おかげで全身がびしょ濡れです。
少し頭も痛いし、もしかしたら軽く風邪を引いたかも……。
結局、一日の殆どをセックスで過ごした一日目が終了し、今日は臨海学校二日目。
今日は昨日とは違って、完全な真面目モード。
と言うのも、今日の予定は終日、ISの各種装備の試験運用とデータ取得に時間を費やすからだ。
特に、各国からやって来ている代表候補生の皆は祖国から送られてきた大量の装備があるから待っているから、本当に忙しい一日になるだろう。
「よし。全員集まったな」
「は…はい!」
俺達の中でひときわ大きな声で返事をしたのはラウラ。
彼女はついさっきやって来て、急いで俺達の元に並んだのだ。
遅刻はなんとか免れたが、それでもぎりぎりの時間だった。
「まったく……幾ら興奮していたからと言って、夜遅くまで起きているから……」
「うぅ……面目次第もありません…姉上……」
クロエもすっかり『お姉ちゃん』になってるな。
二人の事を見て、千冬と一緒に前に並んでいる束も嬉しそうにしているし。
そう言えば、千冬と束と真耶の後ろに大きなコンテナがあるけど、あれは一体なんだ?
サイズから考えて、ISが丁度スッポリと入るぐらいの大きさだけど……。
「では、これより各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。そして、専用機持ちの連中は各種専用パーツのテストだ。自分のやるべき事を把握したら、それぞれに試験を開始しろ」
昨日の今日で色々とあるかと思ったが、千冬たち教師陣も、生徒の皆もちゃんと公私を分ける事は出来ているようで、真面目に千冬の話を聞いている。
「何か分からない事があればすぐにでも私を初めとした先生達に聞くように。決して、分からない事を分からないまま進めようとするなよ。こういった場ではそれが最も危険だからな」
その通り。
誰かに聞く事は恥ではない。
分からない事を分からないままにする事が恥なのだ。
因みに、現在俺達がいる場所はISの試験用に用意された特別なビーチで、四方が切り立った崖に囲まれている。
昨日の今日なだけに、こういった場所を見ると色々と考えてしまう。
例えば、昔はここでもAVの撮影をしていたのだろうか……とか。
(しっかし……)
今回は目的が目的なだけに、全員がISスーツを着用している。
その上、周囲には大海原が広がっている。
お蔭で、増々ISスーツが水着に見えて仕方が無い。
「あの……少しいいですか?」
「なんだ?篠ノ之」
「なんで専用機持ちでない私がここに並ばされているんでしょうか…?」
それは俺も疑問に感じていた。
俺達の同志であっても専用機を持っていない本音やクロエは他の子達と一緒に装備の試験を行っていると言うのに。
「もしかして、三人の後ろにあるコンテナに関係があるのか?」
「お!流石はクロ君!鋭いね~!」
いや……あれだけ存在感を出していれば、誰でも同じ事を思うだろうよ。
事実、千冬が説明をしている間、ずっと皆の視線はコンテナに向かっていたし。
「実は今回、箒ちゃんに専用機を進呈しようと思いま~す!」
「「「「「「「えぇっ!?」」」」」」」
「ほぇ~…」
「はぁ……」
箒の専用機と聞いて、この場に並んでいる俺達は驚愕し、本音は口を開いて感心したような声を出し、クロエは思いっきり溜息を吐いた。
「ど…どうして急にそんな事を!?」
「う~ん……別に急な事じゃないんだよね。専用機自体はかなり早い段階からあげようとは思ってたし」
「じゃ…じゃあ……ずっと部屋に籠っていたのは……」
「そう!その専用機の最終調整をしていたからなので~す!」
「貴女と言う人は……」
今度は箒が頭を抱えて溜息を吐いた。
「篠ノ之さんだけ専用機を……?」
「なんか……あれだよね……」
周囲からボソボソと声が聞こえる。
確かに、専用機とは選ばれた人間のみが持つ事を許された機体。
ああ言った言葉が出るのは、ある意味では必然とも言える。
しかし、代表候補生の皆はそうではなかった。
「箒さんに専用機……ですか」
「寧ろ、遅すぎるような気もするけどね」
「そうだね。箒の立場からして、入学当初から持ってても不思議じゃないのに」
「専用機は一朝一夕では作れないからな。そればかりは仕方があるまい」
「私的には、渡すタイミング的には丁度いいと思う」
伊達に国家を背負ってはいない少女達だ。
