まだ役者が揃っていませんので。
揃いさえすれば、その後は~……?
チェルシーの運転する車に揺られながら、俺達はセシリアの実家であるオルコット邸へと到着した。
非常に巨大な金属製の門が自動で開き、そこから大きな車庫へと移動して、そこでようやく降車した。
「お疲れ様でした」
「チェルシーこそ、運転ご苦労様でしたわ」
「うん。ありがとう」
「チェルシーの意外な一面が見れて、俺は嬉しかったけどな」
「そ…そうですか……?」
……あれ?なんで俺の言葉にだけ反応してるんだ?
チェルシーはセシリアの分の荷物を持ち、そのまま俺達を先導して屋敷の扉へと向かって行った。
俺?俺はちゃんと自分の分の荷物を持っていったよ。
扉の前まで行き、そこで一度も荷物を置いてから、両手で扉を開いた。
因みに、オルコット邸は凄く大きくて凄く豪華な屋敷だ。
詳細に説明していけば、多分それだけで今回の話が終わってしまいそうなので、ここは敢えて割愛させて貰う。
とにかく、デカイ!豪華!キレイ!な屋敷である。
ゆっくりと扉が開かれて、その向こうには屋敷と同じような豪華絢爛な真っ赤なカーペットが敷かれていて、天井には煌びやかなシャンデリア。
トドメに、目の前にはズラ~っと並んだ大勢のメイドさんが丁寧にお辞儀をしていた。
「「「「「お帰りなさいませ。セシリアお嬢様」」」」」
「ええ。ただいま帰りましたわ」
セシリアも彼女達に応えるように、優雅に微笑んだ。
やっぱり、セシリアってお嬢様なんだなぁ~…。
「お客さま方も、ようこそいらっしゃいました」
「彼女はヴァリエール家のルイズさん。それと、彼はバーテル家のクロアさんですわ」
「ど…どうも」
「お邪魔するわね」
ルイズも伊達に名家のお嬢様じゃないな。
この状況に全く動じてないよ。
「お荷物お持ちします」
「あ…あぁ……。ありがとう」
流れ的に自分が持っていたキャリーケースを傍まで来たメイドさんに渡してしまった。
この雰囲気に逆らえる一般人はそうはいないだろう。
「クロアさんは、イギリス滞在中はここにお泊りになるんでしょう?」
「そのつもりだけど……」
「でしたら、後でチェルシーにでも部屋へと案内させますわ。お願い出来るかしら?」
「お任せくださいませ。お嬢様」
この屋敷の客室か……。
絶対に普通じゃお目にかかれないような部屋に違いない。
「ちょっと待って……」
「あら?どうしましたの?」
「クロアってここに泊まるつもりな訳?」
「先程そう仰ったではないですの」
「そう……」
ル…ルイズ?
顎に手を当てて何を考えてらっしゃるの?
「決めたわ。私もここに泊まる」
「「えぇっ!?」」
い…いきなりどうした!?
「ここまで来てクロアと離れるとか絶対に有り得ないし!少なくとも、クロアがこの国にいる間はずっと一緒にいるわよ!」
「な…何を言ってますの!?」
「なによ?私が一緒にいちゃ都合が悪い事でもあるの?」
「そ…それは……」
よもや、メイドさん達が見ているこの場で堂々と『イチャラブセックスが出来ないから』なんて暴露は出来ないよな~。
「どういたしますか?」
「う……ぐぅ……!」
悩んでる悩んでる。
さぁ、セシリアはどんな答えを言うのか?
「あ……!」
お?セシリアの頭の上に豆電球が光ったぞ?
何かいいアイデアを閃いたか?
「うふふふ……♡いいですわよ?どうぞお泊りくださいな」
「うぇ?ほ…本当にいいの?」
「えぇ!勿論ですわ!貴女と私の仲ではありませんの!」
「そ…そうね。そこまで言うなら、泊まってあげてもいいわよ?」
「決まりですわね」
あれ~…?
ルイズは自分から泊まるって言ってなかったっけ?
いつの間にか主導権がセシリアに移行してるんですけど?
