前編 お国のために
人間、竜、獣人、魔物。それらが共存するこの世界で、ある国と里が争っていた。片方は広大な領地を持つ大国で、今は竜の女王がその土地と民を治めている。そしてもう一方、その里はその国よりずっと小さいが、魔力の上位互換とも言える"法力"を使うことが出来る者が数多くいるため、大国も一目置くほどの戦闘力を持っていた。だが、多少規模が大きく強いとはいえ里。彼らを支配してその技術や知識を取り込もうと大国側から戦争を仕掛けた。しかし3年経っても勝敗は決まらず、双方かなりの被害を出して一時休戦。
そんな中女王は、相手の里長に息子がいることを知り、里長もその妻も、もちろんその息子も強い法力を使うことが出来るので自分の娘と里長の息子を夫婦とさせて国と里を平和的に統合しようと持ち掛け、今、民衆に向けた披露式が行われていた。
「私の娘、ミラは番を持つには少し早いと皆の中でも思っている者はいるだろう。だが今日、今まで戦争の相手であった里の若長クロウスと私のミラが結ばれることになった。これで里も我が国も1つだ。里の者、心配するな。私の娘は見ての通りの美竜だし、この子が産むであろうお前たちの若長との仔は後のこの国の王とする。我が国の者、クロウスは優秀な血筋で強い法力を持っている。今見ればわかるだろうがミラを大切にしてくれるだろう。」
鮮やかな黄色の雌竜と、それより一回り大きい翡翠色の雄竜はギュッと抱き合い、うっとりと胸に頬擦りするミラの顔をクロウスはそっと舐める。そして小声で
「頑張って。」
と言うとミラは
「うん…尻尾、お願い。」
と返して抱擁を解き、民の方を見ながら寄り添い尻尾を絡めた。
「私と彼が誓いを立てる前に聞いて欲しいことがあります。どうか最後まで聞いてください──…」
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予想を遥かに超えた長期戦となり大国は少しずつその里を追い詰めたはいたのだが、例の法力によって国にもかなりの損害が出ているので早く終結しないかものかと女王は頭を悩ませていた。
「女王陛下!勝ちました!」
明るく努めて入ってくる竜の将軍。だが女王は素直に喜べない。
「…こっちはどれくらいやられた?」
「少なくとも半数は…正直、あちらが先に撤退してなければ危うかったかもしれません。」
グフー、と大きくため息をつく。
「で、捕虜は?連れてきたんだろうね?」
「あ、はい。人間、獣人、竜合わせて30は連れてきました。」
「半数失って30…」
「それと里長とみられる竜も捕らえましたが──」
「里長!?それは本当かい!?」
「はい。しかし…」
「なんだい?」
「致命傷を負っていて、救護班が言うにもってあと2、3日だと…」
「そうか…終わると思ったんだがな…里長はなんか喋ったかい?」
「いいえ。意識がないと思われます。」
「思われる?」
「目は開いています。放心状態のような感じです。偽っているのかもしれませんが、あの傷での拷問は処刑に等しいでしょう。」
「まぁ、持って数日の命の竜だ。不思議じゃない。それで他の捕虜はなんか喋ったかい?」
「今のところはなにも。里を護る結界の解き方なんて、みんながみんな知っている訳ではないでしょうし…まぁ、まだ連れてきてまもないですから。もう少し痛め付ければ何か分かるかもしれないですね。」
女王はやれやれと首を振り、欠伸をしてその場を後にした。
〇〇〇
「ジーン様…」
「将軍!よくぞ無事で!」
里長の妻、ジーンは暗い顔をして入ってきた人間の将軍を責めることなく迎え入れる。
「申し訳ありません。半数以上やられて撤退せざる得ませんでした。」
「あなたのせいではありません。私達もここまで激しいものになるとは予期してなかった…夫はどこです?夫と私の息子は?」
「…」
「どこなのです?無事なのですか?」
翡翠色の美しい竜は重ねて訊ねた。
「里長は…サンダジ様は恐らく殺されました。仲間が致命傷を受けるところを目撃しております。クロウス様は分かりません。」
「分からない?どういうことですか?」
「行方が分からないのです。捜索する余裕もありませんでした…捕らえられたか、亡くなられたかのどちらかだと…」
「死んだ…彼だけでなくあの子も…?」
それまで気品を保っていた緑竜はペタンと床に伏せて泣き始めた。
「ジーン様、サンダジ様もクロウス様もいない今、あなたが里長です。我々はどうすれば…?」
「下がっていいわ。休みなさい。」
「はい…」
今の状態では指示など出せるわけがない。将軍もそれを理解し素直に仲間の元へ向かう。
「お願い生きていてクロウス…あぁでも捕らえられていたらどんな目にあっているか…あなた…私はどうすれば…」
〇〇〇
「女王陛下、やはり結界の解き方を知るものはいなかったようです。大多数の者はこれ以上の拷問は無駄かと。」
捕虜を城に連れてきてから1ヶ月、その間はお互い随分とダメージを受けたせいか暗黙の停戦状態となっている。里の位置は分かっているし、魔力を使えるものも多数いる。しかし例の里を護る結界が強力過ぎて破るのは困難であり、突破しようとしている間に奇襲されるかもしれない。解き方が分からない以上、やはり人質を使って交渉するべきか、と考えていると
「ただ、1匹の竜がまだ何も喋っていません。」
「ほう…?」
「重石、水攻め、棒打ち、絶食などすべてを死ぬギリギリまで行いましたが口を割らず、また精神がやられたわけでもないようです。あとは極刑くらいです。」
極刑は死を前提としているので万一耐えられると尋問としては無意味になる。
「大した竜だ。今はどうしてる?」