すぐに束の思惑を理解してみせたようだ。
「あ…あれ?なんで専用機持ちの皆は納得してるの?」
「私もなんとなく分かりますよ」
「私も~!」
「え?二人も?」
クロエと本音も束の考えが分かったようで、未だに頭が追い付いていない子達に話をしていた。
「それじゃあ、俺と一緒に考えてみるか?いいですか?先生方」
「ふむ……いいだろう。確かに、何の説明も無しに専用機だけ渡しても、篠ノ之自身も他の連中も納得しないだろうしな」
そうと決まれば、俺から説明をしてあげますか。
「それじゃあ、これから俺達から幾つか質問をするから、それに答えて欲しい」
「わ…分かりました」
「まずは俺から。箒は誰の妹だ?」
「そ…そりゃあ……そこにいる篠ノ之博士の妹……ですよね?」
「正解」
近くにいた女子の一人が恐る恐る答える。
「では、次は私から質問ですわ。篠ノ之博士は何を開発した人物ですか?」
「そんなの、私達の前の前にあるISに決まってるじゃない」
「はい。その通り」
セシリアからの質問に答えた生徒は、何を言ってるんだと言った表情だった。
しかし、この単純な質問が大事なのだ。
「んじゃ次ね。その篠ノ之博士は世間的にどんな人物?」
「えっと……ネットとかだと、よく『世界的なお尋ね者』って言われてた気が……」
「ご名答」
鈴が女子の答えに対して得意げに頷く。
「世界的なお尋ね者って事は、必然的に色んな国や組織から狙われる立場って事だよね?なら、もしも篠ノ之博士を自分達の元に引き込もうと思ったら、そう言った連中は何をすると思う?自分が博士を追う立場になって考えてね?」
「え…え~っと……」
シャルがした長い質問に女子達は頭を捻って考え出す。
流石に今回は簡単に答えが出せないようだ。
「私が答えてもいいですか?」
「クロエが?いいよ」
「では、僭越ながら私が。束さまは妹である箒さんや御友人である千冬さん。そして、愛する畔章さんを誰よりも大事に思っています。私が追う立場ならば、束さまの大事な人達を人質に取るでしょうね。その場合、真っ先に捕らわれるのは間違いなく箒さんでしょう」
「言うね~…クーちゃん」
ズバッと言ったクロエに流石の束も苦笑い。
「織斑先生は言わずもがな、世界的な有名人だし実力も折り紙つき。くろりんも今は専用機を持っているし、プライベートでも織斑先生と一緒に暮らしているから、そう簡単には手が出しにくい。けど、しののんは今まで博士とは別に暮らしていたし、専用機も持っていない。なにより、年端もいかない女の子と言うだけで軽視されて最も人質にされやすい……だよね?」
「本音さん……私のセリフを全部持っていかないでください」
「えへへ~……ゴメンね~♡」
ほ…本音が長い説明をした……だと……!?
彼女の勘が鋭いこと以上に、俺達はそこに驚いていた。
「まさか、最後は布仏が締めるとはな。だが、これでお前達も分かった筈だ。どうして篠ノ之が専用機を渡されるのか、いや……渡されなければいけないのか」
「自己防衛の為……ですか?」
「そうだ。いざという時、私達がいつも傍にいるとは限らない。だからこそ、自分で自分の身を守れる『鎧』が必要になってくる」
「それが……私の専用機……」
「と言う訳だ。お前達も納得したな?」
「「「「「は…はい…」」」」」
有名人の血縁者は、それだけで矢面に晒される事が多い。
それが世界的な天才科学者であるならば、猶の事だ。
だからこそ、箒には己を守護する為の『手段』が嫌でも必要になってくる。
「では、お前達は自分達の仕事に戻れ」
千冬の一言で皆は己がやるべき事に集中し始める。
色々と思う事はあるだろうが、それでも一応の納得はしてくれたみたいだ。
「少し話が長くなったが、お前達の装備の確認の前にまずは篠ノ之の専用機の設定からしていくとしよう。お前もそれでいいな?」
「え?……あ、はい」
少し呆けていた箒が弾かれるようにして頷いた。
無理も無いか。俺も自分に専用機が渡されると聞いた時は色々と思案したもんだ。
「んじゃ、早速オープンしますか!」
束がコンテナのコンソールを操作して鉄の箱を開こうとするが、何故か手こずっているようだった。
「あ…あれ?これで合ってる筈なんだけど……どうして?何か挟まってる?」
コンテナの周囲を見渡してから、何を思ったのか、急にその足を高く振り上げた。
「せ~の……どりゃ!!」
ガンッ!!!
