艦隊編成の壁(忍者・侍・芸者)。
以上
最初の出撃から一週間が経過するが、一向に海域攻略へは至っていなかった。
任務をこなしつつ、資材を集め、海域を攻略していく。新米にとっては根気のいる事であった。
その中でも叢雲を秘書艦とし、初春、時雨の三人で最初の地点を何度も何度も周り、練度を上げていた。
その中で、睦月型の駆逐艦である長月と菊月が新たにドロップで着任した。二人共、どこか気難しいが、艦の記憶によって戦いの厳しさを知っているからであろう。
その他にも任務による着任で白雪、建造によって着任した皐月と如月の二人も新たに加わった。
任務は終わりつつあったがここで大きな壁が立ちはだかった。軽巡洋艦である天龍だ。
一週間が経過し、なんとか鎮守府に近づく主力艦隊は数によって撃破する事ができたが、未だに天龍がこの鎮守府に着任していないのだ。
「叢雲、軽巡レシピで建造してくれや」
「またなの!?仕方ないといえば仕方ないけど」
「天龍ちゃんが来ないといけないものね~」
提督は少しため息をつきながら建造に手を回す。二番艦である龍田は任務によって着任したが、天龍がいないことに不満を持っているようであった。
建造で表示された時間は一時間二十分、資料によれば重巡洋艦の妙高型との事だ。流石に時間は待てないので高速建造材を使う事にする。
「貴様が司令官か、私は那智。よろしくお願いする」
妙高型の二番艦、那智。火力が不足していた鎮守府としては重宝する・・・のだが、提督はここでかぁ・・・といった様子だ。
「な、なんだ!貴様、私に不満があるのか!?」
「違う違う、タイミング的に早く呼んじゃったのさ。今は資材が少ないから運用できないって話」
「何?もしや、此処は新米の鎮守府なのか?」
「ご名答。嬉しいし歓迎するけど出撃はしばらく出来ないのを了承して欲しい」
「新米なら仕方あるまい、世話になるぞ」
そういって那智は軍人の敬礼をする。それに対し提督も返礼する。
「しばらくは鎮守府付近の出撃だな・・・練度も上げておかないといけねえし・・・はぁ」
書類とにらめっこしつつ、出撃や鎮守府の修理等、やることはたくさんあった。少しでも改善していかなければこの鎮守府は崩壊してもおかしくはない。
提督は行動で艦娘達に示しているため、艦娘達の不平不満は少ない、やはり艦娘も年頃の女の子であり、女性なのだ。
部屋などを改善して欲しいという要望も出てきている。しばらく書類整理をしていると叢雲が緑茶を出してくれていた。
「休憩しなさい。あんまり根を詰めても体に毒よ?」
「おう、そうするわ。さすが叢雲ちゃん!気が利くねえ」
「っ・・・ふ、ふん!」
カアアっと顔を真っ赤にしてそっぽを向くが、やはり褒められて嬉しいのだろう。
◇
何回もの出撃をこなし、鎮守府付近の主力艦隊に完全勝利を成し遂げ、長月から報告が入る。
「司令官、ドロップの反応がある一緒に来てくれ」
「おう、わかった」
長月の案内で提督が船ごと光に近づくと光の柱から艦娘が現れる。どうやら駆逐ではないようだ。
「あの……軽巡洋艦、神通です。どうか、よろしくお願い致します……」
神通に対し、大人しげで何処か儚い印象を受けた提督だが、その内にある闘志を見抜いていた。
大人しく優しい者ほど、怒った時や覚悟を決めるとものすごい人物だというのを経験しており、知っているからだ。
「おう、よろしくな?神通ちゃん」
「は、はい」
「そう、オドオドしないでくれよ。さ、鎮守府に帰ろう」
鎮守府に戻り、再び資材集めと鎮守府付近の主力艦隊を撃破する流れになっていった。
そして、建造を繰り返す。そんな生活が二ヶ月続き、その間・・・。
「川内、参上。夜戦なら任せておいて!」
「はーい、お待たせ?兵装実験軽巡、夕張、到着いたしました!」
建造によって川内、夕張の二人が早々の着任である。無論、解体任務などをこなしながら資材、バケツと呼ばれる高速修復材も集めつつ、次の海域の攻略作戦を展開している最中・・・。
