艦隊もそこそこ
仲間の一人が死亡
以上
着任してから一年半の時が流れ、鎮守府の運営も安定してきていた。だが、鎮守府の外装は和風になっており、行き交う艦娘達も着物や浴衣に身を包んでいた。
配色や飾りはその艦娘の個性を表すものが多い。帽子を被る者やアクセサリーを飾る者などもいれば、歩きにくいなど文句を言う艦娘もいた。
これらは全て、提督の仕業である。本人も男物の着物に提督用の軍服の上着を羽織るといういかにも傾奇者を地で行く姿をしていた。
「ここまでやるか?普通よぉ」
「な~に言ってるの木曾っち~、侍姿になれて喜んでたくせに~」
「そ、それは!」
「いいじゃねえか、俺の趣味だがな。ハハハッ!」
平和にこうして話せると思っていた。この時間が長く続くと思っていた。あの日が来るまでは・・・。
◇
ほんの些細なヒューマンミスだった。それが初めて不注意という名の慢心をしてしまった最大の後悔となり、結果・・・。
提督は一人の仲間を殺した。
◇
北方海域全域、通称3-4。そこの深海棲艦北方艦隊中枢との艦隊戦で悲劇はあった。
空母ヲ級flagship、空母ヲ級flagship、戦艦ル級flagship、軽巡ヘ級flagship、雷巡チ級elite、雷巡チ級eliteの敵艦隊。
撃滅命令を出し、追い込んだまでは良かった。だが、不注意で追撃命令の鐘を鳴らしてしまったのだ。
「!!」
急いで提督は中止命令を出すが、一度命令を出してしまえば彼女達は止まらない。
しかも、目の前でそれは起こった。
北上が空母ヲ級flagshipから発進してきた艦載機が損傷がひどい北上へ爆撃を仕掛け、撃沈したのだ。
「あ、あああああ!」
「北上!!」
「来世はやっぱ、空母でお願いし…って、いっかな~工作艦とかでも~あはは…」
味方が手を伸ばすも、非情に北上は沈んでいく。提督の目の前には轟沈の二文字、海域の突破とともに掛け替えのない仲間の一人を失ったのだ。
◇
帰投後、球磨型の姉妹達が一斉に執務室へ入るなり、提督へと詰め寄り殴り飛ばした。
拳を加えたのは木曾であり、追撃のビンタが炸裂する。ビンタをしたのは相棒である大井だ。
「なんで・・・なんでなんだよ!!」
「どうして北上さんを沈めたのよ!?どうして!」
「俺のミスだ、と言えば聞こえはいいが・・・殺したも同然だ」
「そんなんで北上さんは戻ってこないわよ!!」
木曾と大井は提督を殴り続けるが、なんの騒ぎかと駆けつけたのは戦艦の陸奥や霧島、空母の加賀、赤城だ。
「何してるの!?霧島、止めて!」
「は、はい!」
「赤城さん、私達も止めましょう」
「わ、わかりました!」
一人に対し、二人掛りで木曾と大井を押さえ込む。二人は落ち着かず、振りほどこうと暴れまわるが戦艦と空母に押さえられては抵抗は意味がない。
「離せ!離しやがれ!!」
「離してよ!アイツは北上さんを!」
「いい加減にして下さい!」
怒鳴ったのは現在、秘書艦を勤めている扶桑であった。彼女も押さえようとしていたが不意打ちだったためにタイミングが遅れてしまったのだ。
「貴女達の悲しさは確かにあるでしょう。でも、それ以上に自分の指示で仲間を殺してしまった立場に立って考えられないのですか!?」
「う・・・」
「それは・・・」
「まずは頭を冷やしてから改めて来てください!」
「「・・・・・・」」
木曾と大井は空母・戦艦のメンバーに連れて行かれた。その場に残ったのは球磨型の一番艦、球磨と二番艦の多摩だ。
「提督、妹達が済まなかったクマ。二人に代わって謝罪するクマ」
「多摩も同じだにゃ」
「俺を恨まねえのか?妹を殺したんだぞ?」
提督からの一言に球磨はやれやれと言いたげにため息を吐いた。それからまっすぐに提督を見る。
「恨んでないといえば嘘になるクマ、それでも、戦ってるんだからいつかはその時が来るクマ・・・それが今回、北上に当たっただけクマ」
言葉に同意するように多摩も頷き、話は終わりと言わんばかりに出ていこうとする二人。
「後、一つだけ言っておくクマ。提督はもう一度北上を連れてこないと大井からずっと恨まれるクマよ?艤装に残った記憶は移ってるはずだクマ。それじゃ」
「失礼するにゃ」
二人は執務室を出て行き、残ったのは提督と秘書艦を務める扶桑のみ。提督は殴られて出てきた血を拭わず立ち上がって席に着いた。
「・・・・・の・・・せいだ。俺のせいだ」
「提督・・・」
扶桑は彼の負の部分に気づいていた。大きな失態を犯すと自分の内で溜め込み、助けを求める術を知らず、己だけで動き挙句の果ては自戒してしまう。
これが私達の提督なのだと。一部の艦娘からすればそれは意気地がない、甘えているだけだと映るだろう。
それでも彼は提督を辞めるとは言わなかった。辞めるというのは最大の逃げであり、それだけは出来ないと自覚している。
今の彼に中途半端な慰めはかえって傷つけるだけだろう。ならばどうすべきなのか?皆目検討もつかない。
「どうすれば良いのでしょうか・・・?」
それからの提督は新たな北上を迎え入れると練度を沈んだ北上と同一にし、残しておいた偽装の記録を新たな北上の艤装に取り付けた。
「提督じゃん、私を沈めちゃった事を激しく後悔してたんだね?でも」
バシンと提督の頬を叩き、腹部に拳の一発を叩き込んだ。艤装展開状態の艦娘の一撃ではあったが、手加減されていたためにうずくまる程度で済んでいる。
「これで、怨みは帳消しにしてあげるよ。他の子達にもとりなしてあげる」
「っ・・・北上」
「提督のミスだけど、無意識だってわかってる。それでも怨みは晴れない時はあるよ、私は割り切るために殴っただけ、それじゃ改めてね」
北上は手を差し伸べ、提督はそれを掴み立ち上がった。北上の顔は笑顔だがどこか恐ろしい。
「過去より今だよ、それじゃね~」
「過去より今・・・か」
去っていった北上を目で追ったまま提督はその場で立ち尽くしていた。
◇
「ん・・・んんんっ・・提督」
深夜を回った時刻、自室のベッドで一人の艦娘が自慰行為を行っていた。誰かのかは分からない、提督への上官としての思いと、抱いて欲しいという女として思いが交互に来る。
「んんっ!んーーーーっ!」
布団を噛んで声を押し殺す。果ててしまったが、なんとか周りに気づかれずに済んでいた。
「また・・・してしまいましたね」
呟きつつ、指にこびりついた愛液を見つめる。いつかは愛する男を受け入れたいとおもいながら後始末をして就寝につくのだった。
不注意、寝不足、うう・・・頭が。
体調不良時の艦これはダメ、絶対!
次回は濡れ場です。