束の蹴りの一撃がコンテナに炸裂し、大きな金属音が周囲に響いた。
「「「「「「蹴ったっ!?」」」」」」
うん……だよな。分かるよ……?
お前達が同時にツッコみたくなる気持ちはよく分かる。
俺や千冬は、束のいきなりする意味不明な行動には慣れたから何も言わないけど。
彼女の蹴りが効いたのか、コンテナはゆっくりと外側に開いていった。
「やっぱ、こんな時は右斜め45度で衝撃を与えるのが一番だよね!」
「いやいやいや!今のは全く右斜め45度じゃないし!と言うかですね!仮にも科学の徒である姉さんがそんな物理的手段で物事を解決していいんですか!?」
「おぉ~!遂に箒ちゃんにもクロ君と同じツッコみ脊髄が完備されましたか?」
「私がツッコまなくても、畔章さんやクロエが絶対に何か言ってましたよ……」
……苦労……してるんだな……箒。
済まない、俺達の代わりにツッコんでくれて。
お笑い芸人も真っ青な、見事なツッコみだったと言っておこう。
「お話はここまで!これが私が開発した箒ちゃんの専用機。その名も『紅椿』だよ!」
「これが……私の……」
そこに鎮座していたのは、名の通り真紅に染まったISだった。
紅椿と言う名を与えられているだけあって、全体的に華の意匠をが取り入れられている。
パッと見ると、純和風なISと言えるだろう。
「本来のスペックはかなり高いけど、いきなり全性能を開放しても流石に扱えないでしょ?だから、箒ちゃんの成長に合わせて機体の性能や能力が徐々に開放されていくように調整しておいたから。今の性能は丁度、打鉄の上位互換ぐらいに考えていればいいと思うよ」
「分かりました。打鉄ならば乗り慣れた機体ですから」
実にナイスな判断だ。
いきなりハイスペックな機体を渡されても、機体性能に振り回されるのがオチだ。
どこぞの歴戦のエースパイロットもこんな事を言っていたしな。
『幾ら機体が良くても、パイロットが性能を引き出せなければ!』って。
「篠ノ之さん。今からフォーマットとフィッティングをするので、機体に搭乗して貰ってもいいですか?」
「了解です」
束がいつの間にか手に持っていたリモコンを操作すると、紅椿の装甲が開き、同時に箒が乗りやすいように膝までついてくれた。
(あの子……いい子みたいですね。ご主人様)
お?珍しく皆がいる時に真白が話しかけてきた。
と言う事は、あの膝立ちはISが自主的に行った事なのか?
ゆっくりと近づいていき、慎重に紅椿へと乗り込んでいく箒。
その表情には緊張の色が見え隠れしている。
「予め箒ちゃんのデータはインプットしてあるから、最新のデータにアップデートすればいいだけだね。これならすぐに終わるよ」
コンソールを展開し、リズミカルに指を動かしていく。
同時に空中投影型のディスプレイを6枚呼び出し、それらも一緒に操作していく。
「相変わらず凄いな……」
「クロ君に褒めて貰えた!よ~し!ならばスピードアップだ~!」
操作スピードが明らかに速くなった。
そこまで急がなくてもいいと思うんだがな……。
「一応、近接戦闘を主軸にオールレンジに対応できるように調整はしてあるから。基本武装はあるけど、ちゃんと拡張領域も確保してあるから、後付けで箒ちゃんの好きな武装を搭載可能だよ」
「基本武装……と言うと、やはり刀剣類ですか?」
「せいか~い!そっちのほうが扱いやすいと思ったから。それに、念の為に自動支援機能も内蔵しておいたよ」
「感謝します。私の腕ではまだこの機体のフルスペックは扱いきれないでしょうから」
「今度は箒ちゃんの感謝されたっ!?今日はもしかして束さんの人生最良の日か!?」
「随分と安い最良の日だな」
興奮する束に対し鋭いツッコみをする千冬。
何気に千冬もツッコみキャラになってきたな。
(あの腰に装着してある二振りの刀が、束の言っていた基本武装になるのか?)
