本編の方では更新が遅くなりつつも漸くナイトレイド編に入り、時間軸はちょうど原作二巻のザンク戦辺りとなってますが、今回は遅い海の日の番外編としてチェルシーとスーさんが居る時間軸です。
ただしメモリアルファンブックに収録されていた書き下ろし漫画を元にしてますので、読んでない方はネタバレ要注意…!!
猛暑を斬る
「夏だ!!海だ!!水着だああああぁっ!!!」
眩しい太陽に照らされる夏。いつにも増してハイテンションで盛り上がっているのは、俺ラバックである。
「海じゃなくて湖でしょ。あ~あ、どうせ来るなら海が良かったわ」
「だねぇ~。あと仕事じゃなくてプライベートで来たかったよ」
崖下にある大きな湖の前でちょっぴり残念そうにするマインちゃんとチェルシーちゃん。
ぼやく彼女達の言う通り、今日はナイトレイドの貴重な休日などではなくいつものように仕事で来ている。それでも女の子の水着姿を待ち望む俺は一人で興奮しまくっていた。
……が、しかし、
「なぁ、本当にこんなところで危険種が出たのか?」
「ああ。報告にあった形状からしてその危険種はレイククラーケン。皇拳寺の裏山でも養殖されている巨大なイカだ。一匹しか居ないだろうから迅速に捕らえるぞ」
タツミとナジェンダさんの会話を聞いて、軽やかに飛び跳ねていた俺はもう暫く忘れていたかった
そう、今回の任務内容は
「天然モノは養殖と味が違うんだろうな……早く食べてみたい…!」
食べればしなやかな筋肉と強靭な骨を得られると言われるレイククラーケンの天然モノが食べたくて仕方ないアカメちゃんの口端から、大量の涎がダバダバと溢れていく。
「だが伝承によれば普段水の底に潜っているレイククラーケンは美しい娘の前にしか姿を現わさないらしいぞ。そこはどうするんだナジェンダ?」
「ふっ、そんなの決まってるだろうスサノオ。美しい娘といえば…そう、私の出番だ!!」
「「「「(娘!!?)」」」」
この瞬間、スーさんと姐さん、そしてリネット兄さんとシュラの四人の心の声がシンクロした。
「(今自分の事娘って……)」
「(あ、あれ?ボスって確か僕らと同年代だったよね…?)」
「(明らかに娘って歳じゃねぇだろあの女……)」
それぞれが何か言いたげにしているが、女性に歳の話をすると自分の身に危険が及ぶとわかっているのか口にはしない様子。
そんな事は露知らず、ナジェンダさんは上着をかっこ良く脱ぎ捨てる。
しかし結果は前世と同じ。彼女に続く他の女性陣も自信たっぷりに水着姿を披露するが、レイククラーケンが現れる気配はない。
「いやぁ~、やっぱりみんな美人だから水着姿が眩しいねぇ~。見てるだけで目の保養になるよ」
「お前はほんとよく恥ずかし気もなくそういう台詞言えるよな。タツミを見習えよ」
ニヤけ面で水着姿のナイトレイド女子を眺めている兄さんに呆れる姐さん。
すると何故か巻き込まれたタツミが、なんで俺!?と驚く。まぁいつものようにそのリアクションの良さが原因だとは思うが。
その一方でレイククラーケンが現れない事によって屈辱を味わったナジェンダさんは悔しそうに戦慄き、
「くっ!こうなったら奥の手!最後はお前が行くんだラバ!」
「ひいいぃっ!!?や、やっぱりこうなるのかよぉ!?」
そんな予感はしていたけど、ナジェンダさんに指名されて半泣きになる。
「ラバ、そんなにイカが嫌いか?イカは旨いぞ?」
「いやそんな目で見られても困るよアカメちゃん……」
イカが好物のアカメちゃんが、イカが嫌いだなんてもったいない…と、心配というよりどこか残念そうに俺を見つめる。
あれ以降食卓に並ぶイカ料理すらも怖くなった俺の苦手意識は周知されているが、ナジェンダさん達はそれを克服させたいらしい。
姐さんとチェルシーちゃんは面白半分でやってるんだと思うけどさ、逆に悪化するとか考えないのかこの人達…!?
