Fate/GrandOrder 聖女様は寂しがり屋 作:扇 漱真
えっっっぢ!!?!?な展開はゼロです。お許しください。
『聖女ジャンヌ・ダルク』が消えてから、一ヶ月。
マスターは相変わらずだ。部屋からも出てこない。ダウィンチとマシュが呼びかけてはいるが、弱々しい生返事ばかりだそうだ。何故こうなったのだろうか。
マスターはあの時、どこで間違えたのだろう。
私は..........
・・・・・・・
「ほんと…晴れすぎでしょ」
別段何もすることが無かったので窓の縁に腰掛けて晴れ晴れとした気持ちの悪い青空を眺めていた。確かに美しい空の色。だが、反転した自分にとっては眩しすぎる。すると、シールダーがやってきた。
「あ、オルタさん」
「あら、シールダーさん。マスターの様子は相変わらず?」
「えぇ、やっばり、まだ…」
シールダーは悲しそうに俯く。その顔をつい鼻で笑いそうになったが、私は堪えた。
「そう…」
それと同時に私も悲しい気持ちになった。そんな自分がいる事にも笑いそうになったが、笑えなかった。そんな状況でも、気分でも、ないからだ。
「マシュ、今日もリリィの事、お願いできるかしら?」
「へ?はい。構いませんけど…」
「そ、ありがとう」
そのままオルタは歩き出した。
「あの、どちらに?」
「あのバカマスターに説教」
「え…」
マシュはそのまま、オルタの背中を見つめたままだった。
「オルタさん?」
・・・・・・・
ドアが開く。
誰かが来た。
マスターの部屋に。
ダウィンチとマシュ以外の誰かだ。
「いつまで落ち込んでるよの。アンタ」
この声は…
「ジャンヌ…オルタ」
一度、片目で見やると直ぐに視線を逸らす。マスターの周りにはジャンヌとの記念写真など思い出となる物がそこらにあった。
「なにさ…笑いに来たの?」
「それも、いいわね」
「他に用件は?」
「いつまでそうしてるのか聞きに来たのよ」
「さぁ、いつまでだろうね」
情けないそのマスターの姿に憤りを感じて眉間にシワがよる。あの日から。マスターはずっとこの調子だ。
そう、一ヶ月前のあの日から。
・・・・・・・
「なんだよ……これ……」
あの日は突然オルレアンに現れた、魔神柱を倒すべく再びオルレアンへ介入していた。魔神柱自体を倒したまではよかったのだ。だが、その魔神柱は死に際にジャンヌ・ダルクを取り込み再び蘇った。
「ジャンヌ!」
「う、ぐ、あああぁ!!!」
「タダでは死なん!タダでは死なんぞぉぉぉ!!!」
「あああぁぁぁぁ!!!」
魔神柱はどうやら、ジャンヌの霊基を取り込んでいるらしい。魔神柱が瞬く間に大きくなり元の姿よりも大きくなった魔神柱の攻撃は英霊やマスターを大きく吹き飛ばした。
「マス…ター!っぐ……ぁぁぁぁ!!」
ジャンヌの心が揺らいだのを感じると、魔神柱は喜びの声を上げた。
「なるほど!取り込んでいるせいかお前の心が分かるぞ!!くははははひはは!!!そぉれ!!!」
「うぐぁ!」
魔神柱の大きな瞳から発せられた濃密な光線は、マスターに襲いかかる。ジャンヌはそれを見て悲鳴を上げる。
すると、魔神柱の魔力が増幅していくを他のサーヴァント達は感じた。
「クソ!マスターッ!っダメだ、攻撃が激しすぎる!誰かマスターをッ!」
サーヴァント・アーチャー、エミヤが魔神柱の攻撃を捌きながら、他サーヴァントに伝える。だが、全員同じく攻撃の激しさに押されている。マスターも何とか攻撃を避けてはいるが、もう少しで手遅れになるのも時間の問題だ。
「(何も出来ないなんて、こんな簡単に私が、終わる)」
絶望。魔神柱に魔力と霊基を取り込まれ何も出来ずに傷つく仲間を見ているだけ、自分の弱さにこんなにも絶望するとは思ってもいなかった。
「っ!」
だが、自分にも出来る事はある…!
