魔法少女事変とかいう、錬金術師達との前代未聞の戦いを終えてやってきた夏。
世間様がサマータイムに湧きまくる中、事後処理やらミーティングやらでロクな休みが貰えない我らがS.O.N.G.もそれは例外では無かったらしく。もう何連勤したかもわからない八月の初め、司令の厚意によってやっとこさ休暇を貰った俺はというと、昼間は久しぶりに切歌ちゃんと街中デートに勤しんで日頃のストレスを解消しまくっていた。あちらさんも初めて迎える夏休みに少々テンションが上がっているらしく、俺が想像している以上に元気ハツラツなご様子であちらこちら振り回されたものの悪い気はしない。職業上仕方がないとはいえ、あまり時間をとってやれていないのは事実なのだし。
地上すべてを焼き尽くさんばかりに輝く太陽に照らされながら、汗だくになりつつ買い物ゲーセンカラオケとかいうありきたりな、それでも大切にしていきたいデートをこなしていき、夕方前に帰宅してからは久方ぶりに二人きりになれた非日常感と興奮から、どちらともなく服を脱ぎだして行為に耽ってしまったのは致し方ないと言えよう。夏だし、暑いし、汗だくな切歌がエロいのがすべて悪いのだ。
連勤でどこにそんな体力が有り余っていたのかと自分でも不思議になるくらい切歌を責め立てる数時間。だが、夜には別件の用事が入っている為、お互いに満足とはいかないまでも準備をしていく。切歌は準備に手間暇がかかるというので、一旦自宅に帰っていた。
俺はというと特にこれといった準備をするわけでもなく、シャワーを浴びて情事の色々を流すと溜まったアニメの消化や部屋の掃除をつらつらと。あんまり熱中すると集合に遅れてしまうので、それこそ片手間にではあるけれど。最近やけに増えてきた切歌の私物が目に入る度、なんだか形容しがたい幸せを感じてしまう。こんな話を職場ですると友里さんには殴られてエルフナインには根掘り葉掘り聞かれるから自重しているが。
そんなこんなしている内に、時刻は六時半。そろそろ集合の時間帯だ。財布と携帯電話、虫よけスプレーやら絆創膏やら何かあった時用の応急グッズをポーチに入れて家を出る。てくてく徒歩で向かうのは近くの神社。今日はそこで皆と落ち合う予定だ。
目的地が近づいていくにつれて、周囲に浴衣や甚平を着た人々が増えていく。彼らの歩いていく先もどうやら俺と同じらしい。時にはカップル、時には家族連れと人数を数えるのも馬鹿らしくなる程だ。いつもならば人混み確実な場所に赴くなんて絶対に有り得ないけれど、今回ばかりは事情が異なる。
「S.O.N.G.一同でお祭り行くって言い出した時は何事かと思ったけど、女性陣が浴衣着てくるって言われたら話は違ってくるよな」
今回ばかりは発案者の響ちゃんに感謝の意を表明したい。浴衣、と言えば夏祭りの醍醐味だ。今までは立場上そういったものを拝めなかったが、今回は合法的に、しかも一番近くでそれを見ることができる。そんでもって今年は可愛い最愛の恋人も一緒だ。切歌の晴れ晴れしい浴衣姿を拝めるとなれば、全身複雑骨折したとしても向かわねば男が廃るというものである。
まだ見ぬ彼女の浴衣姿に想いを馳せながら足を進めていると、どうやらいつの間にか目的の場所へ着いていたらしい。某大佐のようなセリフを吐きたくなる程の人混みの中で、一際目立つカラフルな集団が嫌が応にも目に入った。中でも世界的歌姫二人がとんでもないカリスマオーラを放っており、色々と慣れているはずの近所の方々でさえざわざわとどよめかざるを得ない様子。
各々がシンボルカラーと言える浴衣を着込んでいる中には、勿論切歌の姿もあった。ライトグリーンを基調とした浴衣に、髪には簪をひとつ差しているのが特徴的だ。慣れない格好に戸惑っているのか、こちらに気が付くと少々恥ずかし気な様子で控えめに手を振ってくる。あまり見ることができない彼女の一面に、今更ながら心臓が一つ高鳴るのを感じた。
胸に浮かんだ感想をすぐにでも伝えてあげたい、と彼女達の方に一歩踏み出す俺ではあったが、切歌への道に割り込むようにして飛び出してくる女性が一人。白をベースに青い花模様をあしらった浴衣を着て、特徴的な桃色の髪を上品に結わえている彼女の名前はマリア・カデンツァヴナ・イヴ。世界的歌姫の姿が視界に入ると同時に全身へ走る衝撃。飛びつかれたのだと気が付くのに数秒の時間を要したものの、あまりに不意打ち過ぎて受け身を取れるわけもなく為す術ないまま立ち尽くす俺。
「まっ、マリアさん!? ききき急に何を!?」
「何って、浴衣を纏った世界的歌姫である私に抱き着かれているのに、シケた感想ねぇ。もっとこう、胸の奥の溜まったリビドーを吐き出しなさいよ」
「いきなり抱き着かれてマトモな思考ができるか!」
「あらぁ、じゃあこういう事されたらもっと頭の中混乱しちゃう?」
「い、いい加減に……」
「あむ」
「ひぃぁっ!?」
抱き着かれた挙句に耳を咥えられて生娘のような声をあげてしまう。中身はともかく見てくれは最高に美人なマリアさんにこんなことをされてしまうと正直気が気でないのだが、視線の先で見る見るうちにむくれていく切歌に気が付いてしまい更に気が気ではない。ていうかさっきからシャツの中に手を入れるのやめてくれマリアさん! 手つきがいやらしすぎる!
