正直、かなり辛いです。
次の日の朝。
シャルは俺よりも早く部屋を出て、どこかへと行ってしまった。
恐らくだけど、女子として再入学するに辺り、何かする事があるのかもしれない。
特に気にしてもしょうが無い為、俺は何も聞かずに大人しく食堂で朝食を食べた後に教室に向かった。
教室に入ると、皆が俺に殺到して昨日の事を聞いてきた。
主に『インフィニティ・スラスト』の事だったけど。
一応、『今までの鍛錬の集大成』とだけ言っておいた。
シャルはともかく、ラウラまでいなかったのが気になったので、試しに箒達に聞いてみたところ、『未だに見かけていない』らしい。
もしかして、昨日の影響でまだ碌に動けないんだろうか?
もしそうだったとしたら、放課後にでも皆と一緒に見舞いにでも行こうか。
「みなさ~ん。おはようございま~す」
おっと。真耶のご登場だ。早く席に着かなくては。
これまでの事もあってか、真耶をちゃんと教師として認識し始めて、ちゃんと全員が着席をした。
でもまぁ、一応の労いぐらいはしておくか。
表向きは平気そうにしているけど、実際には昨日の事後処理なんかで忙しかっただろうし。
「真耶。お疲れ様」
「畔章さん……♡」
すれ違いざまに耳元でそっと囁いてあげた。
それだけで嬉しかったのか、一気に活気を取り戻した。
「はい。実はですね、今日は皆さんにご報告しなくてはいけない事があるんです」
ご報告……ね。
確かに、ストレートに発表する訳にはいかないよな。
「これは私の口で説明するよりも、実際に見て貰った方が早いと思います。では、入って来てください」
「分かりました」
この声は……。
真耶に呼ばれて教室に入ってきたのは、女子の制服を着たシャルロットだった。
うん。俺の思った通り。よく似合ってる。
「えっと……シャルロット・デュノアです。この姿でお会いするのは初めてですね。改めまして、よろしくお願いします」
丁寧な挨拶をして、綺麗なお辞儀をした。
俺を初めとしたハーレムメンバー以外の女の子達は、全員がポカ~ン…と口を開けたままフリーズしていた。
「詳しくは話せませんが、実はデュノアさんは女の子だったんです。これからもクラスの仲間として仲良くしてあげてくださいね?」
まるで長い間入院していた生徒が復帰した時みたいな紹介だけど、この方がお互いにとってもいいと思う。
下手に腫物に触れるようにしても、いい事は何も無い。
「デュ…デュノア君は実は女の子だった……?」
「なんか所々で女っぽいと思ったら、本当に女子だったなんて……」
何気に正体に近づきつつあった子もいたのか。
それは地味に凄い事だ。
「あれ?馬渡さんって同室だったよね?なら、最初から知ってて……?」
「知ってたと言うよりは、気が付いたと言った方が正しいな」
「いつ頃?」
「転入初日」
「わぁ~お……」
そこまで驚くような事じゃないだろ?
俺や箒や千冬、刀奈や簪のように少しでも武術を学んでいれば嫌でも分かってしまうさ。
「ちょ…ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場を使ったって聞いたんだけど……」
「と言う事は……」
そこで殆どの生徒が目を丸くしながら俺とシャルを交互に見た。
別に右肘と左肘じゃないぞ。
「えへへ……」
照れくさそうに頬を掻くシャル。
その仕草だけで、分かる人間は分かった。
「お…大人……!」
「これが欧州女子の実力……!」
欧州は関係無いだろ。
因みに、箒とセシリアと本音とクロエと真耶は何故かシャルに向かってサムズアップをしていた。
よくやった……とでも言いたいのだろうか?
