四次元ポケットを手に入れて異世界へ行ってきます! 作:TNKエース
ドルトコロニー後半
クーデリアは走っていた。クーデターを止めるためにただガムシャラに走っていた。
場所は知らない、時間も知らない。それでも彼女は走り続けた。
場所は変わって火星のノブリスの屋敷
汚いオッさんことノブリス・ゴルドンが自宅に設置しただだっ広いサウナの中でまったりとしていた。
『ノブリス様。ご報告が』
そうしていると、部下から報告が来る。
「うむ」
『はっきり言って非常にヤバイです』
「はっ?」
エージェントの報告に惚けるノブリス。
「GNトレーディング経由で渡すはずの武器が全部工業物資になっています」
「何だと!?」
ノブリスは立ち上がると、股間に回していたタオルが外れ、粗末なモノが露わになる。
「それにより、ギャラルホルンが突入しましたが証拠不十分でそのまま撤退、現在労働者達は武器を持たぬままデモを決行しようとしています」
ノブリスは焦っていた。このままではクーデリアを殺す事が出来ず、火星の混乱が……
「クソっ!役立たずの宇宙ネズミ供めが!!」
ノブリスは怒り心頭で、次の指示をエージェントに出そうとするが、
フラッ
急に目眩がし、床にひざまづく。
流石にサウナに入りすぎたか?と思うが目眩は更に酷くなる。
これ…は、どういう……事だ?
と思いながらノブリスの意識は途切れる。
その後、メイドが探しにきたが、ノブリス・ゴルドンは風呂場にて死亡していた。
後にギャラルホルンがやってきて検死をすると脱水症によるショック死と判断される。
火星最大の武器商人ノブリス・ゴルドンの呆気ない最期であった。
尚、彼に支援を受けていたテラ・リベリオニクスのアリウム・ギョウジャンは支援が無くなった事で運営が立ち行かなくなり、テラ・リベリオニクスは解散となり、
アリウム・ギョウジャンは一山いくらの個人的な活動家になってしまった。
閑話休題
彼が持っていた資産の大半は、彼の元部下達が血で血を洗うような抗争で奪い奪われ、残りは介入してきたギャラルホルンに接収される事になった。
そして、その影には小さなドララ〜と喋るロボットが居たとか居なかったとか?
閑話休題
クーデリアはデモ隊を見つけると、彼女は驚いた。
デモ隊は武器を持たずにプラカードやノボリを持ちながら行進し、先頭には作業用の軽トラックがデモ隊の前進に合わせるような速度でゆっくりと前進している。
クーデリアが呆然としているとデモ隊の一人が近づき、
「もしかして、クーデリアさんじゃありませんか?」
とクーデリアに聞いて来る。と
「え?マジ?」
「マジマジ。俺、火星のテレビ見たし」
「貴女がクーデリアさん?会えて光栄です!」
「何か一言お願いします!」
クーデリアの周りに何も知らない人の群れが集まっていく。
しかし、最初に近寄って来た男だけは、クーデリアから遠ざかっていく。
実はこの男、ノブリス・ゴルドンのエージェントの一人でクーデリア殺害のメンバーの一員だ。
最初はクーデリアがドルト2に向かわないのでどうするかを考えていたが、クーデリアがのこのこと此処に来てくれて万々歳である。
そうして、最後はスタコラサッサと逃げるだけなのだが、
ガシッ
「ねえ?何で逃げてるのさ?」
「えっ?」
何者か…三日月オーガスに腕を掴まれるエージェント、
エージェントは離せっ!と叫ぶが、三日月の手を振りほどけないエージェント。
そして集まる視線。
そうしていると突如、近くのダストボックスから煙が噴出しだす。
火事か?と思いながらみんなはダストボックスから離れていく。
そうしていると街のありとあらゆる場所から煙が吹き出していく。
煙を吸い込んでしまった人々は
「うっ、眠い」
「ギャラルホルン…か?」
次々と倒れていく民衆、三日月はエージェントの腕を離し、直ぐさまクーデリアとアトラの腕を掴んで「逃げるよ」と言い逃げ出していく。
そして其処には、民間のTV関係者も居てカメラはただ煙に隠れた街並みと倒れた民衆を写すだけだった。
ジャリっ!