「回復期間中です。」
〇〇〇
「若…若…大丈夫ですか…?」
「大丈夫。ありがとう。」
数時間おきに交わされるやり取り。捕虜達は全身を力を封じる特殊な魔法のかかった鎖で縛られたまま独房に独りずつ入れられていて、唯一動かせる左手で与えられた食料や水を口に運ぶ。お互いの姿は見えないが、部下達は一匹の竜を声だけで励ましていた。
今の捕虜たちの希望であり、次の里長になるであろう、顔や背面は翡翠色の鱗を纏い、腹側は白い柔軟な皮に覆われていて角の無い若い雄竜クロウスである。父譲りの強さと母譲りの美しさを持ち、また仲間想いの両親やその部下に育てられそれらを受け継いだ彼の信頼は厚い。今回が初陣であったのだが両親の予想に反して戦いが激化してしまい、生き延びたものの取り残され最終的に捕われてしまった。普段は温厚でフレンドリーだが意志も強く、自らは拷問に耐え抜き里や仲間の情報は一切漏らさず、また耐えきれなかった仲間を責めることなく励ましていた。そしてまたその仲間に励まされている。
「きっとジーン様が助けてくださる。だから…」
「静かにしな。」
突然の女王の一声で静まり返り、中には体を震わす者もいた。
「ここです。」
クロウスのいる独房の扉が開けられると女王は驚きの声を上げる。
「こいつが!?まだ小僧じゃないか。本当にこいつが拷問に耐えたのかい?」
「はい。確かです。」
「ふぅん、もっと年配の竜かと思ったがね。…まてよ、この顔つき…鱗の色は違うし角はないがまさかお前、あの里長の息子かい?」
「…だったら?」
「結界の解き方を教えな。そうすりゃもう少しましな暮らしをさせてやる。」
しかしクロウスは睨み返すだけで何も言わない。
「まぁそうだろうね。なら今までお前にやった拷問を何周すれば口を割るか、それともお前の精神が壊れるのが先か試してみようじゃないか。それとも極刑がいいか?竜の極刑はまず鱗を1枚ずつ全部剥いで、その次に目を潰し、焼けた剣で皮を少しずつ剥いだり手足や指を斬り落とすんだ。」
他の捕虜たちは息を呑むがクロウスは
「好きにすれば?」
と言うだけ。
「ほう…?」
女王は他の捕虜を一か所に集め、クロウスだけ前に来させ立ったままの姿勢で固定すると鋼でできた棒を配下から受け取って魔法で赤橙色になるまで熱し、それでクロウスを何度も殴る。
「さぁ…答えな!」
鱗が割れ、砕けてその下の皮膚が焼けるとクロウスはくいしばっていた牙からうめき声を漏らす。しかし何度殴られても、腹を殴られても口を開くことはない。殴るのを止めるとその棒を再度熱して
「これならどうだ?」
と眼球すれすれまで近づけると眩しいのと涙が蒸発するので瞼を閉じるがあくまで沈黙を守り、もう片方の目で睨む。
(無駄か…)
最盛期の竜でも水攻めや絶食を行えば音を上げるし、今のも相当堪えるはずなだが口を割らない。だが体は震え、涙を浮かべていることから苦痛やそれに対する恐怖は骨の髄まで染みているのだろう。これ以上やったら先に精神が崩壊しそうだった。取り合えず冷水を何度か浴びせてやると、彼の下腹部にある膨らみを帯びたスリットに指を入れる。
「…!何を…」
「どうやら苦痛じゃ駄目なようだからねぇ。方法を変えるまでだ。」
中の弾力のある物を刺激すればすぐに桃色の雄槍が延びてくる。雄は危機的状況に陥ると子孫を残すため性的興奮が高ぶりやすくなるという本能も手伝って、まだどの雌にも受け入れられたことがないそれはピクピク動きながら先走りを垂らした。
「立派なモノを持ってるじゃないか。心配しなくても傷つけやしないよ。後で軍の戦力の為に使うかもしれないからねぇ…それはさておき、苦痛が効かないならこいつらの目の前で私に果てさせられるってのはどうだ?ここで出せば何人か精がかかるだろうねぇ?」
そう言って舐めるとクロウスは縛られた身をよじろうとする。
「やめろ…」
「クックッ…いい顔じゃないか。嫌ならさっさと音を上げた方がいいんじゃないのかい?それとも続きを期待してるのかい?」
「…お前に話すことなんて無い。」
「そうかい…続けて欲しいかい。」
と、観衆になっているはずの捕虜の方を見ると、全員目を瞑っていた。その中の一人の獣人が
「クロウス様、私達があなたを蔑むなんてするはずがありません。お辛いでしょうが早く達された方が女王殿の思惑を裏切れるのではないですか?」
チッと舌打ちをする女王。いくら跡継ぎとはいえここまで忠誠心を払われているとは思ってもいなかったのだ。むしろ息子同然の歳の雄を舐めている自分が恥ずかしくなってくる。もはや意地で肉棒を扱き、軽く尻尾を引っ張ったり首を舐めたりして早く射精させようとやけになったが意外と堪えるので更に刺激を強める。
「く…くぅ…」
「ほら、粘ってないで早くしたらどうだい。どうせほとんど出したことないんだろ?」
鎖をガチャガチャ鳴らしながら体を捻って耐えていたが本能には逆らえず、仲間の方へ精を勢いよく放ってしまった。
「グ…ク…ごめん…」
「おやおや、こっちが疼きそうだねぇ…お前達に夫を殺されて以来だからねぇ。まぁお前となんて交わりたいとも思わないが。」
「くそ…」
口は割らなかったものの精神的なダメージは大きかったらしく、射精が終わるとここに来て初めて涙を流すクロウス。すると
「クロウス様をどんなに辱しめようと我々のクロウス様に対する気持ちは変わりません。クロウス様は嫌でしょうしお辛いでしょうが、クロウス様に精をかけられて嫌悪する者はここにはいないでしょう。クロウス様がどんな心の竜か、皆よく知っています。」
「ごめん…」
女王はそれには答えず、精液を垂らしながら震える肉棒を見て、ふと思い付いた。
