友達すら居ないぼっち作者は自分用の生チョコだけ作ったぞー()
今回は本編の『逆行物語』に登場してるオリキャラ(ラバックの兄)も出そうと思ってたんですけど、余裕が無くて名前しか出せませんでしたorz
甘味を斬る バレンタイン編
バレンタイン。それは誰もが浮き足立つ日。ほとんどの男は期待を胸に秘め、一部の女が勇気を振り絞るイベント。
俺はもちろん前者
「よし!大分溶けてきた!あとは形作って冷やすだけだな」
と、どちらにも当て嵌まらず、今はバンダナとエプロンを身に付け、キッチンでチョコ作りを楽しんでいた。
「ラバック、私にくれるチョコはどんなものなんだ?もちろん本命だよな?」
「すいませんけど本命なんて無いっす。残念ながらエスデス将軍に渡すチョコはナジェンダさんのと同じブランデー入りチョコです」
即座に期待をへし折ってやった相手は、隣で一緒にチョコを作っているエスデス将軍。
彼女は朝からずっとこうして俺から本命チョコを貰おうと猛アプローチをしているみたいだが、この通り効果は一切無い。
因みに友チョコという存在も前世の時からリサーチ済みの俺は、とりあえずお世話になってる人達には渡そうと思ってる。
しかし悲しいかな、今の俺はナジェンダさんに恋心を抱いていない為、本命なんてない。野郎共に渡すチョコも言わずもがな。
「私はお前に本命チョコを作ってやってるんだぞ?それでも義理だというのか!?」
エスデス将軍、まさかの逆ギレ。
こんな美女から本命チョコを貰えるのはぶっちゃけ超嬉しい。けどそれとこれはまた別。
「本命やるから本命寄越せって…なんすかその屁理屈!?」
「ハッ!そうだ、私が作ったチョコをラバックに掛けて、そのラバックを私が喰えばお互い本命を渡した事になるのでは!?」
「はぁ!!?」
悲報、エスデス将軍、迷走した末に変化球を高速で投げ飛ばす。
しかも発想が色々とヤバイ。等身大の人型チョコを作るっていうテンプレなギャグ並みに馬鹿げてると思うぞこれは。
発言した本人は「私ってば天才!?」みたいな顔してるけど全然そんな事ない。天才ではなく馬鹿である。
でもそれよりも気になるのは、
「それチョコよりも俺がメインになってない!?さらっと俺を喰うって言わないで!?また俺の身体を狙うのはやめてくれませんかね!?」
「チッ、バレたか」
「今ので隠してたつもりだったの!?思いっきり魂胆バレバレだったけどあれって隠す気あったの!?」
湯煎で溶かしたチョコを二つのスプーンとラップを使って丸めながらの
けれどまだ数個しか出来ておらず、チョコ作りは先程から全く進んでいない。
「あーもぉー!!あんたのせいで作業が全ッ然集進まねぇじゃねぇか!!」
「人のせいにするのはどうかと思うぞ」
「どの口がそれを言うの!?明らかに貴女のセクハラ発言のせいですよね!?」
こうして叫び続けるのは流石にもう疲れてきた俺。
いくらツッコミを入れてもキリがない。……うん、無視しよう。今日はもうツッコまないぞ。
しょーもない決心を固めて、今度こそ作業に集中する。それからは彼女に何を言われても全部無視してやった。
結果、拗ねたエスデスさんはやっと黙ってくれましたとさ。これでチョコ作りの平穏は守られたぜ。
__そしてバレンタイン当日。
朝起きてすぐにエスデスがチョコの交換を要求してきたので、俺は眠い目を擦りながら寝巻き姿のまま手作りチョコ(義理)を手渡しした。
因みにエスデスがくれたのはベタなハート型チョコ(本人曰く本命)。包装もかなり凝っていて、俺への愛情がたくさん込もってるのが形になってはっきりとわかるね。元から言動で痛い程伝わってるからもうちょっと自重して欲しいとこだけど。
チョコを交換した直後には喜びのハグをされて、「可愛い!可愛い!!」とかなんか怖い囁き声が聞こえたが何も聞かなかった事にしとく。
とまぁそんな事があって、数個ずつ小包に入れて包装したチョコを最初に渡したのはエスデスに。
そのまま同僚や、我が軍の詰所に住み込んでいるシスコンことリネット兄さん。他にもナジェンダさんと仲の良いロクゴウ将軍(前世では嫉妬の対象だった)とか、普段よく世話になっている人達にチョコを配って行った。
あと女性陣からお返しのチョコをたくさん貰えたのはマジで驚いた。
二度目の人生なのに俺こんなの初めてなんだけど!?チョコ貰っただけでも国家熱唱したくなる程嬉しいのに夢みたいだ…!友チョコ最高かよ……!!
