※この作品はR-18です。

竜・竜人短編集   作:神座(カムクラ)

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8.気持ち (♂竜×♀竜)

1匹の鹿を影から狙う1匹の竜。できるだけ音をたてないようにソロリソロリと近づくと、やがて鹿は危険を察知したのか耳をピクピクッと動かし辺りを見回す。

 

 (意外と早く気がついたな…まぁでもここまでくれば…)

 

 地面を蹴りあげ、翼は滑空するときの要領で上手く空気抵抗を減らし、1秒経つか経たないうちに獲物に飛び付いて首を折った。 

 

 「やった、いつもより大きいぞ。」

 

 蒼い鱗を纏った若い雄竜は大物に感嘆の声を漏らしつつそれを背負って塒(ねぐら)へ戻る。

 

 「あら、ルーク?いつも以上に立派な獲物ね。」

 

 声をかけたのは明るい緑色の鱗の雌竜。仲の良い友達のうちの一匹である。

 

 「リン!…欲しい?」

 

 「まさか、せっかくの獲物だもの。私はもう食べたし。」

 

 じゃあね、と別れようとするとリンは振り返り

 

 「忘れてた!今日成竜の儀だからって伝言よ。」

 

 成竜の儀は文字通りのそれであり、それを行えば番を持てるようになるという里のきまりである。

 

 「誰が?」

 

 「トトリよ。いつも通り夕暮れ後。」

 

 「トトリかぁ…」

 

 トトリはルークの友達の雄竜である。

 

 「それもカーラとだから多分番になるのね。」

 

 カーラは雌の成竜。成竜と言っても自分達と10年くらいしか歳は離れていないが。

 

 「そういうことだから。またあとで。」

 

 「うん…」

 

 そしておよそ6時間後、里の集合場所になっている森の開けたところへ向かう。里と言っても獲物を食い潰さないように普段はかなりバラバラになっている。

 

 「ついにトトリが…」

 

 「お、よぉルーク。トトリに先越されたな。」

 

 話しかけてきたのは雄の成竜。

 

 「そ、そうだね…」

 

 「お前も誰かに頼めば良いのに。交尾くらいならしてくれるんじゃないか?」

 

 そう。成竜の儀とは、対象者が異性と初めて交尾すること。それを里の皆の前で行い自分が成竜であることを示すのだ。実は、これの本来の目的は"馴れ"なのである。雄が初めて雌と交わると大半が理性を飛ばしてしまい、また雌は雌で初めてだとまだ胎が固く苦痛を感じてしまう。もしお互い初めてだと雌が交尾に対してトラウマを持ってしまうこともあり、そうなれば番を持てなくなってしまうのでそれを防ぐためにこれを行う。なので大抵対象者の相手となるのは親を除く交尾にある程度馴れている異姓ということになるのだ。だが儀式とて身を重ねるので、そこから番が生まれることも珍しくないし、番になることを前提に行うこともある。今のトトリはまさにそれだ。

 

 「でもそんな…仲が良いわけじゃない雌となんて…それでもし宿しちゃったら…」

 

 「真面目だなぁ、竜が子を宿すなんて稀なのに。っていうかそうでもしないとお前ずっと番持てないぞ?ただでさえお前を番にしたがる雌なんているかどうかもわからないのに。」

 

 「うっ…」

 

 トトリ「お、ルークじゃん。お前は相手見つかったのか?」

 

 「…」

 

 「みてろよ。ついにカーラと子作りできるんだ。」

 

 そして他の者が見守る中、カーラの秘裂をほぐした後にトトリが仰向けになる。これは暗黙の了解で、雌を本能だけで責め立てないようにするためである。ちなみに雌が初めての場合は雌が仰向けになって馴れている雄が優しく交尾するのだ。お互い初めて、という場合もなくはないが、無いに等しかった。

 

 カーラが頬を紅潮させながらトトリにまたがり、すでに立っている雄の先端を自らに入れるとゆっくり腰を落とした。

 

 「うあぁ…」

 

 自慢の雄槍を根本まで入れられて思わず仰け反ってしまうトトリ。だが大抵みんなそうなので周りは温かく見守っている。

 

 「フゥ…どう?トトリ。」

 

 「すげぇ…気持ちいい…」

 

 「私、前も別の子の相手をしたことあるけど、私達はこれで終わりじゃないからね?」

 

 「わかってるぅ…あぁっ!」

 

 波打つカーラの膣が容赦なくトトリを削っていき、トトリはカーラを抱き寄せることしかできなかった。その後カーラが動くとトトリの理性は彼方へと消し飛び、動かせる範囲で下から突き上げる。

 

 「トトリ…!もう…少し…抑えなさい…クァッ!」

 

