吉良とシルヴィの奇妙な生活ティーチングフィーリング 作:吉良吉影に憧れる者
今日も暇をしている経営難気味の服屋にて、店主である私は、久しぶりクローゼットの前で頭を抱える。
プライドを持って服屋として努力して勉強をしてきたはずの私が、服装についてかれこれ1時間以上も悩むことになっている原因は、今日訪ねてくる予定の運送屋のせいだ。
別に彼自身が悪いというわけでなく、何度も何度も店に(仕事とはいえ)来てくれ、その上毎回服が綺麗だとか、あまり派手すぎて似合っていないだとか、その帽子だと髪の色に映えて素敵だとか…。そんな風に評価をしてくれる事が正直嬉しく思っている部分はある。
それはあくまでお世辞でしかないこともわかってる。が、美味しそうに缶コーヒーを飲む彼の姿を見ているとなんだかわからない浮遊感に襲われ体かふわりふわりと宙に浮いてるような錯覚に陥る。
「こんにちわー。○○運送のものです!荷物お届けに来ましたー!」
いつも通り缶コーヒーを持ってシャッターを開ける。
「ごきげんよう。今日も元気そうね。」
「ええ、いつも缶コーヒーありがとうございます。あ、それと、この荷物オーレリアの自宅宛だと思うですけど…?違いますかね?」
そう言って彼が見せた小包には私の自宅の住所が書かれており、間違いなく両親からのものだった。
「…そうみたいね。ここで受け取りのサイン書いてもいいのかしら?」
「いやぁ、ホントはダメなんですけどねー。まぁ、でも内緒にしといてください。あ、じゃあ、こうしましょう!」
名案を思いついたとばかりに彼は大げさなリアクションを取る。
「ここで、オーレリアさんの荷物を受け取ってもらえれば、自分はその分早く帰れます。で、そのお礼として食事でもどうです?勿論自分の奢りですよ!」
最近というか、かなり前からこんなふうに男性からの誘いを受けることは無かった。第二次性徴期を超えた辺りで、私を口説くような男は体目当ての奴ばかりでそんなやつにうんざりすると同時に表情は薄暗くなり、笑顔は不気味だと言われ、目つきは鋭く射すくめるようだと言われるようになった。
彼に対しても、最初は射すくめるどころかやや威嚇気味で睨むように見ていた。しかし、だんだん彼の紳士さに惹かれていき、目元が柔らかくなった(彼曰く)
そのはずなのに口調だけは今まで通りで、変に仰々しい、飾ったような台詞で誘いを流そうとする。
「食事?…まぁあなたなら構わないけど。きちんとエスコートしてくれるのかしら?」
ただの文字列としては、誘われて嬉しそうに聞こえるかもしれない。
しかし、さっきも言ったように私の目付きは少し柔らかくなったとはいえ鋭いものだし、鍔も小さくして言ったとはいえ、最低限顔を覆えてしまう程はある。その上、緊張のせいで若干不機嫌そうな声になっている。
「…いや、エスコートって言われるとちょっと自信ないですね…。」
ああ、やっぱり少し引いたような声をしている。彼も次からは来なくなるのだろう。ほんの少しさみしいとは思うが、その程度だ。その程度のはずだから、表情は変わらない。
「ああ!いや、オーレリアさんが悪いってより自分じゃオーレリアさんには釣り合わないんじゃないかなぁって…。テーブルマナーとか一切知らないんで…。」
いや、正直悲しい。さみしい。少しぐらいなら正直に素直な気持ちを言えるだろうか?言わせてもらえるだろうか?
「フフッ、ちょっとしたデートでしょう?難しく考えなくていいのよ?」
私が言うと大きく目を見開いて、彼の頬が少し紅くなる。
きっと私の顔も赤いかもしれない。
「それもそうですね!じゃ、後で電話します!近くに美味しいレストランがあるんで、そこに行きましょうね!」
久しく使っていなかったスマホに、新しく彼の名前が追加された。
それだけで結構嬉しくなってしまい頬が紅潮してしまう。
「貴方とのデート楽しみにしてるわ…。」
誰もいない空間で1人つぶやき、またクローゼットとにらめっこすることになる。
どうせ客なんて来やしないのだから、いっそ店を閉めてしまってもいいかもしれない。
そんなタイミングでカランコロンと軽快な音が鳴ってしまう。
「いらっしゃいませ。」
ほんの少し上機嫌気味のこの声に気づいてくれるのはきっと彼だけでしょうね。
……To be continued
最後に来たお客さんは誰でしょうね?意味深に呟いときます!ネタがねぇとか言いつつ1700文字も書いたよw