※この作品はR-18です。

滝と一文字の事件録    作:怪傑忍者猫

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事件録番外編 『改造人間は南瓜大王の夢を見るか?』

 俺、一文字隼人は仮面ライダー二号として世界中を回り陰謀劇を潰すと言う仕事以外に、元々の仕事だったカメラマンとしてあちこちの写真を撮ると言うものがある。

 可能なら、こちらの本業一本で暮らしていきたいものだが、ライダーとしての正義感と、生来のお節介な性分のお陰で、どうにも六:四でライダーの方に偏りがちだ。――古馴染みには、八:二の間違いだろうと揶揄られた。この野郎。

 で、人に向かって、そんな友達甲斐の無い事を言ってくれた親友殿はと言うと、アメリカのFBI(連邦捜査局)内のUIUと言う、普通に検索懸けたら一切出て来ない部署に勤めている。

 本人は、

 

「やりたい事やったら窓際にされた」

 

と、あっけらかんと言ってのけた。

 が、あいつがデストロンとGODの陰謀と、後俺と仮面ライダー一号事本郷猛の個人情報を秘匿した事を国家反逆罪に問われて――改造兵士を作ろうとしたって、核兵器だけじゃ満足出来なかったのか――死刑宣告を受けていた事を、随分後に人伝に聞いて俺と本郷が倒れかけたのはここだけの話。

 今回の話は、ついこの間の話。

 親友殿の現状が判った事と、生身の筈の親友が俺達より面倒な相手に日々奮戦している事を知って気が遠くなった、そんな話。

 

 

 俺の元に、親友である滝和也名義で荷物が届いた。

 その時の俺は、何年も前に壊滅した筈のSHOCKERの、骨戦闘員そっくりな輩がうろついていると言う情報を掴み、後輩達と共にアメリカのとある州にいた。

 俺は滝に、現所在地を話した覚えはなく、だが滝に聞かれれば話しそうな面子ばかりだった事もあり、誰か話したんだろうなとしか思わなかった。

 開いた荷物の中身は、南瓜が一つ。ご丁寧にジャック・オー・ランタンとして目と口を繰り抜いたそれが、どっかりと鎮座ましましていた。

 三十センチ前後の箱には、それ以外何も入っていなくて、俺と一緒に手元を覗き込んでいた後輩共は次の瞬間笑い出していた。

 

「ぶっは、ひでえや、滝さん」

「もう少しこう、やる事があるでしょうに」

「幾ら一文字さんの誕生日が十月だからって、ハロウィンには少し早いですよ」

 

 ストロンガーこと城茂、Xライダーこと神敬介、スーパー1こと沖一也が笑う横で、笑わないのが二人。

 スカイライダーこと筑波洋は、箱を開いた瞬間に距離を取り、他の面子と共に手元を覗き込んだZXこと村雨良は心底不思議そうにこう言った。

 

「滝さんがこれを? 何だからしくないなあ」

「え?」

「あの人、大雑把そうで気を使う人ですよ?

 そもそも一文字さんへの贈り物に、くり抜いただけの南瓜を送るとは思えなくて」

 

 村雨は、BADAN戦役の最初期に、滝に戦い方を習ったり、ルミちゃんと滝の二人に記憶の無い状態での日常生活の送り方を教えられていた時期がある。

 その所為か、後輩達の中でも滝に好意的、且つ結構肩入れした発言が多い。

 それに対して、当人もアメリカ暮らしの長い沖が笑う。

 

「多分ハロウィンのジョークだと思うよ? ちゃんとしたプレゼントは取りに来いって意味の」

 

 その時は、それで終わったのだが、その後俺は、筑波に捕まった。

 

「一文字さん、滝さん今何処にいるんですか?」

「え? どうした筑波」

「あれ、本当に滝さんからの荷物なんですか!?」

 

 真っ青な顔で、問い掛けて来るのに思わず黙り込む。

 こちらの沈黙をどう思ったか、筑波はこう続けた。曰く、

 

「以前、シュテルンビルトで奇妙な怪人に捕まったじゃないですか。

 あの時と、同じ空気が、箱を開いた瞬間広がったんですよ」

 

