私の根本はどうやらかなりのド変態みたいです。
ま、気にしないんですけどね。
「ふぅ~…」
一時間目の授業が終了し、俺は眼鏡を外して瞼を軽く揉み解す。
教室での授業なんて久し振りなので、どうも目が疲れてしまう。
これからに備えて、少しでも昔の感覚を取り戻さないとな。
「にしても……」
眼鏡を掛け直して周囲を見渡す。
教室にいる女子生徒は勿論の事、廊下には別の学年と思われる生徒達が沢山いた。
俺と言う存在が珍しいのは理解できるが、態々、別のクラスや学年から来ることも無いだろうに。
どんだけ暇なんだよ。
華の女子高生だろう?もうちょっと別の事に時間を使わないのか?
高校生活なんてあっという間に過ぎていくんだからな?
一回高校を卒業した俺が言うんだ。間違いない。
「ねぇ……さっきの眼鏡を外した顔……見た?」
「うん……。普通に外しただけなのに、印象がガラッと変わったよね…」
「インテリ系からクール系になった感じ。一粒で二度美味しいとはこの事ね!」
よく言うよ。
メガネを外した程度で人の印象がそう簡単に変わったら誰も苦労しない。
「あ…あの……」
「ん?」
恐る恐る近づいてきたのは、この教室で数少ない知り合いである篠ノ之箒その人。
なんだか緊張しているようにも見えるが、久し振りの再会だから、なんて話しかければいいのか分からないのか?
こんな時はこっちから話しかけて話題を作った方がいいと判断する。
「やぁ…箒。久し振りだな」
「そ…そうですね。お久し振りです、畔章さん」
顔を仄かに赤くしながら丁寧に挨拶をする箒。
彼女はまさに絵に描いたような大和撫子なのに、これで束さんの妹なんだもんな~…。
あの人を反面教師にしたからこうなったのか?
彼女が引っ越してからかなりの年月が経つけど、特徴的なポニーテールは相変わらずだ。
姉である束さんとはまた違った印象だけど、これはこれで可愛いと思う。
「少し…話しませn「少し……よろしいですか?」…なに?」
箒の次は俺を見ていた金髪少女が来た。
でも、彼女が俺に話しかける理由が思いつかない。
「あ…あぁ……やっぱり……そうなんですのね……」
「え…?」
俺の顔を見るなり、急に涙ぐんだ彼女。
な…なんなんだ?
「ずっとこの日を待っていましたわ!クロアさん!!」
「「なっ!?」」
俺の『もう一つの名前』を叫んだ彼女は、いきなり抱き着いてきた!
「う…うぅ……」
「お…おい…?」
「な……な……!」
箒は戸惑いを隠せてないし、俺も混乱している。
他の生徒達もこっちを凝視している。
「流石は畔章さん……。入学初日から修羅場ですね」
そして、クロエは興味深そうに観察してやがる。
ちょっとは止めようとしろよ!!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
取り敢えず、落ち着くと同時に状況を整理するために、俺達は一緒に廊下の階段の踊り場までやって来た。
「え~っと……まずは君……」
「セシリア・オルコットですわ」
「そう、セシリア…………セシリア!?」
「はい!思い出してもらえましたか?」
「あ…あぁ……」
マジかよ……。
まさか、この子があの『セシリア・オルコット』だったなんて…。
よく見れば、確かに昔の面影がある…。
「畔章さん。オルコットさんとはお知り合いなのですか?」
「あれ?束さんには話してあるんだが、聞いてないのか?」
「全く」
「そうか……」
俺の中にはほんの僅かではあるがイギリス人の血が流れている。
つまり、俺は純粋な日本人とは言い難いのだ。
この心は正真正銘の日本人のつもりだけどな。
だからだろうか、俺には二つの国籍が存在している。
一つは日本人としての国籍。
もう一つはイギリス人としての国籍。
つまり、俺は二重国籍持ちって事になるわけだ。
これは親から物心ついた時に教えて貰った。
で、俺のもう一つの名前…つまり、イギリス人としての名前が、先程セシリアが言った『クロア』なのだ。
フルネームは『クロア・バーテル』。
幼い頃、俺の両親がまだ生きていた頃は、よく旅行と称してイギリスにいる遠縁の親戚の家に遊びに行ったもんで、その時にはその親戚の友人でもあったオルコット家の人々と交流をしていた。
バーテル家は昔から優秀な騎士を輩出した家系であるらしく、俺にも騎士としての才能があるんじゃないかと言われて、時折おじさん達に剣の稽古を教わっていたな。
俺がセシリアと初めて出会ったのも、そんな時だった。
あの頃はよく、親達の話がつまらなくて二人で遊びまわっていたもんだ。
「……と言う訳さ」
「そうだったのか……」
「本当に懐かしいですわ…」
箒は納得した様子で頷いて、セシリアは窓から空を見上げて笑顔を浮かべていた。
「つまり、畔章さんとセシリアさんは幼馴染なんですね」
「そうなるのか?」
「お…幼馴染……♡」
どうしてそこで照れる?
