削除しましたが、気が変わって再投稿しました。
この作品は、このシリーズでは一番古いものとなっています。一部を除き目次にて上の作品ほど新しいものです。
(ココハ…ドコ…?)
気がつけば僕がいた。
(ボクハ…ナニ…?)
でも自分が何なのか分からなかった。
(クルシイ…)
最初に感じたのは圧迫感。目を開けると自分が何かの下敷きになっている事が分かった。
「タダリ様!?チョウ様!?そんな…こんなことが…これは…天罰とでも言うのか…?」
「待て、何か動いていないか?」
何かはわからないが、この圧迫感から逃れるには助けを求めなければならない。
「タス…ケテ…」
「今の聞こえたか!?」
「あぁ!退かせ!」
圧迫感が無くなり…数頭の生き物が現れた。それが竜であると何故か自分は知っていて、そのとき自分も竜であると分かった。
「いた!生きてる!術自体は成功したのか…まだ卵から孵ったばかりぐらいの成長しかさせてないのにもう話せるとはな。」
抱き上げられ、連れていかれた。その時、確かに血だらけの白竜がいて、その竜と目が合ったのは覚えている。
それから僕は世話をされ、育てられた…
「その程度か!さあ、来い!」
「クウゥゥッ!」
僕はほぼ毎日鍛えられている。大人の竜相手に組手をしたり、術を使ったり色々だ。この里のすべての仔竜がそうするわけではない。他の仔竜は友達どうしで遊んだり、狩りの練習をしたり、ごく一部仔竜は術を学んでいるがここまで本格的に修行をしているのは僕だけだ。理由は簡単。そのために"造られた"から。僕には里の未来が懸かっていると、そのためにはどの竜よりも強くならなければならないと、常々そう言われている。でも僕だって心がない訳じゃない。
「ねぇ…見てないで一緒に追いかけっこしよーよ。」
「えっ…良いの?」
「もちろん!たくさんいた方が楽しいもん!」
修行の合間にこうして遊ぶこともあった。初めは遠くで見てるだけだったのだが、ある日見つかって誘われて参加してからは何日かに1度遊んでいる。修行終わりの、疲弊した体も遊んでいるときは軽かった。大人達はそれにおおいに驚いたようで
「みて、あれ。あれが笑って遊ぶなんて。」
「本当だ。あれでダダリ様とチョウ様を殺してなければ普通の子だな。」
長老はあまり気にくわないようで
「フン…魂の無い化け物が…」
とよく言っていたけど慣れていたし、遊ぶのは楽しかったので気にしなかった。
「じゃあまたねー。修行頑張ってねー。」
「うん!」
僕を友達にするのを親達は嫌がっていたけど竜の子供とは無邪気なもので、生まれや存在意義など関係ない。楽しければそれで良い。そんなことで僕には友達はたくさんいる。だから特別不幸には感じなかった。そして僕は独りで塒に戻り、翌日の修行に向けてすぐに寝る。
そう。僕には父も母もいない。寝るときも独り。慣れてはいるが、他の友達が家族と寄り添って寝ているのを羨ましいと思っていた。やはり心も体も求めているのか、度々夢を見る。自分と同じ、純白の鱗を纏った両親に囲まれている夢だ。しかし時としてそれは悪夢に変わってしまう。
「…えせ」
「く、来るな!」
「俺…のた………いを…か…せ…」
自分の一番古い記憶にある、体の至るところをえぐられ、爪はおられ、片目を潰されたあの白龍がおぞましい姿で迫ってくる夢。そんな夢を見た後はよけい家族が恋しくなるのだった。
僕が生まれてから40年ほどたった頃、僕はまだ成竜ではないが1対1だと里の成竜には負けなくなった。そうなると修行は1対3ぐらいになる。そのせいもあってか僕はどんどん強くなって、長老はもう少しで僕に役目をくれると言ってくれたのだった。その役目とは。それは僕がある小国の王を殺すこと。その国はかつては人間の国だったが、あるとき人間が竜に手をだし返り討ちにされて逆に支配された国で、他に例のない、竜が支配する人間の国だった。要はその小国が欲しいのだ。そのために僕は、かなり強い法力を持っていると言われる王と女王を殺すのだ。この頃になるともう遊ばなくなった。まだ成竜ではないけど幼竜でもない。年上の友達の中にはすでに番を持っている者もいて、長老はそれを守るためにもお前がやらねばならないと言われた。もちろんそれがただの言い訳というのも理解している。でもやっと与えられた役目だし、みんなが楽になることには変わらない。
僕が60歳になったとき、ついにそれを実行するときが来た。方法自体は簡単。王と女王は巨大な宮殿にすんでいるし、大きな力を持っているならば、法力の上位互換とも言える通力を使いこなせる僕が感知することができるので居場所は簡単にわかる。後は寝込みを襲うだけだ。
人間の造った建造物に侵入するなど容易い。結界もあったが通力ですり抜けた。感知できる大きな力を頼りに探せばあっという間に王達が寝ているであろう豪華な部屋に着いた。ずっと里で、洞穴の塒で暮らしてきた僕にとってこの国は驚きの連続で、長老が欲しがるのも分かる。そして僕は役目を全うするべく、気を十分に練って扉に張ってある最後の結界を通り抜けたのだった。
─ ─ ─ ─ ─ ─
私は何代か前が奪ったこの国の女王。今は王である夫と娘でこの宮殿に住んでいる。政治は極めてめんどくさいが、手を抜くと民衆や下僕たちが反乱しかねない。人間ごとき殺すのは容易いが、集団で知恵を練られるとかなり厄介だ。まぁ、その面倒なことを覗けばここでの暮らしは快適なのでその代償にとでも思っている。
娘は今年で40歳。竜からすればまだ子供だが、稀に見る美貌を持っていて、番になってくれと申し込む雄が毎日数匹現れる。なかには1年近く通い続ける者もいて、娘や夫と共にほとほと困り果てていた。
今日は夜が更けた今も夫はその雄の相手をしているので先に娘と寝ることにした。
「全く…娘が綺麗なのは良いがあの雄どもには参ってしまうよ。」
「立ち入り禁止にすればいいじゃない。私だってあんなよく分からない雄と番になりたくないわ。」
「そうだろうねぇ。それが正しいよ。…さ、今日は寝な。」
そんないつもの会話をしているとき、突然扉が開いて白く輝くものが飛び込んできた。
「なっ!し、神龍!?」
白鱗を携えるそれはまさしく神龍。それが明らかな殺気を放って襲いかかってきた。咄嗟に殴るがカウンターを食らう。鉤爪が喉元をかすった。
「グッ…何のようだい!?」
法力で拘束しようとしたがあっさり弾かれ、代わりに私が見えない力で飛ばされた。
(バカな…この私が!?)