 気遣いも何もない責めにカーラは喘ぎながらそう話しかけるが本能に支配されたトトリには聞こえなかった。もし体勢が上下逆なら、もしくはカーラが初めてなら間違いなく苦痛を伴っただろう。そしてトトリはカーラの腰を乱暴に引き寄せて射精した。密着しても尚強く押し付けるトトリに

 

 「そんなに…押し付けなくても…大丈夫よ…クハァ…」

 

 「うぅ…カーラ…」

 

 「戻った…?」

 

 「あぁ…くそ…気持ちいい…」

 

 「私も。」

 

 射精が終わると深くキスをし、そして2匹は互いを伴侶とすることを宣言してトトリの成竜の儀は終わりを告げる。カーラが余韻に浸りつつ体を洗いにいっている間、トトリは友達に囲まれていた。

 

 「どうだった?」

 

 「気持ち良くて途中から何も考えられなくなったな。」

 

 「随分必死だったもんな。」

 

 そう言ったのはすでに番がいる雄である。

 

 「う、うるせぇ。カーラだってだいふ喘いでたただろ?」

 

 「そりゃあお前が無茶苦茶に動くから。まぁみんなそうだけど。」

 

 「そ、そんなことよりルークは相手決まったのか?忘れてるかもしれないが俺の方が歳下だぞ。」

 

 「なりたい…相手は…いるよ。」

 

 「へぇー、リンとか?」

 

 「…」

 

 「え、図星?冗談だったのに。」

 

 「…」

 

 歳上の成竜が

 

 「オイオイマジかよ。確かに仲良いかもしれないけどリンもまだ儀をやってないだろ?それに…」

 

 その成竜は自粛したがトトリが

 

 「お前じゃ無理だって。見かけ倒しのルーク様じゃないか。」

 

 見かけ倒しのルーク様。ルークはまさにその通りだった。ルークはとにかく弱いのだ。この里では5年に1度娯楽兼番を決める参考に雌雄別々で決闘を行う。順位もそれぞれ決定させ、決闘の後で番がいる竜を除いた順位順に雄が並び、番や成竜の儀の相手を探したい雌が順位順に雄を選んで誘うのだ。もちろん雄に断る権利はあるし、そもそもこれを利用しないで決めることのほうが多いのでしばしばただの娯楽になりうるのだが、格付けはこれで決まる。

 

 「確かに、ルークが勝てる相手って仔竜くらいだよね。」

 

 「鱗はすごく綺麗なのに弱いから残念だよね。」

 

 そしてルークはこの決闘で、かなりの実力差のある仔竜でもない限り勝ったことがないのだ。決してルークの体格が悪いわけではなく、寧ろ体格は良い方なのだがなぜか貧弱だった。番が持てるかどうか族長に心配されたこともある。加えてリンは族長の娘であるし、さらにその容姿や性格から色んな雄が夫の座を狙っていた。

 

 「トトリ、お待たせ。」

 

 カーラが彼女の友達とやって来る。一回り大きいカーラがトトリに寄り添い翼で抱き寄せるとトトリは恥ずかしそうに

 

 「カ、カーラ…どうしたんだよ。」

 

 すると別の成竜が

 

 「何トトリ、知らないの?雌は交尾すると雄に甘えたくなるのよ。逆に言えばすごく不安になるの。」

 

 「そ、そうなのか?」

 

 「そりゃそうよ。子供ができるかもしれないんだから。あんたもそんぐらい知っときなさいよ。前にカーラと成竜の儀をやった子はちゃんと気遣ってたわよ?」

 

 その雄竜は今もカーラと良き友であるが、既に違う番を持っている。

 

 リン「いいなぁカーラ。私もそろそろ成竜の儀をやって番を持ちたいなぁ…」

 

 その一言でルークはドキっとする、

 

 カーラ「ならちょうど半年後に決闘があるからそれで決めれば?まだ成竜の儀をあげてない雌竜の中だったらあんたが一番強いだろうし、リンなら誰も断らないでしょ。」

 

 「それが良いかもね。」

 

 トトリ「おっと、どうするルーク──」

 

 雄の成竜が睨んで止めさせたが遅かった。

 

 カーラ「どうするって、まさかルーク、あなたリンと成竜の儀をあげたいって訳?」

 

 「…何でここで言っちゃうんだよトトリ…」

 

 「あなた達が前から仲が良いのは知ってるけど、せめてリンが挙げ終わってからじゃないと。決闘で成竜の儀の相手と一緒に番を決めるんでしょ?」

 

 「うーん、相手にもよるけどできればそうしたいわ。お父さんもそう言うだろうし。」

 

 トトリ「絶望的だな。」

 

 リン「トトリ、そういうことを言わないで。この里の雄の中じゃルークが一番私と仲が良いことを忘れないでね。」

 

 「はいはい…」

 

 他の成竜が

 