「…まぁいい。独房に戻せ。」
それから何もないまま1週間。クロウスは声の届く範囲で謝ったが、かかってしまった者はそんなことはどうでもよいと笑って応え、むしろ女王が滑稽に見えたとまた笑った。
ある日唐突に1ヶ所に集められるとクロウスが前に出され、女王もやってくる。
「こいつは次の長。つまりこいつを殺せばお前達にあとは無くなる。そうだろ?」
そんなことをすればこちらだって交渉が不利になりかねないのでそんなつもりはないが、先日のうっぷんを晴らすため、またこのあとの提案を受け入れさせる為にハッタリをかける。予想通り、忠実な部下達は慈悲を求める声をあげた。
「若だけはどうか…我々が咎めを受ける!だから若だけは…」
「じゃあその若に結界の解除方法を喋らせな。」
一気に沈黙。それをクロウスが破る。
「無駄だよ。あなた達がどんなに僕を痛めつけようが辱しめようが、仲間を殺そうが喋らない。仲間に恨まれたって里は売らないよ。」
ズイッと女王が歩み出てクロウスの首を絞めると苦し気に顔を歪ませるが態度は変わらない。慈悲を求める声の中、クロウスが白目を剥き始めたので離した。咳き込みが治まるのを待って捕虜のほうへ向き直ると
「お前達を集めたのは他でもない。和平条約を結ぼうと思ってね。」
当然驚きのざわめきが広がり、クロウスも疲弊した顔で、怪訝そうに女王を見る。
「何、何も企んじゃいないよ。仲間を失いすぎたのはお互い様だろう?このままお前達と戦争を続けて勝ったとしても、私達は確実に弱る。その隙に他国が攻めてきたらそっちに負けるかもしれない。それじゃ本末転倒だからね。お前達の団結力と忠誠心は素晴らしい。それを利用させてもらうよ。連れてきな。」
「はっ。…お入り下さい。」
部屋に入ってきたのは鮮やかな黄色の鱗を纏った雌竜。後ろに真っ直ぐ生えた2本の短い角の根本や翼、背中などに生えている真紅の毛が、この竜の美しさをさらに引き立てている。若い故美しいというより可愛らしい雌竜だが、間違いなく美竜だろう。まだあどけないその竜は少し嫌そうな顔をして女王の元へ。
「この子は私の自慢の娘、ミラだ。つまり将来この国を治めることとなる。そこでだ。」
娘をクロウスの元へ連れていき
「先代亡き今こいつはお前達の長。そして後の女王となる私の娘。この2匹を番とし、子を作らせれば丸く収まるじゃか。当然その子供はお前達の長にも、この国の王にもなるんだからねぇ。」
ざわつく捕虜達。
「なんだい?私の娘じゃ不満かい?確かに番を持つにはまだ早い歳かもしれないが、私が言うのもなんだが美竜だぞ?それともお前、他に恋竜でもいるのか?お前の雄は使ってなさそうだったが。」
「いないけど…」
「なら良いじゃないか。お前の里の者はお前を随分慕っているようだし、反乱も起こせないだろう。もちろん娘の夫だから権限も与えてやる。お前の里の者達も平等に扱う。良い話じゃないか。」
「…その子は?良いの?」
「あぁ、確かに父親殺したやつらの長の子を腹を痛めて産むなんて気の毒かもしれないが、お互い争いを続けたくはないだろう?」
するとその娘、ミラが
「国のためになるなら、良い。」
「まぁこいつも良い雄じゃないか。聞いたぞ?お前、たった1匹になってから捕らえられるまで多くの兵を随分手間取らせたらしいじゃないか。それだけの強さと拷問に耐え抜いた精神力があるなら夫は務まるだろ。あとはお前次第だ。」
「断ったら?」
「お前達を人質として交渉する。そして占領するだろう。」
クロウスは黙りこんだ。苦痛から解放され、争いも終わり、自由に暮らせる。しかしこれは里の皆や両親を裏切るのではないかという考えもある。女王は追い討ちをかけるように
「お前の血筋を女王となる娘に遺させてやる上にその子は王になるんだよ?こんなに良い和平条約はないと思うけどねぇ?」
といえばさすがのクロウスも
「みんな、どう思う?」
と周りに問いかけた。
「我々は若の幸せを願っています。若の決めたことに文句を言うものはいないでしょう。」
誰かが言えば皆頷いた。だが本人達も無意識に解放されたいと思ってそう言ったと気づくのはずっと後のことだった。
「おやおや、涙ぐましい忠犬ぶりだね。」
「母に会わせて。」
「え?」
「今は母が里長のはず。だから里に連れていって母に会わせて。こんな少数の意見だけで決めたら里が反発するかもしれないよ。」
今度は女王が黙る。しばらくして
「…良いだろう。明日、お前と娘を連れてお前の里へ向かう。でも結界を解いてくれないと…」
「僕を先頭に歩かせれば良い。見張りが気づいて中に入れてくれるだろう。」
〇〇〇
十数日後、里では騒ぎになっていた。
「ジーン様!」
「どうしたのですか?」
「あの国の者と、クロウス様が!クロウス様が国の者と共にやって来ました!話があるそうで────」
「クロウス!?生きていたの!?」
「人質…いえ竜質となっていますが、はい。」
要求の通り、里には女王と軍が招き入れられた。クロウスは首に大鎌二振りをあてられた状態でいる。
「クロウス!」
「おっと近づくな。首が跳ぶぞ。お前がここの里長でこいつの母親か?」
ジーンは涙をこらえつつ進み出た。
「用件はなんでしょう。」
「良い息子じゃないか。え?散々兵を手こずらせた上にうちの国の拷問もほぼ全てやっても全く口を割らなかったんだから。」
「…!」
ジーンは涙を溢してしまうが構わず続きを促す。
「そこでだ。その息子に私の娘を貰ってもらおうじゃないか。」
「…つまり統合しろと。」
一通り説明を聞いた後、
「息子はなんて?」
「自分だけでは決められないとさ。」
「触れさせてください。」