すると其処に人影が写る。
「全く、コイツらも馬鹿だな。こんな事をしなければ死ぬ事も無かったのにれ
煙の所為で分かりづらいがどうやらギャラルホルンの制服を着ているのは何とか分かる。
「ああ、治安を守る。俺達ギャラルホルンに楯突いて、馬鹿な奴等だ」
そして、発砲音とマズルフラッシュ。
そして打撃音
カメラが映すのは、殴られるギャラルホルンの人間と鎧らしき物を来た人物。
殴られた後のギャラルホルンの人間は気絶したのか動かない。
鎧の男は走り出し打撃音が何度か鳴り響く。
そして、何度目か打撃音と供にカメラが大きな音を立てて画面が暗くなる。
それから暫くして、民衆とTV関係者は起き出した。
ある者は頭を振りながら、ある者は自分の上にいたギャラルホルンの人間を退かせながら
彼等は殴られて気絶しているギャラルホルンの人間を見てこう思った?
これはどういう事だ?と、
そして、ある者はこう言った。
「おい!コイツ!死んでるぞ!」
其処には胸を銃で撃たれて死んでいるノブリスのエージェントがいた。
「まさか!本社の奴ら!俺達を皆殺しにしようと!」
また、ある者は怒りを露わにする。
その言葉に、罪もない人間をも巻き込み虐殺しようとするギャラルホルンや本社にデモ隊に参加していた。参加していないに関わらず、民衆は怒りに任せて本社へと走り出した。
クーデリアはそれを見ているだけだった。
「……ひどい」
もしもギャラルホルンを殴って止めてくれた人物がいなければ、犠牲になる人々はもっと多かっただろう。
「クーデリア嬢!此処にいたのか!」
カイトとさくらがビルの屋上から降り立つ。
「カイトさん!」
「やっと見つかった。
それよりも早く逃げるぞ!」
「どういう事?」
「ああ、何をトチ狂ったのかギャラルホルンの駐留部隊が出撃しやがった。
多分、今回の失態を隠そうと殲滅して、最後に適当な人物をスケープゴートにしてお茶を濁そうとしているんだろう」
「そんな!」
「酷いよ!」
「ああ、クーデリア嬢。貴女はどうしたい?
このまま逃げるか?それとも戦うか?」
カイトの言葉にクーデリアは服の裾をギュッと握りしめる。
「…………戦います」
そして覚悟を決めて話す。
「了解した。さくらと三日月は二人を連れて先にムサシへ、俺はビスケットを拾って行く」
「分かった」
「うん。カイトも怪我しないでね」
三日月とさくらはクーデリアとアトラを連れて駆け出した。
それを見送ってカイトは「出て来ていいぞ」と言い。
それに伴い、二人の男が出てくる。
その二人はギャラルホルンの制服のズボンに普通のシャツを着込んでいた。
「怪我は大丈夫か?」
「問題ありませんよ」
「こっちもだ」
実はこの二人未来からライガットと供にやって来た元鉄華団の年少組エンビとトロウだ。
彼等も又、ライドと供に復讐の道を選んでいて、俺の命令により彼等はこのコロニーに潜伏しギャラルホルンの制服と装備を盗んで今回の茶番劇と情報収集をしてもらった。
無論茶番劇とは先程のギャラルホルンの虐殺シーンだ。
エージェントの排除とギャラルホルンの腐敗を知らしめる。そしてクーデリアに原作と同じような覚悟を決めてもらう為に今回の茶番劇を仕組んだのだ。
正に一石三鳥である。
「まあ、こんなものでいいか?モンターク」
カイトは顎をクイっと動かす。
「フッ、気が付いていたか」
道の影から長い銀髪と仮面の男が現れる。
「まあな、で、こんなもんで良いか?」
「ああ、私の予想通り……いや、それ以上の結果だ」
仮面の男…モンタークは両手を広げる。
「「が…」」
「ラスタル・エリオンなら」「あの男なら」
「駐留部隊を生贄にして今回の件を有耶無耶にしそうだがな」
「駐留部隊を犠牲にし、ギャラルホルン全体でなく一部の腐敗という事にするだろう」
カイトとモンタークは同じような答えを出す。
「フッ、ではこれを渡しておこう」
モンタークは一枚のデータディスクをカイトに投げ渡す。
「ありがとう」
カイトは礼を言い、ムサシへと足を進めた。
さて、コロニーの外ではギャラルホルンの艦艇がMSを順次出撃させている最中で、指揮官は、
「いいか!貴様等!直ぐさまクーデターと鉄華団を殲滅して、首謀者であるクーデリア・藍那・バーンスタインを捕まえろ!