 「でも決闘で勝ってリンと成竜の儀をすればそのまま番になるってことだろ?」

 

 「さっきも言ったけど相手によるわ。でもまぁ選ぶのは私だから、ほぼそうなるわね。」

 

 「ちなみに俺は?」

 

 「そうね…別に良いと思う。実を言うとお父さんもそれを望んでるのよ。あなたは強いし、仲も良いしね。」

 

 「じゃあ俺が勝ってリンを番にして、しばらくしたらその仲に免じてルークと成竜の儀を挙げさせてやるよ。俺なら可能性十分あるぜ。」

 

 この雄竜はラングといって番のいない成竜の中では1位か2位を争う強さを持っていてリンやルークとも仲が良い。

 

 カーラ「ルークがどうしてもリンとって言うならそのくらいしか方法無いわよね。」

 

 その後皆が解散し、リンも塒へ戻る。

 

 族長(リン父)「なぁリン、お前もそろそろ番を持たないのか?」

 

 「ラングと?」

 

 「そうだな。雌が1匹の雄だけの子種を仕込まれ続け、宿すことができればその子は強い子になる。あやつとの子なら尚更だろう。それにあやつとは他より仲も良いだろう?」

 

 その言葉に少し顔をしかめつつ

 

 「そうだけど…次の決闘で決めようと思って。」

 

 「うむ。それも良かろう。ラングの他だと強くて番のいない雄は…サームか、ダムドか、エトとかか?いやダムドとはさほど仲が良い訳ではなかったな…仲の良さといえばルークだがあやつはなぁ…」

 

 「彼、何であんなに勝てないのかしら。そんなに弱そうな体じゃないのに。」

 

 「仕方ないといえば仕方ない。父親も兄弟もいない上に母親も動けないから鍛えようがないからな。あやつがラングくらい強ければ申し分ないのだが。あやつが番を持てるとしたら相当歳下ではないとならないだろう。」

 

 「そうね…成竜の儀を私とやりたいって。駄目…かな…」

 

 「今は駄目だ。同じ竜とだけ交われば強い仔が産まれるという言い伝えをお前も知っているだろう?他の皆はそこまでこだわらなくても良いかもしれぬがお前は族長になるのだからその子供も強くなくてはならん。あやつがどうしてもお前とでないと嫌というならお前が最初の子を作るまで待ってもらうことになるだろう。」

 

 「そうよね…」

 

 その頃ルークの塒では

 

 ルーク母「お帰り。」

 

 ルーク「ごめん。遅くなっちゃった。」

 

 「いいのよ。…元気無さそうだけどどうしたの?」

 

 「僕、リンと成竜の儀を挙げてそのまま番になりたい。でも半年後の決闘でリンは番の相手を決めるって…」

 

 「そう…せめて私の足がこんなんじゃなければ特訓相手をしてあげられるんだけどね…」

 

 ルークの母親の片脚はもう動くことはない。実はルークは母親にとって望まぬ子。この脚はルークの父親が逃げられないようにと骨を砕いたのだ。竜なら時間をかければ治るはずだったが、砕かれてしばらく経ち再生が始まるとそこを潰され、何度もそれをされているうちに新しく作られていた骨の破片が誤った場所で固まったので元に戻らなくなってしまった。しかし望まぬ子とはいえ自分の子。腹に子が宿ったことを知ったと同時に自分は子供を愛す権利もないかもしれないことと、父親のように育って欲しくないと願い彼女は父親が狩りに行っている間に決死の脱走を試みて、途中で見つかりボロボロにされながらも相手の片眼を潰し逃れることに成功。あてもなく彷徨い衰弱しているところをこの里の竜が助けてくれたのである。

 

 その後なんとか無事だった卵を産み、大切に育てたのだが彼女がほとんど動けないため始めは族長に獲物を獲ってもらい、今はルークが獲っている。自分の蒼い鱗を受け継ぎ、脱走の励みになった大切な息子。精一杯注いだ愛情のお陰か優しく育つも闘い方を教えるのは不十分で、気づけばルークは見かけ倒しと呼ばれるようになってしまったのだ。

 

 「狩りの仕方ならともかく、他の竜が闘い方まで教えてはくれないだろうしね…でもまだ諦めては駄目よ?」

 

 「うん…あ、脚擦るね。」

 

 動かせない脚はむくんでしまっているので毎日数回ルークが擦っている。

 

 「いつもありがとうね…ねぇルーク、今のあなたに言うのは酷かもしれないんだけど、私、もしかしたら新しく番になってくれる竜がいるかもしれないの。」

 

 「そうなの!?」

 

 「えぇ。もしその竜が番になってくれたらあなたも安心して独り暮らしができるだろうし、あなたの相手をしてくれるかもしれないわ。」

 

