四次元ポケットを手に入れて異世界へ行ってきます! 作:TNKエース
FATE/ZERO 救われる者と救えない者(中編2)
何故だ?どうしてこうなった?
街の裏路地で遠坂時臣は息絶え絶えの状態であった。
200年続いた屋敷は燃やされ、先祖や自分が集めた価値ある魔導書や霊媒といった物や土地の権利書等の資産が燃やされ、挙句には自分のサーヴァントであるギルガメッシュは契約を解消して此方へと攻撃してきた。
どうしてこうなったのだ?
早く息を整え教会へ逃げないと……
そう考えながら時臣は歩き出す。
その翌日、
「此処か?」
ケイネスは大聖杯に通じる洞窟を見つけた。
ホテルのロビーでホテルマンに渡された書類には大聖杯の詳しい場所や資料、それに調査後の会談場所が書かれていた。
「では、ランサー。私は大聖杯とやらの調査に移る。
貴様は此処で待機して他の者が入ってこない様にしろ」
「……畏まりました」
ランサーは僅かに不満顔だ。
「案ずるな、私には月霊髄液にコートに仕込んだ108の魔術防御、そして9代に渡って伝承し続けた魔術回路。アサシン程度ならそう遅れは取らん」
「ですが……」
「奴の資料にも有った通り、汚染されていた場合。サーヴァントの汚染。オルタ化とやらで貴様はバーサーカーに等しい存在になってしまう可能性も0では無い」
ディルムットは黙り、ケイネスは洞窟の中へと進んでいく。
「こ……これは!!」
ケイネスが見たのは闇の様な黒く染まった何かだった。
「彼奴の言っていた事は本当のことだった様だな……」
流石のケイネスも本格的な調査をするならば一度本国へと戻り十分な機材と人員を集める必要が有った。
ケイネスは大聖杯から去り、ホテルへと戻って行った。
時計塔と自宅に連絡する為に、
「あぁ、クソぉ、何でこうなってんだよぉ」
ウェイバーは自室にて項垂れていた。
ケイネスの荷物からイスカンダルの触媒を無断拝借してケイネスを見返してやろうとしただけなのに……
「坊主、そうクヨクヨするな。
成せばなる!とこの国にはこの様な言葉もあるぞ」
「それは行き当たりばったりって言うんだよぉ!」
昨夜の内にライダーに無理矢理連れて行かれてしまい、大聖杯の汚染を知ったウェイバー、
しかしながら、彼にはどうする事もできなかった。
後のエルメロイ2世ならともかく、今の彼には能力もコネも無かった。
「ハッハッハッそうとも言うな」
ライダーの笑い声が響き渡る。
アインツベルンの城にて、切嗣とアイリ、舞弥はこの後どうしようかと話していた。
「切嗣。彼から送られてきた資料と確認してきた情報を考慮すると……事実の様です」
「……そうか……」
舞弥の報告に切嗣は平坦に答えた。
一通り見通した資料に記された一文を見る。
【汚染された大聖杯とリンクしている願望機の小聖杯の機能は破損、もしくは願いをねじ曲げて叶える可能性が高い】と、
「まいったな……」
世界平和を願って人類が滅亡では笑う気にもなれない。
切嗣はタバコに火をつけ紫煙を吐き出した。
「アイリ、アハトからの返事は?」
「ダメね。そんな事実は無い。早く聖杯を手に入れろの一点張りよ」
切嗣はアハトの返事にクククと笑ってしまう。
「切嗣、大丈夫?」
「ああ、決心がついたよ……僕の目的は砕かれた。
だったら、イリヤを救って四人で平和に暮らしていこう……」
「切嗣……」
度重なるショックに、僅かながら……極々僅かながら切嗣は壊れた。
最早機械のフリをした人間はいない。
此処にいるのは夢に敗れてくたびれた中年男性だった。
そして、尚もハブられているセイバー、
その一方で、火星
カイトは柊商会会頭室にて仕事をしていた。
「この書類は鉄華財団に回してくれ」
パソコンを操作しながら達郎に指示を出していくカイト、一通り終えたので軽く背を伸ばすと私用の携帯に電話がかかる。
「おっ、三日月か…どうした?」
カイトは三日月の話を聞いていると、
「マジか……とりあえず、暫くはアトラに激しい運動はさせるなよ。
それと、妊娠初期は悪阻って言う状況になるからな、詳しくはアミダやさくらに聞いてこい」