「駄目だ。話すだけにしろ。」
ジーンがクロウスに歩みよると鎌をあてていたミノタウロスがクロウスの首に浅く切り傷をつけたので止まる。
「母さん…」
「争いが円満に終わる。願ってもいません。私は統合を受け入れても構いません。あとはあなた次第よクロウス。周りのことは考えないで。あなたが断るなら私達は戦う。敵は私達の懐にいるのです。勝機はあります。しかし断ればあなたは恐らく殺される。その前に助けられる自信はない。母親としては、あなたに幸せでいてほしい。しかし私は里長…。でも皆、どちらでも異論はない。そうですよね?」
と問いかければ口々に返事が返ってきた。
「さぁ、どうするんだい?」
クロウスは王女である雌竜に問いかけた。
「良いんだね?」
「えぇ。」
「分かりました。受け入れます。もう無駄な血を流して欲しくない。」
「…決まりだ離してやれ。ジーン、と言ったか?目立つ場所はあるか?」
手短に教えると解放されたボロボロの息子と抱き合った。
「あぁ愛しい子…よく生きててくれましたね…」
そう言いながら法力でクロウスの傷をみるみる治していく。完治ではないがかなりましになった。
「母さん…父さんが…」
「分かっています。」
「さぁ、準備できたら始めるよ。ミラ、良いね?」
「はい。」
里の将軍「何をなさるのですか?」
「この場で番になることを証明する。皆まで言うか?竜よりずっと意識の高い人間のお前に。」
「あ…いえ…結構です。」
開けた場所に集められ、即席で作った台の上にクロウスと王女ミラと女王が上る。軽く状況を説明して女王の指示でクロウスがミラの秘裂を舐めると
「じゃあお前は寝ていろ。」
ざわついたので
「なんだ?当たり前じゃないか。仇の里の長の子を産むんだからミラが優位で当然だろう?さぁ始めな。」
ミラは若干顔をしかめながらクロウスのスリットを舐め、隆起した雄槍をみると
「こんなの挿れるの…?」
女王「怖いのかい?」
「だって…」
体格差もあるのでクロウスの立派なそれを見た不安の色を見せた。成竜でもなく、雄を受け入れたこともないので仕方がないと言えば仕方がない。
「何、子種を仕込んで貰えば良いだけだ。主導権はお前にあるんだから怖がることないよ。」
「うん…」
そう促され、クロウスにまたがると肉棒を掴んで先端を自分の秘裂にあてがい、意を決して腰を下ろした。
「ンン…クゥ…フア…」
始めは少し惚けた顔になったが、痛みでしかめる。
「ウゥ…ウァァ…ク…ンアァッ!!」
「大丈夫…?」
7割ほど入ったところで腰の踏ん張りが利かなくなって一気に根本まで入り、苦痛の表情を浮かべ涙目になる彼女を見て思わず腰を擦ってやる。
「へぇ…気が利くじゃないか。お前も交尾は初めてだろ?どうせ拷問されてたんだから精々楽しみな。」
ミラは荒い息で自分の腹を擦りながら
「痛…ほんとに…入っちゃった…」
「そりゃそうさ。卵なんてその何倍も大きいんだから。さぁ力抜いて。馴れたら動きな。」
クロウスはミラにキツく締められながら彼女を眺める。ここまで近くで見たのは初めてだが、確かに美しい竜であった。同じ里だったらこちらから声をかけていたかもしれない。と、目が合って
「何よ…」
「あ、いや…大丈夫?」
「馬鹿にしないで…!」
と小声で話すと意地を張ったのかミラが大きく腰を動かす。が、
「ヒャン!」
と声を上げて痙攣したのでクロウスは思わず吹き出しそうになり、また観衆の中では何人かが吹き出してミラはクロウスを涙目で睨む。少し待ってから、今度はゆっくりうねるように動かすとクロウスからも熱い息が漏れた。
(あれ…そういえば痛くない…)
押し広げられる異物感はあるものの、気がつけばミラに痛みはない。
(結構良いかも…)
「どうだいミラ、馴れれば良いだろう?」
「うん…ハァウ…」
快感は増していき、擦られている部分すら心地良く感じる。コツ、と奥に当たると声を上げそうになって、牙を食い縛った。クロウスも最初に比べて柔らかくなった彼女の膣に扱かれ限界が近づいてくる。それを悟ったかのように女王が
「出すなら早く出しな。周りも早く終わってほしそうだしねぇ。」
特に人間の男は皆勃たせている。
「ねぇ…」
「うん…そろそろ…あ…出る」
「ンアァッ!…アウゥ…」
ミラの腰を引き寄せて射精すると彼女もその刺激で達し、クロウスの上に痙攣しながら倒れこんだ。
「ハァ…ンアッ!…ハァ…」
熱い精液が奥に流れ込み狭い膣の中を脈動するペニスからの快感で思わずクロウスの体を掴む。
(これじゃあどっちが優位かわからないねぇ…)
射精が終わってしばらくするとクロウスは無意識にミラを抱き締めていたことに気づいて
「ごめん…」
「良いわよ今更これくらい…」
若干なげやりになっている彼女を愛らしいと思ってしまったのは雄のサガか。
「それより抜いて…腰に力が入らないの…」
女王は大きくため息をついた。
その夜、クロウスはミラとではなく母親と眠りにつく。そこまで信用されていないというのもあるが、母ジーンにとってはクロウスの生存を半ば諦めてもいたのでむしろ良かった。
〇〇〇
翌日、クロウスは城へ戻るため仲間に別れを告げ、母と抱擁を交わす。ジーンはこれからどうするか決めかねていたが、とりあえず里に残ることにした。
「クロウス…お前を巻き込んでしまって…」
「いいんだよ母さん。それにもう僕は長、なんでしょ?大丈夫。…許しが出たらまた会いに来る。」
「えぇ…」
女王を含めた翼あるものは飛んで城を目指す。一苦労だがそちらの方が速いからだ。途中、休憩のために降りて休んでいると女王が