「……ねぇシュラ。僕今悩みがあるんだけどさ、聞いてくれる?」
「あ?なんだ急に?」
「ラバの水着姿でも出て来なかったら、僕はあの子の可愛さに気付いてくれないレイククラーケンに腹が立つ。でも出て来たら出て来たでそれはつまりラバの事を邪な目で見てるって事だから、どちらにせよ殺意が沸くんだけどこれはどう料理するのが一番良いと思う?」
「……なぁリネット、それ実は俺に言ってねぇか?遠回しに俺の事『殺す』って言ってるよなお前?俺に喧嘩売ってるよな?」
「なんの事かな?」
「シバくぞてめぇ」
兄さんとシュラのくそくだらねぇ会話は無視。俺は何も聞いてない。あんな奴ら他人だ他人。
しかしそれを他所に姐さんとチャルシーちゃんがこちらに来て、俺に上着を脱げと催促してくる。
「ほらほら、ラバも早く脱いじゃいなよ~!」
「いやあああぁ!!?チェルシーちゃんのエッチ~~!!」
もはや催促ではなく強制。逃げようにも姐さんに捕まって無理矢理脱がされてしまい、丈の短いキャミソールとショートパンツの露出控え目な水着が晒される。
「はー……もうちょい色気のあるやつにしろよお前」
「誰もてめぇの要望に応えてやるとは言ってねぇよ殺すぞ」
「大丈夫だよラバ!水着っていうのは色気が全てじゃない!十分可愛いよ!」
「そういう話じゃねぇからシスコンは黙ってろ」
「相変わらず仲が良いなぁ、あいつら」
「喧嘩する程仲が良いってやつだな」
「あれのどこが仲良いのよ……。あとボス、あれはラバが一方的にキレてるだけだから喧嘩すら成立してないと思うわよ」
俺ら兄妹とシュラのやり取りに何故か感心する姐さんとナジェンダさん。更にそれにツッコむマインちゃん。結局現れてくれないレイククラーケンにみんな飽きたのか、各々が自由に寛ぎ始めている。
しかしそんな中、まだ諦めていない勇士が二人いた。
「よし、スーさん、私が潜ってレイククラーケンを捕まえる。その間に調理の準備を…!!」
「了解だ。健闘を祈るぞ、アカメ」
健啖家のアカメちゃんと食に煩いスーさん。この二人は何が何でもレイククラーケンを捕らえ食すつもりだそうだ。
本当はタツミか兄さんを女装させて餌にすれば、前世の俺がそうさせられたように誘き寄せる事が可能なんじゃないかと思うが、あんな誰も特しない光景は俺も見たくないから最後まで黙っておく。
そして数分後。アカメちゃんは見事巨大なレイククラーケンを一人で捕獲し、スーさんと兄さんの手によって調理されたその危険種は俺以外のみんなが美味しく戴いた。
流石食欲旺盛な野性児ことアカメちゃん、あんなデカいイカをすぐにとっ捕まえて口いっぱいに頬張ってる。スーさん以外の全員が思わずドン引きしたよ……。
「……あれ?待てよ?アカメちゃんが一人で捕りに行けたなら、俺あン時女装しなくても良かったんじゃあ…?」
「前世で何があったんだよお前…?」
俺の絶望した表情にシュラが若干不安気に訊ねてきたが、ネタにされたくないのでなんでもないと適当に誤魔化した。
「おーいラバ!こっちおいでー!」
「ん?何姐さ……」
食後、満面の笑顔で手招きする姐さんに近寄ってみると、まだ残っていたレイククラーケンの足を投げ渡された。
「うぎゃあああぁーーーッ!!?」
ぬるぬるした気持ち悪い感触が、全身に纏わり付いたあの悪夢と重なり、あまりの恐ろしさに耐え切れずその足を放り投げる。
「無理ぃ!!キモいぃ!!お願いだからこっちに寄せないでくれええぇーーっ!!!」
うわあああぁ!!!とガチ泣きしながら絶叫してナジェンダさんの後ろへ隠れに行く。
突然の事態にナジェンダさんはぎょっとするが、すぐに状況を理解し俺を宥めようと頭を撫でる。
「レオーネ、あまりラバで遊んでやるな。荒治療するにしても、程々にしないと逆効果だぞ」
「いやぁ、まさかそこまでビビるとは思わなくて……ごめんな?」
「ううっ…イカだけはほんと無理だからぁ……!もう勘弁して下さいぃ…!」
「こんなに美味しいのに……」
すすり泣く俺の横でそう呟きながら、投げ捨てられたレイククラーケンの足をさりげなく食っていたのがアカメちゃんなのは言わずもがな。
だが俺は彼女と違ってイカを好きになる事は一生ないと思う。絶対に。
今日はナイトレイド女子の水着姿をまた拝めて嬉しかったけど、それ以上に俺はイカへの恐怖心で疲れ果ててしまったのだった。
アカメとチェルシーとスーさんが本編より先にこっちで登場してしまった…()
ラバ「しかも海の日ネタなのに海じゃなくて湖って……」(呆れ)
ぶっちゃけ言うとただあれのせいでイカがトラウマになってるよーってのと水着回を書きたかっただけですはい。女装ラバ子マジ可愛い((
どちゃシコいラバ子を提供してくれた公式に心から感謝…(遺言)