と、無数の黒い帯のようなものが部屋の壁から生え、私を拘束する。
(まずい…これはまずい…)
法力で対抗しようにもできない。力を完全に抑え込まれてしまった。これが通力の…神龍の力か。
「や、やめ──」
娘が止めに入ろうとするも吹っ飛ばされ、いよいよ私の首に、通力を込めた爪を降り下ろそうとしたとき、
「やめてぇぇぇ!」
娘が絶叫した。無駄、もう終わりだ。そう思ったのだが…その爪は寸止めされた。何か恐ろしいものでも見るような目付きで娘を見つめる。もう一度こちらに向き直るもその目には大きな迷いがあり…と、扉が開き夫が入ってきた。その神龍はハッと振り向くが、既に夫は気を練っていて、法力で黒い帯を消し去ると神龍が慌てて私から距離をとろうとするも時既に遅し。顔面を殴り飛ばしてふらついたところをさらに渾身の鉄槌で追い討ち。神龍は気絶して動かなくなった。
─ ─ ─ ─ ─ ─
気がつけば牢にいた。手足と尾が鎖で縛られている。封印術でもかかっているのか気を練ることができず、そもそも薬か何かで弱らされているのか力が入りにくく弾くこともできなかった。
「おや…気がついたかい?」
声の方をみれば翠色の、暗殺対象だった女王がいる。
「単刀直入に聞こう。何故私の命を狙った。」
「……………グッ!」
すぐに答えないでいると腹を殴られた。
「もう一度聞く。神龍であるお前が何故私の命を狙った。子供を拷問するのは趣味じゃないんだ。早く答えておくれ。」
「…そう言われたから。」
「誰に?」
「長老。」
「長老?神龍の?」
「違う…」
「他の里の竜の命令を聞いたと言うのかい?」
「その里で育てられた…」
「…で、どこにある。」
「南西…」
「最初黙ってた割りには随分ペラペラ喋るねぇ。逆に怪しいよ。まぁでも確かに南西には妙な術を会得したとかいう竜のいる里があったかね…。まぁそれは後で調べるとして、お前、これで放されると思ってないだろうね?」
「…殺して。」
ここで女王の目付きが変わる。
「…ほう。」
「殺して。」
「なんだ、そんなに生きるのが嫌か。」
「…早く…殺せ。」
「…お前には教育が必要らしい。おい、あれを持ってきな!」
外で人間の返事が聞こえると共にバタバタと走ってく音が聞こえた。戻ってくると何やら口の長い容器を持っている。
「口を開けろ。」
「…」
それが毒だということはすぐに分かるが、前の言動から死ぬものでもないということも分かる。
「開けろ!」
「…」
頑なに口を閉ざしていたが、ドスッと腹を何度か殴られ、耐えきれず息を口から吐いてしまうとこじ開けられてその細長い容器の口を突っ込まれた。
「ムゴォッ…グフッ…ググ…ング…ング…」
勢いよくかなりピリピリする液体を喉奥に流し込まれ、抵抗むなしく無理矢理飲まされてしまう。
「ング…ゲフッゲフッ…何を…」
「すぐに分かる。お前みたいな愚か者にはぴったりの薬だ。…っと、そうはさせないよ。」
舌を噛もうとしたので慌てて手を突っ込んで防ぐ。首を振って抵抗したが、術で上顎と、舌と下顎を別々に帯で縛ると大人しくなった。
『早く殺して…』
「おっ、テレパシーもつかえるのか。そいつは便利だ。そしてまだそれを言うか、愚か者め。あたしはあんたみたいな自分の命を何とも思わない奴を見ると腹が煮えくり返るんだよ。まぁ、あの薬を飲めばそんなこと言えなくなるだろうさ。あくまで"普段は"だけどね。薬の効果が効いているときはさぞかし死にたくなるだろうねぇ。」
『…』
と、徐々に体に異変が起こり始めた。最初はお腹の辺りがピリピリし始め、それが全身に広がりそしてそれは痛みに変換された。思わず特殊な鎖をガチャガチャとならしながら身をよじる。
「効いてきたか。その薬はね、全身の痛覚を最大限興奮させるんだよ。自分の血流だけで信じられないぐらいの激痛に襲われるくらいにね。その量だと効果時間はおよそ3時間。大抵のやつは1回で言いなりになる。強いやつでも5回で精神崩壊を起こすような薬だ。心配しなくても死にはしない。」
そう言われている間にも痛みは増していく。特に鎖に触れている部分は焼け切られているのではないかという痛みを感じた。だがそんなものは序の口に過ぎなかった。
「ンン…ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!ア゙ァ゙ァ゙ッ!」
「どうだ!痛いか!その痛みもな!生きてないと感じられない代物なんだよ!私の息子はその痛みも感じられない場所に逝っちまったんだ!!だからお前みたいに勝手に死のうなんてやつは許せないんだよ!!」
「ア゙ァ゙ヴゥ゙ゥ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙!!!」
完全に制御不能。全身の筋肉がパニックになってそれぞれバラバラに激しく痙攣したのだ。それによってさらに痛みは増すも気絶することもない。ただ痛い。何も考えることはできないし、それ以外何も感じない。自分の声による振動で痛みは増すが抑えるなんて意識はできない。とにかく一方的な痛みを与えられ続けた。
どれくらい経っただろうか。痙攣が治まり、痛みが引いてきたときにはもう何の気力も無い。ただその鎖に上半身を吊るされているだけ。
「そろそろか…?お、抜けたようだな。」
「…」
聞こえているが喋る気力がないし内容も頭に入ってこない。
「フン…まるで糸の切れた人形だな。流石に子供にはキツかったか?子供と言ってももう後3、40年で成竜になるだろうがね。どうだ、命乞いする気になったか?聞いてやらんでもないぞ?」
「…」
「だめか。まぁ良い。こいつが命乞いしたらまた呼べ。それまでは閉じ込めてろ。」
「はっ!」
(もう少し薬の量を減らしてやれば良かったかねぇ…まぁ今更だが。しかし今のまま放せばまた襲いに来るか自殺しちまうかのどっちかだろうね。どうしたものか…)
2週間後
「で、例の竜はどうなった?」
「いえ、特に命乞いをする様子はありません。」
1ヶ月後にまた例の薬を飲ませたが変わらず。堕ちている訳でもないので拘束を続けた。そしてそれから3ヶ月音沙汰が無いので忘れてしまった。
ある日、全く別の用事で地下牢入口前を通ると、
看守a「なぁあいつほんと面白いよな。毎回『もうやめてアァー』って泣いてるの。」
看守b「あぁ。今までクズみたいな生意気なやつしかいなかったから良い娯楽だ。」
「ん?なんか楽しいことでもあったのかい?」
看守a「女王陛下!いえ、下人の遊びです。」
「そうかい。先週とらえた殺人犯だが様子はどうだ?」
看守b「あぁあいつですか。最初はかなり生意気でしたが薬を与えたら静かになりましたよ。」
その時はそんな話をして終わったのだが、その日の夜、
「ねぇお母さん、前にお母さんを殺しに来た神龍ってどうなったの?」
「殺しに来た神龍?…あぁ、いたねそんなの。あんまりにも音沙汰がないから忘れちまってたよ。」
「呑気だな。あのときはあれほど怒っていたではないか。」
「まぁね。明日にでも様子をみてくるさ。」
そして翌日。久しぶりに薄暗い地下牢へと足を運ぶ。例の龍は、私を見ると泣き始めた。
『お願いもう殺して…』
「変わってないな。私をみるだけで泣くような情けない雄にしては大した根性だ。」
合図をし、薬を持ってこさせる。容器を見ると
『嫌だ!その薬はもうやだ!』
といって泣きながら暴れたが容赦はしない。
『殺してよぉ…殺してよぉ…』
そして痛みに泣き叫ぶ。そこまでは普通だったのだが、30分経つと異変が起きた。
「ガッ……ガッガッ!」
今までは激しく暴れながら悶えていたのに、変な声をだしながら電気でも流されたように痙攣している。疑問に思い、法力で辺りを照らしてみると
「なっ…これは…!おい!こいつに何をした!拷問をしろとは言ってないぞ!」
看守を見ると笑いを堪えてるようにも見える。白龍の体の鱗の無い部分は赤紫のアザだらけで、白目を剥き口からは血の混ざった泡を吹いていた。
「いえ、そのアザは勝手に出来たのです。」
「勝手に…?そんな馬鹿な…ん?待てよ…まさか…」
薬を飲ませて激しく暴れるのは筋肉がパニックになっているせいのはず。
「こいつに何回薬を飲ませた。私のをいれないで。」
「だいたい2、3日に1度ですかね。中々命乞いをしませんし、それにコイツの悲鳴を聞くと他の囚人もおとなしくなるんですよ。あと───」