「城でのことを今のうち話しておこう。まず、昼間はなるべく一緒にいろ。あくまで夫婦だからね。だが部屋は別だ。ミラがお前と交尾する気になったらミラの方から行かせる。良いね?」
「はい。」
クロウスが母親に話しかけられた際体をビクッとさせたのにミラは気づいたが、どう話しかけて良いか分からず、取り合えず言い付け通り側にいることにする。
「ねぇ、体、平気?」
「え?あぁ、母さんがだいぶ治してくれたからね。」
「そう。昨日、擦ってくれてありがと。ちょっと見直した。」
「あぁ…これからよろしく。」
「うん。」
少し笑みを溢し、微妙な距離で側に寝そべった。
城へ着くとまず集められた捕虜達の前で
「和平条約を受け入れた。僕が彼女と番になって、この国と里は統合される。」
と宣言。負けたのではなく和平。その報告に誰もが安堵する一方、そそくさと浅い口づけを交わしたのを見て罪悪感にかられる者も多かった。
1週間経ち、捕虜は1度里に戻され今後について国と里との協議が始まる中、初めて交わった日以来ミラがクロウスの部屋へ行ったのは1度だけだったが、昼間一緒にいるときは流石に慣れて以前より自然に見える。
「おや、仲良さそうじゃないか。その調子じゃ子供も期待できそうだね。」
2匹寄り添って庭園でうたた寝しているところに女王が来る。
「エリザさん…」
「何?お母さん。」
「近々城の者と里の一部の者を集めて披露式をやることにした。なに、互いをを番にすると宣言するだけで良い。」
「わかったわ。」
その夜、ミラと女王エリザは自室で寄り添いながら
「どうだいあいつは。」
「思っていたよりは…」
「なら良かった。お前には苦労をかけてしまうが仔を産むまでの辛抱だ。お前の本当の番の候補はまだ決まっていないが…まぁあと1、2ヶ月あれば良いだろう。」
「本当に大丈夫なの?」
「あぁ。うまくやるさ。あいつには少々気の毒かもしれないが、他のやつらは知らぬが仏っていうことさ。」
そう。クロウスとミラの結婚は里の者が大人しく統合に従わせるための見せかけであり、2匹の間に子供ができればクロウスは用済み。もちろんその子供は後の王として大切に育て、公に出るときは2匹一緒の予定だが裏でクロウスは幽閉、女王は国中の雄竜を戦わせ、その上位の中から娘の妻を選び番とさせるのだ。その雄竜が決まるまでは女王エリザとミラしか知らない計画だった。そんなことは露知らず、意外と仲が良さそうに見える2匹の披露式を実は楽しみにしている、という里の者も増えてきていた。
そしてその披露式が翌日に迫った日の夜。クロウスはいつも通り独りで部屋にいたのだが。
「なんか…騒がしいな。」
「ちょ…どういうつもり?」
「手荒な真似をお許し下さい。」
ミラは自室に向かう途中、将軍に半ば強引に彼の部屋へ連れていかれたのだ。
「何のつもり?」
「やはりミラ様があの竜と番になるのはどうも許せないのです。あのような敵里の小僧に汚されて…可哀想に。」
「アル…?」
普段は冷静沈着なはずなのだが、アルと呼ばれた雄竜は鼻息荒く、危険なオーラを出しながらミラに近づく。アルが扉側にいるためミラは部屋の奥へと追い詰められ、寝床の前までくるとアルはミラに襲いかかってそこへうつ伏せに押さえつけた。ミラも王女として鍛練はしているものの、自分の2倍近くの大きさの成竜で雄真っ盛りの歳である彼から逃れられるはずもなく、無意味にもがく。
「離して…!命令よ!」
聞き入れられることなくのしかかられ息が詰まった。と、太ももに熱く固いものが当たる。ハッと後ろを見れば可愛い雌竜をねじ伏せたという興奮によっていきり立った剛直が自分を貫かんとしているではないか。
「そんな…やめて…!こんなのお母さんが黙ってないわよ!」
「あなたが認めてくだされば問題ありません。さぁ力を抜いて。挿れますよ…」
「嫌止めて!やめてぇ…」
グイグイと押し付けられ、先走りが尻尾や太ももに付く。
ツプ…
「いや…」
「ここですね…」
ズゥン!
「ンギャァア!!…カハ…」
クロウスとでさえ体格差があって馴らさないと辛いのに、それより太く長い肉棒を一気に沈められてその痛みに意識が遠退く。が、直後の激しい油送で無理矢理引き戻された。
ズン!…ズン!…
「アグゥ!アグゥァ!…」
「おぉ…なんと心地良い…あの小僧にはもったいなさ過ぎる…」
(こんなの…嫌…)
だがこの痛みがあっても体は子作りだと認識しているのか力が抜ける。
「どうです…あやつよりずっと良いでしょう。」
「そんな…こと…ない…!」
「なんと…堕とされていたとは…大丈夫です。私がすぐに戻してあげましょう。」
極太の雄が何の遠慮もなく突き上げてくる。ミラは苦痛に耐えかねて
「分かった…分かったから…もっと優しく…」
と息絶え絶えに懇願すれば
「何?少し激しすぎましたか?それは失礼。馴れるまでもう少し加減しましょう。」
と、少しゆっくりになった。
「あぁ…ミラ様に我が子種を注げるなんてなんという至福…それでは遠慮なく…」
ミラはアルの下敷きにされるように押さえ込まれ、その息苦しい中腹の中で雄が脈動しながら熱いものが吹き出るのを感じた。
(あぁ…どうして…でもこれで…終わったらすぐにお母さんに…)
ズンッ
「キャウ!」
射精中にも関わらずピストンを再開。
「いやぁ…アウッ…もうやめて…もう良いでしょ…?」
「何を言っているのですか。今のであやつの子種を洗い出して、これから私のを馴染ませねば。今日はは初めての夜ですし、最後までさせてもらいますよ…!」
「そんなぁ…」
こんな激痛にいつまで耐えれば良いのだろう。クロウスがいかに自分を気遣っていたかが今更分かる。
「私との…御子を…産んでください…」
