四次元ポケットを手に入れて異世界へ行ってきます! 作:TNKエース
決戦前夜
「この愚か者がぁ!!」
バギィ!
イオクの顔を見ると同時に、人目をはばからずに叫びながらラスタルはイオクに殴り飛ばす。
「ぐぼぁ!!」
イオクは奇声を発しながら宙へと飛んでいく。
「イオク様ぁ〜!!」
イオクの部下はイオクに近寄り、
「何故です?イオク様はラスタル様の為に……」
部下はイオクを抱きかかえながらラスタルを睨む。
「そのイオクがアリアンロッド艦隊の運命を最悪にしたからだ!!」
ラスタルは普段の佇まいを捨て去りながら叫ぶ。
「そのバカを営倉に閉じ込めておけ!!」
流石のラスタルもイオクに愛想が尽き、イオクを部屋から叩き出した。
そして執務室の秘密通信でマクギリスを呼び出せないか……と試すと、
『災難でしたな。エリオン公……いえ、ラスタル・エリオン』
「その様子だとセブンスターズでの席は最早無いか……」
『ええ、イオク・クジャンがヴィーンゴルヴへ襲撃をかけた影響でそれなりの数の死傷者が出ました。
最早アリアンロッド艦隊はギャラルホルンの癌と叫ぶ市民や兵士も多い』
「仕方あるまい……マクギリス……いや、マクギリス・モンターク最高責任者。どうか私の首一つで部下達の罪は罷免ほしい」
ラスタルは頭を下げる。
『分かりました。ですが、返答は少しお待ちを……』
「分かった。マクギリス……君にギャラルホルンの未来を託す……頼んだぞ……」
そう言ってラスタルは通信を切り、ヴィタールとジュリエッタを呼び出した。
「なぁ、カイト……」
「なんだ?ライ」
カイトとライガットは向かい合わせでカレーを食べながら話をしていた。
「なんで、こうなってんだ?」
「知らんがな」
ライガットはテレビを指差してイオクがラスタルを攫うニュースを示すが、カイトは知らんと言う。
「まあ、これでアイツらも終わりだな」
ライガットはフッと笑う。
「まあ、世論は完璧にライガットの世界の鉄華団並みにアリアンロッド艦隊を犯罪者扱いしてるしな……」
そう言ってカイトはカレーを頬張る。
「さて、これが終われば鉄華団の将来は大体安泰だ。
三日月の容体も前回よりかはまともな生活を送れるレベルだ」
「ああ、感謝してるよ。カイト」
現時点では悪となったアリアンロッド艦隊を正義のマクギリス派閥(セブンスターズの内4家が賛同)の内乱で鉄華団の名はての字も無い。
これでもしも鉄華団を悪呼ばわりすれば単なる名誉毀損である。
「そういや、この内乱が終わったらどうするんだ?」
「何がだ?」
ライガットのふとした疑問に、カイトは何の事か聞く。
「いや、内乱終わったら、もう鉄華団を救う為に設立したマーチウインドはどうするんだよ?」
「ああ、それかそれならクーデリア、オルガ、mr.マクワードと既に草案が出来ている」
「いつのまに!?
………で、草案って?」
カイトは四次元ポケットからタブレットを取り出し、
「基本はお前の世界通りに火星経済圏の独立を目指し、マーチウインドは解体して鉄華団の一部と共に火星連合軍を設立。その総司令官はオルガ・イツカ」
「おお……」
「で、テイワズには火星連合軍の兵站を担当してもらう。これにはタービンズが関係する」
「おお!」
思っていたよりも良い未来にライガットは感嘆の声を上げる。
「これの完遂こそ鉄血のオルフェンズ終了である。
俺も頑張ったぞ。あっちでレギンレイズ・ジュリアを盗んだり、バエルを盗んだり」
そう、カイトは原作の世界でコクピットブロックを取り除かれたバエルを盗んでいた。
そしてそれをベースにルーラー達、ネオガンダム・フレームを作り上げ、その廉価版のオニクス・フレームを作り上げオニクスシリーズを作り上げた。
そして、先日のテロ事件の様にマクギリスにもしもの時が有った時の為に、バエルとカイトが改造したバエル改をバエル宮殿から交換しておいたのだ。
それが功を成してマクギリスは生き残った。
「さてと、そろそろ行くわ。機体の調整がまだ残ってるんでな」
「ああ、分かった」
そう言ってカイトは食器を下げに行った。
そしてアリアンロッド艦隊の本拠地である衛星基地ノートゥングでは基地内部で働く民間人達が荷物片手にノートゥングから逃げ出そうとシャトル乗り場へと殺到していた。
そして、その中には私服姿のジュリエッタとヴィタール……いや、仮面を外したガエリオの姿もあった。
「ヴィタール……私は……私はこれで良かったのでしょうか?」
「さあな、アリアンロッド艦隊の威光は既に地に落ち、最早沈みかけた船だ。
それは目の前の現状が教えてくれている」
二人の目の前には我先にと輸送船へ乗り込もうとする人々があった。
「正規の軍人では無い君とボードウィン家の俺が此処に居ては色々とマズイからな……ラスタルが逃す理由も分かる……」
そう言いガエリオ達は逃げ出す人々と共にキマリスが入った輸送船へと乗り込んでいった。
その翌日シャトルに乗り込みガエリオはアリアンロッド批判のニュースを何気なく見ていた。
