でしょ…?」
「こいつも…狂竜化ですか?」
「まずい…かなりまずい…」
挟まれた。狂竜ウイルスに感染したジンオウガとタマミツネ。ベインとランは背中合わせで構え、どうしようか考えているとき
「キャオオォォォン!!」
その咆哮を聞くとジンオウガもタマミツネも空を睨み付けた。
ランベイン「アマツマガツチ!?」
アマツ『やはりこれか…。特別です。加勢します。』
そう言って圧水ブレスを吐きかければジンオウガは吹っ飛び、タマミツネがアマツに攻撃しようとしたところをベインが攻撃する。そこからは形勢が一気に逆転した。何せ古龍が味方なのだ。アマツがつくった隙(火力的にはこっちが本命だが)に攻撃し続け、さほど時間をかけずに倒すことに成功する。
アマツ『穢されし者の排除に協力してくれて礼を言います。』
ベイン「は、はい…ってラン君!?大丈夫!?」
ラン「うぅ…ゲホォ…」
「こ、これって…」
ランが吐いた物は紫色を帯びている。
アマツ『穢されている。…そうですね、私に最初に話しかけたあの者なら何とかできるのでは?』
レイム「僕ならここにいる。」
ベイン「レ、レイムさん…」
レイムはポーチから丸薬を取りだし、それをランに飲ませた。
「しばらくすればよくなる。アマツが狂竜ウイルスに感染した奴がいるって報せてくれたから急いで調合したんだ。」
ベイン「打消しの実はあげたのに…。」
「ランの血の半分は竜だから狂竜ウイルスの影響を受けやすいんだ。だから打消しの実を食べるくらいじゃ薄すぎるんだよ。」
「さっきの薬は…?」
「竜用の対狂竜ウイルス薬だよ。ラン用に少し変えたけど。人間が飲めば死ぬ。」
「でもそれなら狂竜ウイルスに感染したしたモンスターを救えるんですね!?調合方法を──」
「実用的じゃない。難しいしね。」
「でも材料を──」
「アルラウネ、打消しの実、少量の竜殺しの実、不死虫の粉末、それから祖龍の鱗の粉末。」
最後の材料を聞いてベインが頓狂な声をあげる。
「そ、祖龍!?」
アマツ『なるほど…そういうことですか。』
「祖龍って、あの伝承の?伝説の白龍で竜王の?昔世界を滅ぼした?」
「本当は古龍の血でも良いんだけど、それだと半分人間のランには強過ぎるからね。祖龍の鱗には浄化作用があるからそれを利用した。」
「何でそんなもの…」
「ま、色々あるから。」
『それにしても妙ですね。穢れし者の気配を感じて降りてきましたが、これだけとは。』
レイム「確かに。もしシャガルマガラ…天廻龍の影響ならもっと広まってておかしくないし、外から来たんなら観測隊が気づくはず…」
ベイン「じゃあ誰かが狂竜ウイルスを持ってきて、タマミツネとジンオウガに感染させたってことですか?」
『そうなるでしょう。事実、もう気配はない。それに天廻龍が来たのなら私が気づかぬはずがない。』
ラン「うぅ…ゲホッ…レイムさん?」
「あぁ気がついた?」
「あのタマミツネ…」
「?」
「離れろって言ってた。きっと俺に竜の血が流れてるのがわかったんだ。俺は人間に殺させろって言ってた。」
「そうか…っていうかラン、お前飛竜種としか話せないんじゃなかった?」
「ほんとだ…何でだろ。」
「まぁあのタマミツネが特殊だったっていうことも無くは無いけど。」
『あなたが穢れに気づかないのは意外でしたね。』
「僕は狂竜症…穢れには囚われないから。自らの危機に及ばない物は近づかないと察知できないんだ。」
