吉良とシルヴィの奇妙な生活ティーチングフィーリング 作:吉良吉影に憧れる者
朝、私は生きていることに驚き、ガッカリする。
今日も一日痛い思いや、苦しい思いをしなくてはいけないのかと思うと、生きているのが嫌になる。
(昨日は少なくとも
例え朝食が無くとも、
キッチンへ向かうと、そこに居たのは、私が泣き叫ぶところを、絵師に描かせていたご主人様は居らず、代わりにいたのは、私よりも少し高い背丈、鮮やかな金髪に冷たい目、日本人とは思えない顔立ちの新しいご主人様と、相変わらず私を睨むような目、独特の立ち姿、筋骨隆々で猫のような顔の怪物がいた。
「おはようシルヴィ。まず手を洗ってきなさい。それからご飯にしよう。」
今の所優しいご主人様の言うとうりに手を洗う。ご主人様曰く、
「君の手は女神よりも美しい。だから大事にしなさい。」
こんな火傷の跡や、皮膚がボロボロの手のどこがいいのか分かりかねる。だが、きちんと手入れして損は無いだろう。それが許されているのだから。
朝食はトーストに卵焼きという、とても綺麗で美味しそうな料理だった。最初から私に与えるつもりだったようだが、同じ所で同じ朝食を食べているご主人様は、何を考えているか分からなかった。食べ終えると、ご主人様の大きな手が、私の頭に乗る。ビックリしてしまった私。それを怒るどころか、優しく微笑んだ。頭をご主人様が優しく撫でる。それはまるで、愛しい人を懐かしむような愛に満ち溢れていた。だが、それは逆に私ではない
(私を想って撫でてくださっているわけじゃない。)
そんな気がした。いつの間にか頬を通り過ぎ、首元を撫でていた。そのまま下ろしていた方の手を私の首にかけると、私の細く貧弱な
本当にただかけただけのような弱い力だったが、私の喉は絞まり、息苦しかった。
(まずい、むせる!)
むせてしまえば怒られる。そんな表情のご主人様を見るとむせるとこも出来なかった。
(ここで死ねるなら……いいかな。)
ご主人様に殺されることが、なんの苦でも無く、諦めとはまた違う感情を抱いていた。
すると、いきなり解放された。ご主人様は一言
「すまない。」
とだけ言うと、鞄をもち、
「私は学校に行ってくる。留守は頼んだ。昨日服屋の帰りに言ったことは覚えているね。頼んだよ。」
と言って家を出てしまう。
そう聞いて私は、服屋の帰りに言われた事を思い出す。
『シルヴィ、私は学校に行かなくてはいけないんだ。今すぐではなく明日なのだが、かなり長い時間家を空ける。その留守番を頼むよ。特に何もしなくていいからね。』
かなり長い時間をどうしようか迷う。何もしなくていいというのは何もするなということだろう。仕方なく、窓を見る。鳥や木々が動いているのをじっと見ていた。どのくらいそうしていただろう、足音が聞こえる。
思わず身構えると、ドアノブに鍵をさす音、そして開けられるドア、どうやらかなり長い時間見ていたようだ。
「ただいまシルヴィ。出掛ける準備をしろ、ご飯を食べに行くぞ。」
何故だか私の方を見ずに、言う
「分かりましたご主人様。それと、おかえりなさいませ」
ご主人様は少し微笑んで、私は買って頂いた服のシワを伸ばす。準備が出来たと伝えると、すぐに行くといわれた。
しばらくご主人様についてに街を歩くと甘い匂いが漂ってきた。
「お昼はここで食べようと思うのだが、甘い物は好きかね?食べられるかい?」
と、私に聞く
「お昼をここで……ですか?分かりました。」
店に入ると、青い服の店員に声をかけられる。ご主人様が、店員さんと話すと席に案内された。
不気味な店員さんの時も思ったのだが、ご主人様の後ろの怪物や、私のこの怪我にも触れないのはなぜなのだろう。
きっと『プロの技』というやつなのだろう。
メニュー表を見ていると、甘い匂いが近づく。ふとそちらを見ると、かなり不安定な体勢で、名前の分からない料理をいくつも運んでいる奇妙な店員さんがいた。私はその一つに見とれる。
黄金色の生地、上にたっぷりとかかった何か、その何かはキラキラと光っているようにも見えた。
食べたいが……ご主人様に言ってもいいのだろうか?