「対義薬を持ってこい。」
「へ?」
「対義薬である神経麻酔薬を持ってこいと言っているんだ!早くしろ!!」
「は、はっ!」
なんてことだ。屈強な雄竜ですら数回連続で廃竜になるような薬を4ヶ月間飲まされるとは。1、2日間が空いていたとはいえ、これでは釈放どころじゃなくなる。体に出来たアザは恐らく筋肉が切れたからだ。暴走する筋肉を鎖で無理矢理抑えていたからそうなったんだろう。
「おい!しっかり気を保て!楽にしてやるからもう少し我慢しろ!」
口以外の拘束を解いてやり、固い床に法力で
「話せるか?」
『もうころ…して…よ…』
それもそうだろう。これほど長い間苦しみ続けたのだからそう思うのはしょうがない。道理で私を見ただけで泣く訳だ。
「聞かせろ。この薬以外の理由で何故そこまで死にたい?」
『ぼく…は…
「誰もいないって、両親はどうした?」
『いない…』
「死んだとしたら尚更子供の幸せを祈ってるだろうが…」
すると微かに笑った。不気味な笑みだった。
『いないんだよ…もともと存在しないんだ…』
「どういうことだ?」
『前に僕の里に神龍の子供が捕らえられて…服従しなかったからその体の一部をえぐって、後は鱗と、爪と、片目と組み合わせて、治癒術の再生術の応用で僕を"造った"んだ。だから僕に創造者はいるけど親はいない。産まれてないんだ。だから僕はただの贋作。魂の無い、犠牲になった神龍の模造品なんだよ…。証拠に、僕が存在したばかりのときの記憶もある。その神龍とも目があった。』
「そんなことが…そんなことを…していたのか…!」
私は相手が嘘をついているかを見破る力を持っている。そしてこの子は嘘をついていない。
「だがまて、お前がただの作り物なら、あのとき何で私に情けをかけた。何故命令に背いた?」
『欲しかった。』
「え?」
『僕にも友達はいた。友達には親がいる。僕も…本当は…家族が…欲しい…あなた達が…羨ましい…』
「理由になってないぞ?それじゃ私の娘を殺す理由じゃないか。」
『夢をみる…家族がいる夢…とても温かくて…落ち着く夢…そのときの僕はとても幸せ…だから──』
「だから理由になって…お前まさか私じゃなくて娘に情けをかけたのか?私の娘に私という温もりを失って欲しくなかったからか?」
ゆっくりと頷いた瞳には先程とは違う涙が浮かんでいる。
『親を失えば子供は悲しむ…子供を失えば親は悲しむ…でも皆殺しにする勇気は僕にはなかった…』
「そうかい…」
自分でも無意識に私はその子を翼で抱いていた。
「なぁお前、自殺しないって約束できるかい?出来るならその口のやつも外してお前に"役目"を与えてやってもいい。」
『役目?』
「あぁ。私だけで決められないからまだ言わないがね。出来るか?」
『分かった。』
外してやると
「あ…り…がと」
「…床はこのままにしておく。休みな。」
一応牢に鍵をかけたがあの体では動けないだろう。そして看守に、あの子には鹿肉をすりつぶしたものをやれと言った。
そしてその夜、家族団らんの時間に思い付いたことを話してみた。
「どうしたサラ、話とは?」
「ベルデの番相手についてなんだが、あの白龍にしようかと思ってね。」
「あの白龍!?我々を襲った?」
ここで聞いた話を繰り返す。
「そんなことが…でも何故あの竜?」
「あの子なら、ベルデをずっと守ってくれるんじゃないかと思ってね。どうだいベルデ。」
「お母さんがそう言うなら良いけど…」
「だが良いのか?確かに見ためも血筋も力も優秀だが、我々を命令1つで殺しにかかってきたのだぞ?それに向こうも何て言うか。その…特殊なのだろう?」
「でも殺さなかった。あの子はきちんと世話をしてやれば良い竜になる。ただ問題は、あの子が受け入れるかどうか。お前のいう通り特殊だ。それも深い影がある。それをどうするかだね。とりあえず番にさせるかどうかは別としても、あの子が受けた苦痛は極刑なんて言葉さえ生易しいくらいのものだ。しばらくは置いてやろう。」
「なら明日私もいくわ。会ってみる。」
そして翌日、あまり好ましくないがベルデを地下牢に連れていき、案の定ほかの囚人、囚竜から色々言われるのを無視してあの白龍のもとへ。だが───
「ヴガア゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!」
叫び声を聞いて駆けつければ看守が面白げにあの龍が苦しんでいるところをみていた。
「また飲ませたのか!?何故だ!?」
「折角の肉を吐いたんです。」
「それほど傷ついているということじゃないか!早く麻酔を持ってこい!」
治まる前に吐血までしてしまったので医術師も呼んでくる。重度の不整脈を起こしていて、なんとか峠は越えたが油断は出来ないとのことだった。その後その白龍は空いている部屋の竜用ベッドで寝かせてやった。
「う…ん?」
「あ!気がついたのね!もう大丈夫よ。でも動かない方がいいわ。全身のいろんな筋肉が切れてたって。」
目を覚ましたので嬉々として話しかけるベルデ。最初は渋々介抱していたのだが、時折うなされたり痛みに呻いたりしている姿をみていつの間にか進んで世話をしていた。
「君は…あのときの…」
「ベルデよ。あなたは?」
「名前…無いんだ。あのとき吹っ飛ばしてごめん。」
「全然気にしてないわ。お母さん呼んでくる。」
(暖かいな、ここ。)
自分は人間の寝床を竜用に改造した寝床にいるらしい。部屋にはこれぐらいしかなく清潔だった。しばらくしてベルデが女王である母親を連れてくる。
「目が覚めてよかった。どうやら私が目を離した隙に人間達がお前をいたぶっていたようだ。よく正気を保てたな。本当にすまない。ゆっくり休んでくれ。」
「はい…」
「もうお前のしたことを咎める気はない。そういえばなんて言うんだい?」
「名前付けてもらってないんだって。」
「そうかい…なら考えておこうかねぇ。」
「付けて…くれるんですか?」
「だって不便だろう?」
「ありがとう…それで、役目は?」
「お前が回復してからだ。」
そう言って去っていった。
「ねぇベルデ、どれくらい眠ってた?」
「1週間くらい。死んじゃったかと思った。なんかあったら言ってね。」
そう言って寄り添ってくれる。
「どうしたの!?」
白龍は泣いていた。
「いや…誰かに寄り添ってもらったことなんて無かったから…」
「そう…じゃあしばらくこうしててあげる。」
「ありがとう。綺麗だね…僕の里にも綺麗な竜はいたけど、君には到底敵わないや。」
ベルデは深緑の、森を宝石にしたような鱗に覆われており、角はない。意外と親しげに喋ってくれたのがちょっと嬉しかったベルデである。
「ありがと。あなたも負けてないわ。」
対する白龍はその名の通り純白の鱗を纏い、空を映したようなブルーの目、頭には小さい角が2本生えていた。自分より20歳以上年上の彼だが、何だか自分よりずっと幼く感じる。
(この竜との子供を産むのかー。まぁその辺の雄よりよっぽど良いや。)
白龍は順調に回復していき、四足歩行でゆっくりなら歩けるようになり、そして"月"を意味する「ホルド」という名前もつけられた。彼はまるで幼子のように扱われていて、まだ誰にも完全には信頼されていなかったがあるとき一変する。
(ベルデ、大丈夫かな。)
1週間前に、体調を崩したからとそれきり会ってない。サラも最近全く姿を見せないので心配になる。ふと、胸騒ぎがしてベルデの部屋の方向をみた───
サラ「ベルデ…しっかりしておくれ…」
ホルドには伝えてないが、ベルデは原因不明の病で危険な高熱をだし、今や意識も朦朧としていた。竜は滅多に病気にはならないので毒とも疑ったがすぐに違うと分かる。何故なら
王(レオ)「これは、バンの時と同じ…」
幼くして死んだ息子。それと全く同じ症状なのだ。苦しい苦しいと言いながら意識を無くし、そのまま逝ってしまった。そのあとベルデが産まれて少しは傷が癒えたころだったのだが…。
医術師「残念ですが、恐らくあと数日で…」
サラ「何故…何故お前まで…模造品とて神龍を痛め付けた罰とでも言うのか…。」
コンコン…
召し使い「あの…ホルド君がどうしても入りたいと言うのですが、よろしいですか?」
ヨロヨロと入ってくるホルドを複雑な気持ちで見つめると、あることに気がついた。
(目が光っている…?)