 あの時と言うのは、数年前にアメリカ西海岸の北の端に位置する高層都市、シュテルンビルトで『アポロンメディアスキャンダル』、もしくは『ワイルドタイガー冤罪事件』と呼ばれている事件があった。

 その後に、シュテルンビルトのダウンタウンにある小さな遊園地を舞台に、表向きは猟奇殺人としてのみ発表された不可解事件があった。

 俺と筑波、そして滝が関わったその事件の事を指していると判って、俺の頬も引き攣った。

 そしてその晩から、筑波の懸念を実現させたかのような夢を見るようになった。

 

 

 俺は、何処とも知れない広場に立っていた。

 何故こんな場所にいるのかと、訝しむ間もあればこそ、俺の脚は勝手に歩いて行く。

 そして、何もないと思った広場は、歩いて行くうちに緑色の壁が見えた。

 

 なんだ、ここ?

 

 そう思っているうちに、目が覚めた。

 時計を見れば、六時間は眠った筈なのに、正直寝た気がしない。

 ……その日は、こんな日もあるかと思ったのだが、それから数日後。

 後輩の敬介と茂、沖の三人も同じ夢を見ていると、後輩達の雑談で判った。

 

 現在、『仮面ライダー』と称する人間はざっとだが30人を超えている。

 BADANの時空破断装置と、その他同じような時間帯に何かしらが起きた為に時空が混在し、俺達が知らないうちに『仮面ライダー』と称する人間が増えていたのだ。

 ――俺達の時間帯では起きていない筈の、隕石落下だとか『ライダーバトル』とか、聞いた事の無い企業――スマートブレインだとか、鴻上ファウンデーションとか――など、挙句に『未確認生命体』と総称される改造人間ではない『怪人』達の起こす事件など、色んな騒ぎの果てに仮面ライダーとして戦っている面子と合流し、協力体制を作った。――作る前にガチで潰し合いになった事は、滝に一時間説教を食らいそうなので話していないが。

 

 その時、拠点にしている本郷の持ち家に来ていたのは俺達――『後輩』達との区別の為、【昭和組】と名乗っている――と、『後輩』――便宜上【平成組】と称している――のキバ、オーズ、ゴースト、そしてマッハと言う面子だった。

 【平成組】は自由の利く面子が何人か合流しており、ここにいない面子は調査のため街に出ている。

 

「夢、ですか?」

「おう、なんか見るたび前進してるような気がするんだがな」

 

 オーズこと火野映司からコーヒーを受け取りつつ、答えた茂の顔はやや眠そうだ。

 茂の言葉に、キバこと紅渡がキッチンに立つ敬介を見た。

 

「そう言えば、神さんもそんな事言ってましたよね?」

「うん? ああだだっ広い広場に、ポツンと緑色の壁があってな。何か知らないが、俺はそこに向かって歩いてるだけだ。

 夢の中だから、こちらの意思に関わりなくずっと歩いているだけなんだがな」

 

 そう言う敬介は、一見すると普通に見えるが、良く見ると目元に薄くクマが浮いていて、口で言うより深刻そうなのが見て取れた。

 その声に、沖に勉強を見て貰っていたゴーストこと天空寺タケルが顔を上げた。

 

「あれ? 沖さんもそんな話してましたよね?」

「うーん? ああ、少しづつ緑の壁に近付いているんだ。壁と言うか、生垣か、グリーンカーテンかな? どんな植物かは判らないけど」

 

 そう答えた沖の方は、一見すると何の問題も無いようだが、こいつが仲間内で一番不調に弱い事は判っているので、結城なり本郷なりが合流したら精密検査に押込まねばならないだろう。

 その時、俺と一緒にカメラの手入れをしていたマッハこと詩島剛が顔を上げた。

 

「何だか気味が悪いっすね? カボチャ大王にでも呼ばれてるんじゃないっすか?」

 

 あちこちで、コーヒーに咽る音がする。

 俺は半ば呆れて、ライダーとしてもカメラマンとしても後輩の剛に目を向けた。

 

「おいおい。俺も一応海外育ちだし、ハロウィーンのカボチャ大王については聞いた事があるがなあ、あれはオカルトとか、妖精とか都市伝説の範疇の存在だぞ?」

「いや、俺達仮面ライダーも一部じゃ都市伝説扱いですよ?