こんな雰囲気の中で、俺達の両親の事は言わない方がいいだろうな。
俺とセシリアの両親は同じ列車事故で亡くなっている。
偶然、俺達の親が用事で一緒の列車に乗って出かけた時に事故が起きて、そのまま帰らぬ人になってしまった。
いきなり天涯孤独の身となった俺達は、その日から会う事は無くなった。
セシリアはイギリスでも有数の名家でもあるオルコット家をご両親の遺産を狙う輩から護る為に必死で頑張っていたし、俺はバーテル家の人々のお世話になって日本に帰国し、両親の葬儀を行った。
バーテル家の人々にイギリスに来て一緒に住まないかと提案もされたが、俺は丁重に断った。
確かに魅力的な提案ではあったが、俺にもそれなりに日本に愛着はあったし、なにより、両親との思い出が沢山詰まった国から離れたくなかった。
それを言うと、彼らは俺の意思を尊重してくれて、今まで住んでいた家の管理をしてくれた上に、俺が一人でも暮らしていけるように援助をしてくれた。
いつか、千冬さんにも俺が生まれた家を見せてあげたいな…。
「今はクロアさんと呼ばない方がよろしいかしら?」
「そうだな。俺としても馬渡畔章と呼んでくれた方が嬉しい」
「なら、これからは畔章さんと呼ばせて貰いますわ」
「分かった」
セシリアの口から『畔章』と呼ばれると、なんだか新鮮に感じるな。
「お…幼馴染と言うのなら、私も一緒だ!」
「あら?」
「私も畔章さんとは幼い頃から共に過ごしてきた!」
「そうなんですの?」
「そうだな…。俺がイギリスから戻ってから、千冬さんや束さん、箒に出会ったな」
「なら、私の方が先ですわね?」
「じゅ…順番は関係ないだろう!」
ど…どうした?なんで喧嘩する!?
「モテモテですね」
「この状況でそれを言うか」
「この状況だからです」
最近になって、クロエって段々と束さんに似てきてないか?
主に性格が。
「ところで、先程のSHRで言っていたことは本当ですの?」
「な…何が?」
「織斑先生と畔章さんがお付き合いをしていると仰っていたではありませんか」
忘れたい過去を速攻で掘り返された。
「あぁ……俺は千冬さんと付き合っている。今年でもう4年目になるかな…」
「そう…ですの……」
「千冬さんと畔章さんが……」
今度は二人揃って落ち込んだし。
緩急が激しいお嬢さん達だ。
「な…なら、クロニクルさん「私の事はクロエでいいですよ」…クロエさんが愛人だと言うのは…」
「それは~……」
別に俺が言い出したわけじゃないしな~…。
なんて説明をしたもんやら。
「それは簡単です」
「なに?」
「私が畔章さんを好きで、初めてを捧げたからです」
「「は…初めて!?」」
「ク…クロエ!?」
ここでそれを言うのかよ!?
後ろには他の生徒達が興味津々の様子で聞き耳を立ててるんだぞ!
「初めてとはつまり、処女をs「そこまで言わなくてもいい!!」むぎゅ…」
急いでクロエの口を塞いだけど、今度はクロエの顔が赤くなった。
「ま…まさか……もう千冬さんや姉さんとも……」
「ぷはっ……勿論です。複数プレイもしましたよ」
「「複数プレイ!!」」
俺の手の拘束を解いて、また余計な事を言ったし!
お前は俺をどんなキャラにしたいんだ!!
「「あわわわわ~…」」
「お…お~い…?お二人さ~ん…」
クロエのせいですっかり雰囲気が台無しだ!