微かだが、その青い瞳が光を帯びているように見えた。と、
「彼女、このままだと明日の夜中ぐらいに死ぬね。」
医術師「な、何故そこまで細かく…」
次の言葉に誰もが驚いた。
「僕なら治せる。」
サラ「なん…だと?」
「でも力が足りない。今の僕じゃ失敗してしまう。だから気を分けてくれませんか?」
レオ「な…何を馬鹿なことを、そんなことをしたら…」
抵抗されてしまう。まだホルドが襲いかかってくるという可能性は排除できなかった。しかし娘をみて言葉を切る。サラとレオはしばらく考えた。ホルドの力はすでに自分達を越えていることは確か。下手に気を許して娘を質にとられたり、もしくは気をすべて吸われてしまうかもしれない。先に口を開いたのはサラだった。
「選択の余地はない。私の気を分けてやる。」
ホルドに手をあて気を送る。目の輝きが増し、不安定だった姿勢が安定する。しばらくして
「もういいです。」
「フゥ…どうやって治すんだい?」
「一度命を取り出して浄化します。」
「なに!?」
「呪われてるんだ。直接命を
レオ「呪い…だと?どうして分かる。」
「僕には分かる。失敗すると命を吹き消しかねないから、何があっても静かにしていて下さい。」
そう言ってベルデを仰向けにするとその胸に自身の両手をあてた。ホルドの体がまばゆく光り、その手をそっと離すと黒い光のような、炎のようなものが付いてきてベルデの呼吸がゆっくり止まる。何とか声を抑えて見ていると、ホルドがそれを口に近づけフゥッと息を吹き掛けた。神龍の仙気を浴びたベルデの命の外側が剥がれるように消え去ってまばゆく輝く灯火となり、それをベルデの胸に押し当てると光は消え、代わりにベルデが深く呼吸する。
「これが…神通力…神龍の力か…」
先程までの苦しそうな呼吸は一変。まるで寝ているような呼吸に安堵と驚きの息が漏れた。
「これでもう大…丈…ぶ…」
やはり大きな力を使ったのかベルデに覆い被さるようにしてホルドも意識を失ってしまう。
レオ「ベルデの番にするという件は賛成せざるおえないようだ。」
サラ「こんな子をいたぶっていたんだねぇ…しかし誰が呪いなんか…。」
今回はホルドは1日で目覚め、ベルデもあの後すぐに目覚めて彼に礼を言った。その後ホルドの体もほとんど元通りになったところでホルドのいる部屋に行き、例の件を持ちかける。
「ホルド、良いかい?役目の話だ。」
「何ですか?」
「私の娘は、このあと私たちの間に雄が生まれない限りこの国の王になる。そのためもあるし、本人のためにも少しの間ここを離れて人の街や森で暮らして欲しいと思っているのだが、さすがに1匹でさせるのは心配だ。何せ私達の、王の娘だし、あの美貌だからねぇ。かといって護衛を付けたら本人もいづらいだろう。」
一呼吸し、
「そこでだ。ベルデが雌として狙われるのを防ぐため、そして自然な、頼れる護衛をつけるために番を持たせることにした。その番はホルド、お前が適任だと私達は思っている。私達の娘を番として貰ってくれないか?」
「え…?番…ですか?」
「あぁ、そうだ。正真正銘の番さ。護衛じゃない。あの子と共に暮らし、いつかはお前との子供をあの子が産む。…考えてくれないか?お前ももう知っていると思うが美しいベルデをめぐって毎日雄が訪問してるんだ。そんな頼りない雄共に娘はやれない。ベルデはお前を介抱し、そしてお前に命を救われた。お前なら私達の娘を託せる。」
「それは嬉しいけど…でも…」
「でも…?」
「僕は1度あなた達を殺そうとしている。それに僕は贋作だ。ベルデは本物の竜と番になるべきだと僕は思う…」
「…」
(やはりそう言ってくるか…)
本物の竜か…本物の竜だけど娘を欲望だけで欲しがる竜か、模造の竜で深すぎる闇を抱えているけれど娘のことをちゃんと考えてくれる竜か。
「そうかい…でもあんたを介抱したのはこれだけが理由じゃないからね。それだけは言っておくよ。」
[newpage]
その次の日、ベルデからも申し込んできた。どうやら母親が僕に聞いたことを知らないようで、
「ねぇ、私が独りで暮らすって話聞いた?」
「うん。」
「でも独りだと嫌だし護衛がいたら暮らしづらいからさ…その…一緒に来てくれない?そ、その…つ、番としてさ。そうすれば他の竜に狙われないし、あなた強そうだし…ち、ちゃんと子供もつくるし…駄目かな…?」
「うーん…少なくとも僕じゃない方がいいんじゃないかな…君の内面を見てくれる竜もいるだろうし。」
「そう…分かった。」
「ところでさ、ベルデ。」
「ん?」
あっさり申し出を断られてショックだったが平静を装う。
「僕っていつまでいていいのかな。」
「さぁ、お母さんもお父さんも特に何も言ってなかったし、好きなだけってことなんじゃない?私の命も助けてくれたんだし。」
「そっか…何だか悪いな。」
「そんなことないわ。」
その後部屋を後にし、母親と話をする。
「断られたわ。」
「そうかい。お前の美貌は随分たくさんの雄を虜にしてきたというのにホルドの前では無意味か…確かに神龍は愛するものとしか交わらないと言うし、まぁ命の恩竜と恋竜は別ということなんだろうね。」
(愛するものとしか交わらない…か。)
母は何気なく言ったが心に刺さった。その夜、目が覚めてちょっと中庭で夜風にあたろうかなぁと思ったときだった。そこにはすでに先客がいる。ホルドだ。話しかけようとしたがホルドが震えているのを見てやめた。
(また悪夢をみたのね。)
看病している時もよくうなされていて、何の夢かは聞かなかったが、同じ悪夢を何度も見ているらしい。実は自分も悪い夢をみていたのだが、それでふと思い付く。
次の日、私は両親が仕事で近くにいないときを見計らって召し使いにあるお願いをした。そのお願いとは…
「ベルデ様…本当に良いのですか?」
「えぇ。覚悟はしたわ。これはすべて私の自己責任。あなたは何も気にしないで。」
そう言って渡された大きめの杯にはツンとした臭いを放つ液体があった。そう、ホルドを散々苦しめた痛覚過敏薬だ。これで大体3時間は苦しみ続けることになる。
「じゃあ下がっていいわ。」
そう言って召し使いが下がると1度深呼吸し、その毒をすべて飲み干した。彼がどんな痛みを味わったのか、それを少しでも分かりたかったからだ。だがすぐに後悔することとなる。
「─────!!」
声にならない、自分の物とは思えない叫び。この部屋には防音結界を張っておいたので外にもあまり聞こえておらず私は独りで暴れまわった。体の制御が利かなくなり、あちこちに体をぶつけてその度に信じられない痛みが襲って気が狂いそうになる。死にたい、早く死にたい。そう思ったとき、
「大丈夫、すぐに楽になるよ。」
聞き慣れた優しい声。痛みと共に意識も消え去った。
目が覚めると私はベッドでホルドに寄り添われ、翼で抱きしめられていた。
「何でこんなことしたんだい?」
「夢を…見たの…あな…たが薬で…苦しんでいるときの夢…だからあなたの…気持ちを…少しでも分かりたかった…」
聞けば異変に気づいたホルドが通力で私の体の機能を正常に戻してくれたらしい。私は1時間も経たずに解放されたのだ。だがまだ体は痛む。それに──
「寒いだろ?あの薬を飲むとそうなる。」
あぁ、だからこんなふうに抱きしめててくれたんだ。4ヵ月もあの毒を飲まされていたからどうなるか分かるんだ。
「こんなこと…君の両親が知ったら悲しむよ。一応言っとくけどもうこんなことしないでね。」
「そうね…もう少し、いてもらっても良い?」
その日は日暮れまで一緒にいてもらった。そのときの嬉しいような切ないような気持ち。そう。私はホルドが好きになっていたのだ。最初こそ母親に言われたからだったが、今は彼と共に生きたいと本気で思っている。だから断られたときはショックだった。
それからまたしばらくたったある日、
「あの、サラさん。」