しかし、ご主人様は食べたい物が決まったのか店員を呼ぶ。私は少しガッカリしている自分に驚く。まさか期待していたのだろうか。このご主人様になら、
「シルヴィ、何を食べる?これ何かどうだい?」
と聞いてもらえると思っていたのだろうか?私は前のご主人様の所で、希望を持つことを止めたつもりでいたのに。
そう思っていたのに、希望を持ってしまったから、このザマだ。
(私はご主人様にとって奴隷、せいぜい
店員がやって来て、ご主人様は注文をする。
「ああ、サンドウィッチと、温かいミルク、それと、パンケーキセットを一つ。シルヴィ飲み物は何がいい?」
私は驚く。パンケーキセットとは何なのだろう?残飯のことなのだろうか?例え残飯だろうと食べて死なないのならいい。いや、毒だとわかっても食べるしかないけれど。
そう考えていると、店員が離れていく。注文が終わったようだ。
私はご主人様に、奴隷として言う。
「あの、もしかしてパンケーキセットは、私のでしょうか?そうでしたら結構です。お腹すいてないので……」
すると、私のお腹が大きな音を立てる。すると当然、恥ずかしさやら恐怖やらで頭がぐちゃぐちゃになった。
ご主人様はニッコリと微笑んでから、
「今日君は、立派に留守番をした。その褒美だと思いなさい。そうすれば遠慮なく食べられるだろう?」
何もかもお見通しであるかの物言いに、少し恐怖が薄れ、何故だか、心地良さを感じた。
「……ありがとうございます。これからも頑張ります。」
自分で言っておきながら、留守番の何を頑張るのか分からなかった。そんな会話をしていると料理が運ばれてきた。たとえ残飯や毒だろうと、ご主人様と食べるのならば美味しいかもしれないと思えた。
少なくとも、前のような寂しさも切なさも恐怖も痛みも苦しさも惨めさも
何一つないと言いきれる。(根拠とかは無いが……)
運ばれてきた料理を見る。
一つはご主人様が食べるであろうサンドウィッチ。
ご主人様が作ってくださったものとは違い、形が三角に切られ、卵が無いようだ。
もう一つは、私が見ていたものだった。狐色に焦げた生地、キラキラと光ながら動く液体、それらの上に綺麗に乗った。白くて丸いボール(のようなもの。)
私の前に置かれると、ご主人様は小さく「いただきます。」と言う。
これは、パンケーキと言うらしい。初めて知ったが感動した。確かに美味しそうな名前だと思った。
「このパンケーキ、本当に食べていいんですか?」
「ああ、それは今日留守番をしてもらったお礼だよ。」
そう言って食べるよう促される。
一口丸くて甘い匂いを発するそれを口に含む。冷たい。甘い。口の中で溶ける感触がする。もう一口、やはり甘くて溶けていく。次に、キラキラ光る液体がたっぷりとかけられたパンケーキを食べる。
「ん、ふわふわ……甘い。」
その様子を、ご主人様は、じっと見つめる。私は慌てて謝る。怒られるのではないかと思ったが杞憂だった。
すると、ご主人様はまた微笑んでから
「すまないがシルヴィ、このサンドウィッチ少し食べてくれないか。お腹が空いてなくてね。代わりと言ってはなんだが、そのパンケーキ一口くれないか?」
私はもちろん了承する。
「は…‥はい、分かりました」
少し躊躇ったが、サンドウィッチも美味しそうだったので目移りしてしまった。
ご主人様が差し出した皿に乗っているサンドウィッチに手を伸ばす。一口噛むとサクッとした食感、簡単に歯が通るお肉、まろやかな味わいで、邪魔をしないレタス。美味し過ぎる。ご主人様はパンケーキを食べると、
「甘いな……」
と呟くと、こちらを見て微笑む。
?なぜなのだろう。胸が苦しい。しかし、痛みや嫌な苦しみでは無い。幸せな苦しみだ。
(食事を楽しいと思うのは初めてかもしれない。)
私は食事を楽しんだ。そんな資格は、私にはないのにも関わらず。
家に帰ると、部屋に戻る。やる事がないので、ただ床に座っていると、ご主人様が食事に呼んで下さる。
私は美味しいと思ったが、ご主人様は不服だったようだ。
また、部屋に戻ろうとすると呼び止められた。頭を撫でられる。あまり、痛くも怖くもないのに、また胸が苦しくなった。ご主人様を見ると微笑んでから、風呂に入れと言われた。お風呂から上がるとハンドクリームを塗られ、頭を撫でられた。やはり胸が苦しい。だが、その苦しさは心地良さになっていると同時に恐怖もある。
この優しいご主人様の、暖かい手で、叩かれるのか殴られるのか。いつなのか、怖くて怖くてしょうがない。
すると、頭に何かが刺さったような痛みがする。
「痛っ!」
突然の事で、声を上げる。ご主人様はビックリしたあと、謝る。私は怖かった。優しかったのに、と思ってしまった。希望を持ってしまった。だから、絶望して、恐怖した。こんな自分が嫌になる。
しかし、ご主人様は爪を切るよう命令する。そんな事が罰になるとは思わないが……。
私は、ご主人様の左手の爪を切る。しばらくすると、切り終えた。ご主人様は優しい顔で、私の頭を撫でる。やはり信じてしまいそうになる。だが、怪物は私を睨む。裏の顔は許してくれないようだ。
ご主人様が急に私のことを見ると、
「そう言えばシルヴィ、君は
私はハッとする。まさかご主人様は見えていたのだろうか。
「ご主人様は、
to be continued…
かなり早足になったなぁ。分かりにくかったら文章が変な時は言ってください。感想待ってます!