ツンデレなのに、ルイズは押しには弱いのか……。
脳内メモにちゃんと書き記しておかないと。
不思議と、近いうちに必ず役に立つ気がする。
「私は自室にて着替えてきますわ。先程言った通り、チェルシーはクロアさんをお部屋にご案内して。貴女はルイズさんを他のお部屋にご案内を。部屋は空いてますわよね?」
「はい。客室は全て空いております」
「では、お願いしますわ」
「承知いたしました」
そんな訳で、俺達は一旦それぞれに分かれて、今晩自分が寝る部屋へと案内されていった。
因みに、移動中にルイズは自分の携帯で親に連絡し、自分が今日オルコット邸に宿泊する旨を伝えたと言う。
でも、自分の分の着替えとかどうする気なんだ?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
チェルシーと一緒に部屋へと行き、荷物を置いてからリビング(と言っても、広さは確実に学園の教室ぐらいはある)に案内され、既に待っていたセシリアとルイズが座っていた高級感タップリなソファーに座った。
目の前には絢爛なテーブルがあり、その上にはテーブルに負けないぐらいに豪華な装飾が施されたティーセットとクッキーが置いてあり、カップもちゃんと人数分あった。
「「あ……」」
「どうした?」
「な…なんでもない……」
「ですわ……」
「???」
一瞬だけ二人の残念そうな顔が気になったが、すぐに理解した。
(俺の隣に座りたかったのか……?)
俺が座った場所は真ん中にある一人用のソファーで、セシリアとルイズが座っているは、左右にある三人ぐらい座れる広さのソファーだった。
自分なりに気を効かせたつもりだったが、逆効果だったか。
仕方が無い。詫びとして夜にはちゃんと可愛がってやろう。
「お注ぎします」
「ありがとう」
チェルシーがカップに注いでくれた紅茶を一飲み。
きちんと予めカップも温めてあり、全てが完成された紅茶だった。
「うん。美味しいな。小さな頃にここで飲んだ紅茶を思い出すよ」
「覚えておいでですの?」
「勿論だよ。そう簡単に忘れるような味じゃない」
あの味一つとっても、俺にとっては大事な思い出だしな。
「ルイズさん。お泊りになるのは本当にいいんですけど、御自身の着替えなどはどうするつもりですの?」
「後で家の者に持ってこさせるわよ」
「「ご愁傷様……」」
「……?なんでよ?」
マジでヴァリエール家の使用人の人に同情するぞ……。
よくもまぁ、こんな我儘な御嬢さんに仕えているもんだ。
「クロアさん。バーテル家にはちゃんと顔をお出しになるのでしょう?」
「当然。イギリスに来た目的の一つがそれだしな」
「ん?他にも目的があるの?」
「「そ…それは……」」
ルイズに話したら、絶対に顔を真っ赤にして怒るだろうな~。
でも、そんな彼女も見てみたい気がする。
絶対に可愛いと思うから。
「ここでもう少しゆっくりとしてから、向こうに行かれてはいかがかしら?私も久し振りに顔を見せておかないといけませんから」
「そうだな。セシリアも久し振りの帰省だし、おじさんに顔を見せとかないと」
「はい。チェルシー、後でいいからバーテルのおじさまに後でご連絡を入れてくれる?」
「分かりました。お嬢様」
「悪いな」
「い…いえ……。これぐらい…当然です」
チェルシーの顔が真っ赤に沸騰した。
普通に感謝しただけなんだが、そこまで喜ばれるとは思わなんだ。
「うふふ…♡チェルシーもクロアさんに恋慕を抱いてますものね?意中の男性に感謝されて喜ばない女はいませんわ」
「お…お嬢様!?」
「チェ…チェルシーも……?」
「「「も?」」」
「な…なによ!」
「「別に~?」」
ルイズ、お前も顔が真っ赤になってるぞ。
「チェルシー……」
「うぅ~……先程のお嬢様の言葉はお忘れください……」
「そう言われてもな……」
こんな美少女メイドさんに『好き』って言われれば、誰だって喜ぶって。
事実、内心はフィーバータイムですよ?
「ご…ご連絡を入れてきます!」
「あらら……。行ってしまいましたわ」
「からかいすぎだ」
「そうですわね。後ほど謝罪しておきますわ」
で、ルイズはなんでさっきから大人しいわけ?