『成る程…では私はここで。あまり長居してあなた方の集落が滅んでも困るので。』
ラン「あ、ありがとう。」
ベイン「助かりました。」
レイム「そうだね。お陰で2人が助かった。」
一瞬、アマツマガツチは驚き戸惑ったが
『えぇ。』
と言って去っていった。
「ベインとランは先に帰っていてくれ。僕はもうしばらくこの辺りを調べる。」
『ありがとう、か…』
霊峰に戻った嵐龍は、初めての言葉を言われた場面をリフレインさせる。
『感謝されるのも悪くない。』
それから数日、タマミツネ達の狂竜症発症については何も分からずしばらく平穏な日々が続いた。
カール「いやー、あのルーシーとかいうアイルーの薬はほんとに良く効いたよ。医者も驚いていたぞ。」
ルーシー「エッヘンニャ。」
ベイン「カール、後にして。私はナルガクルガ達の観察に…」
サクラ「いいニャ。パトロールニャ。」
ベイン「えぇ…」
ラン「カールさんにトールさん!もう大丈夫何ですか?」
トール「あぁ。まぁさすがに狩りは無理だろうが、日常に支障は無いな。」
そしてトールとカールはランに向き直り
トール「お前のお陰だ。お前が救出してくれなかったらお陀仏だっただろう。」
カール「全くだ。心から礼を言う。」
ラン「そ、そんな…」
カール「ほらベイン、さっさとパトロール行ってこい。この間アマツマガツチと一緒に戦ったんだろ?それで十分じゃないか。」
ベイン「えぇでもぉ…」
カール「古龍と共闘するなんてハンターはこの世にお前くらいしかいないと思うぞ。あとランな。」
「えぇ…うん…そうかな…」
ラン、トール(単純!!)
ギンガム「お弁当作ってきたニャー。さすらいのコックアイルーに教わった秘伝弁当ニャ!」
ちなみにギンガム、狩りの腕だけでなく料理の腕も立つ。
こうして日常が戻りつつあり、ナルガクルガの番がいるとユクモが有名になり始めたころ。その日はカールとトールの退院祝いで軽い宴会が開かれていて、レイムはナルガクルガに薬を塗るため抜けていた。
レイム「はい、薬塗るよ~。」
ナルガ「うぅ…。」
ナルガ亜種「頑張って(笑)」
とても染みるが効果は身を持って体験しているので文句は言えない。塗り終わり、
レイム「君も体の調子はどう?」
ナルガ亜種「お陰様で。…?」
ナルガ「これ…また…」
レイム「とんでもないものが入ってきたね。」
レイムは短い太刀を背中から外し、いつでも抜けるようにしながら気配のする方向へ向かった。
ユクモ村長「退院おめでとう。」
カール、トール「ありがとうございます。結局何もできずに…」
村長「いいえ、そんなことありませんよ。あなた方の勇気には皆も感服しております。大したご馳走ではないですが、どうぞ英気を養ってくださいまし。」
宴会が始まってしばらくしてのことだった。
「取り込み中悪いが、ここに人と竜の間に生まれた子供がいると聞いた。誰だ?」
ラン「え?俺…ですけど?」
「来てくれるか?」
ランが人混みを抜け、その男の近くに行くと男は突如太刀…大鎌を抜いてランの首に突きつけた。宴会に武器を持ってくる者などいるわけもなく、場が騒然とする。
ラン「なっ…その…どういう…?」
「お前はどちら側だ。人間か?竜か?」
「どういう…ことですか…?」
「人間と竜。どちらの味方をする。」
「何で…そんなこと…」
「答えろ。答えによってはお前を───」
突然男の背後にレイムが現れ、鎌を持つ男の右腕に剣を降り下ろした。
ガギィン!
(受けられた…!?この距離で…!)
