夏休みの海外編パート2になる中国編です。
今回の主なヒロインは鈴で、それに付随する形でヒロインが追加されます。
猶、中国編は私の完全な妄想によって成り立っているので、中国らしいシーンは殆ど無いと思います。
イギリス編もどっこいどっこいでしたけどね。
長い長い空の旅を終えて、俺は二ヵ国目になる中国に到着した。
イギリスの時のように荷物を受け取ってから、入国ゲートを潜り抜けると、周囲をキョロキョロと見渡す。
飛行機内で鈴とメールを交わしたのだが、俺が到着するタイミングで自分も空港に迎えに来ると言い出したのだ。
「アイツの事だから、派手に旗とか振ってそうなんだけど……」
パッと見た限りでは、それらしい姿は見えない。
もう少しこの辺りで待つべきか。
それとも、少し移動して周りを探索でもするか。
「……動くか」
ここで考えていても仕方が無い。
悩んだ時はとにかく、行動あるのみだ。
そう自分の中で結論を出して、足を踏み出そうとした……その時だった。
「お兄ちゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!!」
「いっ!?」
こ…この、遠くから聞こえてくる活発的な声は!?
慌てて立ち止まって周りを見ると、空港内を全力ダッシュで駆け抜けてくる小さな影が迫ってきていた。
彼女の姿はあっという間に大きくなり、数秒の後に俺の眼前まで迫って来ていた。
「待ってたわよ!! お兄ちゃん!!」
「ぐぼふぁっ!?」
は…腹に物凄い衝撃が……!
「ようこそ中国へ! ……って、どうしたの?」
「り…鈴……」
俺の体に嬉しそうに抱き着く鈴の体をゆっくりと離しながら、ダメージのあった自分の腹をそっと撫でる。
「こうして出迎えてくれるのはとても嬉しいんだけど……全力ダッシュからの体当たりだけは勘弁してくれ……。いくら鈴の体が小さくて軽いと言っても、あの速度で突っ込んで来れば、相当なダメージになるから……」
「あ、ゴメ~ン!」
絶対に悪いって思ってないだろ。
だって、完全に顔が『テヘペロ♡』ってなってるし。
その顔も可愛いんだけど、このダメージは洒落になってない……。
「一体何をしているんですか……。空港内で走るなんて、今時幼い子供でもしませんよ?」
「す…すいませんでした……」
ん? 鈴の後ろから何やら、黒いスーツを着た女性がやって来た。
彼女は誰だ? 始めて見る顔だけど……。
「あ……どうも。初めまして、馬渡畔章さん。私は中国の代表候補生管理官を務めております『
「これはどうも……。馬渡畔章です」
鋭い目つきの美人さんで、見た目通りに固い女性みたいだ。
絵に描いたような、完全なキャリアウーマンだな。
代表候補生の管理官って事は、鈴を初めとした中国の代表候補生達のマネージャー的な立場の人って事か。
「……………」
「なんですか?」
「いや……昨日見た時とは違って、随分と大人しいんだな~って思って」
「それはどういう意味ですか……」
なんか鈴が麗々さんの事をジト目で見てるけど、昨日と違うってどういうことだ?
「昨日、お兄ちゃんが来るって分かった時、物凄く興奮してたじゃないですか」
「な……! 見てたんですか!?」
「いや……給湯室の扉を開きっぱなしにした状態でキャーキャー言ってれば、誰だって気が付きますよ……。私以外の子達も皆、知ってますし」
「そんな……」
出会って早々に落ち込んじゃったんですけと!?
「そうだ。お兄ちゃんにサインを貰わなくてもいいんですか?」
「サイン?」
「うん。楊さんってね、いつの間にかネット上に流れていたお兄ちゃんの試合をしている動画を見てから、速攻でお兄ちゃんのファンになったんだって」
「なんで言うんですか!?」
「事実でしょう?」
「うぐぐ……!」
鈴が完全に主導権を握っている……。
なんつーか……末恐ろしいな……。
(いっつも高飛車な態度で色々と言われてるんだから、こんな時ぐらいは反撃してもいいわよね?)
鈴の表情から、なんとなく彼女が考えている事が分かる気がする……。
今の鈴、すげー悪い顔してるもん。
「ほらほら。今のうちに言わないと、後で後悔しますよ? お兄ちゃんだっていつまでもこっちにいる訳じゃないんですから」
「わ……分かりましたよ!!」
顔を真っ赤にしながら自棄になって、麗々さんは鞄の中から一枚のサイン色紙と黒いペンを取り出して、こっちに向けた。
「し…失礼だとは重々承知していますが、どうかお願いします! 私に貴方のサインをください!!」
「お…俺なんかのでよければ……」
千冬の時もそうだが、大人の女性が時折見せる『女の子の顔』って滅茶苦茶可愛いよな。
この人も決して例外じゃないようで、今の麗々さんは年頃の乙女みたいな顔になっている。
「自分で振っておいてなんだけど、お兄ちゃんってサインとか書けるの?」
「ギク……」
サ…サイン……か……。
幼い頃の苦い思い出が頭をよぎるな……。
「……他の皆には内緒にしておいてくれよ?」
「うん?」
「実はな……ガキの頃、柄にもなくアイドルに憧れて、一人で寂しくサインの練習をした事があるんだ……」
「お…お兄ちゃんにもそんな頃が……」
「今では完全に俺の黒歴史だけどな……。この事は恥ずかしくて、千冬にも言った事は無い……」
「って事は、アタシだけが知っているお兄ちゃんの秘密か……。うふふ……♡」
お前は嬉しそうに微笑んでるけどな、俺にとっては羞恥心で悶えたくなる程の事なんだぞ?