ジャンヌは目付きを変えると神に祈るかのように手を握り背中の令呪を使い強く願い、呼び出した。
「オルタ!!」
「ぐっ!………!?」
マスターに魔神柱の攻撃が当たる瞬間、その触手は焼き捨てられた。マスターは唖然としてその場にへたり込んだ。
「全く、なんでアンタに呼ばれなきゃいけないのよ!」
「ジャンヌオルタ!な、なんで!?」
「アイツに呼ばれたのよ」
顔をそのアイツの方向に向けると、それはジャンヌだった。
「ジャンヌ…まさか、自分の令呪を……!」
「下がってなさい、マスター。全て焼き払います」
「ええぃ!まだ抵抗するかぁ!!!」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
空間が振動する程、魔神柱の魔力が高まる。
「死ねェェエェえぇァァァァぁぁぁぁぁ!」
超高密度の魔力の光線はジャンヌオルタに迫る。
「フン」
ジャンヌオルタは不機嫌そうに鼻を鳴らすと、自分の手に魔力を収束、魔神柱の光線にぶつけて相殺した。
「オルタ…」
『やっと繋がった!無事かい!?みんな!』
慌てて通信を入れてきたのはライダーのダウィンチだった。
「ダウィンチちゃん!」
『あれを止める方法を見つけたよ!誰か、動きを止められる人はいないかぃ!?』
「ギルガメッシュ!」
「良かろう!!天の鎖!!!」
ギルガメッシュが友の名を呼ぶと、魔神柱の周りから王の財宝が開き魔神柱を縛りつける。
「こ……れ……は!」
縛られた魔神柱は攻撃が繰り出せなくなっている。
『一旦引こう!どの道、彼を倒さない限りはこっちへは戻れない!』
「英雄王!一時退却だ!」
「ち、仕方あるまい」
エミヤが呼びかけるとギルガメッシュはエミヤの元へ降り立った。そのまま、エミヤが巨大な剣を投影すると、魔神柱へ投げ飛ばした。
「ぐぅぉあ!……!?」
投げ飛ばされた剣を払うと、エミヤ達の姿が消えていた。
「逃げたか……」
・・・・・・・
「ありがとう、二人とも」
「礼には及ばない。それよりもやつを倒す方法が見つかって何よりだ」
「くだらぬ。あんなモノ、物量で押せば良いであろうに」
ギルガメッシュが忌々しく言う。
『残念だけど、英雄王。そうはいかないよ』
「どういう意味だ?レオナルド・ダ・ヴィンチ」
『あの魔神柱。ジャンヌの力を取り込みつつある。つまり、やつの稼働源はジャンヌと言うことになる。残念なことに中心部を破壊しない限りは無限再生だ。だから、やつを倒すには、取り込まれているジャンヌを消すしかない』
サーヴァント達とマスターがどよめき。ダウィンチが顰め面になる。
「ダメだ!そんなこと!」
マスターの一声。だが、ダウィンチの表情は変わらない。
「っ!」
「よせ、マスター」
「離してよ!エミヤ!」
マスターらしからぬ表情を浮かべている。
「今行っても何も変わらない。状況をよく見ろ、マスター」
「っ……でも」
マスターは力なく下を向いた。
『ごめんよ。マスター君。これは私達にも解決出来ないんだ』
「解決できない…」
「あぁ、ジャンヌ・ダルクごとあの魔神柱を倒す事以外はね」
「っ!?」
ドクンと体が跳ねた。まるで心臓を掴まれたかのように。
そうだ、今はこれしか選択肢がない。彼女ごと魔神柱を倒さない限り、またここには平和は来ない。
(僕は…っ、僕はっ!)