そして一通り配り終えた頃には、気が付けば空はオレンジ色に染まっていた。
「はぁ、疲れた……」
中庭のベンチに座って、とりあえず一休み。
ほとんど宮殿内で済ませてるとはいえ、流石に疲れるね。ほんと宮殿の敷地は無駄に広過ぎる……。
「あとはナジェンダさんのと……これだけか」
シックな箱に包装した特別感のあるチョコと、それとは対照的に、安物の小袋に入れただけの小さめのチョコ。
豪華なやつはもちろんナジェンダさんの。もう一つは……。
「クリスマスの時の借りくらいは返そうと思ってたんだがな……」
そいつはめちゃくちゃ嫌いな人物で。あんな奴に自分の手作りチョコをやるのは癪だけど……あん時の借りを作ったままにしたくないっつーか……。
「いや、やっぱやめよ。俺らしくねぇ。これは後で自分で食おっと」
「何一人でブツブツ言ってンだ?」
「どわぁッ!!?」
噂をすればなんとやら。頭上から聞こえてきたシュラの登場にびっくりして、危うくベンチから落ちるところだった。
「お、脅かすなよてめぇッ!!」
「今のは警戒心ねぇお前が悪ぃだろ。それよりそのチョコ、誰かに渡すやつか?」
隣に座ったシュラが指を指したのは、ナジェンダさん用のチョコ。
「べっ、別に誰だっていいだろ!お前には関係ねぇ!」
「……ああ、ナジェンダの姉ちゃんか」
俺はそっぽを向いて誤魔化したが、納得したように図星を言われて一瞬ギクリとする。
でも彼はそのチョコへの興味が失せたのか、
「じゃあこっちは余りもんか?残ってるなら俺に寄越せよ」
と、次はその隣の小さいチョコに目を付けた。
「ま、まぁそんなに欲しいって言うなら仕方ねぇな。ほら、有難く受け取れ」
照れ隠しでつい偉そうな態度でシュラにチョコを差し出す。しかし彼の反応は、
「中身が野郎だから全然有難く思えねぇな」
「やっぱそのチョコ返せ。今すぐ返せ」
寄越せと言ってきた癖にそれはいくらなんでも失礼過ぎる。喧嘩売ってんのかこいつ。
取り返そうと手を伸ばすが時既に遅し。奴はもう袋を開けて、一粒目のチョコを一口で食べてしまった。
「俺のチョコオオォーーッ!!!」
「あ?受け取った時点でもう俺のだろ」
そう言ってシュラは残りのチョコもパクパクと食べていく。でも感想は特に無い様子。
そんな彼をジト目で睨んでいると、
「……そこまで機嫌悪くする程これ食いたかったのかよ?」
「……別に」
呆れ顔のシュラに、ムスっとした表情で素っ気なく返す。
するとシュラは、何か悪戯を思い付いたようにこう提案した。
「そんなに欲しいなら、あーんしてやろうか?」
「ヤだよ気持ち悪ぃ」
即答してやると、彼は「ま、だよな」と最後のチョコを自分の口に放む。
しかしその次の瞬間。シュラは俺の口にキスをしてきた。
「んっ!?んんっ…!んくっ!」
口の中に何かを入れられた。かと思ったら途端に甘ったるい味がして、それは舌の上で溶けていく。
「ぷはっ…!て、てめぇ…!このキス魔ッ!!」
「あ?お前がチョコ返せって五月蝉ぇから返してやっただけだせ?」
「だからってそこは口移しじゃなくて普通に手渡しで返しやがれ!!」
悪戯が成功した子供のようにニヤニヤしているシュラに怒鳴りつつ、口元を袖で拭いながら急いで離れて奴の次の行動に警戒する。でも周りに人が居なかったのだけは不幸中の幸いだった。
