吉良とシルヴィの奇妙な生活ティーチングフィーリング 作:吉良吉影に憧れる者
夏休みも終わりを迎え、8月最後の日。
「ご主人様!夕食の材料が足りないので買いに行きいませんか?」
帰ってきてからずっとシルヴィの手に頬ずりをしていた吉良に若干大きな声で言う。
「あ、ああ。買い物か…分かったよ。」
特に着替えず、制服のまま歩こうとする彼と、持ってくいる服を器用に組み合わせモデルばりのオシャレを発揮する彼女。その図は、仲のいい兄妹か、背の低い誘拐犯のようだった。
商店街を通り抜け、少し先のスーパーに向かう。シルヴィは手早く買い物を済ませると、吉良の手を握る。
「ご主人様、私幸せです!」
「私もだよ。」
奴隷と殺人鬼。
どちらもファンタジーの世界の住人であり、どちらも存在し得る異質である。
「シ…シルヴィ?シルヴィなのか?」
「え…?」
幸せを噛み締める彼女に何かを見つけたかのように縋ろうとする男─奇抜と言うには奇怪すぎる奇妙な帽子で顔を隠し、軍手と呼ぶにはおしゃれであり手袋というには生地の薄そうな布を纏い、ネクタイともスカーフとも言えないソレからは不気味に浮き出る鎖骨と胸筋が覗いている。その原因は女性が着れば公然わいせつになるのではと言うほど胸のあたりが開かれており全体的に生地の薄そうな服を身につけている。
「シルヴィ、知り合いか?」
「いえ、どこかで見たことのある雰囲気なんですけど…ごめんなさい。どこかでお会いしましたっけ?」
2人は警戒しつつ彼との距離を一定に縮める。キラークイーンの射程距離だ。
「私は知っているんだよ。君の顔も名前も生い立ちも何もかも…知っている。」
「オイオイオイオイ、質問しているのはこっちなんだぜ?どうして好き勝手に喋ってるんだ?アンタは疑問文には関係ない答えを返せと教わっているのか?」
完全に間合いに入りキラークイーンを出現させる。心做しか彼も苛立ったように構える。
「私は彼女の…、彼女の…
シルヴィの父親を名乗ったが随分と若そうで、彼女の生い立ちに深く関係してそうだった。
「父…親?」
「ああ。君の父だ。」
その場にいる3人に(3人とスタンド1体)には奇妙な沈黙が生まれる。一見すれば 男と歩いている娘を見つけたお父さんの形だが、実際は娘を捨ててその娘が男と歩いているのだ。
「お父さんって事ですか…?」
「ああ、」
吉良に言われうっすらと戸惑う父親(仮)。
「シルヴィ、お父さんと積もる話もあるだろうし、私はどこか行こうか?」
「…はい、すみません。」
少し離れた所で吉良は待っている。
「えっと、お父…さん?ごめんなさいなんて呼べばいいのか分からなくて…」
「ああ、そうだろうね。私も正直戸惑っている。」
シルヴィは、帽子をさらに深くかぶり顔を見せないように振る舞う彼に疑問を覚えつつ、それを無視する。
「聞きたいこととかあるだろう。彼もそれを見越して、離れたんだし…」
「じゃあ単刀直入に、聞かせてもらいます。」
「どうして…私を捨てたんですか?母を裏切ったんですか?貴方にとって私は必要でしたか?貴方にとって母は愛しかったですか?なんで…なんで…どうして、私にパパって呼ばせてくれなかったんですか?私は女の子だけど…お父さんとキャッチボールをしてみたかった。おままごとをやって欲しかった。もっと…遊びたかった。どうして…ですか?」
シルヴィの涙ながらの告白を、父親は黙って聞いていた。
「それを私が答えることは出来ない。」
彼の言葉にシルヴィは目を見開く。その時逆光で顔は見えなかったが、シルヴィの目は完全に愛する吉良の様な金色の髪を捉えた。
吉良が戻り、彼女を抱きしめながら慰めると落ち着いたようで泣き止んだ。
「私はもう、消えることにするよ。」
「ああ、そうしてくれ、聞いても答える気がないなら、アンタの存在は彼女にとって、毒なんだ。」
「フッ手厳しいな。彼女を大切にしてやってくれ。私の分もな。」
「そのつもりだ。ただ、これだけは言っておこう。娘さんを僕にください。」
吉良の目は挑発するような鋭い視線から、一世一代の告白をするような緊張した目になる。
「娘を頼むぞ。
「…………ッ!なぜ?」
父親は娘を指さし、
「寝ているようだから、ガラスを扱うように丁寧に帰ることをオススメする。」
吉良の質問には答えず、2人に背を向け雑踏の中に紛れていく。
不思議であったが、そんな事はどうでもいい。
吉良の頭の中では、何処か自分と似た父親に名前を呼ばれた時の感触がグルグルと回っていた。
……To be continued
伏線いっぱい!最終話で全部回収する予定です。そして、これからはどんどん時間を進めますが、過去に戻ることもありますので前書きをよく読んでください