「我がマスターが聞いて呆れるな」
マスターが悩んでいると、冷たい言葉が飛んできた。
セイバーオルタだ。カツカツと足音を鳴らすと黒く染ったその剣をマスターに突きつけた。
「セイバー…っ!?」
「っ、よせ!セイバー!」
「たかが、いちサーヴァントの為に貴様はこの世界を捨てようと考えるか。まぁ、それもいいだろう。どうせ、今彼女を救い、あの魔神柱を倒す術などないのだからな」
「っ、違う!僕は諦めたくないって話をしたくて…!」
「もういいわ!」
ジャンヌオルタがマスターの言葉を遮る。
「アンタに出来ないなら。私たちが自分でやるまでよ。事実アンタの力を借りなくてもあの魔神柱を仕留めればいいだけの事。そうでしょ?ダ・ヴィンチ」
『あ、あぁ、その通りだけど……』
「……っ、まって!オルタ!!」
腕を捕まれ振り返る。
「僕が…っ…やるっ」
声も、顔も、腕も、全て震えている。
何をするか分かっているのか、分かっていないのか。
それとも、ジャンヌを失う恐怖か。ジャンヌオルタにとってはどうでもよかったが、その目はたしかに自分を見据えていた。
だが、ため息をつき腕を払う。
「今のアンタに出来るわけないでしょ。いいから、黙って見てなさい」
「それでも!僕は彼女を救いたい!」
ひときは大きな声で自分へ響かせた。今にも泣きそうなその面でなにをやろうと言うのか。その真っ直ぐなマスターにジャンヌオルタは呆れて、首を縦に振った。
「分かったわよ。なら、アンタがなさい」
突きつけるようにジャンヌオルタは言った。
だが、マスターは力強く頷く。
・・・・・・
「そろそろ、この世界諸共…!?」
魔神柱が動き出した瞬間、空から剣の雨が降り注ぐ。
だが、それは、魔神柱を狙ったものでは無い。牽制のようなものだ。
「これは……」
上を見やると、次々とサーヴァント達が降り立つ。
「マスター!貴方のチャンスはあまりありませんよ!」
「わかってる!エミヤ、援護お願い!」
「心得た!」
・・・・・・
『いい?アンタが前線に突っ込んだらすぐに死ぬんだから、私達を使いなさい』
魔神柱に攻撃を仕掛ける前。マスター達は作戦を立てていた。
『でも…いいの?』
呆れたセイバーオルタが、首を振る。
『何を躊躇う、マスター。これは、貴方か決断すべき事だ』
『あぁ、そうだ。今回ばかりはマスターに任せるしかあるまい』
アーチャーも首を縦に振る。
『でも、やるとは言ったけど、どうすればいいか…』
『それなら、策はあるわ』
ジャンヌオルタが声を上げた。
『どうする気だ。あの魔神柱は普通じゃないぞ』
ジャンヌを取り込んだ魔神柱。それを倒すには、取り込まれたジャンヌ本人を消す事。それが今の打開策。
『私のアヴェンジャーの魔力とアイツを自壊させる令呪をマスターのガンドに込めて撃ってもらうわ』
マスターはそれを聞くと、不安そうな顔でオルタを見る。
『でも、オルタ…』
『やるのよ!』
『っ…!』
オルタの一喝にマスターはビクリと肩を揺らす。
『今この世界を守るにはそれしかないわ』
『……』
悔しそうにマスターは唇を噛む。
・・・・・・
「アーチャー!援護を!」
「了解した!」
「ええぃ!小賢しい!」
ジャンヌオルタがエミヤに指示を出す。
だが、魔神柱は目を光らせると、地面からおびたたしい数の触手が生えてきた。その一本一本の先端が開き、魔力が収束されていく。
「何!?」
瞬き輝く紫の光がマスター達を捉えている。
全員が防御の体勢をとってはいるが間に合うはずもない。マスターは目を閉じることしか出来ずに、歯を食いしばる。
「狼狽えるな!雑種!」
英雄王の一声と共に紫の閃光は撃墜されていく。
「貴様は前を見ろ!自分の成すべきことを忘れるな!」
「ギルガメッシュ…」
マスターはもう一度ジャンヌをしっかり見つめて意を決して頷いた。
「あぁ、わかってる!ギルガメッシュはそのまま地面に生えた触手みたいなのをやって!エミヤは…!」
マスターは目の色を変えて指示を出す。
他のサーヴァント達も快く、それに答える
だが、魔神柱を止めるには核となっているジャンヌを攻撃するしかない。
「ならばっ…!」
エミヤはスキをついて矢を番える。
そして、ジャンヌへ向けて引き放つ。
「無駄だ!」
「なに!?」
ジャンヌの目の前には強力な魔力防壁。エミヤの一撃は通らなかった。だが、防壁があることはわかった。まずはそれを破壊することが優先になった。
「今の硬度…ただの防壁じゃないぞ!」
「二、三人の同時攻撃で破ろう!前線に出てる人達で破壊して!ギルガメッシュとエミヤは細かい攻撃の撃破をお願い!」