そう言って電話を切る。
「暁が出来るか……
この世界では両親……三人の親に囲まれて暮らしていけるか……」
カイトは軽く微笑むと、
仕事仕事と呟きながら仕事に戻った。
「ん……」
遠坂桜は目を覚ますと、遠坂の家でも禅譲の家でも、虫蔵でも無い天井を見た。
「あら、目が覚めたのね」
声がした方を見る。
「えっと……」
以前見た人だ。確か、あの時のおじさんと一緒にいた……
「アサギよ。井河アサギ」
「アサギ……さん」
と、言うことは此処は……
「此処は冬木市から遠く離れたところよ」
その言葉に桜はホッとする。
これであの家族と言う名の他人達と関わらなくて済むと、
「お腹すいたでしょ。ご飯食べにいきましょう」
アサギは桜に手を差し伸ばす。
「……うん」
桜もアサギの手を取った。
深夜0時
ウェイバーとケイネス、アイリと切嗣とセイバーは指定されたポイントにいた。
場所はアインツベルンの森の入り口。
和気藹々とはいかないもののこの場で襲い掛かろうとしようとする者は居なかった。
切嗣はタバコに火をつけようとすると、風が吹いた。
切嗣達は急いで空を見渡すと、
「なっ?」
「えっ?」
「何だよ。アレは?スターウォーズ?」
「ハハっ、もう笑うしか無いな」
誰もが驚愕する。
以前のステルスヘリかと思えば宇宙戦艦が現れたのだ。
戦艦からステルスヘリが降りてきて扉が開く。
中には誰も居なかった。
そのヘリに切嗣はまさか無人制御?と考え、ケイネスは魔術的要素のないヘリに恐れを抱いた。
ヘリに乗り込むとドアが閉まり、浮上する。
深夜の街を眺めながら戦艦の中に入り込むと、
「ようこそ。皆さん。
俺の船へ」
カイトが現れ、奥へと着いてくるように促す。
連れてこられたのは円卓に椅子だけのシンプルな……いや、部屋の隅にコーヒーメーカーとカップの入ったメタルラックが有った。
各々は席に座ると、
「席が多くは無いかね?」
ケイネスは軽く席を見渡すと椅子がウェイバーの隣に大きめの椅子が一つ。自分の隣に一つ。
余った所に三つと席が有る。
「ああ、それはそちらのサーヴァントの分の席だ」
「ああ、やっぱり…」
ウェイバーは大きめの椅子を見てライダー用と思っていたのが当たった。
「ふむ、中々気が効くの……」
「感謝はする。しかし、私は主人の後ろに立たせてもらう」
サーヴァント達もランサーを残して座る。
そしてカイトはコーヒーメーカーからコーヒーを人数分用意し、渡す。
「………美味いっ!!」
コーヒーを渡されたライダーは只々美味いの一言しか言えなかった。
それを見た切嗣は恐る恐るコーヒーを飲む、
「……これは美味い」
インスタントコーヒーや缶コーヒー専門の切嗣だが、
このコーヒーの美味さには驚いた。
「此方のコーヒー、豆はブラジルのサントスをベースに幾つかの豆をブレンドしている」
他の面々もコーヒーを飲むと感嘆の息が出てきた。
「それでは、本題に入ろう……」
空気が変わる。
「俺の名は柊カイト。
此処とは違う世界からやって来た」
ケイネスは巫山戯るなと叫びたかったが……この船やヘリを見たらそうは言えなかった。
「ほぉ、違う世界か……どうだ。御主、我輩と「言っとくが、俺は覇道とかにはあんまし興味がない」……そうか」
「話を戻そう。
俺は世界を渡る前にデータを蒐集するようにしている。
そして、この街が貴方達の行った聖杯戦争にて多くの犠牲が出る」
カイトの言葉にウェイバーは己のサーヴァントを見る。
「先日の倉庫の破壊、最低でも日本円換算にて500万以上の損害が出ている。
しかし、この程度は序の口だ。
本来の歴史……俺が関わらなかった場合、キャスタージル・ドレェによって多くの少年少女が殺害され、戦闘機が二機破壊されてしまう。
更に衛宮切嗣が仕掛けた爆弾により冬木ハイアットホテルが爆破」
カイトの発言にケイネスは、
「貴様ぁ!魔術師としての誇りはないのか!?」
「………」
ケイネスの憤怒に切嗣は終始無言だ。
「落ち着け」
カイトの言葉にケイネスは怒りを収めようとする。
「けどさ、何でそんな事を知ってるんだ?