「今夜暇だったらぁ……私と朝まで付き合ってくれてもいいのよ……?」
「だ、駄目ですってそんなの」
「切歌に遠慮しているの? そんなのいいのに――」
「朔也さんから今すぐ離れるデスよこのスットコドッコイ! 人の彼氏に何を手ぇ出してるデスか!」
「あん」
完全に不埒者ムーヴを決めていくマリアさんに困惑と混乱を抱えてうまく断れない俺ではあったものの、ここでようやく助け舟が出てくれたらしい。額に青筋浮かべた切歌の強制介入によって、マリアさんは調ちゃんと未来ちゃんに引き渡される。去り際にウインクしてくる強かさにはもはや脱帽だ。あぁいう逞しいところだけは見習いたいところではある。
一波乱が去って安堵の溜息をつきたいところではあるけれど、俺の胸ぐらを掴んでメンチを切ってくる可愛らしい女の子が一名。目を合わせると殺されそうなため今すぐにでも逃げ出したいものの、そうするとさらに深い地獄を体験することは火を見るよりも明らかな為、止むを得ず彼女と顔を突き合わせることに。
サンシャインスマイルがこんなに恐ろしいと思ったのはいつ以来だろうか。
「朔也……? よっぽど痛い目を見たいらしいデスね……?」
「ま、待って待って呼び捨て出ちゃってるから切歌ちゃん。ていうかアレは俺が悪いカウントなの!?」
「彼女の前で他の女とイチャコラするのは朔也さんが悪いカウントデスよ」
「理不尽が過ぎる」
「さっきまで身体を重ねていたのに、もう浮気とはプレイボーイがすぎるデスよ」
「そういうことはここで言わないでくれ。盗み聞きしている何人かがニヤニヤし始めている」
少し顔を赤らめて股を摺り寄せ始める切歌をさすがに止める。時間の関係上お互いに満足するまでセックスできなかったとはいえ、さすがにここは衆人環視だ。いくら切歌ちゃんがエロくて年齢不相応に性的欲求が強いとしても、時と場合を考えないと俺が豚箱にぶち込まれてしまうのは時間の問題。現に視界の隅で調ちゃんが軽蔑の視線をこちらに向けながらスマートフォンを操作して――!?