(嫌…それならまだクロウスの方が…こんなになるならクロウスの部屋に行っとけば良かったな…)
穏やかな交尾を思い出そうとしたが与えられる刺激と匂い、そして自分の声に掻き消されてしまった。
「ミラ様…受け取ってください!」
ただでさえ全体重を乗せられて息苦しいのに絞め殺さんばかりに抱き締められる。2度目の射精を受けるともう諦めしかなかった。それに体も馴れたのか、少し前から暴力的な快感もある。仰向けにひっくり返され、再開すればそれはさらに強くなった。心地良くなるような快感ではなく自分の何かが壊れてしまいそうな快感。気がつけば自分からアルの体を掴んで強く突かれる度に情けない嬌声を上げ続け、アルはそれに気を良くしてミラを抱えると立ち上がって腰を降る。この体勢では抱き合ってないとバランスがとれないので余計にアルを興奮させた。
「淫やかなあなたも美しいですよ…!遠慮なさらず私を受け入れてください…」
グヂュッ!グヂュッ!…
「アウッ…アンッ…アウゥッ!…」
(なんかもう…どうでもいいや…)
強烈な刺激に頭が痺れていくようだ。不意に部屋にあった鏡に映る、情けない自分が目に入る。
「早く…早く…」
「もう欲しいのですか?もう少し楽しもうと思っていましたが…まぁまだ続けられるでしょうし、ではいきます───」
「早く助けてぇ!!」
僅かに残った理性を振り絞って、鏡で見えた呆然と立ち尽くしている仮夫にありったけの声で叫んだ。
「何を──グアッ!」
クロウスは瞬時に反応して突進。アルがよろけた隙にミラを引き剥がした。
「貴様…!…グ…ヌアァァッ!」
突然肉棒が引き抜けた際の快感で無様にも大きく仰け反って盛大に宙へ射精したアル。
「今のうちに。」
飛び散る精液から翼でミラを庇いながら、引きずるようにして扉の方へ向かう。
「ヒッ…ヒック…グスッ…」
結合が解けたことで恐怖や痛みを思いだし鳴き始める彼女を連れて部屋から出ようとすると
「まて…許さぬ!」
間合いを詰めて爪を降り下ろしたのを避けて、今だいきり立っている雄槍を殴ると苦悶に顔を歪めるがその痛みで最大の弱点もスリットに収まる。そしてまさに雌の奪い合いが始まった。クロウスも中々で、アルの攻撃を掻い潜って顔を殴り、法力で部屋の反対側まで突き飛ばす。その後さすがの体格差で尻尾を避けきれず殴り飛ばされ、壁に背中をしたたか打ち付けるも逆にそれを利用して首に噛みつこうと迫ったアルを紙一重で交わすと彼が鼻を壁にぶつけた。その間に反対側へ回って出方をうかがっていると
「何があったんだい!」
アルとクロウスが同時に振り向けば騒音を聞きつけてやって来た女王エリザの姿が。秘裂から白濁を垂れ流し泣いている娘と、何故か背中に精液が付いているクロウスと、下腹部が粘液で濡れているアル。いくらクロウスへの信用がないとはいえ、何が起きたかはすぐに理解できた。
「アル将軍、これはどういうことだい。」
「こっこれは…」
「最近少し様子が変だとは思っていたが、まさかミラに発情していたとはね。」
「も、申し訳ございません!どうも抑えられず…」
「あとは牢で聞こう。おぉミラ…可哀想に、今綺麗にしてあげるからね。」
そう言って魔力で精液を落とす。クロウスは自分で法力を使って落とした。
「クロウス、お前は部屋に戻りな。ミラは少し湯浴みをさせて、もう少し落ち着いてからお前の部屋に行かせる。万一あいつの子を孕んじまったら条約違反ととられかねないからね。」
〇〇〇
あれから数十分後、寝床で微睡んでいるとノックと共にミラが入ってきた。
「ミラ、大丈夫?」
「うん。落ち着いたわ。」
「今日すぐに来なくても良かったのに。宿っても誰も責めないと思うけどな。」
「私が嫌だから。」
寝床に仰向けになった彼女の秘裂を舐め解すクロウス。あまり時間が経っていないせいかすぐに濡れてきたのでクロウスが仰向けになる。するとミラは既に張りつめている雄槍を根本から先端にかけてじっくりと舐め始めた。先っぽを少ししゃぶった後、今度はスリット辺りから根本辺りを舐め、同時に両手で彼の内股をマッサージするように擦る。クロウスがクフゥと息を吐いたのが少し嬉しくなるミラ。
「クロウス、気持ちいい?」
「う、うん…どうしたんだい急に。」
「さっき教わった。早く終わらせたいならこうしろって。でも出していいよ。本当はいつも続けられるんでしょ?」
「別に不満って訳じゃないけど…」
手で軽く握るとビクッと反応したのが少し面白く思う。雌を犯し、子種を送り込む凶器でもあり、最大の弱点でもある彼の厳つい雄槍に対して今は嫌悪感を抱かなかった。
「出して。ちょっと…気になるし。」
「そ、そう。じゃあ…出るよ…」
少し激しくなった責めを堪えることもできたが、体から力を抜いて射精した。
ビュクッビュクッ…
「うわぁ…」
「フゥ…フゥ…」
勢い良く放出された精液は、最初はクロウスの頭上を越えてあとは彼の顔や上半身を真っ白に染め、独特の匂いが漂わせる。
(こんなのが私のお腹で…でもいつもより早く終わったな…やっぱり交尾してた方が気持ちいいのかな。)
自分の中だともっと長く脈動し続けているので、想像したらゾクゾクする。そんなことを思っていると彼が法力で精液を消し去ったので、衰えるどころか寧ろ張りつめているように見えるそれをそっと招き入れた。
「ハゥ…クロウス…ありがとう…」
「すぐに助ければ良かったね。その…疑っちゃって。」
「仕方ないわ。私も私だったから…」
思い出して身震いする。
「どうやって気づいてくれたの?」
「天井から君の悲鳴が少し聞こえたんだ。」
「そういえばアルの部屋ってこの上だもんね…」