「了解した!」
「フン」
ギルガメッシュが地面の触手をよそ目に門を開き、魔神柱への直接攻撃。ジャンヌへ向けての攻撃ではない。魔神柱そのものへの攻撃だった。ガトリング砲の弾丸のように速射される宝具達は魔神柱へ命中はするものの、ダメージにはなっていない。
「ち…やはりダメか」
「ギルガメッシュの攻撃ですら通用しないのか…」
マスターは周りのサーヴァントを見回す。だが、とても、一点集中の連携を取れるような状況でなない。
ギルガメッシュにエアを使わせる事も出来る。だが、それでは彼が怒るだけだ。なんとかして、あの魔力防壁を破らなくてはいけない。
「そうか!こっちの攻撃が通用しないなら…!」
マスターは思いつくと、声を上げた。
「エミヤ!ギルガメッシュ!その触手の光線を魔神柱へ弾き返せない?」
「なんだと!?」
ギルガメッシュとエミヤは驚愕した。が直ぐに表情を変え、二人は顔を見合わせ、ギルガメッシュは鼻を鳴らす。
「我に合わせられるな?雑種」
「いいだろう」
ギルガメッシュは片腕を上げ、宝物庫を解放する。
そのおびただしい数の宝物庫からは数々の盾が現れる。
紫の閃光が光る瞬間。エミヤはその閃光の前に立ちはだかり、目の前に手をかざす。
「I am the bone of my sword…」
エミヤのかざした手に魔力が収束。放たれた閃光と共にエミヤがその花を咲かせる。
『熾天覆う七つの円環!!!』
エミヤは唱えると、七枚の花弁状の障壁を展開する。
放たれた閃光は一直線にエミヤへ飛んできた。だが、展開した障壁がそれを受け止める。
「ぐっ!」
予想以上の攻撃の重さに一瞬苦しむが、なんとか持ちこたえた。
「英雄王!」
「押し返す!」
ギルガメッシュが手を前にやると、盾が一斉に射出され、凄まじい轟音と共に『熾天覆う七つの円環』ごと、攻撃を押し返す。
魔神柱もギルガメッシュのその力に圧倒される。
「何!?この、俺の攻撃をぉ…!!」
マスターはその機を逃さず、素早くジャンヌへ向けて令呪を込めたガンドを構える。
「オルタ!」
マスターの声掛けにジャンヌオルタはマスターの元へ駆け寄る。マスターの腕を掴み、アヴェンジャーとしての魔力をガンドへ注ぐ。
「いい?マスター。躊躇いなく撃ちなさい。アンタの変な生優しさなんて要らないのよ」
「っ…わかってるさ!」
ジャンヌオルタは言うと、既に次の攻撃態勢になっている魔神柱に魔力障壁を再度展開させないよう再度攻撃を開始する。
慈悲なんてかけていられない。これを外せば世界が終わる。ジャンヌが望む結末なら、それを自分で実現してみせる。だが、ジャンヌへガンドを向けている間、マスターは、背中から何か悪寒のような、躊躇いのような、弱さのような、
『もしかしたら、まだ助けられるかも』
マスターの感覚に、心にへばりつく。
『アンタの生優しさなんて要らないのよ!』
葛藤のせいなのか、呼吸が荒くなり、手足も目に見えて震えてきた。
「言われなくてもっ!」
分かってはいる。だが………
マスターの心は揺らいでいる。こんな戦場で突っ立っていられるのも不思議すぎるがそんな事を考える余裕はなかった。
目の前の最愛の人を殺すか、世界を守るか、天秤にかけられているのだから。しかし、結果的には世界を守るしかない。最愛の人を殺すしかない。
「僕はっ…!」
泣きそうになる。正確には涙は出ているが、気を緩めたら泣き叫びそうだ。
「あっ……ああっ……!」
慈悲なんて無くせ…
『だからなんだ』
あの人を殺せば…
『だからなんだ』
それでしかこの世界を守れないんだ…
『だからなんだ』
それでしか皆を守れないだ…
『だからなんだ』
『だからなんだ!』
『だからなんだ!!』
『だからなんだだからなんだだからなんだだ!』
確かに彼女の故郷だ。彼女の中にもここでの思い出もあるだろう。だからなんだ。そんなものより、今彼女を助けたい。殺すことなんてできない。手を伸ばせば届くというのに。
マスターの心はとっくに決まっている。
これは覆らない。曲げられない。歪まない。
ここまで一緒に来たのにこんな事で。
こんな世界より、今戦ってる皆より、今ここで脅えている自分よりも………
【ジャンヌの方が大事に決まってる】
「出来ないよ!!!」
マスターの一言。悲しみに溢れ、自分に対しての怒りに溢れたその一言。
ジャンヌオルタには『分かっていた』その言葉を聞いた瞬間、セイバーオルタとジャンヌオルタは既に構えていた。
「合わせろ!熱血女!」
「わかってるわよ!」
セイバーオルタがその黒い剣を構える。