「ジャスタモーメンッ調ちゃん! その電話先は誰なんだ!」
「あ、もしもし警察ですか? 十八歳未満の少女にわいせつ行為を行っている男性を見つけたのですが」
「ちょぉおおおお! ごめんなさい勘弁してください! なんでもするから!」
「じゃあ捕まってください」
「逃げ道がない!」
隙を生じさせぬ二段構えで俺を破滅に追い込もうとする調ちゃんへの苦手意識が未だに拭えない。切歌ちゃんと付き合い始めたあたりから俺を絶対殺すウーマンになってきているのは気のせいだろうか。事ある度に目を付けられている気がしないでもない。
結局彼女の今回の出費を全部俺が負担することで事なきを得たのだが、すごく納得がいかない。まぁでも喜んでいるみたいだからいいけどさ……案外一番強かなのが調ちゃんなんじゃないかと最近思い始めている。
「初っ端から楽しそうだな藤尭さん」
「司令がいないからって落ち込んでるんじゃないのクリスちゃん」
「なぁっ!? ななな、なんでおっさんがいないからって……べっ、別に落ち込んでなんかいねーし!」
「そうだよねクリス。弦十郎さんにはちゃんと浴衣の写真送ったもんね」
「お、オマエェェエエエ!」
「なんだ、しっかりアタックは続けてるんじゃん」
「…………悪いかよ」
「いや、素晴らしいと思います」
俺を弄りに近づいてきたはずが、いつの間にか未来ちゃんによっていつもの扱いを食らっているクリスちゃんがとてもいつも通りでなんか安心した。最近は少しだけ素直になったのか、司令への好意もある程度は表に出すようにしたらしい。まだまだ素直じゃないツンデレ言動は減らないけれど、たまに二人で出かけているのを見る限り滑り出しは上々のようだ。彼女には色々と世話になった身であるから、是非とも温かく見守っていきたい。
とまぁそんな感じで世間話に花を咲かせていると、ここで響ちゃんが元気よく声を上げた。
「はいはーい! じゃあ人数も揃ったところで行きましょう! 今日は元気にお祭り日和ですよ~!」
「ふむ、こういう催し物は慣れないが、私も一生懸命楽しむとしよう」
「その意気です翼さん。僕も僭越ながらお手伝いします」
「いや、そんな気合入れて挑むものでもないですし、気楽に行きません?」
「何を言う立花。防人たるもの常在戦場。油断一つが命取りだ」
「普通のお祭りなんですけど!?」
「馬鹿言っていないで行くよ響。お祭りもう始まってるんだから」
「え、これ私が悪いの!? 私が責められる流れなの!?」
「響ちゃん、不憫な……」
「デス……」
いつの間にか俺の腕に抱き着いていた切歌の顎を人差し指で撫でつつ響ちゃんの苦労人っぷりに二人して涙。猪突猛進電光石火な彼女が一番常識人ムーヴをしているなんて何の冗談だろうか。一番常識人っぽい友里さんとエルフナインは何やら楽しそうにお祭りへの意気込みを語っていて止める気もないようだし、響ちゃんへの負担が凄まじい事になっている。……まぁ止めないけど。
「じゃあ俺達も行こうか切歌ちゃん」
「はいデス。……ちゃんと隣にいてくださいね?」
「了解です」
「あら切歌。せっかくのお祭りで浴衣も着ているのだし、三人で回っても……」
「マリアの子守は調に一任しているデスから、大人しくそっちに行くデスよ」
「こ、子守って……私が最年長なのに!?」
「ほらマリア行くよ。藤尭さんから貰ったお金で焼きそば奢ってあげるから」
「い、いやー! 離して調! 私は朔也と一緒にお祭りを――」
「私の藤尭さん抹殺計画をプランニングするのを手伝って」
「何その物騒な計画! さ、朔也――――!」
「さらばマリア。願わくばそのまま山神様にでも連れていかれるといいデス」
「辛辣だ」
どっちが年上だか分からない光景を前にして苦笑いを浮かべるしかない。俺にとって何やら不穏な計画が浮上しているらしいけど、これからは夜道に気を付けて帰るべきだろう。あの子はやると言ったらやる。間違いなく。
他の面々もそれぞれお祭りへと向かったらしく、この場に残っているのは俺達二人だけになっていた。改めて切歌の方に視線をやると、なんだか少し恥ずかしそうに横髪を掻き上げながらチラチラこちらの様子を窺っていた。どうしたのだろう、と思ったが、そういえばと思い当たる節が一つ。以前の俺であれば気が付かなかっただろうが、今の俺はニュー藤尭。同じ轍は踏まない。
彼女の腰に手をやってそっと引き寄せ、あくまで囁くようにして耳元に顔を近づけると、
「その……浴衣、似合ってるよ。うん、可愛い」
「……なんでそんなにどもった感じなんデスか」
「いや……真っ直ぐ褒めるのはなんか照れ臭くて……」
「童貞かよデス」
「違うから。キミに捧げたから」
