吉良とシルヴィの奇妙な生活ティーチングフィーリング 作:吉良吉影に憧れる者
その子は突然目を覚ました。
一週間もの間(無意識で)スタンドを出し続け、飲まず食わずに眠り続けていた。そんな少女は黒い目を濁らせながら、
「ここは…どこですか?」
と言う。意識はかなりはっきりしているようで、私とご主人様を交互にみて、目をぱちくりしている。
そんな子供にご主人様が優しく話しかける。
「大丈夫、君に危害を加えるつもりは無い。安心しなさい。さぁ、ゆっくりでいいからこれをお食べ。」
そう言ってご主人様はスープを差し出す。すると、猫(スタンド)が、スープの入った器を弾き飛ばす。
どうやったかは知らないが、いきなり皿が弾け飛んだのだ。どんな能力なら、木っ端微塵に消し飛ぶのだろうか?まさか、ご主人様と同じようなスタンド?
その子は必死に謝る。どうやらスタンドをうまく制御できていないようだ。ご主人様は、皿の破片を片付けながら、優しく微笑みかける。
こんな状況下でこんなことを言うのは少しアレだが、子供の頭を一切撫でようとしないのは感心だ。
「…ご主人様って、絶対浮気とかしなさそうですね。」
「…?」
ご主人様は、何を言ってるんだこいつ?みたいな目を私に向ける。
ご主人様と私は少女の世話を甲斐甲斐しくすると、二日後にはそれなりに元気になっていた。
二日間のことを短くまとめると、スタンドの名前は『トレンボーキャッツ』で、少女の名は『猫目』だそうだ。姓を持たずに猫目と呼ばれていたそうだ。確かに目に猫のような線?が入っている。綺麗な宝石のようで美しい、とご主人様が褒めていた。(私の目は褒めてくれたことないのに…。)
スタンドの能力は、《振動》させる能力だそうだ。お皿を割った時は、中心部を震えさせることにより、物質単位で破壊したそうだ。それと記憶が無いらしい。(ご主人様曰く、辛いことがあると、スタンドが一時的に忘れさせてくれるらしい。最も全くしらぬ存ぜぬという訳では無いが)
身体中に傷が残っており、私のようなやけどこそないが、一生の跡になるようなものもあった。それらの傷に加えて肩に痛々しく残る抉られたあとが痛むらしく、風呂には入らずに、濡れたタオルで体を拭いていた。食事もあまりカロリーの高いものは食べさせず、胃に残りやすく満腹感の得られる食事を心がけた。文字の読み書きが全くできず、言葉の発音も悪かったため、ご主人様と私が交代で勉強を教えた。
熱心な看病により、猫目ちゃんを拾ってから4日後には傷もそれなりに治り、触れる程度では痛がらなくなっていた。その為、衣服の着替えがスムーズに出来るようになり、新しい服も必要になった。しかし、ご主人様はいつもの服屋へは行かず、近くの量販店で服を買った。
暗に私の方が大切と言われている気がしていい気分になったのは内緒だったりする。
「猫目、今日は風呂に入れそうか?」
と、ご主人様が聞くと、猫目は嫌だと首を振る。
「猫目ちゃん、1人は嫌かな?私が一緒に入ろうか?」
すると、ご主人様は
「シルヴィは絶対ダメだ。猫目、私と入りなさい。それとも1人で入るか?」
と少し怒った口調で言う。別に女の子同士いいだろう。それとも私の裸は誰にも見られたくないという愛情だろうか。全くご主人様は…。
「ご主人様、大好きです♡」
「…?私もシルヴィを愛しているよ?」
私たちをみて猫目は細い目を更に細くして、楽しそうですねと呟く。
「で、風呂はどうする?」
ご主人様が聞くと、猫目は心底嫌そうに
「お風呂は嫌、でも一人はもっと嫌。」
どうやらご主人様と入るようだ。許せない
風呂に入り歯を磨き寝支度を整えると、ご主人様がお茶を飲んでいる。
隣に座らせてもらい、私もお茶を飲む。何気なく手を繋ぐとご主人様は少し笑って、
「猫目…、大丈夫だろうか。」
と呟く。曲がりなりにも彼女の隣で他の女の心配をするとは…ご主人様はそんな人ではないのにな。
「そう言えばご主人様、珍しくあの子の手について何も言わないですね?」
そう言うと苦笑いをして、
「いやいや、流石に私も同性の手には興奮しないさ。確かに猫目は中性的な顔立ちだが、あれでも男だぞ?」
は?いやいや、ご主人様はなに馬鹿げた事を言っているのだろう。猫目が男?あの顔で?あの声で?あの口調で?
「…え?本当に?」
「…気づかなかったのか?まぁ、無理もないか…。」
ご主人様に、いくつかわからないことを質問する。
「顔はまだ幼いし元々女性的な顔立ちなのだろう。声は変声期も来てないし分かりにくいかもな。口調は、ただ単に言葉遣いが分からないだけだろう。」
そう考えれば、女性用の服しか売っていないオーレリアさんのお店には行かないのは当たり前だし、相手が子供とはいえ、好きな人(ポッ)が、男と風呂に入るなんて嫌だろうし、男の頭を撫でるなんていうことはしないわけで…。
つまり私は、勝手に嫉妬していただけなのか。少し恥ずかしい。
私は顔を真っ赤にしながらご主人様にもたれかかる。そのままウトウトと微睡んでしまい、寝てしまう。
次の日、ご主人様がベットまで運んでくれたようで、いつも通りの朝だった。お姫様抱っこをされたらしいが、起きていないのが悔やまれる。
ご主人様は、私に朝食を作るよう頼むと、猫目の部屋へ向かう。暫くするとご主人様が慌てた様子で私に言う。
「シルヴィ!これ…、これを見てくれ」
そこには汚い字で、
[吉影さんとシルヴィさんへ
私は敵猫のスタンド能力により
PS…猫目というのは嘘の名前です。誰にも呼ばれたことがなく、それとかあれとかという呼ばれ方をしてきましたが、お二人に『猫目』と呼ばれて嬉しかったです。それとこの手紙を読んでいる時私は…]
ここまで読んで目を離す。続きを見たくないのだ。ほんの短い間とはいえ、それなりに楽しかった生活だった、それなのに猫目がいない事が辛いのだ。
「ご主人様…」
「ああ…」
「ミィ…」
ん?猫の声が足元から聞こえる。下をみると、白く艶やかな毛並みに、黒くつぶらでほんのり猫目模様が入った鋭い目付きの猫がいた。…どうやら猫目は別に死んだ訳では無いようだ。
「猫目!なんだ、生きているのか…。人騒がせな猫だ。」
「全くそうですね。」
そう言う私たちの目には涙が浮かんでおり、ご主人様は猫目を抱き上げる。私もご主人様も猫は好きなので、そのまま飼うことが決定する。
まぁ、所詮は猫なので家にいないことも多いが、猫目と遊んだり話したりすることはよくある。
…しかし、食事が気に入らないと、皿を割るのはやめて欲しい。本体に悪意はないが…。
家のドアに猫用の扉が出来たり、猫目用のお皿が増えたりキャットフードを買うようになったのはまた別の話。
……To be continued
結構最後無理矢理になったな。
ここで、猫目についてのまとめ。
敵猫(出す予定なし)との、住処争いの最中、敵猫のスタンドにより人に変身させられる。その後奴隷商に捕まり1年ほど奴隷となる。スタンドを完全に操れる訳ではなく、本当にやばい時に、少しものを壊す程度しかない。
スタンド名トレンボーキャッツ(震える猫)
少し透けた白猫の姿。