「なんだい?」
「今日、大きな満月だから夜に月光を浴びてきても良いですか?」
「あぁ。構わないよ。神龍はそうするのかい?」
「わからないけど、なんかそうすると力が高まるんです。」
日が暮れてからだいぶ経ち、月が高く登ると宮殿の屋上で月光を浴びた。ベルデはやはり諦めきれずに屋上へ続く扉をそっと開いて何か言葉をかけようと考えたとき、
「綺麗…」
月光を浴びた純白の鱗からは言葉で言い表せないような様々な色が反射しており、なんとも幻想的な光景になっていて思わず声に出してしまった。ホルド自身が輝いているようにも見える。
「ベルデ、来たの?」
「何となく…邪魔だった?」
「いや、そんなことない。君の鱗も綺麗に反射してる。」
褒められて顔を綻ばせるが、その心境は複雑だった。
「ねぇ、ホルド。」
「ん?」
「しつこいと思うかもしれないんだけど、番の話。」
「あぁ…」
「やっぱり…駄目?」
「駄目、というより僕は番を持つべきじゃないんじゃないかな…って。」
「なんで?」
「贋作だから。本物となるべき───」
「贋作!?そんな理由なの!?」
「え…?」
「あなたは作り物なんかじゃない!本物の竜よ!あなたの里に捕まった神龍にとっては偽物かもしれないけど竜としては本物だわ!そうでしょ!?」
「でも僕には魂が──」
「そんなの知らない!知らないよぉ…」
気がつけば泣いて訴えていた。
「魂が無くたって心はあるじゃない!私を2度も助けたじゃない!あなたの心臓は!?どうみても本物よ!薬を飲まされたときは凄く不安定で、今はとても力強い。その心臓も偽物って言うの!?あなたは生き物としては本物なのよ!その股間の膨らみだって飾り!?」
「ぼ、僕は…」
「私じゃあなたに相応しくないとか、あなたが私をそういう感情では見れないとかそういう理由なら、諦めるかどうかは別として納得するわ。でもそんな…自分は贋作だなんて…そんなこと言わないで…」
「ごめん…」
泣きついてきたベルデをホルドはただ受け止めるしか出来ない。
「…本当はどうなの?私のこと…」
「僕は…僕…は…」
ベルデはホルドを見上げる。迷いのある、苦しそうな顔だった。
─ ─ ─ ─ ─ ─
サラ「何?喧嘩?」
召し使い「えぇ。屋上でベルデ様がホルド様に向かって泣きわめいていました。一応伝えておいた方が良いかと思いまして。」
急いで屋上へ向かう。言い争うような声は聞こえず、開きかけの扉から覗いてみるとそこには1匹の竜が…いや、二足歩行でぴったりと抱き合っているそれは美しい深緑の竜と純白の竜がいた。ホルドの胸に顔を委ねているベルデの目の端には涙があるが微笑んでいる。ホルドも穏やかな表情をしていた。
ベルデがホルドを見上げるとそれに合わせてホルドもベルデを見る。そしてどちらともなく口を重ねた。それも互いの顔を貪るように見えるほど深く。2匹に愛が芽生えていることは疑いようもない。
(結ばれたのか…本当の意味で…)
振り返ってみればベルデがホルドを想っているような感じはあったかもしれない
糸を引いて離れると、それが切れる前に2匹は額を合わせ、何かを囁きホルドが輝くような、満面の優しい笑みを見せるとベルデも笑って彼の胸に再び顔を委ねた。
『僕は…僕…は…ベルデと…一緒に生きたい…』
それがホルドの本心だった。
『私もそうよ。お母さんに言われたからじゃない。私はあなたが好きなの。』
抱き合いながら
「ずっとこの温もりが欲しかった。」
とホルドがポツンと言うと
「私もあなたの温もりがほしい。」
と言って恥ずかしげに顔を埋める。
「君のお母さんが観てるよ。」
「ほんと?でもちょうどいいわ。お母さんにも言ってなかったから。あなたを好きだったこと。」
振り向かれるとサラは動けなくなる。
「き、気がついてたのかい?」
「うん。口合わせした辺りからだった気がする。」
「そんなときから…まぁいいわ。ならお母さん、わかってると思うけど番になるわ。お母さんに言われただけじゃなくて、本当に。」
「あぁ。分かっているよ。レオにも言っておこう。」
ベルデ「戻る?まだいる?」
「戻ろうか。」
2匹で並んで廊下を歩いているとき、ベルデがホルドの尻尾に自分の尻尾を絡ませてホルドにすり寄っているのに対し、ホルドが恥ずかしげに応えているのを見たすれ違った人達は思わず笑みをこぼしたという。ホルドの使っていた部屋よりベルデの部屋の方が広いので2匹ともそこにいく。そこでもう一度抱き合い、ベルデがホルドの体を撫でながら
「その…知ってるよね…?」
「うん。長老は神龍の力が目当てだから、そのために子もたくさんつくらせようとしてたからね。でもまだ君が初めてだよ。本当に良いのかい?」
「ここまで来て駄目なんて言わないし言わせないわ。」
そう言って離れると彼の下腹部の縦筋の下側にある膨らみを舐めた。すぐにスリットから桃色の大きく厳つい雄槍が現れ、ホルドがやや恥ずかしそうにする。少し舐めた後ベルデはベッドに仰向けで寝転がり、こちらも恥ずかし気に顔を背ける。屋上で口合わせしたときから意識していたせいかベルデの秘裂は既に湿り気を帯びていて、彼女が力を抜けばうっすらと口を開けた。
「あんまり見つめないで、やっぱりちょっと恥ずかしい…」
「お互い様だよ。」
ホルドが舐め始めればすぐに息を荒くして、舌が入ってきたら体を少しうねらせた。しかしそれは拒絶の意ではなく、甘い刺激で体が勝手に、という感じである。舌が深くをじっくり舐め続けると軽く痙攣して達した。
「ク…フ…ホルド…」
「良いかな。」
「うん。ちょっと緊張するけど。」
覆い被さってギンギンに張った肉棒をあてがい、理性を全力で保ちながらその穢れ無い彼女の中へ押し込んだ。十分濡らしたお陰か、体格差故きついものの特に抵抗なく進み、根本まで完全に繋がった。
「辛くない?」
「大きくてちょっと苦しいけど…でも…」
また恥ずかしそうにホルドの胸に顔を当てると
「でも気持ちいいしホルドだから平気。」
実際、自分に刺さっているホルドからじわじわと快感が送られている。そしてホルドもまた彼女の波打つような膣の締め付けを味あわされ表情が緩んでいくのを抑えられない。
ベルデの息が調ったのを確認して動き出す。ベルデはなるべくホルドにも気持ちよくなって貰おうと、快感に喘ぎながら彼の脇腹を撫でたり肩や腕に甘噛みしたりした。
「クゥ…フン…アァッ!ホルド…遠慮…しなくて良いから…」
苦しんだ分気持ちよくなってとは流石に言えなかったが、彼が恍惚とした表情で熱い息を吐いているのを見ると少し安心する。
「ンン…アァッ!…クアァッ!」
行為は激しくなっていき、ゴツンと卵を育てる場所を突き上げられる度自身も快感で頭が真っ白になる。ホルドの吐息を浴びながら頭を撫でられれば興奮は最高潮に達した。体も精を欲して膣がホルドの肉棒を締め上げれば、初めての快感に堪えていたホルドをガリガリと削っていき
「ベルデ…そろそろ…限界…!」
「はやくぅッ!」
もう欲しくて欲しくてたまらない。体重をかけた最後の一突きの後、最奥で脈動と共に熱いものが放たれるのを感じると痙攣する体を無理矢理動かして彼を抱き寄せた。彼も応えるように尻尾を絡める。
「アァウゥ…すごい…ホルドで…熱いので…一杯になっていくのが分かる…どう…?」
「ベルデの中凄いよ…ハァ…熔けそう…」
「初めてがホルドで良かった…」
雄と1つになるのがこんなに幸せで心地よいものだったとは。彼に注がれるまで貞操を守ってきたかいがあったと思った。
「僕も…愛してるよ…ベルデ…ありがとう。」
最初の射精は長く、終わるまで2匹は互いに愛を囁き合って、1度結合を解けばベルデが受け止めきれなかった精が溢れる。その後も何度か交わって、ホルドの精の最後の1滴まで注がれた頃にはベッドは体液だらけになり部屋には雌雄の濃密な匂いがたちこめたのだった。
