吉良とシルヴィの奇妙な生活ティーチングフィーリング 作:吉良吉影に憧れる者
中学二年生である私たちは、2回目の遠足に浮き足立っていた。この中学校は私が元いた日本では考えられないほど放任というか適当というか…、班なども組まずに好きな人とある程度の人数で勝手に行っていいらしい。バスの席順なんかも、2人ひと組であれば誰とでもいいと担任が投げやりに言っていた。
目立つかもしれないが、シルヴィの隣がいいな…。比企谷は私を裏切って戸塚とバスに乗るらしい。行き先である隣の県では一緒に行動するがね。
目立ちたくはないが、このまま動かないのも目立つだろう。だが、待てよ?このクラスは男子も女子も奇数ずつだ。当然男子で1人女子で1人余ることになる。バスに1人で乗るというのはさすがの放任主義でも許されないらしいので、私とシルヴィが余ってくれれば自然な流れで隣になれる。フフフ、やはりいつだって運はこの吉良吉影に味方してくれている。
「なぁ、吉良!もし余ってるんだったら俺の隣来ないか?それとももう誰かと決めてるか…?」
1年の頃少しだけ話した男子生徒が誘ってくる。正直いらない気遣いだ。
シルヴィの方も余った私と隣になる気でいたらしいが、私が誘われているのを見て、悲しそうな顔をしている。同じことを考えているあたり仲がいい。
それにしても、いらない命まで運んでくると書いて運命…そんなくだらない漢字を思いつくなんて昔の人はオツムが足りてないのではないだろうか?
「おい!この前俺と行くって言ってなかったか?」
「あー!そうだっけ?わりー!つーわけでごめんな吉良、やっぱ無理っぽい。」
ふぅ、助かった。
「いや…当日なわけじゃないし大丈夫だよ。まぁ、この調子だと余ってしまいそうだが…」
「いやーマジごめんね!そんな恨みがましく言わないでよー」
全くヘラヘラしやがって、そんなに人に好かれたいのか?気苦労の方が多いだろうに…
「?なんかどことなく嬉しそうじゃないか?もしかして、シルヴィさんのこと好きなのか?」
はて?なぜこの男は私がシルヴィを愛していることに気づいたのだろうか?もしや、シルヴィのストーカーなのか?それは始末しないとな…。
努めて冷静に根拠を聞くと
「いや、だって転校生のシルヴィさんは人見知りっぽいからこの半年ぐらいで遠足なんて言う大きなイベントで隣の席の人を見つけられるほどクラスに馴染んでないし、事実今誰とも話してないし、吉良の方もさっきからシルヴィさんのこと見て、やっぱりあの人が残るとわかってたみたいな顔してるからさ。」
たしかに周りを見渡せば寝ているやつもちらほら見えるものの、大体の生徒はバスの席が隣になる予定の人と談笑しているようだ。
そんなこんなで授業が終わる10分前になった。
「あー、まだ決まってないのはー?吉良とシルヴィか…。んー2人は隣で大丈夫か?」
担任の不思議な物言いに、形ばかりの質問をしておく。
「えーと、席を別れることも出来るんですか?」
まさか、補助席を使うなんてことじゃないだろう。
「あー、このバス珍しいタイプでな、大抵後ろの方は5人座れるようなやつなんだが、この中学で使うのは最後部座席も2席2席で別れてるんだ。補助席は絶対出さないってのがバス会社との決まりだから、5人で座れるところは実質ない。で、2つの席を、一人一人で座ってもいいぞって話だ。まぁ、あんま許可したくないけどな…」
ここは適当な御託でも並べてシルヴィの隣に行こう。
「いえ、先生の都合もあると思いますし、私はシルヴィさんの隣でも大丈夫です。」
「私も、吉良くんの隣で問題ないです。」
こうして、バスの席はシルヴィの隣という天国のようなポジションを取れたのだった。
遠足当日─
一緒に行動するメンバーは私とシルヴィ、比企谷と戸塚の4人だ。女子がシルヴィしかいないが、戸塚は性別戸塚なので問題は無いだろう。行く場所もこの4人では揉めることなく決まった。
にしても、シルヴィを誘う時に戸塚がいてくれると助かるな。周りの連中、誰も何も言わない。
日程を確認し終えバスに乗り込むと既にシルヴィが座っていた。…シルヴィは私より遅く家を出たはずなのにな。
幸運にも私達の前の席─確か女子2人組だった気がする─は、乗り物酔いをするとかなんとか言って前の方に行ってしまったし、通路を挟んだ隣もいない上、斜めにも誰もいない。つまり、周りに誰もいない。(一番後ろの座席なので、当然後ろはいない。逆にいたらホラーだ。いや、私達の場合キラークイーンとグレーフオブスレーヴリーがいるのか…)
バスの中ではいつも通りすぎる会話をしながら、ゆらりゆらりと流れていく景色を楽しんだ。
まぁ、遠足と言っても私達には特に関係はないか…。それに、まともに楽しめるのなんて実質上初めてみたいなものだからな。楽しみ方なんてわからない。
バスは隣の県にはいり、若干の高揚感に浸りつつ隣の県なので滅多にということは無いがそれなりに物珍しい建物なんかを楽しんだ。
「なぁシルヴィ。写真を撮るのもいいけど、自分や私達は全く撮らないんだな…」
「って言ってるお前はその娘ばっか撮ってるじゃねぇかよ…」
「あはは、八幡そろそろ写真いいんじゃない?そんなに僕の写真必要かな…」
この班の男はまともじゃないようだ。戸塚?戸塚は性別戸塚だから。そこは間違えるなよ?
「吉影くん!『…End』ですって!高いですねー!」
「へぇ、何百年も昔に作られたのか…。ここの看板に説明が書いてあるぞ?」
『この塔が完成してから、誰一人として登れた者はいない。さらにいえば、この塔に入ると帰還することが出来ない可能性が高い。そのため立ち入り禁止となっている。』
大したことなさそうな見た目して危ない塔なんだな…。
それ以外にも、何やかんやと見て周り一通り遠足を楽しむことが出来た。
帰りのバスではほとんどの生徒が疲れてぐったりとしている。シルヴィもその1人のようで私の方にもたれかかって寝ている。その銀色の髪を撫でながら、小さな幸せを噛み締めて帰路につく。
小さい秋と小さい幸せ。たまに小さいシルヴィ。なんてな…。
むぅ…クサいしつまらない。今一つだな。
……To be continued
最後は、吉良吉影のつまらない洒落みたいなもので締めてみました。シルヴィのどこが小さいかは言わないでおこう。
次は冬服とかモコモコの話の予定です!