ジャンヌオルタがその黒い旗を掲げる。
『卑王鉄槌。極光は反転する光を呑め!』
『これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮』
燃え盛る炎と闇より深い黒の魔力。
『吼え立てよ、我が憤怒!!!』
〈ラグロンド・メント・デュヘイン〉
『約束された勝利の剣!!!』
〈エクスカリバー・モルガン〉
セイバーオルタが振るった剣からは凄まじい轟音と共に放たれる黒い閃光。黒い光線の様な斬撃が魔神柱を圧倒する。その魔力を受け止めきれていない。抵抗することすら出来ない。そこから、燃え盛る豪炎が蛇の様に魔神柱の周りを囲う。
「馬鹿な!?抵抗出来ない、何故だ!」
魔神柱も防衛手段をとってはいるのだろうが、二人の前では無力だ。そんな魔神柱を尻目に燃え盛る炎からは黒い槍が現れる。その切っ先が向いているのは勿論、魔神柱だ。
「馬鹿なっ!サーヴァントの力を得たと言うのにぃ!」
ジャンヌオルタは手をかざす。
セイバーオルタは剣を構える。
「認めん!認めんぞ!貴様らのような猿ごときにィィ!!」
黒い槍の切っ先にまた炎が灯される。
セイバーオルタの剣に魔力が再び収束される。
「勝手に言ってろ」
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
セイバーオルタが再びその剣を振り抜く。
黒い魔力の斬撃は魔神柱を真っ二つにする。
すかさず、ジャンヌオルタがかざした手を握ると二つに割れた魔神柱の残骸とジャンヌを貫き、焼き尽くす。
その瞬間、ジャンヌオルタの目に映っていたのは、業火に焼かれ頬笑みを浮かべる一人の騎士の成れの果ての姿だった。
《マスターを……頼みます……》
焼き消える魔神柱と共にジャンヌも光となり消えた。ジャンヌオルタはその光を黙って見つめる。セイバーオルタがマスターの方を振り返るとマスターは力なく膝を着いていた。ただただ、じっと自分の手を見つめている。何も出来なかったことを後悔するように。
ジャンヌオルタはため息をつくと魔神柱が焼けた跡へ歩を進めた。
「どうした。熱血女」
ジャンヌオルタが何かを拾うとまたため息をつくた。
「…何でもないわよ」
ジャンヌオルタは拾った物を握り締め小さく呟いた。
「………わかってるわよ。アンタに言われなくても」
・・・・・・
これが事の発端。一か月前の出来事。
今のマスターの状況を作った事件。
その後マスター達はカルデアへ帰ってきた。そこから先は何事もなく。本当にただただ時間が過ぎるばかりだった。言うなれば平和が続いている。
だが、マスターはこの事件からずっとこの調子だ。
「アンタも、少しは乗り越える気にはならないの?」
「………」
何も答えない。答えたくないのだろう。
ジャンヌオルタも最近になってようやくマスターを自身の主と認め始めた所だったが、今の状態はただの子供だ。
「………何がわかるんだよ」
「は?」
「……君に何がわかるんだよ。僕と彼女が過ごしてきた時間の何がわかるんだよ」
ようやく口を開いたと思えばこれだ。
二人の惚気など散々聞かされた。ジャンヌ本人から。
だから、よく知っている。ジャンヌがマスターを。マスターがジャンヌをどれだけ信頼し、大切にしていたかなど、だが、今の自分にはどうでもいい事でもある。
第一マスターは…
「アイツを救えなかったクセに何言ってんのよ」
「っ!!!!」
ガタン!と大きな音を立てて、ジャンヌオルタの胸ぐらを掴み壁に押し付ける。力一杯に壁に押し付けられて少し痛い。だが、今の言葉確かにマスターの心を抉った。
「なんで…」
「…」
「なんでお前の方が生き残ったんだよ…」
これが多分マスターの本音。ずるずるとマスターは膝を着く。
「頼むから、その声で俺を呼ばないでよ…」
そして、これも本音。ジャンヌオルタには分かりきっていた。くだらなさ過ぎてまた笑いそうになった。
そして、こんなマスターを慰めに来た自分にも。
「そうね。アイツと同じ声。アイツと同じ体」
ジャンヌオルタはそんなマスターの首に腕を巻いていた。
「居なくなった事実は変わらないけど。似た体験をさせることは私にも出来る。どうする?マスター」
自分の台詞に反吐が出る。気持ち悪い。我ながらチョイスが雑過ぎた。
「んっ…」
今のマスターを心配しているのは、ジャンヌオルタも同じだった。
前編終わり……。
「ジャンヌを再召喚?」
「この石を使えば、」
「私も力をお貸ししましょう」
「天草!?」
「あの時救えなかったんだ!だから!!!」
「立香!!!!!」
あの時。後編。