 「この里の竜?」

 

 「えぇ。ボルグよ。」

 

 「ボルグさんか!確かに良い竜だよね。何で番いなかったんだっけ。」

 

 「卵ごと死んでしまったのよ。産卵がうまくいかなかったらしいわ。」

 

 「そんなことってあるんだ…」

 

 「とにかく、あなたのこともお願いしてみるわ。頑張って。」

 

 

 それからしばらく経ち…

 

 ルークは木を竜に見立てて爪を降り下ろしたり噛みついてみたりして、何とか闘えるようになろうと奮闘していると何かの気配を感じた。

 

 「…?誰?」

 

 すると茂みから鮮やかな緑色の竜。

 

 「あ…バレたの…?」

 

 「リン!どうしたの?」

 

 「邪魔しないように隠れてたつもりだったんだけど…どうしてわかったの?」

 

 「君のいるところだけ草が揺れる音がしたんだよ。どうかしたの?」

 

 「伝言…というか話があってきたの。」

 

 「話?」

 

 「うん…固いのは嫌だし、休憩がてら池に行かない?昔みたいに寄り添って。」

 

 「良いけど…」

 

 そして近くにある池のほとりで寄り添う2匹。幼いころはよくそうしていたのだが今は少し複雑な気持ちになる。

 

 「で、話って?」

 

 「あなたがそんなに必死に特訓してるのって…その…私と成竜の儀を挙げたいから?」

 

 「う…うん…」

 

 「でも私が先に挙げてからじゃ駄目ってことはさ…つまり…私と番になりたいってこと?」

 

 「…」

 

 図星で答えられずにうつ向くが、それは告白したも同然だった。

 

 「3位。」

 

 「え?」

 

 「あなたが今度の決闘で3位までになったら良いわ。父さんがそう言ってた。だから頑張って。」

 

 「3位…」

 

 ちなみに前回は20匹中19位で、最下位は経験の為に参加した仔竜である。

 

 「そう。今のところ決闘で相手を探すのは私だけ。だから3位以上になったらあなたを選ぶわ。」

 

 「本当に…?」

 

 「えぇ。でも忘れないで。もし駄目でもあなたが嫌いという訳じゃないのよ?」

 

 「うん…頑張ってみるよ…」

 

 と言うとリンはシュルッとルークの尻尾に自分の尻尾を巻き付け

 

 「本当に応援してるからね。」

 

 と頬が触れ合う寸前のところでそう囁き、返事を待たずに去ってしまった。最後の、さりげなく大胆な行動に心拍数が一気に上がる。

 

 (リンとキスしたらどんな感じなんだろう…リンと抱き合ったら…交尾したら…温かいのかな…柔らかそうだな……でもなぁ…)

 

 3位…3位…それが頭の中をグルグル回っていた。 

 

 「前から5年も経ってるんだ。今度は大丈夫だよ!姉さんだってきっとルークと番になりたいんだろうし、頑張って!」

 

 と、言ってくれるのは決闘に参加しない仔竜のリト。リンの弟だ。数少ない応援を胸に修行を続け、残り1ヵ月ぐらいになったとき、

 

 「母さんただいま…ボルグさん!?」

 

 「あらルーク、お帰り。」

 

 「おぉ、ちょうど良いタイミングだな。」

 

 立派な雄竜と母親からは先日嗅いだ匂いと同じものが微かに漂っている。

 

 「…てことはボルグさん…」

 

 「たった今契りを交わしたところだ。事情は全て聞いた。お前の母親のことも、お前のことも。我を父親と呼ぶのは無理だろうが、我はお前を息子同然に見るぞ。あと1ヵ月だが、できる限り鍛えてやる。」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「敬語は使うなよそよそしい。これからは…お前が良ければだが3匹寄り添って寝ないか?お前は父親を知らぬだろうし、我は我でその夢は叶わなかったからな。」

 

 独りでの修行で心身ともに疲れていたルークにとってそれは最高の癒しだった。翌日から狩りの後、特訓が始まる。

 

 ボルグは狩りの時から違和感を感じていた。ルークの狩りの仕方を見る限り結構な実力はあるはずなのだ。

 

 「もっと我の動きを見ろ…キレがないな。狩りの時のお前はどうした?」

 

 しかし竜相手になるとそれが嘘のように鈍る。パニックになっているようにも見えた。それを指摘されると

 

 「どうしてだろう…狩りだともっと冷静なのにな…」

 

 「うむ…」

 (もしかしたら…子は産まれる前の、卵や母親の腹の中にいるときの環境で大きく変わるというからな…同族に追われていたときの恐怖がこの子にも移ったか…)

 

 「何とかならないかなぁ…」

 

 「力はあるのだ。まだ何とかなる。」

 