「私ももう少し積極的にならなくちゃ駄目なのかしら……?でもでも、凄く恥ずかしいし……、それって私のキャラじゃないし……」
「「…………」」
完全に純情乙女になっているルイズを見て、俺とセシリアは顔を見合わせた。
「「ふふふ……」」
「どうしたのよ?」
「なんでもない」
「ですわ♡」
「さっきも、それと同じやり取りをしなかった?」
「そうだっけ?」
それから、俺達はチェルシーが戻って来るまで雑談をしながら紅茶とクッキーに舌鼓を打ち、久し振りにのんびりとした時間を過ごした。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「お待たせいたしました」
「では、参りましょうか」
再びチェルシーの運転する車に搭乗し、今度は俺のもう一つの実家であるバーテル家の屋敷へと向かう。
「……しれっとルイズもついて来てるし」
「当然じゃない。それに、さっきも言ったでしょ?クロアがイギリスに滞在している間は、ずっと傍にいるって」
「別にいいとは思いますけど……」
問題は向こうだな。
ルイズがあの人のテンションについてこれるかどうか……。
そこだけが心配だ。
窓を覗いてみると、懐かしい景色が流れていく。
あれからかなりの年月が経過しているが、それでもこの景色だけは何も変わっていない。
その事が地味に嬉しかった。
バーテルの家はオルコット邸から車で20分ほどの場所に存在している。
歩いててでも行けないわけではないが、車を用意して貰った手前、ちゃんと乗ってから行こうと思った。
景色を見ている間に、すぐに目的地に到着。
眼前には、オルコット家の家に引けを取らない程の大きな門が聳え立っている。
監視カメラがこちらの姿を捕え、カメラの傍にあるマイクから大きな声が聞こえてきた。
『おぉぉぉぉ!待っていたぞ!すぐに門を開けてやる!』
「相変わらず声が無駄に大きい方ですわね……」
「全然変わってない……」
「な…なんなのよ……このでっかい声は……」
半ば呆れている内に門は開き、車ごと敷地内へと入っていく。
そのまま駐車場へと直行し、車を降りる。
ここまではオルコット邸の時と同じパターンだな。
「ここも懐かしいですわね……」
「そうだな……」
前にも言ったと思うが、バーテル家は代々、腕の立つ騎士を多く輩出してきた家であり、イギリス王家に仕えている騎士団にもその名は広まっている。
実を言うと、俺も昔何回か騎士団にスカウトされた事があった。
その頃は俺も幼かったし、すぐに断ったけど。
そう言った事もあってか、この屋敷もデカイ!豪華!キレイ!の三拍子が見事に揃っている。
俺達が正面扉の前に揃うと、門の時と同様に自動で開いた。
「よぉぉく来たな!待ってたぜ!」
「お久し振りです。アルフマンおじさん」
開いた扉の真正面にある大きな階段から見計らったかのように降りてきたのは、俺の遠縁の親戚にあたる男性の『アルフマン・バーテル』
なんというか……何故か渦を巻いた特徴的な前髪が印象深い巨漢の男性で、ごつい顔に髭を生やしているから、その迫力が二乗になっている。
かつての名前は『アルフマン・ウラノス』と言うらしく、幼い頃にバーテル家に養子として来た際に名字を変えたらしい。
豪快な性格とは裏腹に、非常に優秀な経営手腕と政治的センス、おまけに人心掌握術にも長けていて、まるで人の上に立つ為に生まれてきたような人物。
その実力で、バーテル家の繁栄に最も尽力した人間の一人でもある。
少し非情な部分もありはするが、基本的に身内には寛容で、話せばちゃんと分かってくれる人。
「セシリアのお嬢ちゃんも久し振りだな。元気にしてたか?」
「はい。お蔭さまで。おじさまもお元気そうでなによりですわ」
「がっはっはっ!当たり前だ!皆の上に立つ俺が不健康じゃ示しがつかんからな!普段から自身の健康管理には細心の注意を払っているつもりだぜ?」
ほんと、見た目に反して凄く真面目な人なんだよな~。
こう言った部分は普通に尊敬できるよ。
「で、そこのちっこい嬢ちゃんはもしかして、あのヴァリエール家の末っ子か?」
「ル…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ド・ラ・ヴァリエール……です」
「そうかそうか!ルイズって名前か!お前さんもよく来たな!碌なもてなしも出来んが、ゆっくりとしていってくれ」
「「「「お邪魔します」」」」
おじさんの後についていく形で、俺達はリビングへと案内された。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「好きな所に座ってくれ」
「「「失礼します」」」
リビングもオルコット家と同様にかなり広く、周囲には豪華な調度品が並んでいるが、どこか寂しさも滲ませている。
俺はおじさんの正面に座るようにして、その左右をそれぞれにセシリアとルイスが挟むようにして座っている。
「キッチンをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「おぉ、一向に構わんぞ。好きに使ってくれ」
「ありがとうございます」
チェルシーがリビングから出て、キッチンへと向かって行った。
なぜ彼女がそんな事をするのかと言うと、この屋敷には基本的にメイドのような使用人が一人も存在しないのだ。
その理由は本人しか知らない。
現在はこの屋敷に彼ともう一人の二人暮らしをしている。
二人で暮らすには広すぎると思うが、割と頻繁に人の出入りがある為、そこまでは寂しくないと昔おじさんが言っていた。
何故か彼は結婚をしようとせずに、ずっと独り身だ。
この強面がいけないのだろうか?
