以上
2XXX年 六月
夏に近づき、汗ばむ陽気の中一人の男がとある鎮守府に着任の命令を受け、その場所へと徒歩で向かっていた。
彼にとって由一の救いは着任した鎮守府が日本だという事だろう。
「地図によればこの辺りだよな・・・まさか、ここか?」
そこは建物には亀裂が走っており、その周りは大きく伸びた雑草がところ狭しと生え、鎮守府の機能は生きているだけという必要最低限のものであった。
着任以前にこの鎮守府にも提督がいたらしいが、艦娘への度重なる酷使、娼婦としての扱い、捨て艦戦法などを行っていたらしく、最後には艦娘の人権無視まで手を伸ばし憲兵によって逮捕され、拘置所に送られたと聞いている。
「すごい荒れようだな・・・秘書艦が着任するまでまだ時間があるし、先ずは草むしりだな」
此処に来る途中に雑貨店で購入した軍手や鎌を取り出して準備する。少し汗ばむ陽気だ、軍服の上半身を脱ぎ、手頃な木の枝にかけると軍手をはめ、鎌を手に草刈りを始めた。
あまりの大きさなので、先ずは大きさを均等にしていかなければならない。地道な作業だが、荒れた地であるのだから些細な事から始めてていく。
大きさを均等にしていきながら根っこを引き抜く。雑草は根が強い残したままにしておくとそこから新たに生えてきてしまうのだ。雑草の力強さは見習うべきとはよく言ったものである。
「ふぃ~、とりあえず入口付近は終わったけど・・・こりゃあ、一日じゃ終わらねえぞ」
しばしの休息を取りつつ、草むしりを再開する。彼は元々田舎の出身であるためにこういった事は幼少期からやっていたのだ。
ある程度、むしった草をひとまとめにしながら続けていく。根っこ方は余った買い物袋の方へ入れていく。
そうしているうちにこちらへ向かってくる人影があった。外見年齢は15、6歳、長い銀髪を揺らし、ツリ目で形の整った鼻、強気な性格である事が伺える。
「何をしているの?」
初めて出会った艦娘からの第一声がそれであった。
「見て分からねえか?あまりにヒドイ荒れようなんで草むしりしてんだ」
「はぁ?アンタ、提督じゃないの?」
「いや、バッチリ提督だって。ほら、着任書類はそこにある」
指差す場所には手頃な石でとめられていた書類があった。鎮守府内部に入ろうとしなかったのだろう。
「鎮守府の中に入らないでなにやってんのよ・・・」
艦娘は呆れながらため息をついた。着任早々、鎮守府に入らないなど前代未聞だ。
「仕方ないだろ?ここまで荒れてちゃ、誰も入れねえよ。で・・・今更だけど君は?」
その質問に対して海軍の敬礼をした後に口上を述べる。
「駆逐艦、叢雲。一三〇〇・・・着任しました」
「ああ、叢雲っていうのか。改めてよろしくな」
提督の態度にムッとしたが、礼儀はキチンとしているので抑え込む叢雲だった。
◇
二日かけて鎮守府の草むしりと清掃を終え、ようやく鎮守府として機能した。
机はダンボールだが、仕方ないと割り切る。
「先ずは建造ね。資材を投入する数字を決めて」
「おう」
提督は最低数で回すことにした。今はまだ資材もメンバーも叢雲一人という最低限の状態、無理はできないと判断してのことだ。
表示された時間は20分、だが、高速建造材を使ってみろと指示され使う事にする。
「わらわが初春じゃ、よろしく頼みますぞ」
扇を持ち、ポニーテールに結った髪と紙垂(しで)らしき飾りと麻呂眉、加えて古風な喋り方をする初春。彼女が仲間に加わり最低限の戦力が出来た。
その瞬間、警報が鳴る。どうやら鎮守府付近の海域に敵である深海棲艦が現れたようだ。
「出陣ね?」
「ああ、だが・・・やられたら撤退命令をだすからな?」
「ふふ、任せておくのじゃ」
叢雲と初春は工廠で艤装を纏うと水面に立ち、扉が開くのを待つ。
「!出撃するわ!」
「初春、推して参るぞ!」
近海に現れたのは駆逐イ級。深海棲艦の中では比較的弱い部類に入る。だが、それはあくまでも練度の高い艦娘や歴戦の提督が言えるものだ・・・。
新米からすれば、たった一体のイ級にさえ手こずるのが現実。艦娘の練度も低いために被弾も簡単にしてしまう。
イ級の口から砲塔が現れ、砲撃を放ってくる。練度も低いために偽装の力を出しきれていない叢雲と初春はなんとか回避するが、着弾した衝撃の水しぶきで海水を浴びてしまう。
「う・・・気持ち悪い」
「濡れてしまったのう・・・!叢雲!!」
初春が気づき、駆逐イ級は狙っていた叢雲に砲撃するが初春が庇った事で無傷ではあったが、代わりに初春が大破してしまった。
「う・・・まだまだ…この程度では沈まぬぞ!」
「初春、アンタ!!」
『初春!!』
提督も声をかけるが、まだ戦闘中であるため、近寄ることはできない。
「よくも、私の仲間を傷つけたわね!沈みなさい!!」
叢雲の反撃による砲撃。それがイ級の中心部に直撃する。所謂、クリティカルといったものだろう。
イ級は海底に沈んでいく。これが艦娘と深海棲艦と呼ばれるもの同士の戦いなのかと提督は震えていた。
叢雲は初春へ肩を貸しながら提督のいる船へ近づいていく。
「悪いけど、初春を収容してあげて・・・流石にダメージが大きすぎるから」
「ああ、それと先ほどの深海棲艦を撃沈した場所から光が出てるんだが?」
「それはドロップね。行ってみましょう」
叢雲の護衛を受けつつ提督は船を操作し、輝いている場所へと向かう
提督が近づいた瞬間、光の柱が立ちその中から一人の艦娘が現れた。
「僕は白露型駆逐艦・・・「時雨」これからよろしくね」
「歓迎するぜ、時雨ちゃん」
「提督は変わってるね?」
「よく言われる。とりあえず帰るぞ?初春が大破してるからよ」
時雨と名乗った新たな仲間は変わり者の提督に面食らったものの、笑みを浮かべながら鎮守府へと続いた。
◇
「初春を入渠させてあげて!」
戻ると同時に叢雲はすぐに提督へと訴えた。無論、それを無下にするほど落ちてはいない。
「当たり前だ。傷ついたままを放っておくほど馬鹿じゃない」
妖精さん達にお願いして、すぐに入居の準備をする。艦娘にとって入渠は風呂だと叢雲から聞いていたので鎮守府に入るなり、真っ先に清掃と修理を優先したのが幸いした。
『この工廠は、腕の良い職人がおるのう。安心じゃ』
とは言うもの、防音など全く出来ていないので男としては辛いものがあるのが現実である。
「変な気は起こさないでよ?」
「ボクからも忠告しておくよ」
「なんとか、頑張る・・・さ」
これから始まる鎮守府生活。後にこれが、和風鎮守府のかぶき艦隊と呼ばれる者達の立ち上がりであった。
艦これのネタで唯一のものです。
作者の鎮守府は基本的に和風設定になっています。
海外艦であろうと関係ありません。
この作品はプレイの記憶を思い返しつつ、ストーリーにしているので、そんな事があったのか!?という事が多いです。
R-18に関してはそういった出来事もあるという事を踏まえていただきたいです。
ドロップや建造は入手順で艦娘を登場させます。入手していない子もいますので登場しない子もいます。
イベント海域に関しては突破できた海域と出来なかった海域があります。
では、次回で!