箒とも色々と話したかったんだけどな…。
彼女が剣道の全国大会で優勝した事とか。
キーンコーンカーンコーン……。
「チャイムだ」
「思ったよりも長く感じましたね」
「お前のせいでな」
「それほどでも……」
「褒めてない」
はぁ……素直で純粋無垢なクロエはどこに行ってしまったんだ…。
「取り敢えず急ぐぞ!」
「はい」
俺は未だに顔を真っ赤にして俯いている二人の手を引っ張って教室へと急いだ。
なんとか我らが担任殿が来るまでには間に合ったとだけ言っておく。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
教壇に立ち教科書の内容をスムーズに音読していく山田先生。
こうしている姿を見ると、彼女が先生だと実感できる。
授業してないと教師に見えないのも、ある意味では凄いけど。
こうしてノートに記入をしながら授業を受けていると、本当に昔に戻ったような感覚になる。
授業の内容は全く違うけど。
「馬渡さん。どこか分からない所とかありませんか?」
「今はまだ大丈夫です」
「え?そうなんですか?」
「畔章なら心配ない」
「織斑先生?」
教室の端で授業を見ていた千冬さんが隣までやって来た。
「こいつは昔から…それこそISを動かす前からISの事を自主的に勉強している。私が知る限りでは、1~2年の授業程度なら余裕で理解出来る筈だ」
「す…凄いですね……」
千冬さんの言う通り、俺は前々からISの事を勉強していた。
少しでも千冬さんの役に立とうと思って、IS学園の受験生が御用達にしている参考書や束さんに直接教わったりして、今ではそれなりの知識はある方だと自負している。
「カッコよくて、頭もよくて……」
「もしかして、馬渡さんってかなりの優良物件?」
「メガネだしね!」
「「それは関係無い」」
そこ、授業中に私語は慎んだ方はいいぞ。さもないと……
バシン!
「「「痛った~…」」」
「私語は慎め」
「「「す…すみませんでした…」」」
こうなるから。
コソコソ話をしていた女子三人は、千冬さんの出席簿の餌食となったのでした。
「授業を遮って悪かったな。再開してくれ」
「は…はい。では、次は教科書の24ページから……」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
二時間目が終わり、小休憩を挟んでの三時間目。
休憩時間の時に、さっき話せなかった事(主に剣道大会の事)を箒と話した。
またまた顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたが、なんでだ?
彼女の努力が実を結んだ結果なのだから、もっと誇ればいい。
そう言ったら、箒の顔が完全にウルウルに変化していた。
今度の授業は千冬さんが行うようだ。
千冬さんの授業……実は密かに楽しみだったんだよな~♡
「三時間目は実戦で使用する各種装備について解説していこうと思う」
装備……ね。
俺がまともに使える武器なんてかなり限定されてるけど。
だからと言って勉強しないなんて馬鹿な真似はしない。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず…だ。
例え使わない武器であっても、その特性などを知っておけば幾らでも対処が可能となる。
人間にとっての最大の財産って、間違いなく知識だよな。
「そうだ…忘れるところだった。まだクラス代表を決めていなかったな」
「クラス代表?」
初めて聞く単語だけど、多分、読んで字の如くの意味だろう。
「クラス代表とは、分かりやすく言えば学級委員長のようなものだ。再来週末に行われる予定のクラス対抗戦を初めとして、生徒会の会議や委員会への出席などをする」
本当にそのまんまだった。
「因みに、クラス対抗戦とは、入学時点での全てのクラスの実力の程を確かめるイベントだ。現時点ではそこまで差は無いに等しいが、こう言ったイベントは同時に向上心も生み出す」
成る程。一理あるな。
「それとこれも言っておく。クラス代表は一度決定すると、この一年間は変更できないからな」
そりゃそうだろうよ。
そこら辺は皆分かっていると思う。
「と言う訳で、誰かいないか?自薦でも他薦でも構わんぞ」
はい。この流れ……なんとなく読めました。
俺の予想が正しければ、多分……
「はい。私は畔章さんがいいと思います」
「クロニクルから畔章に一票だな。他にはいないか?」
「はい!私もクロニクルさんに賛成です!」
「私も!」
やっぱりな……。
クロエの他薦を皮切りに、他の子達も一斉に俺の名を呼び始めた。
「ちょっと待ってください!!」
「オルコットか。どうした?」
セシリア?もしかして、何か言ってくれるのか?