データを取ったって言っても、本来の歴史だとか……」
そこにウェイバーが疑問を問いかけた。
「ふむ、その疑問も当然だな」
カイトは軽く息を吸い、
「俺はある程度だが未来を見る事が出来る。
故に本来の歴史なら衛宮切嗣とウェイバー・ベルベット、言峰綺礼以外のマスター、及びケイネスの婚約者ソラウ氏が死亡している。
そして汚染された聖杯から噴出した泥が多くの人の命を奪う事も……な」
ゴクリと誰がが唾を飲み込む。
「故に俺は犠牲を可能な限り減らそうと間桐雁夜と遠坂時臣に接触した。
が……あの男があそこ迄糞とは思わなかった。
故に、魔術の研究者として一流のケイネス・エルメロイ・アーチボルト。貴方に接触をしたのだ」
「ほう、それで……貴様は何をしてくれるのだ?
まさか、魔術師相手に対価も用意せず……【バサバサバサ】む?何だね、それは?」
ケイネスの言葉を遮るように出したのは古い書物の束、
「間桐の家を焼く前に雁夜に接収してもらっていた間桐の秘蔵の書……主にサーヴァント関連の部分を書いた物だ。
俺には無用の長物だが、時計塔ならプレミア物だろう……」
「確かに……それなら対価としては十分過ぎる程だ」
「では、それを報酬として渡そう」
スッ
と、カイトは書物の束をケイネスの前に滑らせる。
「良かろう。このケイネス・エルメロイ・アーチボルト。貴殿の依頼しかと引き受けた。
それと、遠坂時臣が君にかけた指名手配は解除しておこう」
カイトは胸の中であの野郎、そんな事していたのかと思いながらケイネスに感謝をする。
「それでは、御三家のアインツベルンの代表は聖杯戦争の一時的な停止を認める。で宜しいですね」
「ええ、認めるわ」
「では事前に間桐の代表である雁夜氏の承諾も得ていますので現時点を持って聖杯戦争の一時的な停止が締結いたしました。
これよりマスターである。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト、衛宮切嗣、私、柊カイト、ウェイバー・ベルベット、間桐雁夜の5名は個々人はサーヴァント達の個人的な決闘行為以外の戦闘を禁止とさせて戴きます」
「えっ?ちょっと待てよ!お前もマスターだったのかよ!」
「あれ?言ってなかった?
と言っても、サーヴァント召喚して直ぐに自害させたがな……」
そう言ってカイトは令呪の痕が残る手の甲を見せる。
「ちょっと待って!?
それなら「おっと、生憎とサーヴァントの魂は此方に封印してるから、聖杯に魂はくべられてはいない」
カイトの言葉にアイリやケイネスは驚く。
魔法に近しいそれの名は、
「これは眼魂と言って、とある世界にて作られた。人や英雄の魂を閉じ込めた物だ。
これで俺が召喚したサーヴァントの魂を封印している」
「第三……魔法……魂の物質化……」
アイリはアインツベルンの悲願が此処とは異なる世界とはいえ、魔術に格下げられていた事に頭を抑えた。
「それでは今回の会談はこれにて終了とさせて頂く。これより元の場所へ送ろう」
こうしてこの日の会談は終わった。
遠坂時臣と言峰綺礼を除いて、
時臣は教会に駆け込み、汗と汚れを落とし一眠りする、その優雅さをある程度取り戻した。
「綺礼。他のマスターの状況はどうなっている?」
「師よ。我々は…あの男を過小評価しすぎていたのかもしれません………」
そう言って言峰はアサシンが見た記憶を時臣に見せた。
「は………?」
何だこれは?
時臣の頭の中にはその様な言葉しかなかった。
ヘリならまだ分かる。
興味は無いが新聞の写真等で偶に見たりする。
しかし、宇宙戦艦等、魔術師の理解からは余りにもかけ離れていた。
「何だと言うのだ?あの男は……」
時臣は理解が追いつかず、頭を抱えた。
そして言峰は狼狽る師を見て、心の奥が僅かにざわつくのを感じた。
その後、離正から桜が拐われた事と自分達以外のマスターが聖杯戦争の一時中断の要請したを知り更に狼狽える時臣を見て言峰はこの感情は何だと考えていた。