胎内に感じる雄。以前は自分と一体化しているようで気味が悪かったのだが、今はその感触が尊く思える。
「私の中ってどんな感じなの?」
「え?うーん…温かくて、柔らかいのがギュッて包んできて凄く気持ちいいし、なんというか…君と一体化したみたい。」
「そう…私も気持ちいいわ。アルよりずっと…ごめん、動くね。」
しかし先の疲労が残っていたせいか腰を上げ下げするのが辛くなってしまったので
「あなたも動いてくれる?疲れちゃった…」
「わかった。」
絡み付くように抱かれるが抵抗する気は起きず、下からゆっくり抜き挿しされるとなんだか気分が良くなってうっとりとその快感に身を任せた。
(不思議…同じ交尾なのに…彼との方が気持ちいいし安心する。)
静寂の中、ハァハァという息づかいとクチュ…という音だけが響きそれが2匹の興奮を高めていく。
「ミラ…そろそろ…」
「いいわ…ンアァッ…アウゥ…」
精を送り込まれる感覚。やはり先程よりもずっと長く注がれ続け、結合部からは彼と、そして恐らくアルの精液が溢れてくる。少し前にアルが言っていたことを思い出し
「クロウス…続けたい…なら特別にいいわ。私もあなたの子を産まないと…いけないんだから。」
まだ固いそれを感じてそう言うと彼は頷いて行為を続けた。
「フゥ…フゥ…ミラ…大丈夫…?」
「うん…気持ちいいわ…」
同じ体勢で優しく突かれると、先が乱暴だったというこもあり彼に心を奪われそうになる。2度目の射精を受ければ全身が甘く痺れ、無意識に彼に頬擦りしたが後悔はない。ふと見上げればクロウスも恍惚とした表情で口呼吸しながら変わらず腰を擦ってくれていて、裏事情を知っている者からすれば健気で悲しい愛情表現である。気遣ってくれたのか結合を解いて行為を終わらせてくれた。
「ねぇ…どうしてこんなに優しくしてくれるの?酷いことされたんでしょ?」
彼の翼に抱かれながら聞いてみる。いつも交尾後は余韻が治まるまでこうして寄り添って包んでもらう。こうされないと不安になって落ち着かないのだ。本能なのか、この時ばかりは母親よりも相手であるクロウスといた方が安心する。
「確かに辛かった。仲間が励ましてくれなかったら気が狂っていたかもしれない。父さんも殺されて会わせてもくれなくて…痛くて…苦しくて…自殺なんて怖くてできなかった。水に入れられたときは特に辛かった。法力があれば何てこと無かったんだけど封じられてたからね。早く意識が飛んでくれるのを待っていたんだ。」
「ならなんで?私はあなた達が嫌いよ。私のお父さんを殺したんだもの。でもあなたも…」
「そうだけどさ、君を恨んだってしょうがないもの。それに今は良い気分だ。牢と違って自由だし、こうやって温もりも感じられる。」
と言ってミラの頭を撫でて
「それに…産んでくれるんだろ?望んでもいない僕との仔を。なら余計に気遣わないと。」
「…そう。わかった。でももしかして、本当はあなたもこうしていたいんじゃないの?私も独房を見たけどあんなところに閉じ込められてて…」
「確かに、正直に言えばそうだね。今でも独りになると怖くてね…」
「なら、昼間もこうしたくなったらしていいわ。あなたが悪い竜じゃないってことはわかったし、それで気が紛れるなら。」
「そうか…ありがとう。ミラは優しいんだね。」
「ま、まぁ一応夫婦なんだし。」
このままクロウスと寝ても良かったが、母が彼に何かしらするだろうと思い、最後にもう一度お礼を言って別れた。部屋に戻ると
「大丈夫かい?あんなことのあとは辛かっただろう?」
「そんなことない。…優しかったわ。」
「あんまり入れ込むんじゃないよ。向こうだってなに考えてるんだかわからないんだから。」
「わかってるわ。でも…多分だけど、彼、私に気があるんじゃないかって。」
「確かにさっきの交尾は随分熱かったものねぇ…」
「観てたの…!?」
「そりゃあ心配だもの。壁に透視魔法をかけてある。あの調子なら大丈夫そうだけどね。そうそう、番候補の話だけどあと2~3週間で決まりそうだ───」
翌日、城内や里の一部の者の前でミラとクロウスは番になることを宣言した。優しく笑うクロウスに複雑な気持ちになるミラ。この竜が自分に惚れていることは間違いない。とすれば自分はなんて酷いことをしようとしているんだと思わずにはいられなかった。ふと彼がここに来る前に母親と話していたことを思い出す。
(私って何で彼と番になったんだろ…)
里の者や母親に感謝や祝福の言葉をかけられているクロウスを見るとなんだか彼が羨ましくも思えたのだった。
式後の夕方、ミラが独り庭園で黄昏ているとクロウスが隣にやって来る。
(また震えてる…)
私を翼で包むとしばらくして治まったようで小さくため息をついた。年上の優秀な雄竜。それがここまでになってしまうとは一体どれ程の苦痛と恐怖を味わったのだろう。ふと
(クロウスがこの国生まれだったらなぁ)
と思ってしまいあわてて取り消した。
(なに言ってるの。こいつらは私のお父さんを…)
──でもそれは彼も同じだ──
別の自分がそう言った。
──彼はもっと痛めつけられた──
ちらっとクロウスの方を見ると、穏やかな表情で目を瞑っている。
(どうしてあなたはそんなに…あと1ヶ月経たない内にあなたは…)
痛めつけられ、言う通りにしろと脅され、どこかに閉じ込められ、私に子種を無理矢理取られ、我が子の誕生の瞬間はおろか会うことさえ許されず、必要なときは裏切った私とさも仲良さそうに表へ出るという惨めな生活を送るのだ。いや、子供ができたら病気や暗殺と偽って殺されるかもしれない。
(裏切る?何を裏切るの?元々仮面夫婦なのに、寝床も共にしない相手の何を裏切るの?)