ほんと……穴があったら入りたいよ……。
なんて話しをしながらも、ちゃっかりとサインは書いている俺でした。
「こ…こんなんでよろしいですか?」
「あ…ありがとうございます!! 一生の宝にします!!」
「いや……そんな大袈裟にしなくても……。一応、名前も書いておきました。漢字が分からなかったのでカタカナになっちゃいましたけど……」
「大丈夫です! 私、日本語もちゃんと読み書き出来ますから!」
「そ…そうですか……」
人間には色んな内面が隠されているってよく言うけど、この人を見ていると、それをよく実感出来るわ~。
「む~……」
あ、鈴が嫉妬してふくれっ面になっている。
「そんなに怒らなくても、今夜……たっぷりと可愛がってやるよ」
「お兄ちゃん……♡」
半分はそれが目的みたいなもんだしな。
「で…では、そろそろ行きましょうか」
「行くって……どこに?」
「我々が現在、滞在している候補生や訓練生がいる政府公認の訓練施設です」
く…訓練施設……。
一体どんな場所なんだ……?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
麗々さんの運転する車に乗って、俺達は高速道路を走っている。
時期が時期なだけあって、道路には多くの車が賑わっていた。
「馬渡さんも、ニュースなどで日本と中国がお世辞にも友好な関係でない事は知っていますよね?」
「はい。ネットなどでもよく目にします」
「しかし、上の方は日本との関係をこのままにしておくつもりはありません。どこかで切っ掛けを作って、日本との友好関係の回復を願っています。そんな時に舞い込んできた情報が……」
「俺が中国に来る……ですか?」
「そうです。日本人であり、今や世界的な有名人となった貴方とこちらの候補生達を交流させることで、少しでも中国に対するイメージの回復を考えているんです」
成る程……。
道理で、俺がすんなりと入国出来た訳だ。
きっと、空港の方にも予め政府のお偉方から何か言われてたんだろうな。
「しかし、それはあくまで彼らの思惑であって、我々はそんな無粋な事は考えていません」
「え?」
「私も凰候補生も、貴方に純粋に中国と言う国を楽しんでほしいと願っています。それに、この時期のホテルを予約無しにチェックインするのは、殆ど不可能に近いですから」
意外と柔軟な思考の持ち主なんだな。
それぐらいの柔らかさが無いと、一癖も二癖もある代表候補生達の管理官なんて仕事は出来ない……か。
「そう言えば、中国って空がスモッグで覆われているイメージが強かったけど、思ったよりも空気も空も綺麗なんだな」
「当たり前よ。中国だって、いつまでもあんな汚いままにしてはしておけないし。色々と試行錯誤を重ねていって、徐々に空気や空の清浄化をしていったって聞いてるわ」
「そっか……」
言われてみればその通りだ。
俺だって自分の国の空が汚く曇っていたら、いい気分はしない。
それでも長い間動けなかったのは『きっと誰かがするだろ』って考えが根付いていたからなのかもしれない。
街中は多くの人で賑わっていて、その殆どの人達が自転車に乗っていた。
「ここは俺がよく知っている中国のイメージそのまんまなのな……」
「お兄ちゃんは自転車乗れる人?」
「乗れはするぞ。ただ、家に置く場所がないから持ってないけど」
「ふ~ん……」
鈴は自転車とか似合いそうだよな。
競技用の奴とかに乗ったら、凄く絵になりそう。
(もしも、お兄ちゃんも自転車を持っていたら、一緒にサイクリングに出かけて、一緒に色んな場所に行って、そして最後には外でお兄ちゃんに……♡)
うん。鈴が何を妄想しているか、なんとなく分かりますよ?