「ベルデ…」
「ん?」
「生きてて良かったって初めて思った。」
─ ─ ─ ─ ─ ─
サラ「レオ、あの子達は番になるそうだ。…私に言われたからじゃなくて、両想いなんだってさ。」
レオ「そうだろうな。」
「知っていたのかい?」
「屋上で抱き合い、廊下を尻尾を絡ませながら歩いていたと衛兵や召し使いが騒いでおったぞ。…ベルデはともかく、ホルドも良い方向に変わったな。」
「あぁ。随分と幸せそうな、優しい顔をしていた。どうやらベルデが一喝いれたみたいだけどね。あの仲の良さじゃあ孫がみれるのもそう遠くないかも知れないねぇ。」
〇〇〇
翌日、部屋やベッドは通力で綺麗になっていたが2匹の匂いは完全には消せなかったようで、王と女王は予想が正しかったことを確認した。当の本人達は恥ずかしがる素振りもなかったのだが。
サラ「なぁホルド、お前の生まれについてなんだが、ここから少し離れた山に神龍が住んでいるらしい。そこに行ってみたら何か分かるんじゃないか?」
「神龍…」
「私も行っていい?」
「あぁ。いいとも。」
そうして久しぶりに宮殿を離れてその山があるという東へ。
ホルド「あ…」
ベルデ「どうしたの?」
「感じる…」
その言葉通り、ホルドの勘の方向に行くとそれらしい洞穴があった。ある程度法力を使えるベルデもそこまで近づけば何かただならぬものを感じる。恐る恐るその大きな洞穴に近づくと中から
「誰だ?」
と言う声。
「ちょっと、ホルド!?」
その声を聞いたとたんホルドは洞穴の中に飛び込み、慌ててベルデも後を追う。中には2匹の純白の鱗を纏った龍がいて…ベルデ以外の3匹は絶句した。
ホルド「父さん…?…母さん…?」
神龍♀「そんな…バカな…」
神龍♂「わ、訳が分からん…」
ベルデ「どういうこと!?あなたに両親はいないはずじゃなかったの!?」
ホルド「いない…けど…知ってる…そう…夢…」
神龍♂「お前は一体何なんだ?何故息子の若い姿をしている?」
「僕…は…そうか…そういうことか…あの龍の両親なんだ…でもなんで夢に…?」
神龍♀「説明…してもらっても良い?」
動揺していたのでベルデがホルドの誕生について説明する。
神龍♂「成る程…だからあの子は生き残ったのか…。」
ホルド「生き残った?生きていたんですか?」
神龍♀「川に捨てられたそうよ。普通なら死んでいるはずなのに見つけた時には生きていた。その理由がわかったわ。あなたが生きていたからね。」
ホルド「どういう…?」
神龍♀「あなたがつくられたとき、あの子の肉と片目と爪を源とした。そのときあの子の魂の欠片があなたに宿ったのでしょう。欠片とて魂。魂は命と常に繋がっていますから、どちらかが生きていれば、肉体が修復不可能にならない限りもう片方も生き延びる、という現象が起きたのだと思います。あなたが夢で私達を知っていたのもそのせいかと。」
「僕に…あの龍の魂…」
神龍♂「簡単に言えば息子が分裂したということだな。造られたとてお前も血を分けた間柄というのは変わらない。よく帰ってきた。」
神龍♀「そうね、名前はあるの?」
「ホルド…」
「ホルド…月、か。良い名前ね。あなたは?とても綺麗ね。」
「ベルデです。」
「ベルデ、成る程その容姿からつけたのね。ホルドを連れてきてくれてありがとう。あなたはホルドと知り合い?」
「番です。」
神龍♂「番?そうか。魂があるから心もあるのだな。それは良かった。」
ホルド「あ…くる…」
ホルド以外「?」
羽音がしてその方向をみれば隻眼の白龍が降り立ったところだった。
神龍♀「カイ?何故…まさか…!駄目です!ホルド君をカイに触れさせては駄目!」
警告虚しく2匹は磁石のように駆け寄る。神龍が通力で妨害しようとしたが、2匹の通力によってできなかった。そしてホルドが一回り大きいカイに抱きつくようにするとカイもそれを受け止め、目を瞑る。数秒後、ホルドが崩れ落ちた。
ベルデ「ホルド!?どうしたの!?」
神龍♀「あぁなんてこと…」
神龍♂「所詮は欠片…主には逆らえぬか…」
カイ「ずっと…何かが足りなかった…やっぱりこの子だったんだ…まさかそっちから来てくれるとは…」
ベルデ「何?どういうこと?」
神龍♀「まず、同じ魂が2ヵ所にあるということは自然ではありません。無理矢理引き離されたとすれば当然元に戻ろうとします。ホルド君に宿ったのはカイの魂の欠片…故に本体に引き寄せられたのです…。つまり今のそれはホルド君ではありません。魂の無い抜け殻になってしまいました…」
ベルデ「え…?じゃあホルドは…?」
神龍♂「カイと同化して消えた…恐らくな。」
「そ、そんな……ホルドを返して…」
カイ「残念だけど無理だ。そもそも魂を裂くなんて禁忌中の禁忌だし、我らにそんな力はない。出来たとしても前のこの子には戻らないだろうね。…触れなければ良かったんだろうけど、気がついたら体が動いていた。自然の理と言うやつだ。」
「でも生きてるよ…」
カイ「あぁ。命はあるからね。でも──」
カイが気を練る。閉じられた方の瞼にも光が宿った。
「何をする気?」
「目覚めて魂を求めて暴走するかも知れない。そうなるとかなりの犠牲者が出るだろう。僕も狙われるだろうしね。だから今のうちに…」
「嫌!そんなことさせない!」
神龍♀「カイ、やめなさい。まだ方法が無い訳じゃないわ。」
ベルデ「本当…?」
「記憶は体にも刻まれているはず、それを元に通力で擬似的な魂を植え付けることはできるわ。そうすればその記憶通りに動くはずよ。」
カイ「でもそれは
「でも…殺すなんて…」
「君の気持ちも分かる。番なんだろ?その相手を殺されるなんて真っ平だろう。僕にも番はいるから分かる。でも、こんな目覚めることのない抜け殻をずっと番として置いておけるのかい?厳密に言えば元々僕だから死んだ訳ではないしね。」
「でもやっと一緒に生きてくれるって言ってくれたのに…」
神龍♂「訳がありそうだな。話してくれるか。」
元々里の捨て駒として私の両親を殺しに来たこと。母親の手違いで4ヶ月も例の薬で苦しめられたこと。解放するも自分は
「だから…生きてるなら…生きてて欲しい…。お母さんが強い法力使えるから…結界を張ってもらうから…殺さないで…」
「…植え付けますか?」
「お願いします…。」
カイの母親がホルドにそっと覆い被さり、体を輝かせて意識の核を植え付けようとした。やはり大きな力を使うのか顔をしかめている。
カイ父親「どうした?」
カイ母親「抵抗されています…」
「抵抗…?カイ、心眼で視てくれるか?」
そう言われるとカイは再び眼球が無い方の瞼を青く光らせる。
カイ「嘘だろ…?母さん、駄目だ────」
〇〇〇
「ク…ウ……?」
ベルデ「気がついたわ!」
カイ「一応気を付けてベルデ。」
「ボク…ハ…?」
「あなたはホルドよ。」
「ホル…ド…?」
「そうホルド。私の名前は分かる?」
「ナマエ…?ナマエ…ナマエ…」
カイ父「本当にこんなことが起きるとはな…」
カイとホルドが会って3日。ベルデは1度宮殿にしばらくここに残ることを伝えて神龍達と生活していた。後から来たカイの番である黒竜のメアとも仲良くなり、居心地が悪い訳ではないが不安を隠すことはできなかった。
カイ「暴走する心配は無さそうだね。」
焦点の合わない目でナマエナマエと呟くホルドをみて少し安心したように言う。神龍達にとっても未知の現象。何が起きてもおかしくないのだ。
「ナマエ……ベルデ?」
危うく聞き逃すところだった。
「ホルド!?そうよ!ベルデよ!」
「ベルデ…ウ…ベルデ?あれ?どうして…」
「覚えてるのね!?覚えてるのね!?ホルドォ…フグッ…ウゥ…」
泣きながら抱きついてきたベルデを、造られた魂の無い竜とは思えないほど穏やかで優しい表情で受け止め、カイ達のほうを見る。
「でも…どうして…?」