そう。元々条約を結ばせるための演技。
──演技?私だって今もこんなに身を委ねてるじゃない。こうされるのを期待していたじゃない──
(こんなこと誰だって出来る。)
──でも良いの?彼と交わりながらその後他の雄と寝る。子を産むまではそうなる──
(相手の雄はそれを承諾しているはずよ。)
──私は良いの?それに彼との子は幸せなの?──
(乳母が大事に育ててくれる。私も会えるはずよ。)
──私は耐えられるの?その状況に。それにその子も殺されるかもしれないのに?それにその雄は子と地位が目的なだけ。それに私は──
(私は…)
"ミラは優しいんだね"
(私は…)
無意識にすごい顔をしていたらしい。
「ごめん、嫌だった?」
「え?あ、いや、違くて、その…考え事してただけ。ちょっと頭冷やしてくるわ。」
〇〇〇
城の屋上で独り考える。すると見当たらなくなった娘を探していたエルザが
「おやこんなところにいたのかい。…どうしたんだい!?」
ミラが泣いていたので焦るエルザ。
「私…どうすれば良いか分からない…」
「今後のことかい?辛い思いさせて悪い。もう少しの辛抱だ。お前に見合う雄をつれてくるからね…」
「ねぇ、私だけじゃなくてクロウスにも番を見つけてあげてよ…」
予想外の発言に度肝を抜かれるエルザ。
「彼のお陰で戦争が終わったのよ?アルからも助けてくれたし、普通の暮らしくらいはさせてあげて…」
涙ながらに訴える娘を理解しようと必死に考え
「後ろめたいのかい?そういえばお前はずっと城の中にいたから友達もほぼいないしそう思うのも仕方ないか…わかった。検討しておくよ。」
だがどんなに頭を働かせても、2つの想いに揺れる娘の苦しみを理解することはできない。乙女心を汲み取るには黒いことを考えすぎていたのだった。
〇〇〇
コンコン…
「クロウス、入っていい?」
「ミラ。今日は来ないかと。」
「うん…良いかな…」
「もちろん。」
式後、ミラはクロウスを避けているようにも見えていたし、連日来るのは初めてなので驚きつつミラの秘裂をほぐしてから仰向けになる。ミラもいきり立ったそれを唾液と先走りの区別がつかなくなるまで舐め、もはや馴れた手つきで自身に押し込む。
「ハァゥ…いつでも良いからね…」
「あぁ。」
見栄を張ってそう言ったものの、本当は腹の底が疼いて早く熱い精で埋めて欲しいと思っていた。彼の鼓動を感じながら快楽に酔い、ひたすらその時を待つ。
「出るよ…」
「きて…アァン!」
昨日よりもずっと強く抱き合いどうしようもない幸福感が湧いてくる。吐精が終わっても固いの雄を感じながらそのままでいると、彼は中々退かないことに戸惑っているようにも、期待しているようにも見えた。
「クロウス、続けて良い?」
「もちろん。君こそ良いの?」
恥ずかしげに頷いて腰を上下に動かすミラ。しかしそう経たないうちに腰が抜けてしまったので昨日同様絡み合うようにじっくりかき回されながら再び絶頂へ向かう。クロウスは腕の中で喘ぐ彼女をいとおしく思い、ミラも彼の子を孕みたいと、この時は裏の事情など忘れて本気でそう思った。
長い交わりの末にギュッと密着し、クロウスはミラの熟れた胎内へ精を注ぎ込んだ。ミラもそれに応えるように尻尾を絡ませ、口づけをする。遠慮がちに入れた舌を受け入れられ舌同士をからめると今まで感じたことのない幸福感に包まれて、いっそこのまま彼と生涯を共にしたいとさえ思った。どのみち舌を相手の口内に入れるのは最上級の愛情表現であり、信頼表情である。互いの口に入れて絡めるのは伴侶と認めるも同然だ。しかし離れても、その後いつも通り抱かれてもミラは「愛してる」の一言を口にすることができなかった。すると別れ際
「ミラ、こんなことを言ったら怒るかもしれないけど…」
「なに?」
「好きだ。ミラ。」
彼の目は真剣で、しかしどこか怯えている。
「うん…嬉しい。ありがとう。」
動揺しながらそう答えると表情を緩めた。
その翌日の早朝。母の隣で寝ていたミラは突然目を覚ます。
「グ…ゲホッゲホォ…ウグ…」
「…ミラ?どうした?」
取り合えず娘の背中を擦る。
「大丈夫かい?」
「お腹がドクドクする…」
「ほ、本当かい!?」
「うん…」
「良くやった!良くやったぞミラ!それに良かったな。これなら番が決まった後にあいつとまぐわう必要がない。」
エリザは久しぶりの上機嫌になってクロウスを呼んだ。
「ミラが!?」
「あぁ。こんなに早いとは思わなかった。まだ卵を産むには早い歳だからちゃんと気遣ってくれよ。」
ミラが宿した。そう聞いたクロウスは心から喜び、思わず彼女を抱き締める。
「…大切に育てないとね。」
そう言ってミラも体を委ねるが心は複雑だった。身籠ったばかりは体調が不安定なので静かに過ごす。3週間経てば目に見えてお腹が張ってきた。
クロウスもミラも1度に大きな卵を1つだけ産む単卵生の竜。半胎生ともいわれ、発情期は無くかなり宿しにくいがその代わり母胎の中で胎生のようにほとんど仔竜が出来上がってから殻に包まれて産まれてくるので、殻に包まれるまでは胎動もする。もちろん胎生より子供は小さいが、妊娠期間は多卵生の竜に比べてかなり長い。
「あ、動いた。」
庭でのんびりしながらミラの腹を擦っているクロウスが嬉しそうにつぶやく。幸せ真っ只中のこの日、ミラはとある役割を担っていて、その時をじっと待っていた。
「ここにいたか。」
女王エリザと、ミラの意向で釈放・復職したアルとその部下達がやって来る。特に珍しい光景でもないので続きを促すと
「捕らえろ。」
エリザの突然の合図共に部下の屈強なリザードマンや獣人が一斉にクロウスに襲いかかり、流石に反応できなかったクロウスは地面に組みしかれ法力を封じる魔法の鎖で素早く縛られる。
「なにを…?」
するとミラが
「なにって、あなたの役目が終わったってこと。本当の番も決まったから用済みなのよ。」
「な…!」
目的を理解し絶句するクロウスの顔をミラは見ることができなかった。
「あなたと番になるなんてあり得ないわ。血を残してあげるのよ?それだけでありがたく思って。心配しなくてもこの子は大切に育てるわ。…私との夫婦ごっこは楽しかった?私は毎日吐きそうだったわ。」
「ミ…ミラ…!」
違う。本当はずっと一緒に暮らしたいんだ。子育ても何もかも一緒にしたいんだ。あなたを本当の夫にしたいんだ。愛しているんだ。とミラはクロウスにも母にも言うことができなかった。
「お幸せに。」
心臓が破裂せんばかりに動くなか、ミラは連行されるクロウスに背を向ける。
「よし、これで辛い暮らしからもおさらばだ。お前の夫はもうすぐ城に着くだろうからお前は部屋で待っていな。」
「わかったわ。」
その場から逃げるように部屋へ向かう。最後の一言は、ミラが選んだ番を付けて国外追放される彼への本音である。
(これでいいのよ…彼も私なんかよりずっと彼女の方がいいわ…)
子供がいるので自分は彼を忘れられないだろうが、クロウスはきっとすぐに自分のことを忘れるだろう。自分も新しい夫と暮らしていけばそのうち良い思い出になるはずだ。
「私…何てことを…」
それでも耐えきれず自室に戻って独りになると、彼との大事な我が子が宿ったお腹を撫でながら大粒の涙を溢し、謝罪と自虐の言葉を延々と呟いていた。
続く