 母親にも見守られながら特訓を続け、時はあっという間に過ぎる。決闘の日、母親とボルグは最後のエールを送った。

 

 「大丈夫。ここ1ヵ月でお前は随分強くなった。」

 

 「頑張って。」

 

 ルールは総当たり戦。今回参加する雄竜の中で番を持たぬ者は16匹でそのうち9匹が成竜である。初戦は同年代の友達だった。

 

 飛び付いて噛みつこうとしてきた相手を冷静に横に交わして背中に拳を降り下ろしてそのまま背中に乗って首をくわえれば勝負あり。

 

 「嘘だろルークに惨敗なんて…」

 

 だが、一番驚いているのはルーク自身であった。その後も勝ち続けると遂にラングと当たる。

 

 「よぅルーク。随分強くなったみたいじゃん?でも譲らねぇぞ。」

 

 「分かってる…」

 

 しばらくにらみ合いを続けた後ルークが地面を蹴り、滑空に近い状態で突撃する。ラングは間一髪で避けると尻尾を掴んだが、ルークは上手く着地しもう一度飛ぶと後ろ宙返りをして振りほどく。だが着地したときに尻尾の一撃を顔に食らってしまいそこから劣勢が続く。粘りに粘るも首に爪を立てられ敗北してしまった。

 

 「随分やるようになったじゃん。余計に俺が一番になってやんないとな。」

 

 ラングはそう言ったがもし約束を守ってくれるならあと1匹までなら負けても良いことになる。何とか気持ちを切り替えてその後も闘い、夜明けとともに始まった決闘は日暮れより少し前に終わりを告げた。

 

 族長「では番を持っていない雄竜たちよ。今日は我が娘のリンがこの結果を参考に成竜の儀の相手を、もしくは番を決める。勝利の数の順に並ぶのだ。」

 

 先頭はラングではなく、長期戦を制したダムドだった。

ラングは2番目で、その後にサーム、エトと続いている。

 

 「見て!ルークがあんなに前にいる!」

 

 「本当だ!成竜が9匹いるのに!しかもあのルークが!すごいや。前に────」

 

 ルークの順位に周りが多少ざわつくが

 

 「──4匹しかいない!」

 

 ルークの順位は5位。前後の順位は皆10歳以上歳上の成竜で、それを考えればかなり良い成績なのだがルーク自身は暗い顔をしていた。ラングも同じで、それらとは対照的に1位のダムドはリンと子作りできると嬉しさを隠せていない。このダムド、順位だけでなく年齢も一番上であった。何故ならリンと番になって一族を率いたい一心で今まで番を求めなかったからだ。

 

 族長「よし、並んだな。リンがどの竜を選ぶかは彼女の権利。異議を申すのは禁じる。ではリンを呼べ。」

 

 ダムドとボルグを見比べながら族長は話し、そして別の場所で待機していたリンが飛んでくる。

 

 「リン。今回の結果だ。どの雄となら子を作りたい?」

 

 リンは雄竜の列を見渡すと

 

 「5位だったの!?すごいじゃない!」

 

 と言ってリン以外の目が点になるのをお構いなしにルークに飛び付いた。ルークはまさに石になる。

 

 「え?ちょ…え?」

 

 「やっぱり見かけ倒しなんかじゃなかったんだわ。だって狩りの時のあなたなんて、獲物が逃げる隙がほとんどないくらいだもの。きっとあなたは相手を傷つけるのが怖いのよ。今日だってあなたは勝った相手にすらかすり傷もほとんど与えてない。」

 

 「リン…?」

 

 「私ね、あなたが私と番いたいって言ってくれたときすごく嬉しかったの。確かにラングはとても強いし好きだわ。でもそれは良いお友達として。あなたは特別なの。だから…」

 

 1度深呼吸して

 

 「あなたを選ぶわ。初めて交わる雄だもの。やっぱり一番親しいあなたが良い。」

 

 「でも君のお父さんが3位より上って…」

 

 「さっきお父さん自身が言ったでしょ?私の判断に誰も異議は認めないって。実力は5位だけどきっとあなたの気持ちは一番強いわ。」

 

 そして頬が触れ合う寸前まで近づけ囁くとルークはさらに驚き、すぐ真剣な顔に、若干涙目になって軽く頷いた。

 

 「わざわざ決闘で決めたのはね、そうするばきっとあなたは焦ってくれるって思ったから。私、族長の子だから前のあなたのままだと、私は良くても周りが納得しないんじゃないかって。だからあなたが頑張ってきたことを少しでも証明できたらな、て思ったのよ。」

 

 「…そうだったんだ。ありがとう。大好きだよ。」

 

 「私も。やっと1つになれるわね。」

 

 周りが騒然とする中2匹はピッタリ抱き合い、しばらくしてリンは

 