 第一、俺達【平成組】には、俺や進兄さん、フォーゼみたいな科学の極みみたいなのも居れば、オーズみたいな錬金術の産物や魔法使いに魔族も関わってますからね。何があってもおかしくないと思いません?」

 

 言われて見るとそんな気もするが。

 何だかなあと思っていると、ふと居間に違和感を覚えた。

 確か、滝から送られてきたカボチャを、居間の暖炉の上に茂達が飾っていた筈なのに、何時の間にか無くなっているのだ。

 

「あれ? 誰かあそこに置いておいたカボチャ知らないか?」

「ああ、それなら仁藤さんと操真さんとが食べると言って持っていきましたよ?」

「はあ!?」

 

 仁藤と操真は、仮面ライダービースト、仮面ライダーウィザードと言う【平成組】のライダーだ。

 この二人は、先程剛が引き合いに出した『魔法使い』達だ。

 渡の言葉に、思わず声を荒げそうになったその時、調査に出ていた面子から怪人と戦闘員らしい面子を発見したと言う連絡が入った。

 言いたい事は色々あったが、そこで俺達は話を切り上げ、連絡のあった地点へと急ぐことになった。

 

 

 先行していた村雨、筑波、ブレイドこと剣崎一真と合流し、連絡にあった場所へ来たのだが。

 その場所を見て、俺と茂、敬介、沖は微妙な顔になった。

 町外れの閉鎖された農場だと言うそこは、ここ数日夢で見た何もない平地そのままだったからだ。

 カボチャと髑髏を意匠にされたらしい怪人は、広場のほぼ中心の緑の茂みを、戦闘員三〇人ばかりを率いて刈り取ろうとしていた。

 緑の茂みのあちらこちらから顔を出しているのは、橙色の、あの俺の送り付けられた南瓜と寸分変わらぬものだった。

 ……不可解な事に、蔓に対して妙に沢山実がなっているような気がするが、放置されてて勝手に実が生った所為か?

 

「さあ、ここに生えている南瓜達を持ち帰り、そしてこの髑髏パンプキン様の眷属を作り出すのだ! 兄弟達よ! 今こそ我らが人間達を駆逐する番よ!」

 

「何勝手な事言ってやがるんだが」

 

 変身前の茂が、低く唸る。

 それに同意しつつ、俺は取り敢えずこの場に来ている面子だけで怪人共を倒すべく飛び出そうとし、後輩達も続こうとした。だが、その時だった。

 

   キシャ―!!

   ぎゃぁァァアアアあアア嗚呼あゝアア亜阿アアアアアアアア阿嗚呼アアア!!

   ア゛嗚呼゛あ゛あああああ゛嗚呼あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁあああ!!

 

 カボチャに突然かぱっと穴が開いたかと思うと、それが一斉に悲鳴を上げ、そして茂みがざわざわと蠢いたかと思うと、そこから南瓜頭を持つ得体の知れないものが出現した。

 大きさとしては、子供ぐらいだろうか。それが九つ、湧き上がるように立ち上がり人型を取ったのだ。

 パジャマを着た子供が、かぼちゃを被っているような姿だが、そいつらはあっと言う間に戦闘員を捕まえると、そのまま自分達が出て来た茂みの中へと引きずり込み。

 

   イイい゛いいィイイ!

 

 悲鳴と共に、茂みから九つ、血しぶきの様なものが上がった。

 南瓜頭は、揺らり揺らりと動きつつ、更なる贄を引き込もうと、呆然と立ち尽くしている戦闘員や怪人へと手を伸ばした。

 俺達は、目の前で繰り広げられている惨劇に思わず黙り込み、動きを止めていた。

 

「何だ、あれ!?」

「魔族? それにしては……」

『おいおい渡、あんなのファンガイアにもレジェンドルガにもいないって!』

 

 蒼褪めている剛の横で、顔を引き攣らせながら渡が呻く。その渡を正気付かせようと、蝙蝠型の何か――キバット族と言う生物らしい!?――が飛び回る。

 その、ちょっと意識が逸れた瞬間。

 ふうっと、意識が遠のいた。と思ったら、がっと剛に腕を掴まれた。

 え?