カイ「どこまで覚えてる?」
「カイに抱きついたところまで」
カイ「うん。そこで君の中にあった僕の魂は僕に還った。それから3日経って君は目覚めたんだ。」
「それって…僕はただの記憶があるだけってこと?」
カイ母「そう思えるなら違います。私たちの仮説はおおかた間違っていなかったようですね。」
カイ父「それに魂の、心の無い者が泣きつく番に対してそんなに優しい顔をすることは無かろう。」
ホルド「でもなんで…僕の魂は無くなったんじゃ…?」
カイ母「ここからは推測になりますが…あなたにカイの魂の欠片が宿ったこと自体奇跡のようなものなのですが、それでは不十分だったのでしょう。恐らくあなたが成長するにつれ魂の欠片も成長したのです。それも独自に。核はカイの魂なので、カイと触れたことでその欠片はカイに還りましたがどういう訳かその周りにあった、成長したものは消えずに残ったのです。」
カイ「僕は盗られた目の代わりに心眼を使えるんだ。それで気や命の流れ、魂も見ることができるんだけど、ホルドの気は僕とほとんど同じ。でも魂は全くの別物だ。」
「じゃあ僕は…」
「普通と生まれ方は違うし、僕とそっくりだけど、君は贋作じゃない。ホルドはホルドの本物なんだ。」
「そう…なんだ…」
ベルデ「前に私が言った通りでしょ?」
カイ母「そういえばホルドには名乗っていませんでしたね。私はヴァイス、夫はアルブスです。でも最初のように親と呼んでくれて良いですよ?カイから生まれたのであればあなたにも私達の血が流れている。2匹目の息子に等しいのですから。」
「はい…なんだか疲れちゃった。」
アルブス「まぁお前にとっては魂の一部を引っこ抜かれたようなものだからな。ゆっくり休むが良い。」
翌日、カイの番、メアとも会い話はホルドの里へ。
カイ「僕はあの後川に捨てられて意識も無くなったから君の里の場所が分からないんだ。あ、いや、復讐じゃなくて、…まぁ絶対にとは言えないけど…その里にある術を消し去りたいんだ。また君の二の舞が起きないようにね。それに君のように魂が宿ったのはまさに奇跡。次同じことをすれば今度こそ心の無い傀儡になるかもしれない。それは防がないと。」
そしてメアとベルデは置いて4匹の神龍達はホルドの案内でその里へと向かった。メアは留守番、ベルデは1度宮殿に戻って報告してからメアと留守番になる。
メア「ベルデはホルド君のどこに惹かれたの?」
ベルデ「優しいところかな。それに…なんかね、出会ってすぐの時はちょっと暗くて、すごく傷ついてて、でも時々笑ってくれるのがすごく嬉しかった。だからもっと笑っているところをみたいなーって。」
「そう…あなたは見かけ以上の美しさを持っているのね…」
「メアさんは?何故カイさんと?」
「私、黒龍でしょ?本当なら神龍と対立するような種族なんだけど、なんと言うか…今思えば一目惚れね。彼が川に流されているのをみたら助けなきゃって思ったの。彼も私を嫌うことなく委ねてくれた。優しいところはカイもホルド君も同じね。」
「帰って…来ますよね…?」
「神龍が4匹もいるのよ。すぐに来るわ。」
一行は1日かけてホルドの里の近くへ。翌日突入を控えた夜、ホルドは他の3匹に囲まれるようにして眠りについた。夢は兄も加えてようやく実現したのだ。
翌日、ついにそのときが来た。
ホルド「ここの結界を通り抜ければ里に気づかれます。」
アルブス「ならば逃げられぬよう外側に我々の結界を張っておこう。長老の居場所は分かるか?」
「いいえ。でも強い力を持っているので感知できると思います。」
カイ「手分けして探そう。強いのが何匹かいる。」
そして結界を抜けて単独行動に。侵入に気づいた里の竜達が襲って来るも、大抵は触れる前に倒された。
力を感じる辺りに見覚えの無い洞穴があったのでそこへ向かう。中をみれば赤竜がいた。
赤竜「あら戻ったの?他の龍が襲撃に……あ、あなたは!」
「君は…リンか。」
かつての遊び仲間だ。同じ里にいたが20年くらい会ってない。リンの側には気を練っているホルドをみて怯えている2匹の仔竜が彼女に隠れるようにしてこちらを見ていた。
「貴様ァ!」
後ろから鮮やかな黄色の雄竜が襲いかかってくる。振り下ろされた爪を冷静に避けると空気が揺れた。中々の法力を持っているようで、感知したのはこの竜の気らしい。避けられても焦ることなく至近距離で火を吹いてくるが通力障壁で防ぎ、それをそのままぶつけると洞穴のなかに吹っ飛んでリンの目の前に倒れる。起き上がる間もなく黒い帯が黄竜を地面に縛り付けた。リンに向き直ると無表情で
「子供ができたか。リン。」
と言えば涙目で
「許して欲しいとは思わない…せめて子供は…子供の命だけは…お願い…!」
「僕が君の子供以外を殺したとして、子供はどうやって生きるんだい?」
「それは…」
「ここから出ないで。そうすれば危害は加えられないだろう。それと、僕の名前はホルドだ。そしてもう独りじゃない。君に恨みはないしね。」
黄竜に目を向け
「良いだろう?」
と強めに言えば
「わかった。」
と言ったので去り際に術を解いた。
そしてついに長老を見つける。ホルドを造ったタダリとチョウの弟子もいる。
長老「生きていたとはな。この魂も心もない化け物めが。」
ホルドが答える前に心眼を輝かせたカイが到着した。
「久しぶりだね、長老"殿"。」
「き、貴様は…バカな…生きていただと?」
「残念だったね。とどめを刺さなかったのがお前の失敗だ。それと、僕の弟を侮辱しないでもらえるかな?」
「お、弟?そいつは──」
「弟だ。優しくて優秀な弟だ。最近はとても綺麗な緑竜と番になったよ。」
「緑竜?まさかベルデ…」
ホルド「何故ベルデを!?」
カイ「僕の予想は正しかったみたいだね。ベルデから話は聞いている。ベルデやその前の子供に呪いをかけたのもお前達だろう?あの国の王達の跡継ぎを無くして、王達が死んだ後国が混乱しているところを攻める作戦だろ?でもそれだと時間がかかるから最初は僕を傀儡にしようとして、出来なかったからホルドを生み出した。違うか?」
長老「…そうだ。まさかあの優秀な2匹が命を捨てることになるとは思わなかったが、それに見合う物が出来たと思っていたのだがな…どうやら無駄になったようだ。」
ヴァイス「私達やあの国の者達、ベルデには希望となりましたけどね。」
長老「なっ…神龍が4匹…おのれ化け物めぇ!…グガッ!?」
カイが気弾を吐き直撃する。
カイ「さっきの話聞いてなかった?それにホルドにはホルドだけの魂がある。他の竜と何も変わらない。」
アルブス「我々は復讐に来たのではなくお前達の禁術を消し去りに来た。降伏するなら今のうちだが?」
長老「戯け!殺るぞ!」
相手の数は11。神龍家族4匹には少なすぎた。
まずヴァイスが足で地面を叩くと巨大な木の根が彼らを囲み、その木の根からはホルドの黒帯が竜達に襲いかかり拘束する。何匹か逃れたところにカイが直接攻撃をしかけ、拘束された者達はアルブスに特殊な気弾をまともに食らわされ気絶した。カイも殺すことなく、心眼で相手の気の流れを見、何をしようとしているのかを完全に読んで全員倒す。唯一長老の法力に少し手間取ったが、隙をみたホルドが弱めの気弾を足下に放って体勢を崩しているところをカイが気絶させ、闘いは2分程で幕を閉じるのだった。
その後ヴァイスとアルブスが強力な封印術を使って彼らの法力を封じ、禁忌の術に関する記載がある石碑を破壊した。それ以外は特に何もしなかったが、息子を殺し、娘をも殺そうとした者達を王と女王が黙ってはいないだろう。一先ず役目を終えて家族と別れ、ベルデと一緒に宮殿に戻るとサラとレオが待っていた。
「おぉ!2匹とも無事だったか!」
ベルデが両親と抱き合った後、ホルドも抱かれた。
ホルド「家族が…見つかったよ。僕は…本物になったよ…」