ちゃんと言葉を交わせば、悪い人間じゃないと分かるのに。
割と真面目に優良物件だぞ?この人。
「本当に久し振りだな。元気にしてたか?」
「はい。この通り」
「みたいだな。お前が壮健な事が、天国にいるあいつ等に送れる最高の餞だしな」
「そう……ですね」
普段は無駄に大声なくせに、真面目なトーンの時はどこまでも真面目なんだよな~…。
「にしても……」
「「はい?」」
俺の両隣の二人を見てどうしたんだ?
「まぁ~……俺は別にハーレムを否定はしねぇよ。お前だって男だもんな。大勢の美人を侍らせたいって気持ちはよ~く分かる」
「言われた方は複雑ですけどね……」
なんで俺の周囲にいる大人の男性は、揃いも揃って俺のハーレム肯定派なんだ?
「精々、大事にしてやれよ」
「はい。一度決めた以上は、男として必ず彼女達を守ってみせます」
「よく言った!それでこそバーテル家の男だ!」
またガハハッ!と豪快に笑ってみせるおじさん。
この人のテンションが下がる事は無いんだろうか?
「そうだ。アイツにも会わせないとな」
「そう言えば、まだ見てませんね。いないんですか?」
「いや……多分、もうそろそろ来ると思うが……」
おじさんが入口の方を見ると、ドタドタと足音が聞こえてきて、勢いよくリビングの扉が開かれた。
「おじさん!さっきクロの姿が見えたんだけど!もしかして来てるの!?」
「ココナ!来るのはいいが、もうちょっと静かに開けやがれ!」
「ごめんなさい……じゃなくて!」
扉から入ってきたのは、長い黒髪をツインテールで纏めた幼さを残した少女。
彼女こそが、この家のもう一人の住人であり、俺にとっての妹的な存在でもあるおじさんの義理の娘の『ココナ・バーテル』だ。
「えっと……ココナ。久し振りだな」
「本当に……本当にクロだ……」
え?ちょっと?いきなりこっちに走ってきたんですけど?
「会いたかったよぉ~!ク~ロ~!」
「わぷっ!?」
「「えぇ~!?」」
そこからのダイビング抱き着き!
「えへへ……♡本物のクロだ……♡」
俺の胸に頬を摺り寄せるその姿は、幼いながらもとても可憐で、思わず胸がドキッとしてしまった。
そして、このココナとの再会が、俺の周囲をより一層賑わせる事になっていく。
イギリスでの他作品ヒロインその2!
クロアの元ネタでもある『アルトネリコ2』より『ココナ』の登場です!
あまり知られていないかもしれませんが、実は彼女も立派な攻略可能なヒロインなのです!
普通にプレイをしていればまずはお目にかかれないルートではあるんですけどね。
なんせ、他の三人のヒロインとフラグを最後まで立てない事がココナ攻略の条件になりますから。
私も攻略本片手に頑張りました。
今となってはいい思い出です。
アルトネリコからもヒロインを出してほしいと意見を頂いた時、真っ先に彼女を出そうと思いました。
他の子も出そうとは思うのですが、やっぱり私はココナが大好き。
どうしても優先順位は高くなってしまいました。
ここで彼女が登場したと言う事は勿論……?
ココナを知らないと言う人は、どうか検索する事をお勧めします。
見れば分かるとお思いますが、彼女……ISのとあるヒロインとそっくりなんですよね。
色んな意味で。