「航空母艦、鳳翔です。不束者ですが、よろしくお願い致します。」
「長門型戦艦二番艦の陸奥よ。よろしくね。あまり火遊びはしないでね。お願いよ?」
戦艦クラス、それも長門型である陸奥が着任してしまったのだ。これには流石に叢雲も苦笑を隠せなかった。
「アンタ、変なところで運が良いわね?」
「笑えよ・・・川内型は揃ったが、これで天龍が未だに来てないんだぜ?アハハ」
この後も任務をこなし続け、最後の川内型の一人である那珂が着任。この時に家具コインが溜まっていたのを忘れていた提督は艦娘達の意見を聞き、机や床、壁紙などを購入し妖精さん達に頼んで模様替えをしてもらった。
それによって、ダンボール時代とは違って比較的にマシになり、書類整理もしやすくなっていた。
またも天龍を目指しつつ、戦力増強の建造に挑戦するが・・・。
「扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城です。あの、扶桑姉さま、見ませんでした?」
「英国で産まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」
「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」
正に戦力は揃うが任務達成不可という状態が続いたのだ。これには流石に提督自身も膝をついて絶望していた。
「もう、いい加減・・・海域攻略しなさいよ」
「いや、任務を達成しないと無理だろ、これ」
叢雲からの助言を聞きつつも、冗談で資材が掛かるレシピを回した結果、とんでもない奴が来た。
「航空母艦、蒼龍です。空母機動部隊を編成するなら、私もぜひ入れてね!」
赤城に続く二人目の正規空母、蒼龍の登場である。龍は合っているが全く別である。
「はぁ・・珈琲を淹れてあげるから一息つきなさい」
「悪いな・・・叢雲」
「良いのよ、秘書艦の勤めだしね」
提督は基本的に初対面の艦娘にはちゃん付けで呼ぶが、仲が良くなったり友達くらいになると呼び捨てにする。
最初期の相手である叢雲はちゃん付けが恥ずかしかった為、呼び捨てでも構わないと許可した。それ故に以降、呼び捨てにしている。
◇
今度こそと三ヶ月目に差し掛かる建造と出撃。天龍を着任させるために頑張った結果。
「金剛お姉さまの妹分、比叡です。 経験を積んで、姉さまに少しでも近づきたいです」
「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」
三ヶ月目にしてようやく天龍が着任したのだ。これには安堵のため息をついついしてしまった。
「おい、なんだよ?ため息なんかつきやがって」
「いやいや、歓迎するよ。三ヶ月もかかってさ・・・ようやくなんだよ天龍ちゃんが来てくれたの」
「その天龍ちゃんってのはやめてくれ、龍田を思い出す。だから、呼び捨てで構わねえ」
「そうかい。でも、失言しちまったな?天龍よお」
「ああん?そりゃどういう・・・・っ!?」
「天龍ちゃ~ん?お話があるの・・・ちょっと来てくれるかしらぁ~?」
背後に殺気を感じたが、既に遅く龍田に首根っこを掴まれ、天龍は引きずられていく。天龍はほぼ涙目で訴えた。
「て、提督!助けてくれ!!」
提督は無慈悲に合掌した、むやみに助けて龍田の薙刀術を受けたくないからだ。
「すまんな・・・お仕置き受けてくれ」
「薄情者ォーーーーー!!」
その日は天龍の悲鳴が鎮守府内のいたるところに響いたとか。だが、更なる編成の壁が立ちはだかる事を、この時に提督は知らなかった。
天龍着任までに三ヶ月!?嘘だろ!と思われますが事実です。
マジで天龍が来なかったんですよ、あの当時。
川内型はスグに揃いましたがね。
次の壁はあれです・・・そう、高速戦艦ですよ。