良いか!このままでは我々は皆破滅なんだぞ!」
指揮官の言葉に、同じ様に不正行為をしている上級士官やお零れ貰っている士官連中は奮起するが、何も知らない士官や兵士たちの士気は低かった。
カイトの茶番は、ギャラルホルンの兵士たちの士気も下げていた。
そして攻撃が始まる。
グレイズの一機がドルト3のハッチへと取り付き、ハッチを開こうとすると、
ガンっ!
グレイズの頭部が何者かに破壊された。
頭部を破壊されたグレイズを見て、他のグレイズは周囲を警戒する。
そして僚機のグレイズの右腕が破壊される。
グレイズのパイロットは攻撃の方向から大体の位置を予想して見つけるが、彼は驚愕した。
その機体はグレイズ達のいるハッチは反対の艦艇用の格納庫の方から狙撃をしてきたのだ。
グレイズの望遠カメラで何とかMSが身の丈以上の大砲を構えているのがわかる程度である。
「何なんだ!?あの機体はぁ!!」
そして自分の機体も破壊された。
「凄え」
グシオンのコクピットの中で昭弘は呟いた。
此処から、敵のいる地点まで約30キロの距離を狙撃出来たのだ。
「機体の調子はどうかね?昭弘」
改造計画を施したDr.Jが機体の調子を聞いてきたので、
「最高だ!」
昭弘専用にカスタマイズされたガンダム・グシオンティターンは狙撃用の大型キャノンを構えて、狙撃を続行を続ける。
ティターンの外部取り付け式の情報収集システムと本体頭部に備え付けられた超長距離光学センサーと阿頼耶識システムの組み合わせは、カイトの想定を超えるほどの超長距離狙撃を可能としたのである。
狙撃を幾度も繰り返していくとキャノン砲が動かなくなる。
弾切れか?それとも武器の不調かは分からないが弾は出なくなったのは確かだ。
それを機と見たのか残っていたグレイズの内、多少損傷の有る機体はコロニーの内部へ、
無傷から損傷の少ない機体はグシオンティターンへと向かっていく。
昭弘は焦らずに武器を捨てて腰部から新たな装備を取り出した
それはウイングガンダムゼロカスタムのツインバスターライフルを実弾仕様に変えたような武装だ。
昭弘は二連装の銃を重ねると、その銃は連結し四連装のライフルと化した。
そして、その銃を左手に持ち、後ろ腰から新たな武器を取り出した。
それはハルバートだ。大ぶりだが取り回しの良さそうなハルバート。
グシオンはスラスターを噴かせグレイズへと向かって行く。
「うおおおおぉぉぉ!!」
昭弘は雄叫びをあげながら、四連装砲(クアッドキャノン)を乱射する。
放たれた四連装砲は一部のグレイズの機能を停止させるも、他の機体を近接戦闘可能領域まで近づけさせてしまう。
グレイズの一機はアックスを構え、グシオンに突撃する。
グシオンはハルバートでそれを受け止める。
そして、その隙を突いて損傷したグレイズがグシオンの左腕にしがみついた。
そして、3機目のグレイズがグシオンの頭部を破壊しようとアックスを振り下ろす。
普通ならこのまま頭部を破壊されて一巻の終わりだが、
この機体は色々と違った。
昭弘は焦ることもなく、背筋を意識しながら機体を動かす。
「何だとぉ!?」
グレイズの振り下ろしたアックスの一撃は
グシオンのバックパックから伸びる第三第四の腕に白刃どりされてしまう。
そして、左腕に絡みつくグレイズを力任せに振り投げ、頭上のグレイズへと投げ捨てた。
ドゴォ!!