ランに突きつけていた鎌を後ろに下げることによってレイムの剣を受け止める。その隙にルーシーがランを後ろに引っ張った。
レイム「お前…その装備はどこで手に入れた?」
「お前に語る価値はない。そんな動き、人間ができるとは思えない。ましてや
レイム「!!」
確かにレイムが通って来た思われる道筋には深い爪痕のようなものがあり、なおも増え続けている。
「一応聞いておくがお前は人間と竜、どちらの味方だ?」
レイム「僕は平衡を保つ者。乱す者の敵で、乱される者の味方だ。お前はどっちだ?」
「フン…」
男は答えず、代わりにレイムの首へ鎌を回す。レイムはこれをしゃがんで避けてカウンターを狙うが蹴り飛ばされた。しかし即座に体勢を立て直すと…消えた。と思えば男の目の前に現れ、左手で男の右腕を押さえると今度はレイムが男の首に向かって剣を降り下ろすも男は左腕で庇った。気の込められた白いナルガクルガの刃翼をそのまま切り取ったような、僅かに湾曲している片刃の剣は小手を切り裂き男の左腕の半分ほどまで深く斬りつける。しかし男は何事もないかのように
「やはりか…だがここまで鋭いとはな。この防具を貫くとは思わなかった。」
「何が目的だ。」
「人間を絶滅させる。それだけだ。」
そう言って男はレイムに前蹴りを放とうとするが、男が膝を上げたところでレイムが足でその膝を押さえ、そのまま踏み込み剣を離して1回転。サマーソルトキックを男の顎に食らわす。そして背中から短剣を抜くとそれで鎌を防ぎつつ太刀を腕から引き抜いた。そして男が人質を取るよりも早く再び瞬間移動で鋭い突きを繰り出すが交わされかすり傷に終わり、男は勝てないと悟ったのか一目散に逃げ出した。レイムは高速で剣を降り、青白い刃を放つも避けられ男が人混みに紛れてしまったので追撃が困難になる。
その後もレイムが気配や血痕をたどって追跡するが、あるときそれはパッタリ無くなったのだった。
レイム「ラン、怪我はないか?」
ラン「はい…」
村長「今のは一体…?」
レイム「煌黒龍の防具をつけていた。」
「え?」
「煌黒龍アルバトリオンの武具だ。」
ベイン「アルバトリオン!?天災と呼ばれし龍!」
ラン「でもそれが…?」
レイム「アルバトリオンの武具を人間が着けるとその強い力に呑まれ、心を支配されると言われている。」
ベイン「私も伝承で聞いたことがありますが…本当にそれが…?」
レイム「間違いない。だいぶ原型を崩してるけどあの立ち回りはハンターのものだ。どこかであの武具を見つけてしまったのか、渡されたのか。アルバトリオンの討伐なんて、そんな依頼が出たら知らされるはずだ。それがないということはそういうことなんだろう。」
村長「では誰かが人間の絶滅を目論んでいると?」
ベイン「千年前みたいに…?」
レイム「違う。千年前のあれは人間を絶滅させようとした訳じゃない。生命のバランスを保つための最終手段を竜王がとったにすぎない。証拠に竜と深い親交があったモガ村やここユクモ村には大して被害が出なかった。」
村長「確かにそのような記録がありました。」
ラン「もっとタチが悪いってことか…」
レイム「渡されたとしたら余計にね。」
ベイン「ところでレイムさん…何でそんなことを?それにこの間もマンドラゴラのことをアルラウネって…そう呼ぶ地域はごく限られているんですが…祖龍の鱗のことも、さっきの戦い方も…」
レイム「今する話じゃない。とりあえずこの事はギルドにも伝えたいから郵便ネコを呼んでくれますか?」
村長「わかりました。」
それからまた少し経ち…
ラン「うわぁ…撫でても良い?…可愛い…」
ランは生まれて1日しか経っていないナルガクルガの子供を撫でさせてもらっていた。漆黒ではなく微かに緑がかっている。雄の方の傷が思った以上に深く、自然に戻れるようになったときには雌の亜種の方が動けなくなったのでランの農場で出産したのだ。ベインもしっかり観察していたが、さすがに間近で見るのではなく遠くから、特製の双眼鏡で覗いていた。
ベイン「ふーむ、これはかなりおいしかったぞ…まさか生で見れるなんてそれに雄がずっと雌を気遣っててこれは人間の男より全然…」
雄ナルガクルガとレイムが同時に気づき、続いてナルガクルガ亜種が気づいて同じ方向を見る。つられて人間達もその方向を見た瞬間
ラン「霊峰が…!」
農場からもかなり遠くに霊峰が見えるのだが、雲のかかったそこが火山が噴火したが如く赤橙色に輝いたのがよくわかった。そして徐々に雲が薄くなる。
レイム「まさか…」
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ここは霊峰、最近私が落ち着いた場所。ここに来てからというものの奇妙なことが起きてはいるが、私にとってそれは良い暇潰しとなった。この間穢れた者を人間と共に下した時は何とも新鮮であった…。
そんなことを考えながら嵐龍アマツマガツチは今日も見飽きた雲を見上げながら、ぼんやりと新しい思い出を整理していたとき、
アマツ「今度はなんだ…?」
大きな力を感じて臨戦体勢になる。が、一瞬雲が赤くなったかと思うと
ズゴォォォン!!