  「私はルークをただの成竜の儀の相手じゃなくて…番に選びます。ルーク、私をあなたの番に…あなたの妻にして。ずっと一緒にいて。」

 

 "私の"番ではなく"あなたの"番と表すことでリンがルークに身を委ねることを示している。

 

 「異議は認めないんでしょ?お父さん。」

 

 「…あぁ。確かにそう言った。ルークも以前を考えれば眼を見張る成長ぶりだ。だがなリン、我は3位以上の雄に子種を仕込んで貰えと───」

 

 「そんなことを言っては駄目よあなた。」

 

 口を挟んだのはリンの母親である。

 

 「お前…」

 

 「あの子は将来の族長を産むためだけにいる訳ではないわ。あの子も、ルークも互いを想っている。それだけで十分。子種を仕込むなんて、そんな風に言わないで。」

 

 そしてリンの母親はルークをみて

 

 「それに力も十分だと思いますけどね。この5年でここまで成長できて、彼だってまだとても若くて肉体的にも成長するのだからもっと強くなるでしょう。見かけだって母親の美しい鱗を受け継いでいるし、脚の悪い母親をずっと気遣ってきた優しさもある。加えて娘を愛してくれるのなら申し分ないじゃありませんか?」

 

 「…だがせめて成竜の儀は成竜と───」

 

 リン「あれ?同じ竜としか交わっちゃ駄目って言ってなかったっけ?」

 

 「う、うぬ…だが初めての交尾が辛いことはお前も他の雌の成竜の儀を見て知っているだろう?馴れた雄相手でも苦痛があるというのに──」

 

 「私ね、ルークと交尾したいの。お父さんにも言ってなかったけど例えルークが最下位でも選ぶつもりだったし、痛くても良いわ。どんなに痛くてもきっとルークは乱暴にするつもりなんてないんだろうし、最初のうちだけなんでしょ?彼と一緒になれるなら安いものよ。これでも駄目?なんなら族長にならなくたって良いのよ。リトもいるし。」

 

 遠回しに認めてくれないなら里を出ていく、と言っているのだ。

 

 ルーク「リン!それは…」

 

 言いかけて、リンがルークの口元を舐めたので止める。無論キスの誘いである。少し周りを見て迷うもリンがさらに舐めながらクルルッと鳴くのでリンと交尾の次にやりたいと思っていた深い口付けを交わした。

 

 「…」

 

 「あなたの負けよ。娘を手放したくない悪足掻きはやめて娘の門出を祝ってあげて。」

 

 糸を引いて離れ、堂々と額同士を擦り合わせ互いに甘えた鳴き声を出す2匹を見て他の雄竜達も、ラルグも認める声を上げる。

 

 「…分かった。ではこのまま儀式に移ろう。皆、彼らを囲め。」

 

 トトリの時と同じように、一定の距離を持って2匹を囲む。口付けですでに上気していたためかリンが仰向けになっただけでスリットから雄槍が伸びて固くなる。リンを心配する竜もいたが口には出さず静かに見守っていた。

 

 「フゥン…ハァ…」

 

 秘裂を念入りに舐められ喘ぐリン。ルークはその味と匂いで早く突きいれたいという欲が高まるのを必死に耐えて、少しでも解れるように舐め続けた。

 

 「フアァゥ…ルーク……」

 

 その一言で欲が勝ると舌を抜き、覆い被さる。

 

 「い、挿れるよ…」

 

 「うん。」

 

 口を開けた秘裂に先端をあてがい一気に押し込んだ。

 

 ズブブ…!

 「クアァッ!」

 

 リンが快感で上げた声でルークは間一髪、半分ほど入れたところで挿入を止める。

 

 (危ない…思いっきり突いちゃうとこだった…)

 

 今にも消し飛びそうな理性をどうにか保ちつつ、ゆっくり侵入を再開。

 

 ズズ…

 「うぁぁ…ルーク…クゥ…」

 

 途中でリンの顔が歪んで背に回している腕に力がこもる。だが挿入を止めることはできず、とにかくゆっくり入れろと自分に言い聞かせ、根本までリンに沈めその先端を子宮口にめり込ませた。

 

 「リン…痛い…?」

 

 首を横に振ったもののルークの大きな雄槍を完全に入れられた激痛で涙を溢す。だが同時に自分を貫いているそれを強く感じた。

 

 「リン…治まったら…言って…」

 

 リンの膣がギチギチと締め付けてくる中、腰を動かしたいという本能に必死に抗いリンを抱き締め彼女の尻尾に自分の尻尾を絡める。

 

 トトリ「なんだ?もう出しちまったのか?」

 

 カーラ「まさか。それにしては匂いがしないし、彼なりに気遣ってるのよ。」

 

 ラング「でも最初から全部入れるなんて…普通だったらそんなことしないのに…」

 