投げられたグレイズは、巨大な質量兵器として己と相手をガラクタに変えた。
「セイル!?ラグナ!?」
「終わりだ!」
昭弘は最後に残ったグレイズをハルバートで両断する。
「次はどいつだぁ!」
昭弘は吠えながら次の敵を探し出す。
コロニーの物資輸送用の通路では激しい銃撃戦が行われていた。L字路の部分では3機のグレイズが隠れながら牽制射撃を繰り返し、その反対には3機のオニクスが大楯を持ちながら射撃を繰り返し、膠着していた。
「オラオラぁ!この先は行かせねぇぞ!」
専用にカスタマイズされたピンクのオニクス本人曰く、2代目流星号からはパイロットのノルバ・シノが雄叫びをあげながら遅延行動を行なっていた。
この通路は狭く、MS2機が並べば通れない程の狭さで、腕を上げれば腕が引っかかる程度の高さしかない。
この状況で近接戦闘は出来ないに等しく、それが両者共に分かっているからこその膠着状態であった。
さて、ドルト3の別方向からは九機……一個中隊のグレイズが別のハッチに向かって進行して……いた。
「やっぱり、コレ扱い辛い」
「そうか?慣れたら軽いけどな」
一個中隊のグレイズはカイトと三日月の手によって破壊されていた。
その殆どが、Δナノラミネートブレードの餌食と化していた。
カイトが斬ったのは綺麗な太刀筋だが、三日月が斬ったグレイズは所々が切れておらず半ばで止まっていた。
そんな二人が背中合わせに周囲を警戒していると、
ピー!
「新手だ!速いぞ!」
「分かってる!」
ルーラーとバルバトスは対MSライフルと迫撃砲を構えて発砲する。
「はっ!ムダだぁ!」
新たな敵はスラスターを噴かせ二つの弾丸を軽やかに避けていく。
「アイン! 向こうのガンダムフレームは任せたぞ!」
「了解しました!」
ガエリオが狩るガンダムフレーム。『ガンダム・キマリス』今まで使っていなかった脚部スラスターを展開し、着火する。
キマリスは更に加速する。
「ちぃっ!」
カイトはルーラーの機動力で回避するも、カウンターで攻撃をすることが出来なかった。
「(予想より、速いぞ!)」
ルーラーはライフルで牽制射撃を放つが、その弾は悉く外れてしまう。
「無駄なんだよ!宇宙ネズミがぁ!!」
「カイト?」
三日月は横からキマリスを叩こうとするが、
「ボードウィン特務三佐の邪魔はさせはしないぞ!」
アインが駆るシュヴェルベ・グレイズがカットする。
原作と違い。鉄華団に憎しみを抱いていないアインはガエリオがルーラーを倒すまで、自分の仕事をキッチリとこなす。
全ては、
「頼みます!ボードウィン特務三佐!クランク二尉の仇を!!」
ガエリオはキマリスならルーラーを倒せると確信した。
相手はギリギリで回避はしているものの、攻撃は出来ない。このままジワジワと嬲って、スラスターが切れたところを
と、ガエリオは考えていた。
そして、ルーラーはスラスターを噴かせ回避をしていたが、遂にガスが切れたのか、
スラスターは止まってしまった。
「はっ!遂にガスが切れたか!」
ガエリオはルーラーだけは後々のギャラルホルンの為に使えると思い。
コクピットだけを潰そうと正面から攻撃を仕掛けようと距離を取る。
「コレで終わりだぁ!!」
最後の一撃を吶喊した。
このままではカイトはキマリスのランスに貫かれて死んでしまう。
「カイト!」
「させはしないと、言ったはずだぁ!」
三日月はそれを防ごうと動こうとするが、アインのシュヴェルベ・グレイズのワイヤーに機体を拘束されてしまう。
最早、絶体絶命。
だが、カイトは焦ってはいなかった。
唯、チャンスを狙っていた。
そして、そのチャンスを物にする。
ルーラーはガスが切れたのでは無い。
ガスが切れたふりをしたのだ。
タイミングを計り、カイトはキマリスのランスが当たる数秒前にスラスターを僅かに吹かし、半歩程横に動き回転する。
「何だとぉ!?」
そしてルーラーはキマリスのランスを握る右腕を切り裂いた。
そして、二機はぶつかり合った。
カイトの誤算はガスの残りが本当に少なく、僅かに移動距離が少ない事だった。
そして両機共にぶつかった衝撃で計器の一部が損傷し、飛び散った破片がガエリオのヘルメットのバイザーを壊し、ガエリオの額に裂傷を与えてしまう。
カイトも方も破損した計器の破片が飛び散り、カイトの左腕の肉を深めに切り裂いた。
「カイト、無事?」
「痛ぇ」