「なんで皆さんは畔章さんをクラス代表にしたいと思ったのですか?出来れば詳しい理由を教えてください」
「そ…それは……」
クラスの女子達が急に静かになる。
「まさかとは思いますが、畔章さんが珍しいから…なんて理由じゃありませんわよね?」
「「「「……………」」」」
「お気持ちは分かりますけど、それは彼に対して失礼だと思いませんの!?ただ珍しいからと言う理由で推薦なんてされたら、皆さんはどう思いますか!?」
「嫌な気持ちになる……って思う…」
「でしょう?別に私は畔章さんを推薦するなとは申しません。推薦するならするで、ちゃんとした理由を言って貰わないと、畔章さんも先生達も、他の皆さんだって納得しないのではなくて?」
お…おぉ~…。
セシリアの言葉で皆が我に返ったかのような顔になって、気まずそうにしている…。
暫く見ない間に、本当の淑女になったんだな…。
俺は今、かなり感動してます。
「あ、私は単純に畔章さんが好きで、そのカッコいい姿が見たいと思ったからですよ」
「貴女はなんとなくそんな気がしてましたわ」
だろうね。俺もそう思ったわ。
「ならばオルコット。お前はどうなんだ?」
「私ですか?」
「そうだ。そこまで言ったんだ。何か意見があるんだろう?」
「私も畔章さんを推薦します」
「その理由は?」
「彼は非常に真面目で、授業態度も申し分ありません。しかも、私達よりも年上と言う事もあって人生経験もある。畔章さんならば必ずや、このクラスの舵を見事に取ってくれると信じたからです」
「成る程な……承知した」
俺……なんか凄く褒められてるんですけど。
セシリアから見た俺はどんな風に見えてるんだよ。
「一応言っておくが、私も畔章を推薦する!」
「織斑先生の理由は……?」
「理由はクロニクルと同じで、畔章のカッコいい姿を見たいからだ!!」
「ぶ…ぶれませんわね……」
セシリア、お前が呆れる気持ちはよく分かる。
俺も呆れている。
「で…では、クラスの代表は馬渡さんに決定と言う事でよろしいですか?」
「「「「「はい!!!」」」」」
収拾がつきそうにないと判断したのか、山田先生が終わらせてくれた。
「あの…織斑先生。一つよろしいですか?」
「なんだ?オルコット」
「畔章さんには何か機体が用意されると言う事はあるんですか?」
「どうしてそう思った?」
「畔章さんは世界で唯一の男性IS操縦者。その戦闘データを収集する為に何らかの形で機体が提供されると思ったので」
「……流石は代表候補生だな。その通りだ」
え?セシリアって代表候補生なのか?
シランカッター。
「畔章にはデータ収集の名目で専用機が用意されることになった。本当ならば政府の方から準備される手筈だったのだが……」
「まさかとは思いますが……姉さんが?」
「その通りだ篠ノ之。束の奴が畔章の専用機を準備すると言い出してな。政府としても、自分達が用意をするよりは現在学園にいる束に任せた方がマシだと判断したのか、その提案を快く了承したらしい」
「本当は?」
「束が普通に役人連中を脅した」
「だと思った……」
箒……ご愁傷様。
大丈夫。いつかきっといい事はある。(フラグ)
「本当にすみません…。うちの愚姉がご迷惑を……」
「気にするな。いつもの事だ」
(((((いつもの事なんだ…)))))
深く事情を聞かない辺り、皆も自然とこのクラスでの過ごし方を分かり始めたのかもしれない。
「篠ノ之博士と同じ苗字だったから、もしかしてとは思ったけど……」
「本当に姉妹だったんだ…」
「でも、なんか苦労してるっぽいね…」
「私達も入学式を見ちゃったしね……」
箒や千冬さんの苦労を少しでも分かってくれると、俺としても嬉しい。
唯我独尊と破天荒が服を着て歩いているような人だからな。
「話しが逸れたが、つまりはそう言う事だ。理解したか?」
「はい。それならば、少し提案があるのですが…」
「なんだ?言ってみろ」
「畔章さんの専用機の試運転を兼ねて、私と模擬戦をさせて貰えませんか?」
模擬戦とな?俺とセシリアが?
「それはイギリス政府からの命令か?」
「いいえ。純粋にISに乗った畔章さんと手合わせをしてみたいのです」
「ほぅ……?」
俺は完全な素人だぞ?
そんな奴と戦いたいとか、セシリアも物好きだな。
「畔章はどうだ?模擬戦をするか?」
「そうですね。俺としても本格的にISを動かす機会は欲しいと思っていたし……」
「ならば受けるか?」
「はい。彼女との模擬戦に応じます」
「了解だ」
満足気に頷いた千冬さんが教室を見渡す。
「では、畔章の専用機が用意出来次第、オルコットとの模擬戦を行うものとする。恐らく、一週間後の月曜には準備が出来るだろう。試合はその日の放課後、第3アリーナで行う事にしよう。二人とも、それでいいな?」
「「はい」」
「よろしい。では授業を始めよう」
なんだか凄い事になったが、これはこれでいい経験になると思って前向きに考えよう。
代表候補生との試合なんて、普通は滅多に出来ないわけだし。
あ……でも俺……初めて起動させてから一度もISに乗ってないんだけど…大丈夫か?
本当なら入試の際に実技試験で動かすらしいが、俺は急遽入学が決定したから、そんな事をする暇が無かったんだよな。
まぁ……いざとなったら千冬さんや束さんに相談でもすればいいか。
もう少し……もう少しでエロが来る!!
あと、ちょっと思ったんですけど、束がいる時点でこの学園……姉妹丼がし放題じゃありません?
篠ノ之姉妹とか、更識姉妹とか、布仏姉妹とか、ちょっと変化球でラウラとクロエとか。
妄想が止まりませんなぁ~…。