 実際抱き締めただけでは腰が勝手に動いてしまいそうなのでそうしたのだった。リンの涙を舐め取り、首や顔を舐めたり体を擦ったりして痛みが和らいでくれるようにしながら自分の気を紛らわせる。しばらくすると

 

 「ルーク…無理しないで…痛くても…嫌いになったりしないから…」

 

 「でも…」

 

 「それに…痛いけど……」

 

 恥ずかしそうに目を逸らすと

 

 「はやく…満たされたいと…思うの…」

 

 本能が牙を向いているのはルークだけではないのだ。痛みはあれど好きな雄と1つになったことで、彼が侵入している最奥が更なる物を求めて疼いている。誘うように彼の筋肉質な体を撫でると遂に堪えきれなくなったのか

 

 「じゃあ良い?」

 

 と切なげな目で聞いてきたので

 

 「えぇ。少し治まってきたしね。」

 

 と答えて彼の首筋を舐めた。

 

 (ゆっくり…ゆっくり…)

 

 尻尾の絡まりを解いてなるべくゆっくり腰を引き、ゆっくり入れる。背筋がゾッとするような快感がリンを襲った。

 

 「ハァァ…」

 

 「ウグ…」

 

 再び全て収めるとリンの膣が波打ち、ルークの最後の理性を徐々に消していった。

 

 ズン…ズン…

 

 「アンッ!…アウッ!…ルゥッ…クゥッ!…ウッ!…どう…?」

 

 「ハァ…ハァ…気持ちいい…」

 

 初めてにしては珍しく雌を気遣っていたのだがその分行為は激しさを増していき、下がってきた子宮をリンが痙攣するほど強く突き上げる。

 

 「ギャアゥッ!…ギャッ!…アウッ!」

 

 「グ…クゥゥ…」

 

 2匹は涎を飛ばしながら喘ぎ(これは普通)、リンはいつが絶頂か分からなくなるほどの快感を味わい、そしてまたルークも堪えていたものが込み上げ抑えられなくなると最後に思いきり突いてそのままリンを力一杯抱き締めた。

 

 ブシャアッ!…ブシャッ…ドク…

 

 「クアァ!アウゥ…アゥ…」

 

 「ハァ…ハァ…ンム…」

 

 リンの開いた口に自分の口を重ね、尻尾を巻き取る。リンも応えながらその熱い精を感じ幸福感に包まれた。密着部から愛液と精液が漏れ出すが構わず続け、射精が終わってもしばらくそのままでいる。仮にも儀式なのでまだ固い肉棒を引き抜き、ブチュ、という音と共に流れ出た粘液を丁寧に舐めとると

 

 「リン…大丈夫?」

 

 「えぇ…」

 

 仰向けになったままで、時々足腰を痙攣させながら動かないリン。

 

 「どう…だった?その…ごめん。」

 

 「平気よ。とても気持ちよかった。腰が抜けちゃったわ。」

 

 リンが痛みではなく快感に震えているのには皆驚いた。ルークが起き上がらせると寄り添って甘える。

 

 「ありがとう。お陰で痛いのは最初だけだったわ。ずっと一緒に暮らしましょう、ルーク。」

 

 「うん。リン…あ、愛してる。」

 

 恥ずかしげに言うとリンは嬉しそうな笑みを浮かべ口付けをねだり、離れると

 

 「私たちは番になります。良いでしょ?お父さん。」

 

 「今更文句など言うものか…」

 

 終わりが宣言された後、トトリの時と同じように双方の友達に囲まれる。リンは話しながら甘えていた。

 

 「良いなぁリン。私の初めては痛かったのにすごく気持ち良さそうだった。」

 

 「えぇ。腰が抜けちゃったもの。」

 

 と言うと別の雌竜が

 

 「あんなに激しくされて本当に痛くなかったの?」

 

 「初めはとても…でも彼が待ってくれたお陰でそのあとはだんだん痛くなくなったわ。」

 

 そう言ってリンが注ぎ込まれた腹を撫でながら夫にに寄りかかるとルークは恥ずかしそうな顔をする。

 

 ラング「…そりゃあ初めてであんなに気遣えるルークに勝てるわけないっての。そもそもリンが決めたんだ。文句は言えねぇ。トトリにもルークにも先越されちまったな…まぁ、リンがルークに飛び付いた時のダムドの顔は見物だったがな。」

 

 そのダムドはそそくさ塒へ戻っていった。

 

 トトリ「何であんなに待てたんだ?」

 

 ルーク「僕の父さんは母さんを凄く苦しめたんだ。気遣い無しに無理矢理交尾させられ続けて辛かったって。だから僕は…リンにそうさせたくないって思って…」

 

 「ね?私がルークを夫にしたのは正しかったでしょ?」

 