「一体何を騒いでいる?」
「あ。織斑先生」
そうこうしている間に千冬も教室にやって来た。
「あぁ……デュノアの件か」
「はい」
「それなら、こっちも話がしやすいな」
「え?」
真耶が頭の上に疑問符を浮かべていると、千冬の後ろから小さな人影が見えた。
「ほら。とっとと前に出ろ」
「りょ…了解です……」
そうして俺達の前に立ったのは、申し訳なさそうにしているラウラだった。
でも、いつもとは姿が違う。
「あ…あれ?」
「今まで着ていた軍服みたいな制服じゃない…?」
「スカートだ……」
そう。今のラウラは隣にいるシャルと同じタイプのスカートタイプの制服を身に付けていた。
なんか……新鮮で凄く可愛い……。
ラウラの新たな魅力を発見した感じだ…。
試しに、この姿を写真に撮ってクラリッサに送ったらどんな反応をするか見てみたい。
絶対に悶絶して鼻血を出しながら極上のアへ顔で気絶するに違いないな。
「す……す……」
「大丈夫だ。誰もお前を責めたりしない」
「は…はい……」
一度だけ深呼吸をして、気持ちを落ち着かせてから、ラウラは口を開いた。
「皆!この度は本当に済まなかった!」
いきなりラウラが腰を折って謝罪をした。
その声は教室中に響いて、またもや全員が呆気に取られていた。
「意図した事ではないとは言え、私のISが皆を怖がらせてしまったのは事実。本当に済まないと思っている……」
ラウラは何も悪くないのに……。
ここまで真っ直ぐだと、怒る気も失せるよ。
「何言ってるの!」
「え……?」
「昨日の様子を見る限り、ボーデヴィッヒさんはなんにも悪くないじゃん!」
「そうだよ!だから、気にしないで!」
「寧ろ、体に怪我とか無くてよかったよ!」
「うんうん!」
「皆……」
……いいクラスだな。ここは。
思った通り、一組にはラウラを責めるよう人間は一人もいなかった。
「私が言った通りだっただろう?」
「はい……」
必死に堪えてはいるが、今にも泣きそうな顔になってるぞ。ラウラ。
「よかったね。ラウラ」
「お前もな……シャルロット。教室に来るまでに教k……織斑先生からある程度の事情は聞いた」
「そうなんだ…。これからよろしくね?」
「こちらこそ。よろしく頼む」
この二人も今まで以上に仲が良くなりそうでよかった。
「お兄ちゃん……」
「どうした?」
「お兄ちゃんが私を救ってくれたんだな……」
「当然だ。俺はお前の『お兄ちゃん』だからな」
「本当に……本当にありがとう……」
「どういたしまs……」
最後まで言葉を言う前に、俺の唇はラウラの口によって塞がれた。
「今はこれぐらいしか出来ないが……せめてものお礼です」
「あ…あぁ……」
キス程度で狼狽えたりはしないが、いきなりなのは純粋に驚いた。
「お兄ちゃん……大好きです♡」
そして告白。
うん……その……まぁ……嬉しいです。
皆は三度鳩が豆鉄砲を食らったような顔になってるけど。
「もうこれで何人目になるんでしょうか?」
「さぁな」
ラウラのキスの衝撃から立ち直った皆は、いきなり騒ぎ出した。
気持ちは分かるし無理も無いけど、案の定と言うかなんというか……数秒後には騒いでいた全員の頭に千冬の出席簿が降り注いだ。
男装を解いたシャルとスカートを着始めたラウラはすぐに皆に溶け込んだ。
余談だが、ラウラがスカートを履いた理由は『クラリッサに相談した結果』らしい。
いつもは余計な事しかしない彼女だけど、今回ばかりはこの言葉を贈ろう。
グッジョブ!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「よし。確かに受け取った」
「「はい」」
放課後の職員室。
シャルロットとラウラは二人並んで千冬の机まで来ていた。
彼女達が渡したのは『入部届』。
勿論、そこに記入されているのは……。
「これでお前達も『恋愛研究部』の一員となった訳だ」
「セシリア達にも聞いたのですが、一体どんな事をする部なのですか?」
「ここでは少々言いにくいな……」
「でしょうね……」
大体の予想がついているシャルロットは、目を逸らしながら呟いた。
「だが、これだけは言える」
真っ直ぐに二人の目を見つめ、真剣な表情で千冬は答えた。
「この部に入れば、お前達はもっと畔章の事を好きになる」
「「好きになる……」」
今の二人にとって、これ以上に魅力的な言葉は存在しない。
そのセリフを聞いただけでも、部に入る決意をしてよかったと思えた。
「それに……」
チラっとシャルロットを見る千冬。
その口は僅かににやけていた。
「デュノア……もう畔章とはヤったんだろう?」
「ちょっ…!ここでそれは……」
「いいじゃないか。ボカした言い方をすれば何も言われないさ」
「そう言うものかなぁ~……」
想像以上に大胆な担任に、表情筋がピクピクとなってしまう。
「なんだ?お兄ちゃんと一体何をしたんだ?」
「そ…それは……」
「これから、お前も体験する事さ」
「私も体験する…?」
性知識に疎いラウラには何の事かさっぱり分からなかった。
例え知っていたとしても反応は変わらないかもしれないが。
「しっかりと聞こえていたぞ?大浴場からお前と畔章の……」
「ワ~ッ!ワ~ッ!」
いきなり言い出した千冬の声を遮ろうと大声を出すが、それが却って周囲の視線を集めてしまう結果に。
「職員室では静かにしないとダメだぞ?」
「誰のせいだと思って……」
「???」
からかうように言う千冬と、疲れた表情で肩を落とすシャル。
そして、未だに話しについていけてないラウラ。
なんとも奇妙な三人だった。
「さて……と。そろそろ行くか」
「行くって……」
「どこに?」
「決まっている。これからお前達も沢山利用する『部室』だ。そこで畔章達も待っている」
「畔章さん(お兄ちゃん)も?」
そう言うと、千冬は二人を先導しながら部活棟にある部室へと向かった。
そこで、少女達はまた一歩大人になる。
まずはここまで。
普通に辛くなってきたので、ラウラの初体験は次回に回します。
期待していた方々、申し訳ありません。