しかし、ふと画面が乱れるとニュースの内容が一変した。
「何っ?」
『ギャラルホルンのモンターク代表はアリアンロッド艦隊司令ラスタル・エリオン元大将に降伏勧告を繰り返すも、ラスタル・エリオン元大将はこれを拒否。
ノートゥングでは日々逃げ出す市民からアリアンロッドの兵士の非道さを語り……
つい先日、モンターク代表はラスタル・エリオンを討つ為に艦隊を派遣する事を決議しました。
討伐軍司令官はマクギリス・モンターク代表自身が務めるとのことです』
「なっ?」
ガエリオは驚愕する。単なる批判のニュースから急に討伐軍が出撃するレベルに変わってしまったのだ。
「何が?一体どうなっている?」
周りの人々も頭を傾げるが多くがラスタル・エリオンと関わりの無い(組織のトップと関わりのない人々)彼等は緊急特番かな?と思い気にしないことにした。
そして僅かに船が揺れる。
なんだなんだと窓を見る人々、ガエリオも見るとそこにはハーフビーク級が輸送船と並走していた。
『我々は民間軍事警備企業マーチウインドです。
ギャラルホルンのモンターク代表からの依頼でこの船の臨検を実行させて頂きます。
船内にいる皆様は身分証明書をご用意してお待ちしてください』
簡潔な通信に市民は不満な顔をするが渋々と身分証明書を用意していく。
中には「知るか!」と言わんばかりに不機嫌な人物も居て、ガエリオとジュリエッタは冷や汗をかいていた。
「不味いですよヴィタール」
ジュリエッタの言葉に頷くガエリオ。
何せ、ジュリエッタはアリアンロッド艦隊所属のIDを持ち、ガエリオに関してはボードウィン家としてのIDを持っていた。
つまりは此処でバレたら面倒な事になる。
「仕方あるまい……」
ガエリオはジュリエッタを連れ客室から消えていく。
マーチウインドの臨検は艦長と多少の諍いもあったが、マクギリスの直筆サインを見せ、本部に確認させると渋々ながらも納得し、臨検を開始する。
民間人の中には拒否する者も居たが、後に問題になりますよと言い、具体例を挙げるとIDを確認をさせた。
そしてしばらくして半分以上のIDの確認を終えると、
ドォン!と輸送船が揺れる。
彼等や輸送船の民間人達はなんだなんだと思いながら外を見ると、見慣れぬMS、ガンダム・ヴィタールが輸送船の装甲を突き破り輸送船から逃げ出す。
マーチウインドの面々はヴィタールを追わずに輸送船の安全を確保する事を優先させた。
逃げたガエリオは近場のアリアドネを探し当てノートゥングへと通信を送る。
『どうした?ヴィタール。何か不都合でも有ったのか?』
「ああ、とてつもない不具合がな……」
ガエリオはラスタルに先程の経緯を話す。
『一体どういうことだ?』
「分からない。しかし……俺はあの男、柊カイトが何かをしたと考えている……」
ガエリオの推測は当たっていた。
カイトはラスタル・エリオンをそれなりに評価していた。しかし……イオク・クジャンを重要視し、鉄華団を壊滅させた。
状況的にああするのは分かる。
しかし、オルガが降伏した時に受け入れてさえいれば……三日月も昭弘も死ななかったのだ。
私怨と言えば私怨。ただアニメを見ていれば気に入らない程度だが……カイトは介入してオルガ達と出会ってしまった。
そしてカイトは最後の優しさとして逃げ道を用意したがイオクによってそれは破られた。
最早容赦は不要。原作でラスタルがやった事をカイトはやり返した。
無論ラスタルはそんな事は知らないし知る余地もない。
兎にも角にもガエリオはノートゥングへと向かい、対策を練る事にした。
「で……全ては君の思いのままかな?カイト」
「ああ、たわけの後の行為はな……」
俺はマクギリスとコーヒーを飲みながら話をしていた。
この後の戦いの為に……
アリアンロッド艦隊壊滅作戦。
それは原作の鉄華団殲滅作戦の応用でラスタルとマクギリス以外の通信をシャットアウトしニュース関連はこちらで用意した偽の物を使用。
これによりノートゥングにいる兵士達は何も知らずにラスタルの指示を待つだけだった。
そしてガエリオ……政治的な理由からアリアンロッド艦隊を消え去ろうとすると、その船をマーチウインドが保有する元黄金のジャスレイ号を駆る面々アンドロイド部隊と元CGS一軍で倒されても特に痛くも痒くも無い面々を送り込み、俺を憎むガエリオが怒り狂い、正式な書類を持つマーチウインドの兵士を殺害すればマーチウインドがアリアンロッド艦隊と戦う理由は十二分にある。
「まっ、最後の最後は予想外だが……想定内のことだ。
既に鉄華団もマーチウインドも既に地球圏まで来ている」
「ほう……彼等もか?」
マクギリスと鉄華団の関係は原作程太くはない。
「ああ、大舞台の為に改修も終わっている」
マクギリスは頼もしいな……と呟いた。
「まっ、俺達はいざという時の後詰だ。基本はギャラルホルン内部で収めてくれ」
「ああ、分かっている」
俺たちはそう言ってコーヒーを一気に飲み干した。