 「違いないわね。おめでとう2匹とも。」

 

 みんなが2匹を祝福する中

 

 リト「姉さん達おめでとう!ところでさ、ボルグさんが抱えてるあの綺麗な竜ってもしかしてルークのお母さん?」

 

 え?、とリトが示した方向を見ると、ボルグに支えられ、片足を引きずりながらゆっくりとこちらへ向かってくる母親の姿があった。動けずとも美貌は健全で、滅多に出歩かないために存在しか知らなかった周りの竜の注目の的になっている。

 

 「母さん!来てたの?」

 

 「もちろんよ。息子の晴れ舞台を見逃す訳にはいかないと思ってボルグに頼んだの。おめでとうルーク。幸せになって。」

 

 「晴れ舞台?なんでそんな…もしかして…」

 

 リン「今朝言ったわ。あなたを番に選ぶこと。」

 

 ボルグ「で、今日はどちらの巣で過ごすのだ?さすがにまだ塒までは準備してないだろう?」

 

 リン「そうね…私はどっちでも良いけど、うちにはリトもいるし、私もあなたのお母さんとはあまり話してないからあなたの塒が良いんじゃない?」

 

 ルーク「良い?母さん。」

 

 「もちろんよ。」

 

 ということでその日はルーク達の塒で一夜を明かす。翌日、狩りの後にルークの母親とボルグの塒からそう遠くない場所に自然にできたちょうど良い洞穴があったので、そこに巣を作った。各々の親と固く抱き合って別れ、新しい巣に寝床を作ると

 

 「ルーク。」

 

 妖しげな笑みを浮かべながら夫を呼んでそこに仰向けになる。白い下腹部に桃色の筋が浮かび上がり微かな匂いが広がった。

 

 「良いの?」

 

 「勿論よ。」

 

 じっくりほぐすと雄槍で貫く。

 

 「痛くない…?」

 

 「ほんの少し。…これだけでも気持ちいいくらい。」

 

 「リンの中も…凄いよ。うねってて、このままでも出せそう。…ねぇリン。僕達、強い子供できるかな?」

 

 「あなたとの子だもの、できるわよ。それにきっと優しくて美しい竜になるわ。」

 

 「そうだと良いね…なんかごめんね。僕がこんなこと言えないよね。」

 

 リンはすぐにその意味を理解し

 

 「何言ってるのよ、確かにお腹を痛めて産むのは私だけど、あなた無しじゃ出来ないことよ。」

 

 と言って軽くキスをし微笑んで促す。

 

 「うん…じゃあ動くね。」

 

 今度は理性を消すことなく腰を大きく動かす。リンの方も痛みはすぐに消えたようで恍惚とした顔で喘いでいた。

交尾中の雄は無我夢中になっているようで実は理性が飛んでいない限り警戒心も高まるのだが、それによってルークも外に何者かがいることを察知。だがそれが敵ではないことに気づくと妻となったリンの口を貪るように口付けを交わして行為を続けるのだった。

 

 「んムゥ!…ムゥ!…んん!!んん~~!!」

 

 彼女の奥底に精を放てば彼女の膣がギュッと締まり、同時に向こうからも僕の顔を引き寄せる。注ぎ終わって長い口付けを解くと

 

 「良いわ…満足するまで続けて…」

 

 

 

 大事な、自慢の娘が最弱だった雄に取られ、いてもたってもいられなくなり彼らの新しい巣へ向かうと早速あの独特な匂いが漂ってきたので目を凝らして見てみれば娘は夫に選んだ雄竜、ルークに組敷かれその雄を受け止めている。一瞬、ルークと目があったような気がした。

 

 (気づかれたか…?)

 

 だが行為を止めることなく、娘の口を奪うと密着した状態で動きを止め、娘もルークを引き寄せ自分が見たこともないような幸せそうな顔をする。

 

 (見せつけてるのか?…いやまさか…)

 

 やがて娘の方から甘えた鳴き声を出すと再び動きだしたのだった。

 

 「フン………娘を…幸せにしてやれ…」

 

 

 

 「ハァ…ハァ…アウ…」

 

 最後の1滴まで注ぎ、萎えかけた肉棒をズボッと抜けば彼女がその刺激と逆流する熱い精液の感覚に小さな声をあげる。

 

 「平気?」

 

 「えぇ…気持ちよかったわ…とっても幸せ…満足できた?」

 

 「もちろん。そのさ、リン。」

 

 「何?」

 

 「明日も…良い?」

 

 「駄目なわけないでしょ、番なんだから。子供を産める日が待ち遠しいわ…。お休みルーク。」

 

 「お休み。」

 

 軽く甘え合った後、2匹は抱き合い満足気な顔で眠りにつくのだった。

 

                 終わり




たまにはこういうありふれた展開も良いですね。
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