「クギャアアァ!!!」
直撃は免れたものの想像を遥かに越える規模の爆炎に巻き込まれ、筆舌で表せない痛みが全身を襲う。そしてさらにもう一発。翔ぶ力を失い、なす術無く霊峰から墜落した。木を何本もなぎ倒し、自らの角や骨が折れる音を何度も聞きながら滑り落ち、
「ク……ク…?」
気がつけば止まっている。助かったか、と一瞬思ったが違った。妙に落ち着いていて体が軽く、痛みは全く感じない。むしろじんわりとした心地良さすら感じた。
(死ぬのか…私は…そうだ…空は…)
最後の力を振り絞って金属のように重い瞼を開けて嵐龍の最後の、今まで生きた褒美を見ようとするが、その虚ろな目には紅い稲妻が轟く暗い雲しか映らなかった。
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ラン「こっちに来る!」
霊峰から巨大な紅の龍がこちらへ接近していた。すでに村中が異変に気づき、パニックに陥る。そしてついに村の上空まで来ると凄まじい咆哮をあげると空全体が燃えているかのように緋に染まった。
「なんてこと…」
「この世の終わりだ!」
『何故この人里に竜がいる。早く去れ。同胞を殺したくはない。』
ナルガ夫婦「!!?」
と、村の非常用バリスタ砲が紅龍を狙うがあっさり弾かれる。落ちたバリスタ弾は赤く溶けかかっていた。
レイム「くそ…こうなったら仕方がない…」
そう言うとレイムは───
ラン「え?ちょ!レイムさん!?」
ベイン「ちょちょっとまったぁ!落ち着いて!落ち着いて!」
───何の遠慮も前触れも無く防具を脱ぎ始めた。そして全て脱いでしまうと深呼吸し
「離れて。」
目映い光が辺りを包み、その光が消えたとき、そこには大きな白龍が居た。深紅の龍眼に真っ白な体毛とその下の白鱗。立派な翼と手足。容姿に反してその頭には角はなく、代わりにナルガクルガのような紅いラインの入った耳がついていた。
「キョオォォォ!!」
紅龍に負けない咆哮と共に空が分厚い雲に覆われ、白龍は紅の雷を纏い浮き上がった。
「紅龍ミラボレアス、何故ここにいる。」
「貴様…!なんだ貴様は!?その容姿…バカな…!」
予想外の敵に紅龍は明らかに動揺する。
「もう一度問う。何故ここにいる。」
「わ、我は人間を滅ぼす。先に我々の使いが失敗した。加えて古龍である嵐龍が人間を手助けした。その罰を与えに来たまでだ。貴様こそ何者だ!?」
「お前の思っている通りだ。」
「あり得ん…そんなことは断じて…」
「何故ミラボレアスであるお前が人間を滅ぼそうとする。」
「それは我々で決めたことだ!お前のような訳のわからん奇形には関係ない!」
「ミラボレアスとは。竜王とはこの世界の生命の平衡を保つ存在。であるのに何故根絶やしにしようとする。何故平衡を乱す。」
「黙れ!貴様のような小僧が…奇形が竜王を語るな!」
そして紅龍は息を吸うように力を込めるとまさにマグマのような、グラビモスの熱線を何百倍も強化したようなブレスを吐き、対する白龍も白と紅の混ざったブレスを放ちそれら2つが空中で衝突した。