カイトは負傷した左腕に応急処置を施すも慣れていないせいで、上手くいかない。
「三日月。
こっちはガスが切れた上に計器が故障した。
悪いがムサシまで連れて行ってくれ」
「分かった」
ガエリオも額を負傷し血で目が見えないのでアインに連れられて自分の船へと帰還する。
ムサシへと着艦したバルバトスとルーラー。
「済まない!アストナージさん!急いで修理を頼みます!」
「ああ!みんな!急いで補給と修理をするんだ!コクピットはブロック毎交換して」
「「「「了解です!!」」」」
元ヒューマンデブリの子供達がルーラーに取り付き、コクピットブロック毎交換していく。
次いで、ガスの補給とライフルも新しいのに交換していく。
そうしていると、反対側の格納庫からはローテーションでνガンダムとザク達が出撃していく。
どうやら昭弘もイサリビに着艦したようだ。
最初に取り決めをしていた様に、ローテーションで出撃と補給を繰り返し対処する考えだ。
カイトは医務室に向かい。船医のテリシラ・ヘルフィの治療を受けていた。
そして治療中に
『皆さん。この様な方法で失礼致します』
「始まったか」
『私はクーデリア・藍那・バーンスタイン』
急に映りだした映像に抗議デモをしていた住人と、デモ隊によって生ゴミを投げられるも、武器を持っていないので攻撃の出来ないギャラルホルンの兵士がTVを見た。
そして、それは駐留艦隊にも流れる。
「一体どこから流れているんだ!?」
旗艦のハーフビーク級に乗る司令官は発信源の特定と映像の遮断を命じるも、
「…発信源は……我が艦?………いえ、隣のビスコー級?アリアドネ!?次々に変わっていきます!!」
「映像の遮断も出来ません!完全に通信システムを乗っ取られています!」
オペレーターの返事に苛立ち、手すりをドンっ!と叩いてしまう。
『皆さんにお伝えします。
宇宙の片隅、ドルトコロニーで起きている事、
そこに生きる人々の真実を』
誰もがクーデリアの言葉に耳を傾ける。
『私は生まれ育った火星の人々を救いたいと願い行動してきました…』
デモ隊も関係のない市民も、働いていた労働者も、ギャラルホルンの兵士も、
『けれど、あまりに無知だった』
そしてそれは地球圏にすむ人々にも届いていた。
ある者はヴィーンゴールヴで、ある者はオセアニア連邦の所有する島で、ある者は職場で
『ギャラルホルンの支配に苦しむ人々は、宇宙の各地に存在していたのです』
『私はドルトで自分達の未来を切り開くべく。
現状に立ち向かおとする人々に出会いました』
ムサシの医務室でフミタンは焦りとも、心配とも言えない顔で「お嬢様」と呟く。
『彼等はデモを行いました。
それはあくまで、会社とギャラルホルンとの対話を求めてのもの
武器の一つも持つ事は無かったのです』
『彼等が行動を起こした際、まるで示し合わせたかのように、付近で睡眠ガスが発生し、
それをきっかけにギャラルホルンの兵士たちが市民の殺害を始めました。
もしも、ギャラルホルンの兵士たちを殴ってでも止めた方がいなければ、より多くの犠牲者を出していたでしょう』
クーデリアの言葉に耳を傾けるグレイズのパイロット。
『そして、私の船はギャラルホルンの艦隊に囲まれています。
ギャラルホルンに私は問いたい。
あなた方は正義を守る存在なのでは!?』
オルガ達が冷や汗混じりで迎撃と指示を出していく。
「それがあなた方の言う正義だというのなら、
構いません」
『今すぐ、私の船を撃ち落としなさい!!』
その言葉にグレイズに乗っていたパイロットは近くにいた同僚と共に武器を捨て、投降の意を示す。
『私は、市民を守る為に軍人になったのだ。
彼女はそれを思い出させてくれた』
『そうですね。隊長』
『ええ』
残っていたグレイズは次々と武装解除していく。
『これは私の判断で諸君らに命令を下したのだ。故に責任は全て私に有る!』
隊長はコクピット内で部下達に迷惑がかからないように、宣言する。
『隊長。そう言うのは言わなくていいですよ』
『俺達は隊長の部下です。
責任は皆で分かち合いましょう』
『皆……』
隊長はヘルメットの中で涙を漏らし、それを拭う。
『ああ…そうか……だったら………このまま殺してやるよ!』
はっ!と隊長が後ろを向くと同時に、隊長のグレイズは砲撃を受けてしまう。
「ぐぅっ!」
隊長は砲撃を受けるもナノラミネートアーマーで無事だった。
だが、
ドンっ!ドンっ!ドドドンっ!!