二刀流はかなりの難度があるぞ。
二振りの剣を自由自在に操れるのは、達人中の達人だけだ。
少なくとも、俺や千冬にはまだ到底不可能な領域だろう。
勿論、それは束にも言える事なんだが。
「はい!フィッティング完了!お次はパーソナライズだけど、これも自動処理に任せておけばすぐに終わると思うよ」
全てのディスプレイを畳んでから、今度は俺の方に向き合った。
「折角だし、クロ君の白式も少し見ておこうか」
「そうだな。頼むよ」
「一部だけ展開してれればいいよ。腕辺りでいかな」
「ん」
言われた通り、俺は右腕の部分だけを部分展開した。
そこに束が取り出したコードを接続し、そこにまた新たなディスプレイが出てくる。
「ほ~……流石はクロ君。この短期間にもう稼働率が60%を超過してるよ。あれ?これって……」
お…おい?なにか異常でも発見したのか?
医者と科学者の意味深な言葉は、下手な怪奇現象よりも怖いんだぞ!
「クロ君。いつの間に白式の
「な…なんだとっ!?」
「えぇ~っ!?」
今度は千冬と真耶が驚いた。
他の皆も驚いてはいるが、声が上げていなかった。
「えっと……学年別トーナメントの……例の事件の時に」
「あぁ~……あの時か~……」
当事者であるラウラがいるから、あまり話したくないんだよな……。
彼女があの時の事を思い出すかもしれないから。
「能力は~……わぉ…。まさか、暮桜の零落白夜と同じだよ……」
「零落白夜と同じ?では、白式もバリア無効化攻撃が?」
「可能って事だね。流石に名称は違うけど」
「なんて能力名なんですか?」
「『
「それを言ったら、ISの日本語読みも同じ様なもんだろ」
『無限の成層圏』だもんな。
「そこを突かれると痛いな~」
「今更か」
「ははは……」
もう笑うしかないよな。分かるぞ、真耶。
「もうそろそろ紅椿のパーソナライズも終了するよ。そろそろ『彼女達』を呼んだ方がいいんじゃない」
「それもそうだな。山田先生」
「はい」
彼女達……とな?誰の事だ?
「誰かしら?」
「さぁ……?皆目見当もつきませんわ」
「まさかのサプライズゲスト?」
「かな~…?」
俺達が揃って小首を傾げていると、いきなり近くにある岩陰から声が聞こえてきた。
「別に呼ばなくてもいいわよ」
「既にここにいるからな」
「「「「「「「えっ?」」」」」」」
い…いつの間に?
全然気が付かなかったぞ…!?
「ふふふ……そ~れ!」
「わっ!?」
困惑している俺に、突如としてISスーツを身に纏った金髪美女が抱き着いてきた!
その大きく整った巨乳が俺の背中に当たって潰れとります……。
「お…おい!ナタルっ!?」
慌てて、もう一人の金髪美女が現れた。
こっちの人は比較的まともそうだ。
「……あれ?」
この二人、どこかで見たような気が……。
「あぁっ!」
思い出した!昨日、温泉に行く途中で土産物屋で見かけた金髪美女二人組!
彼女達がサプライズゲストだったのか!?
「彼が噂に聞く男性操縦者君ね?いい体してるじゃない~♡し・か・も・超イケメンだし♡」
「そこの金髪痴女。とっとと私の畔章から離れて自己紹介でもしろ。生徒達が困惑している」
「あら?『私の』なんて、言ってくれるじゃない」
「事実だからな。と言うか、お前がちゃんと手綱を握っていろ、イーリス」
「無茶言うな。振り回される方の身にもなれっつーの」
「その気持ちは理解出来るがな……」
主に束のせいで……か?
「でもまぁ、いきなり出てきてハローなんてのも、流石に困っちゃうわよね。分かったわ」
なんて言いつつも、俺から離れる際にしれっと頬にキスをしていった金髪美女。
「アタシはイーリス・コーリング。知っている奴も多いかと思うが、アメリカの国家代表IS操縦者だ」
「そして、私はイーリの同僚でアメリカ軍の特殊部隊でISの操縦者をしているナターシャ・ファイルスよ。よろしくね」
ア…アメリカの代表に軍の操縦者?
なんでそんな人達がここにいるんだ?
マジでIS学園に呼ばれたのか?
「す…凄い……!」
「イーリスさんって言えば、かなりの有名人だよ?そんな人がどうして……」
「主にサプライズとして来てもらい、生徒達と交流をして、色々と教えて貰う為だが……」
「本当の主目的は、箒ちゃんの紅椿の試運転を手伝って貰うためなんだよ~」
…………………なんだって?
「えええぇぇぇぇぇぇぇえぇえぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」
俺達よりも先に、箒の驚きの叫びがビーチに響き渡った。
臨海学校編で初めての非エロ回。
まずは紅椿のお披露目です。
お次はアメリカ美女の二人組の出番です。
まだ濡れ場は先ですけどね。