耳をつんざくような爆音と衝撃波と共に汗が出るほど気温が上がる。しかし両者一歩も譲らずしばらくして同時にブレスが止んだ。が、白龍が短く吠えると紅の龍雷が紅龍を襲いたまらず紅龍はその場から離脱する。すると白龍はその大きさからは想像できない速さで滑空し、思わぬ攻撃に反応出来なかった紅龍の首に噛みついてそのまま紅龍ごと龍雷を纏えばひとたまりもなく、紅龍はなんとか振り払うと逃げていって白龍はそれをしばらく追った後、方向転換して霊峰へ向かったのだった。
ベイン「…」
カール、トール「…」
村中「…」
ラン「な…ナルガ達大丈夫…!?」
親子共にかなり怯えてはいるが大丈夫そうだ。みんな呆気にとられている。もし白龍がさりげなく紅龍を誘導して高度を上げていなかったら村が吹き飛んでいたかもしれない。
ベイン「あの薬に使った祖龍の鱗…あれはレイムさん自身のものだったのか…」
村長「伝承とは違う姿ですがあれはまさしく祖龍…」
ラン「レイムさんが人間じゃないことは知っていたけどまさか…こんな…」
だがどう考えても色々な法則をねじ曲げるような戦闘能力に治癒力、竜の種に関係なく話せる能力、そして竜に関する知識。信じられないが、信じるしかなかった。レイムは竜王の子なのだと。
皆が白龍が飛び去った方向を見つめ続けていると、不意に紅の光が微かに灯るのが見えた。
──────────────────────
──大丈夫、君は死なないよ──
「……ウ?」
「…起きた?」
「なに…クアァァッ!」
「動かないで、傷が開く。」
そんなことを言われても苦痛で動けない。
「助かった…のですか…?」
「本当にギリギリだった。よく耐えたね。」
ゆっくりと瞼を開けるとそこは明るく、そして自分の隣には自分より少し大きい見たことのない白龍が寄り添っていた。けれどそれが誰だか分かり、驚くこともなかった。頭のどこかでわかっていたのだ。
アマツマガツチはナルガクルガ達がいる竜舎の隣に増築された、取りあえず大きな屋根のある場所に安置されていた。
「ここは…どこなのですか?」
「ユクモっていう人間の集落だよ。ほら、前に僕に穢れし者のことを教えてくれたところ。」
「あぁ…それにしても妙に明るいですね…」
「そりゃあ君が死にかけたせいで今は青空が見えてるからね。ほら、」
天井の影から覗いて見ると────
「あれが…」
雲は多かったが、その日は紛れもなく晴れ。果てなく続く青空をみて言葉を失った。長い間見つめ、そこから目を離さずに
「何故…助けたのですか?」
「そうだね…特に理由はないかな。ただ微かに君の力を感じて、生きてることがわかったから助けにいった。」
「そうですか…不思議ね…こんな風に寄り添われるなんて初めてなのに、とても懐かしい気がします。」
「失血もしてたから暖めた方が良いと思ってね。」
「どれくらい経ったのですか?」
「2日。緊急でここを拡張してもらったんだ。前に迅竜が入ってたところの隣だよ。」
「なるほど…」
ここでようやく空から目を逸らし
「礼を言います。ありがとう…」
「あぁ。さぁ、休みな。」
レイム(それにしてもまさか紅龍が関わっているとはね…ということは祖龍も関係しているのだろうか。いや、まずは煌黒龍のほうを調べたほうがよさそうだな。もう少しアマツが回復したら…行ってみるか。)
次回 父と母の守り
次回は主にレイムの過去の話になります。
これ書いて思ったこと。私って戦闘描写下手…