一斉砲撃を受け、隊長のグレイズはコクピットを潰されてしまい、隊長は死んでしまった。
『た……隊長ぉ〜〜〜!!!』
隊員達はキッ!と隊長を殺した下手人を睨む。
隊長を殺した下手人は……
「何でだ?何で隊長を殺したぁ〜〜〜〜!!」
味方の船であった。
旗艦のハーフビーク級では司令官が火器管制の席に座り、味方のグレイズを攻撃していた。
周りには物言わぬ死体と化した部下達が倒れており、扉からはドンドンと扉を叩く音と罵声の声が聞こえてくる。
司令官は自分は破滅だと確信していた。
ブリッジにいた部下が全て裏切り、自分に銃を突きつけてきた。
腹心の部下もお前のせいだ。と言ってきて、司令官は心の中でふざけるな!お前も甘い汁を吸ってきただろう!と叫んだ。
そして、彼は己の身の破滅を確信し、凶行に走った。
持っていた拳銃で部下を皆殺しにして艦内のコントロールを支配してブリッジの扉を閉めた。
そして彼が考えたのは死なば諸共。
自分だけで死んでたまるか。
彼を突き動かすのは唯、それだけだった。
先ずは自分を裏切った部下を殺して、次にドルトコロニーを、最後にこのような目にあわせたクーデリアを殺そうと司令官は戦力的に出来もしない事を考える。
最早彼の頭には正気と呼ばれるモノはなかった。
そして、ドルトコロニーに照準を定めようとすると爆発が起きる。
だが、彼には関係なかった。
一発、一発だけ当てればコロニーに住む住人を殺せるのだ。
そんな彼の心を無視するかのように爆発は続いていく。
そして最後にはブリッジに砲撃が当たり、司令官は死亡した。
自分の機体の中でライガットは敵を見ていた。
味方を殺し、コロニーへと砲を向けていた敵戦艦の砲塔を破壊して降伏を促そうとするも別方向から放たれた無数の砲撃に敵戦艦は爆発してしまった。
ライガットすぐさま砲撃の来た方向へ視線を向ける。
そこには多数の艦艇が並んでいた。
彼はそれを知っていた。
憎むべき、そう。無実のタービンズの面々を殺し、仲間を殺し、三日月と昭弘をも殺した部隊。
「アリアン・ロッド!」
ライガットは歯を嚙み鳴らしそうな程噛みしめる。
その瞳には怒りと憎悪の色が入り混じっていた。
アリアンロッド旗艦スキップジャック級のブリッジでアリアンロッドの総司令ラスタル・エリオンはやや不満気に椅子に座っていた。
そもそも今回の一件はギャラルホルンの、そしてアリアンロッドの強さと正しさを証明する……筈だったのだが、
これでは精々、組織の内部腐敗の粛清をした程度である。
これではスポンサーのアフリカンユニオンからの更なる資金援助も難しい。
只でさえ多数の艦隊の建造・維持は金がかかる。
更には現在開発中の新型機にかかる費用。
艦隊の部下の給料や経費などで意外とアリアンロッドの自由に扱える金は少ないのだ。
だからこそ彼に頼み、様々な火種を用意してそれをアリアンロッドが消すというマッチポンプを繰り返したのだ。
只でさえ事故で、友人であり部下のダイゼン・クジャン准将が死亡したのだ。
お陰でまだ二十歳そこそこのイオクを僅か半年の訓練で軍人として参加させなければならなくなったのだ。
本来なら大学を卒業した後で二年間みっちりと鍛えなければならなかったのに、
ラスタルは軽く頭を振ると、現在の事を考える。現在クーデリアを捕まえるなり殺すなりをすれば、今回の件で名を挙げたクーデリアを何故捕まえたのか?と世間からのパッシングされるのは間違いない。
ここは、
「オペレーター、彼等の船に通信を送れ
内容は民間のご協力感謝する。だ」
「はっ!」
自分にとって彼等は敵ではない。たかが一民兵組織の一つや二つ程度で、