 

「ちょっ、何で変身しないで出て行こうとしてんですか!」

 

 剛曰く、俺はじっと繁みの方を『魂の抜けたような顔』で見詰め、そのまま歩いて行こうとしたらしい。

 同じように茂と敬介、沖も歩き出そうとして後輩達に引き留められていた。

 そこに、数台の車が停車する音と、

 

「何でお前ら、こんなところにいるんだ!?」

 

と言う、親友の声が突き刺さった。

 振り返った先にいたのは、機動隊と危険物除去班を足して割ったような恰好の集団に指示を出している、プロテクターを着込んだ滝の姿だった。

 

「滝!? お前こそなんで」

「仕事に決まってんだろ? ってか、ライダー共はどうした? それに、協力者か、周囲に居る若いの」

 

 滝の言葉に、剛の奴が思いっ切り口をへの字に曲げた。

 

「失礼なおっさんだな? 俺は仮面ライダー! 仮面ライダーマッハだ!」

「ふうん? 俺が知らないうちにずいぶん増えたんだなあ、なあ一文字?」

 

 じろっと睨まれ、思わずこちらの目を逸らしてしまった。

 その間に、何時の間にか合流していた操真と仁藤、仮面ライダーウィザードとビーストのダブルライダーキックが、南瓜怪人――髑髏パンプキンと名乗った奴に食い込んでいた。

 

「Herrソーマ、Herrニトー! そのまま繁みに向かって蹴り込んで下さい!」

 

 滝と一緒に来た、サハラ砂漠の砂に似た色合いの髪と瞳の青年が叫ぶのに合わせ、ウィザードとビーストは戦闘員諸共南瓜の茂みへと怪人を蹴り込んだ。その次の瞬間。

 展開していた武装集団が、一気に繁み目掛けて無反動砲をぶっ放した。撃ち込まれたのは、ナパーム弾。

 ナパームで起きた炎と、怪人の爆発が乗算を起こし、優に二〇メートルはありそうな火柱――と言うよりキノコ雲が湧き上がっていた。

 俺達も、後輩達も呆然と轟々と燃える繁みを見ているうちに、滝と武装集団のリーダーとが何やら揉めているらしいのに気付いた。

 

「だから何度も言わせるな、彼らはSCP-1093-JP、Keter寄りのEuclid、財団の記憶操作は多分彼らには通じないし、下手な隠蔽工作は彼らに財団への疑念と警戒を抱かせる事になる。

 彼らに手出ししないと言うのは、O5にも承認を受けている。

 判らないと言うなら、出るとこ出ても良いんだぜ、俺は」

「こ、この、お荷物部署のUIUの癖に!」

「あー、落ち着いて下さい、Herrギブソン!」

 

 逆上しそうになっている男を、先程後輩二人に指示を飛ばした若い白色系人種の青年が宥めている。

 滝の方はと言うと、男に向かって言う事言ったと言う顔で背中を向けると、俺達――仮面ライダー達を見回し大きく肩を竦めた。

 

「あー。ライダーって言っても、若いのは皆改造人間じゃねえな。結城と同じスタンスか?

 そう言えば従兄弟の強から、未確認生命体とかそれに対応する為の新装備とか部署が出来たって聞いてたな」

「滝、あの南瓜は一体」

 

 声を掛けた俺の鼻の頭を、ピシッと弾いて滝は本気で呆れ果てたと言う顔を向けた。

 

「あだ!」

「あのなあ、俺の名前で届いた荷物だからって、あっさり開いてんじゃねえよ。しかも、こっちが調査してる物にガチ当たりして。

 俺が、ライダーとして活動している最中のお前が何処に居るか、知ってる訳無いだろうが!」

「ちょっとおじさん! 人の先輩に何してくれるんだよ!」

「あー、待て待て詩島、その人一文字さんのマブダチだから、ナマ言ってると一文字さんが怒るから!」

「一文字さんが怒ってない時点で悟れ、な?」

 

 剛が怒るのを、敬介と茂が慌てて引き離し、他の若手は皆オロオロとこちらを見ている。

 そこへ、全く悪気無く村雨が言ってくれた。

 

