吉良とシルヴィの奇妙な生活ティーチングフィーリング 作:吉良吉影に憧れる者
視点がコロコロ変わります。わかりやすいようにはしてありますが……。出来てるかどうか…。
「ただいま。」
暗い声でご主人様は言う。私なんかにキスをしてしまったことをやはり後悔しているのだろうか。
「おかえりなさい。ご主人様…。」
私の声も暗くなる。ご主人様は、私の方を見向きもせず部屋に入ってしまう。その態度に私は自分の中で膨れる感情があっても、それがなんであるかが、どうしてもつかむことが出来ない。
恐怖と言うには何に怯えている訳でもない。
歓喜と言えるほど明るい気分ではない。
悲壮と述べるには涙は出ない。
期待と語れるほど先の事に自信は持てない。
ドロドロとグチャグチャと、心と頭の中で混ざり合い、汚物のように輝き始めるそれがなんなのか。奴隷の私には分からない。知りたくもない。知ってしまえば、希望に縋るから、絶望を避けるから、私は奴隷だから…、知らなくていい。
「ただいま。」
自分でも驚く程暗い声で言う。怒っているだろう。嘆いているかもしれない。そう考えると苦しくなった。たった一度のほんの少しの欲が、私を追い詰める。
「おかえりなさい。ご主人様…」
暗い声で返される。それは、初めてうちに来た時のような感情のない単調で義務感のような返事だった。
私はシルヴィの顔を見ることが出来ず、見向きもせず部屋にこもる。自分でしていることなのに、なぜそうしてしまったのか、分からなくなる。どういう顔をすればいいのかさえ分からない。私は自分の心の奥底が私のものじゃなくなった感覚を覚える。
寂しさに最も近く一番遠い。
喜びとはかけ離れているのに隣にある。
切なさよりも辛いのにカンタンに乗り超えられる。
楽しさのように貰ったことがあるのに初めて手に入れる。
何度も爆発しては、元の形に戻り私の心から動こうとせずに、私の心を壊しながら作り出す、それがなんなのか。殺人鬼の私は知らない。分かりたくない。解ってしまうと壊したくなるから、崩して戻してまた崩して、平穏とか、植物の心とはかけ離れてしまうから、私は人殺しだから…。分からなくていい。
二人は悩む。感情に蝕まれ、苛まれる。お互いの心を通じ合わせながら壊し合う。傷を舐め合いながら、抉り合う。ある時は恋人と呼ばれるそれは夫婦と呼ばれるようになり、いつの間にか親と形を変える。
殺人鬼は、自らが犯した罪を悔やむ。
奴隷は、自らの過去を悔やむ。
殺人鬼は、人殺しと呼ばれ続ける。
奴隷は、誰にも呼ばれることは無い。
殺人鬼は、たった一人の親も自分の手で殺めてしまう。
奴隷は、たった一人の親もなく、殺められそうになる。
殺人鬼は、人殺しの女王に愛される。
奴隷は、嘆きを愛し愛される。
殺人鬼は、死の間際、1人の奴隷を思い出す。
奴隷は、死の間際、1人の殺人鬼を思い出す。
そうしなければ、誰かを認めることが出来ないから。
そうすることにより誰かに認められるから。
二人は恋を知り理解して、捨て去る。
奴隷だから、殺人鬼だから、自分が『異形』だから…。
……To be continued
次は進めます。