ギャラルホルンを揺るがすなど不可能たからだ。
ラスタルの頭にあるのはギャラルホルンの存続と地球圏の平和。それが維持できるのであれば多少の犠牲も厭わなかった。
カイトは左腕に包帯を巻いたまま上着を引っ掛けてブリッジに向かう。
「ブライト艦長。アリアンロッドの様子は?」
「どうやら、向こうは此方と戦うつもりはないようだ」
ブライトはカイトに送られてきた電文を見せる。
「『民間のご協力感謝する』か
こちらの事は敵にしていないようだな」
カイトはため息を一つすると
「まあ、今回の一件はこれで終わりだ。
艦長。第2種警戒態勢で皆を休ませてくれ」
「ああ」
カイトはブリッジを後にする。
最後の仕事が残っているから、
フミタンはムサシの医務室からイサリビの自室へと戻されていた。
彼女はカイトの掌で踊らされていた。
カイトは自分がノブリス・ゴルドンのスパイだとしっており、クーデリアと分断する為に今回の風邪騒ぎを起こしたのだ。
これから自分はどうなるのだろうか?
よくてドルトコロニーで追放。最悪殺される事も考えてしまう。
コンコンっ
「……はい」
扉を開くとカイトが入ってきた。
「フミタン・アドモス。
貴女はクーデリア・藍那・バーンスタインのメイドであり、そしてノブリス・ゴルドンのエージェントであることは認めますか?」
「……はい」
フミタンは粛々として答える。
「我々は軍でも警察でもないのでね。
貴女を裁くことは出来ない。
だから……」
後ろから人影が見える。
「……フミタン」
「お嬢……様」
「後は二人で話し合ってくれ」
カイトはドアを閉める。
「お嬢様。私は……」
フミタンは何を言っていいのかわからなかった。
ギュッ
だが、クーデリアはフミタンを優しく抱きしめる。
「お嬢……様?」
「いいの、フミタン。話はカイトさんから聞いたわ。
貴女が私の支援者のノブリス・ゴルドンの手先だって、
最初は信じられなかったわ。だって貴女が裏切っていただなんて……」
「彼の言った事は本当です……私は貴女を……」
殺す為にここまで来た。
最後の言葉をフミタンは紡げなかった。
それを言ってしまえば、何かが終わってしまいそうだから、
「いいの。フミタン
私は貴女を許すわ」
クーデリアの声は優しかった。
「お嬢……様……
申し訳々……申し訳ございませんでした……」
クーデリアの優しさにフミタンは涙を流しながら謝る。
「ええ」
そしてクーデリアも涙を流す。
二人は泣きながら抱きしめあっていく。
カイトはそれを盗み聞きしていたが、雨降って地固まったと思い去っていく。
そして最後にドルトコロニー編完ってところかと呟いて
あっ、最後の仕上げしとかないと、言いながら
オマケ
翌日、イサリビのブリッジでは何事も無かったかのようにフミタンが通信士をしていた。
ただ、その瞳は少しばかり赤くなってはいたが、
「あ〜その、なんだ?大丈夫か?」
オルガはカイトから話の発端を聞いてはいたが、どうにもフミタンの事を信じきれなかった。
「はい。大丈夫です」
ニコリ
とフミタンが優しく微笑むとオルガは顔面が紅くなり、胸の鼓動が高鳴るのを感じた。
「あっ…ああ、大丈夫なら良いんだ
じゃ…じゃあな」
オルガはそう言いながらそそくさとブリッジから去っていく。
オマケのオマケ
「最近、フミタンの視線が厳しいんだけど、なんでだろ?」
因みに、アリアンロッドの懐事情やイオク関連は自己設定です。
だって肉おじさん清濁の人物であっても悪い人間ではなさそうだからね。
では感想の類、お待ちしてます。
グシオン・ティターンの設定書いときました。