肉体と精神の年齢がイマイチ一致してないのは過去にほとんど愛情を受けなかったからだろう。
「家族ならもうベルデがいるじゃないか。」
そうサラが言えば少し照れながらベルデにすり寄った。
レオ「さて、すぐにおまえの里に行って長老とやらを捕まえてやらないとな。法力が使えぬというならさほど苦労はしないだろう。」
「法力を封じられてない連中が結界を張ってるかもしれないから僕もいく。」
「トンボ返りで悪いが頼む。」
ベルデ「また私留守番?」
サラ「さすがに連れてはいけないよ。帰ってきたらホルドに構ってもらいな。」
明らかに不服そうな顔をするも反論はしない。
その後一行はあるものを持って里へ向かう。結界を通り抜けて長を見つけると全員を集めさせた。法力を封じられた彼らは反抗できず言う通りにする。その後長老やベルデ達への呪いに関係する者を前へ出させホルドが拘束した。
長老「何をする気だ…」
サラ「心配しなくても殺しやしないよ。明日には解放してやる。」
殺されないと聞いて少し安堵の空気が流れる。
「まずはベルデの分だ。」
その合図と共にレオが捕らえられた連中にあるもの…痛覚過敏薬をまずは1時間分飲ませた。しばらくして物凄い音量の叫び声が響き渡る。効果が切れると皆ダランとして口も聞かなかった。
「これで終わりと思ってないだろうね?私は息子をコイツらに呪いで殺されたんだ。当然、息子の分も飲んでもらうよ?」
そう言うとダランとしていた竜達が止めてくれ許してと懇願し始めるが当然聞き入れることなく
「おいおい。本当なら国に連れていって死ぬまで毎日飲ませたいところをホルドが止めてって言うから今日だけにしてやったんだ。寧ろ感謝して欲しいところなんだけどねぇ。息子の命を奪っておいて許してはないだろ。」
レオ「それにホルドはこの薬を4ヶ月間飲まされていたのだ。そのホルドの前で許しを乞うとは情けない。」
長老「それで言いなりになったと言うわけか…グッ!」
ホルドが拘束を強める。
ホルド「違う。サラさん達はあなた達が決してくれることはなかった、僕の欲しかったものをくれた。ベルデのことだって、愛してるんだ。今僕は自分の意思で動いてる。化け物を敵に回して残念だったね。」
その後、ホルドの時よりも多い量の薬を飲ませて症状が現れてから拘束を解いた後、次同じようなことをしたら今度こそ終身極刑にしてやると言い残して長居は無用と苦しむのを尻目に踵を返した。
〇〇〇
宮殿に戻るとベルデが出迎え─本竜は気づいてないが3匹は察した─ホルドに思いっきり抱きついた。その後顔を赤らめてどうだった?と聞くと
サラ「わたしゃまだ物足りないがね…まぁやり過ぎて逆恨みでも買っちゃ困るし、どんなにやってもバンは帰ってこない。それを考えればあのくらいでちょうど良いだろう。」
レオ「さぁ、ホルドも疲れたろう?しばらくゆっくり休むがいい。もう少ししたらしばらくの間森で暮らしてもらうことにしよう。」
そして部屋に戻ると今度はホルドから抱き締め、
ホルド「ごめん。待ってた?」
ベルデ「え?待ってたって…ほ、ホルドって心も読めるの…?」
「いや、読めないけど匂い。多分サラさんとレオさんも気づいたと思う。」
正直さっき抱きついてきたときは焦った。雌の匂いをぷんぷんさせてるのだ。ベルデはそう言われて一気に顔に血が上るのを感じて顔を背ける。人間なら真っ赤にしているところだろう。まさか留守番している間に自慰して、かえって欲しくなるという悪循環にはまったとは言えない。
「そんなに匂った…?洗い落としてたと思ったんだけど…」
まぁ発情しっぱなしだからしょうがない。恥ずかしがる彼女の頭を自分の胸に軽く押し付けなから深呼吸した。ベルデも意図に気づいて彼の匂いを嗅ぎながら彼のスリットに自分の秘所を擦り付ける。
「だって初めて交尾してから2週間ぐらいろくに話もしてないんだもん。」
匂いに反応して伸びた雄槍は密着している彼女の膣へと直接入り、そこで本来の大きさと固さになった。ホルドが予期せぬ快感に身を震わせる中、すでに濡れていたとはいえ少し苦しそうな表情になるベルデ。
「ベ、ベルデ…ほぐしてないけど平気?」
ベルデは痛いながらもしっかりと奥を押し上げる彼の雄を感じて更なる欲が芽生える。
「ク…解すなんて…焦らされたくないもん…」
「でもこのままじゃ動けないけど…」
「あなたが押し倒してくれれば良いじゃない。もう痛くないし。」
離さないぞ、とでも言うように締め付ける。それだけでも時間をかければ出せそうだったがベルデはそれを望んでいない。ホルドは彼女を引きずるようにして繋がったままベッドへ向かうと、そっとベッドに降ろした。
「優しいのね。そういうところが好き。」
発情しきっている彼女に恥じらいなど無い。早く突いてと言わんばかりに彼に抱きつくと目を瞑った。そんな彼女に自分も理性を無理に保つことはないなと再び匂いを深く吸い込んで思いきり突いた。
ゴツンゴツンと音がするんじゃないかと思うくらい激しく突き上げられ全身が快楽に痺れていく。もう達しているのかどうかも分からず、とにかく早く注いで欲しくて彼の肉棒を締め上げれば彼も彼で溜まっていたのだろう。そう経たないうちにドクンと放った。
「アゥゥ…早く子供が欲しいな…」
「僕もそう思った。きっと綺麗な竜が産まれてくるよ。」
互いに異性に対する最高の誉め言葉を言うと口でもしっかり繋がった。
─ ─ ─ ─ ─ ─
レオ「ベルデが生まれてからあまり交わっていなかったが、これからは番えそうだな。」
サラ「あぁ。やはりこうしてお前を感じるのは至福だね。」
こちらでもゆったりと悦楽に浸っている。
レオ「それにしてもあそこまでベルデが発情しているとは思わなかった。ホルドのやつ、あのときよく雄を立たせなかったな。」
サラ「あんたと違ってちゃんとしてるんだよ。ほら、娘夫婦のことを考えられる暇があったら注いでおくれよ。」
レオ「ではいくぞ…」
─ ─ ─ ─ ─ ─
「なぁヴァイス、お前、ベルデに何かしただろ。」
「バレました?なに、少し子を宿しやすくさせただけですよ。」
息子達が去った住みかで2匹の神龍は寄り添う。
「自然の摂理に反し、術力で造られたあの子が新たな命を育む。素晴らしいことではないですか。」
「まぁ同感だな。」
こうして意図せず産まれたもう1匹の息子の幸せを案じるのだった。
─ ─ ─ ─ ─
(もしホルドが普通に産まれていたら彼はあんなに苦しむことはなかった。)
彼の上で、彼の温もりと鼓動を感じてゆっくり下から突かれながらふと思う。既に辺りは精液と愛液の混ざったものだらけで、快感で下半身が動かせない。完全に体を委ね、優しく抱かれながら回想を続ける。
(でもホルドが生まれなければ、私は今でも番探しに困っていたか、悪い雄の番になっていたかもしれない。ホルドもお母さん達を殺しに来なければずっと傀儡のままで、こんなに幸せそうな顔をしてくれなかったかもしれない。)
頭や腰を撫でられ、頬を擦りながら互いの息を感じ、激しく攻められる時よりも心地よく感じる。
(運命って面白いな。)
密着部をさらに押し付け動きが止まる。抱き締める力が強くなった。
「ベルデ…」
「ホルド…」
──愛してる──
言わなくても合わせた目がそう言っていた。熱いものを注ぎ注がれている間舌を絡め、終われば額合わせをして眠りにつく。
もうしばらく交わり続けた先に愛の結晶が宿ることを2匹はまだ知るよしもない。
終わり。
いかがでしたか?前編と後編に分ければよかったと少し後悔しています。竜が主人公というマニアックな長いお話にここまでお付き合いいただきありがとうございました。
以下名前の由来です。
ホルド:ハンガリー語で「月(moon)」
ベルデ:スペイン語で「緑」
ヴァイス:ドイツ語で「白」、
アルブス:ラテン語で「白」
後は適当です。