だって、しれっとバレないように自分が履いているショートパンツの中に手を入れてるし。
「もうすぐ到着しますよ」
お? もうか。
窓から見る限りじゃ、ここは街の中心部か……。
施設の地下駐車場に車を停車させてから、俺達は並んで施設の中へと入っていった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「なんだか……妙に注目されてないか?」
「言ったでしょ? お兄ちゃんは世界的な有名人だって」
「それは理解してるんだけどな……」
廊下を歩いているだけだと言うのに、通りすぎる人達や立ち止まってこっちを見る人達があまりにも多いように思えるんだよ……。
受付嬢の人だって、俺を見た途端に顔を真っ赤して狼狽えて、呂律が回らない口調で案内してたし。
「もしかして俺……IS学園で騒がれる事に慣れてしまった……?」
「かもしれないわね。あそこってある意味、年中お祭り騒ぎみたいな所だし」
「その意見を一概に否定出来ないのが辛いよな……」
「あれを見てさ、アタシ…改めて日本の女子高生って凄いな~って思った」
「それ分かる……。あのパワーは男子には決して真似できない……」
立場上は俺も立派な高校生だが、それでも年齢的には大学生に足を踏み込んでいるしな……。
周りの女子達を見て、自分の思考が大人寄りになっている事を嫌でも実感してしまう……。
「イギリスでは何をして過ごしたの?」
「別にこれと言った事はしてないよ。向こうにいる親戚に挨拶をして、セシリアの屋敷の皆にも会って、セシリアのご両親の墓参りに行って……」
「お墓参り?」
「あぁ。俺が幼い頃にイギリスに住んでいた事は話しただろ?」
「そうだったわね」
「その頃、よくオルコットの屋敷にも出入りしていてさ、彼女の両親にも色々と世話になったんだ」
「そうだったんだ……」
俺にとっては墓参りは決意表明をする場でもあったけどな。
お墓の前まで行って、改めて気が引き締まった。
「勿論、夜には……?」
「……沢山シた。セシリアだけじゃなくて、彼女以外の幼馴染達ともな」
「また増えたんだ……」
「あの二人に関しては、前々から好意を抱かれてたみたいだしな。今更ながらに告白されたよ」
「返事は? ……って、聞くまでも無いか」
「無論、イエスだ」
「デスヨネ~」
俺が可愛い女の子の告白を断るなんて事、あるわけないでしょ。
もうこっちもハーレムを作る事に関して、完全に吹っ切れてるんだから。
「なぁ……鈴」
「ん?」
「臨海学校の帰りにさ、俺に会わせたい人がいるって言ってなかったか?」
「あぁ! すっかり忘れてた!」
忘れてたんかい。
「楊さん。『あの子』って今どこにいるか分かりますか?」
「多分、休憩所にでもいるのではないですか? ここを出る前にそこで見かけましたよ?」
「そっか……」
『あの子』とな?
その『会わせたい人物』とは女の子なのか?
「んじゃ、早速お兄ちゃんに会わせ…「その必要は無いよ」……はぁ……」
後ろから声? 誰だ?
「ふ~ん……。その人が鈴お姉ちゃんがいつも言ってる『お兄ちゃん』か……」
な…なんだ、この子は?
パッと見では鈴にそっくりだけど、彼女よりも少し幼い感じで、髪型がサイドテールになってる。
「えっと……この子はね……」
「自己紹介ぐらい自分でするからいいよ」
おふ……。鈴以上に活発な子だな……。
「私は台湾の代表候補生の『
「従妹……」
道理で鈴に似ているわけか……。
「背は結構高いし、顔もかなりのイケメンで髪型も申し分なし……。眼鏡を掛けているのも地味にポイント高いわね……。スタイルも悪くないっぽいし……」
俺……なんか値踏みされてる?
頭の先から爪先までジ~っと見られてるんですけど?
「なんなんだ? 彼女は……」
「あたしにもよく分かんない……。時々、この子の考えている事が分からなくなるのよね」
どうやら、鈴も相当に苦労しているようだ。
見た感じ、この乱音と言う子は高校生じゃなくて中学生みたいだ。
あの蘭と同い年で代表候補生になっているのは純粋に凄い。
なんか名前も似ているし。
「なんで台湾所属の彼女が中国にいるんだ?」
「上の連中が台湾と中国の候補生達の交流を図るために寄越したそうです。と言っても、彼女だけが一人で勝手に先行して来てしまったんですけどね」
麗々さんもしれっと会話に参加して、普段は聞けないような裏事情を教えてくれた。
「よし! 決めた!」
「「「何を?」」」
「えっと……確か、馬渡畔章さん……でしたよね?」
「あ…あぁ……」
自信に満ちた笑顔を見せてから、俺の事をビシッ! っと指差してきた。
「今から私と模擬戦をしてください!」
…………は?
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」
「ふふふ……」
いきなり何を言い出すかな!? この子は!?
俺の初めての中国来日は……初日から波乱の幕開けだった。
今回はまだ導入部分と言う事もあって、エロは無しで。
そして、多数の人達が予想していた通り、アーキタイプ・ブレイカーから、鈴の従妹であり台湾の代表候補生である凰乱音を登場させました。
初めての試みでドキドキしながら書きましたが、どうでしたでしょうか?
これが好評ならば、これを機に他のアーキタイプのキャラも出していこうと思います。
取り敢えず、今回初登場の乱音は確実にハーレムメンバー確定です。
それと、もう一人いましたよね……? ハーレム候補の人物が……。
次回から本格的に行きますよ~。
エロがあるかどうかは展開次第ですけど。