「ああ、やっぱり滝さんの送った物じゃなかったんですね。

 何だかあの南瓜に引っ張られた様子で、南瓜と目を合わせた先輩方があの繁みに行こうとしてたもので」

「引っ張られたあ? おかしいな、あれに引っ張られるのは精々二十歳未満の筈なんだが」

 

 色々聞き捨てならない事を言われているような気もするが、ぶつぶつと呟いている滝に向かって、こちらが何か言う前に先程の淡い金色の髪の青年が来た。

 

「あ、Herrタキ、財団から連絡です、SCP-1093-JPの情報更新をなるべく早くお願いしたいとの事です。後、SCP-2662から」

「あん?」

 

 ドイツ系らしい青年は、受け取ろうとした滝にスマホを渡すのかと思ったら、スピーカーにして差し出した。

 

『タアキイ、助けてえええ! もうこいつら嫌だああーーー!』

「ああ、落ち着け! タウ9は機能してないのか!」

『ワガンないいいイイイイ』

 

 泣き叫んでいる声の後ろで、銃声と悲鳴と、か細く聞こえる聖歌を歌ってんだかお経を唱えているのか良く判らない、但しやたら滅多に不安にさせる声に――正直、滝に助けを求めている存在の声もこう、ざわざわ背筋に来るのだが――後輩共々絶句していると、これから移動する事を告げて滝は通話を切った。

 

「どうします? ここからSCP-2662の収容ユニットまで、普通にハリヤー飛ばしても一時間は掛かりますよ?」

「あー、まあ博士達には嫌がられるが、これが一番早いんだよな。Herrミュラー、俺のバイク運んでおいてくれな」

 

 そう言うなり、滝は自身のバイクに近付き、その物入に突っ込んでいた人一人簡単に入りそうな大きな麻袋を引っ張り出し地面の上に広げた。

 

「悪い、頼めるか袋猫」

 

 途端に、空だった筈の袋からぬるっと大猫が二匹顔を出し、ナオンっと滝に返事をした。その中の一匹に、俺は見覚えがあった。

 この間、滝の集合住宅《フラット》を訪ねた時に、俺が担いでいた鞄の中にいた奴だ。

 

「俺が何処に行きたいか、判るよな。頼んでいいか?

 終わって家に帰ったら、ささみのほぐし身をご馳走するから」

   ナオン♡ アオン!

 

 返事したと思うや、猫二匹に袖を咥えられ滝は袋の中に引き込まれた。……俺達の目の前で。

 

「え!?」

「うわ!?」

「ええー!?」

「あー」

 

 後輩の殆どが驚く中、驚かなかったのは魔法使い二人ぐらいだった。

 

「うっはあ、マジか。色んなものに好かれてる気配があったが」

「ドラゴンも興味示していたからなあ。あの人、真正の人垂らしの怪異垂らしなんだなあ」

……やっぱりか。

 

 事態に呆然としている俺達の横で、滝に『ミュラー』と呼ばれた青年がうんうんと頷いた。

 

「そうなんですよねえ、Herrタキはマスクドライダーの個人情報を秘匿した事を理由に国家反逆者呼ばわりされて死刑宣告受けたのを、『真実の口』に冤罪である事を看破されたんでD級《クラス》職員から一般職員に引き上げられ、FBIで人材の島流し先にされてたUIUをきちんと特殊案件対策課として機能させるようにさせたって言う人で、KeterクラスSCPに大勢気に入られてるんで、O5も無下に扱えないんですよねえ」

 ……何ですと?

 

 俺が振り返った時には、金髪の青年はバイクとともに姿をくらませていて、そしてもっと厄介な奴に俺は肩を掴まれた。

 

「一文字、今の話はどう言う事だ?」

「……俺も滝に問い質したい話だよ、俺もそんなこと聞いてねえし」

 

 顔に傷が浮かぶほど怒ってんじゃねえよ、怒る相手が違うだろうが。

 取り敢えず、相変わらず遅れて来て――今回は出る幕なく終わった一号ライダーを宥めつつ、俺は後輩共にどう説明するかで頭を抱えていた。

 

 

 後日、【平成組】を所属組織に対してどう誤魔化すかでやっぱり頭を抱えた滝に、状況説明と言う名の夕飯で釣られたのは、まあ話さなくてもいい事、だよな。

 

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