吉良とシルヴィの奇妙な生活ティーチングフィーリング 作:吉良吉影に憧れる者
私はもう要らないのだろうか。
めぐみんと呼ばれていた少女は私と変わらない背丈、私より綺麗で黒い髪。火傷の跡なんてひとつもなく、むしろ艶やかで血色のいいご主人様好みの手を持っていた。
私は所詮代わりでしか無かったのだ。
考えてみれば馬鹿馬鹿しい。頼られるたび何かを任されるたびに喜んだ自分が恥ずかしい。単なる労働だ。前より少し良くなっただけだったんだ。
そう言えば買ってこいと言われた卵とネギをダメにしてしまった。謝らなければ…
「さっきは…あ…えっと…」
「先程は…あ…すみません…」
ほんの少し前ならこうなることさえ嬉しかったのにも関わらず笑うことが出来ない。
ご主人様に続きを促され恐る恐る口を開く
「ネギと卵…ダメにしてしまってすみません。どんな罰でも受けますから…ですが、お手柔らかにお願いしますご主人様。」
何もされないなんて甘えを持ちつつ気を引き締める。本当に殴られでもすればいっそ楽なのに。
「いや、私こそ遅くなって済まない。まぁ、お腹も空いたしご飯にしよう。話はそれからでもいいかい…?」
やはり何もされない。正直思った通りだが、歯痒く悔しい。これではまた好きになってしまう。もう嫌なのに…
昼食を作るよう言われたので家にあるもので作る。私は何を食べようか迷ったあと、『奴隷』が食事を貰えるわけがないことを思い出す。前のご主人様の所では夕食があればいい方だったのだ。昼を抜くぐらい慣れている。
「…シルヴィ?1つしかないのかい?家に食材がなかったのか?」
ご主人様に聞かれ予め用意した答えを言う。
「…いえ、私は
私は自分で言った後考えるそもそも『彼女』なんてあやふやなものに頼るから、悲しくなったんだ。
私は『奴隷』だ。一生絶対的なご主人様の唯一の奴隷だ。
「なるほど…
ご主人様はいつも通りそれこそ地球が青いことを確認するようにに言う
「はい…。私は決して
私も、確認に答えるように言う。
やっとご主人様を恨めるのだろうか。恐ろしいと思えるのだろうか。信じる事を忘れられるのだろうか。
ご主人様の色気を帯びた口元がゆっくりと開かれる
「《命令》一生私の側に居てくれ。私はもう、シルヴィのいない生活なんて考えられないよ。浮気のようなことをしてしまったのは本当に申し訳ないと思っている。反省してる。もう決してしない。」
私は謝ってほしいのだろうか?違う
ならば必要とされたいのか?違う
もしくは愛されたいのか?違う
それなら愛したいのか?違う
もっと、言い難い何かが欲しい。のかもしれない
「…いえ、浮気だなんて思ってません。私は奴隷ですから。」
違うそうじゃない
違うこれじゃない
違う分からない
違う言いたくない
違う知りたくない
違う分かってない
違う理解できない
違うんだ
違うそんなふうに思ってなんかないんだ
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
もっと言うべき言葉はあるはずだ。ご主人様に分かってもらいたい気持ちがあるはずだ。一緒に答えを見つけたい。2人で幸せになりたい。人殺しだとか奴隷だとか男だとか女だとか三十路を超えてるのも成人すらしてないのもどうでもいいんだ。関係ないんだ。
私とあなたで何かがあるんだ。そのはずなのに…
私もご主人様の隣には居たい。ご主人様と笑っていたい。ご主人様に泣きつきたい。たまには喧嘩したい。彼女になりたい。妻と紹介されたい。旦那の帰りが遅いと心配したい。子供の教育方針で揉めてみたい。
そんなふうに思考の渦に溺れていると
「お願いだから。もういちど笑ってくれないか?私はもう信じられないか?まだ怖いのかい?」
とご主人様に言われる。
いいえ、違うんです。信じているからこそ怖いんです。怖いからこそ信じているんです。
「分かりました。ご主人様の命令は《笑え》ですね。」
ああ、私の声で私じゃない誰かが言う。
それは私じゃないんです。気付いて下さい。
私はあなたに笑いかけたいんです。あなたと笑っていたいんです。あなたに笑わせてほしいんです。
それでも私の表情は勝手に動く。薄気味悪い笑みを作り出してしまう。こんなにも醜く汚い表情を見せたくないのに見られてしまう。
壊れている狂っているふざけている死んでいる腐っている
傷ついている?
もう戻れないのだろうか
パンケーキを食べられる日は…
ご主人様が病気の看病をしてくれた日は…
辛いことを思い出して泣きついた日は…
家事を頼まれたのに失敗してしまった日は…
次は頑張って成功した日は…
ご主人様の看病を死に物狂いでやった日は…
初めて交わったあの日は…
性交をおざなりされたあの日は…
新しい服を見せたあの日は…
手に頬ずりをされたあの日は…
頭を撫でてくれたあの暖かい日は…
もう…来ないのだろうか。
……To be continued
警告ここからはシリアスかつ少し酷い話になります。シルヴィちゃんがいじめられるのを見たくない方は目を閉じてスマホも閉じてください。大丈夫な方?読んでください。胸糞注意ですけどね?