口の中に広がった甘い何か。それは先程俺が渡したチョコだった。甘さは控え目に作ったつもりなんだが、思った以上に甘ったるく感じたのは気のせいだろうか。
「んじゃ、小腹満たして満足したし、俺は帰るぜ。じゃーな」
愉快そうにケラケラ笑いながら手をひらひらと軽く振ってその場を去るシュラ。
恐らくあれは俺の事もからかえて満足した、という意味も含まれているんだと思う。ほんとムカつく野郎だ……。
そして神出鬼没のシュラが居なくなった事でホッと一安心した俺は、休憩を終えてナジェンダさんの元へ行った。
「__ありがとう、ラバック。でもすまんな。実は私も自分で作ってみようかと思っていたんだが、仕事がな……」
ナジェンダさんの執務室。そこで俺は手作りチョコを渡したが、仕事終わりの彼女の顔は少しやつれていた。
「忙しいのはわかってますから、そんなに無理しないで大丈夫ですよ。それより今日はもう休んで下さい、ナジェンダさん」
これは前世の記憶の話だが、ナジェンダさんが毎年チョコを作る余裕がなかったのははっきりと覚えてる。そう、はっきりと。それ以前に俺が彼女から貰える可能性もほとんどなかったと思うが、その全てが覆って欲しいと切実に願っても無駄なのはわかっていたさ……。
やっぱり今回も初恋相手からの義理チョコさえも貰えないんだなと考えると、胸が痛い。物凄く泣きたくなる。
でも今日は他の女の子達からたくさんチョコを貰えたんだからそれで十分だろ?だから我慢するんだ俺。あの拷問を耐え抜いた根性で耐えてくれよ俺の精神……っ!!
「そうだな、では少し休ませて貰おう。…だが、その前にコレを受け取ってくれないか?」
そう言って差し出されたのは、少し高級感のある既製品チョコ。帝都で人気のブランドチョコだ。
「ナ、ナジェンダさん……!!」
チョコを受け取った手を震わせながら、思わずぶわっと涙が溢れていく。
「!!?ラ、ラバ?なんで泣いてるんだ…?」
「だ、だって……ひっぐ、…っ、ナジェンダさんから……ナジェンダさんのチョコが……っ!う、うわああああぁっ!!」
感激のあまりに、わんわんと大声で泣き出す。
「大泣きする程!?喜んで貰えるのは嬉しいが、感涙までされると手作りじゃなくて本当に申し訳なく思うんだが!?」
困惑するナジェンダさんは、戸惑いながらも慌てて俺の涙をハンカチで拭おうとする。
ヤベェ、すっげぇ嬉しい……語彙力失うくらいにめちゃくちゃ嬉しい。この喜びをなんて例えればいいのかわかんねぇ…。涙も全然止まんねぇよぉ……!!
その後も暫くずっと泣き続けて、そのせいでちょうど部屋の前を通り掛かった人達もどよめき、俺はナジェンダさんを困らせてしまっていた。
後日、俺が貰ったそのチョコが他の奴らに渡されたのとはまた別のチョコだったと知った俺は、その日は一日中ハイテンションだった。
因みに仕事もいつも以上に素早く捌いてやったぜうっひょーー!!これから俺はナジェンダさんから毎年チョコを貰う為に生きるぜっ!!!
キャッキャッと浮かれた有頂天気分は暫く続いていた。
しかしそれは、いつものようにエスデスとシュラに振り回される事によってすぐに終わりを迎えたのだった……。
最後のオチはあれだけど、珍しくラバックちゃんがハイテンションな状態で終わった(笑)
リア充撲滅計画を実行せずに済んで良かったねラバック!←
ラバ「俺も女だから貰えたってのが凄く複雑だけどね……。贅沢言うと前世でチョコ貰いたかった……」(遠い目)