「っっっ……さ、さっさと行くデスよ! モタモタしてたら出店の商品なくなっちゃうデス!」
「ちょっ……急に手を引っ張ったら危ないから!」
唐突に顔を真っ赤に染めたかと思うと、俺の手を引いて走り出す切歌。浴衣着用のせいで思ったよりは勢いがなかったものの、多少よろめいてしまい転倒する寸前だった。いったいどうしたのだろう、と問い質したいところではあるものの、赤面している時の彼女に何かを聞いたところでマトモな答えが返ってこないのは今までの数か月間で経験済みだ。大人しくついていくのが無難だろう。
カランコロンと下駄を鳴らしながら進む切歌にふっと笑みを一つ浮かべると、俺はいつものようにされるがまま彼女の後ろを着いていった。
☆
「およ~♪ 綿菓子焼きそばたこ焼きにチョコバナナ! 美味しいものが選り取り見取りではっぴーばけいしょん! お祭りは初めてデスが、最高デスね朔也!」
「喜んでもらっているようで何よりだけど、その華奢な身体のどこにその量が入っていくのさ」
「胸にでもついているんじゃないデスかね」
「自分で言うかそれ」
「最近ちょっと大きくなってきて下着選びが大変なんデスよねぇ……誰かさんのせいで」
「射的やろうよ射的」
「じー……」
調ちゃんよろしく三白眼でこちらを凝視してくる切歌から全力で視線をランアウェイ。その中でもちらっと胸元に目を走らせては見るが、さすがに浴衣の上からは膨らみがよく分からない。ていうかそんなに最近大きくなっているのか。ほとんど毎週見てるから変化に気がつかな――げふんげふん。
「目がやらしーデスよ朔也」
「そんな話を振ってくる切歌が悪い」
「……えっち」
「し、仕方ないだろ!」
ニヤニヤ顔でからかわれてしまうが、こちらとしては声を荒げるわけにもいかない。そんでもって、胸が大きくなったなんて話題を振られて視線が行かない男なんていないに決まっている。しかもそれが可愛らしい恋人ともなれば尚更だ。……たぶん全部分かってやっているのだろうけど。
かき氷をかきこみながらドヤ顔を浮かべる切歌。しかしながら、さっきから許容範囲無制限で食べまくっているこの子は色々と大丈夫なのだろうか。祭りが始まって二時間くらいが経過しているが、そろそろ、その……トイレ的な意味で。
なんとも下世話な心配をしている自覚はあるものの、どうやらそれは見事に当たっていたようで。かき氷を食べ終わってしばらくすると、何やら催したかのようにぶるっと身体を震わせる。
「……大丈夫か?」
「あ、その……と、トイレに……」
「水分取りすぎだよバカ」
妙な部分で乙女なところがあるのか、赤らめた顔を恥ずかしそうに俯かせ、俺のシャツを指先で掴みながら切歌は静かに呟いた。思わずといった様子で太腿を擦り合わせているのは、結構唐突にイエローゾーンへ突入したせいか。尿意を我慢する彼女の表情が少しエロいと感じてしまったのはここだけの秘密だ。
「歩ける?」
「大丈、夫……デス」
「じゃあ向かうか。ここからさほど遠くはないだろうし」
神社の駐車場にトイレが配置されているのは確認済みだ。結構奥まで来てしまったからそれなりに歩きはするだろうけど、そこまでは我慢していただくしかない。背負って歩くかどうかも考えたが、揺れた弾みで決壊されても困る。大人しく歩いてもらうしかない。
小刻みに身体を震わせる切歌と手を繋いで先導する。この人混みの中ではぐれない為の処置ではあるが、ペース配分がなかなかに難しい。なんといっても決壊寸前の女の子を連れて歩いているのだ。傍から怪しまれないよう心掛けつつ、彼女の限界を超えないように歩くのが結構大変だ。
「う、っくぅ……っぁ」
「もう少しだから頑張って」
「んぃっ……! ふ、ぅ……」
きゅっと股間辺りを抑えながらよろよろと歩く切歌。足取りが重いことから、相当限界が近いと言える。なんでこんなギリギリになるまで言わなかったのか、と思わないではないけれど、彼女に気を回せなかった俺自身の問題でもある。反省しなければ。
徐々に息が荒くなり目も虚ろになってきた彼女を励ましつつ駐車場へ。間に合ったか、と安堵の溜息をつく俺達だったが――
「……すっごい並んでるね」
「デス……っぁ」
ある意味想像通りと言えばそれまでではあるけれど、女子トイレの前には数えるのも馬鹿らしくなるくらいの長蛇の列が。おそらく、後一時間は順番が回ってこないだろう。ただでさえ時間がかかる中で、よりにもよってお祭り、しかも浴衣姿だ。通常の比ではない。
そして、ようやく解放されると気を抜いていた切歌がここにきて限界を迎え始めていた。耐えられない、という風にしゃがみ込むと、ビクビクと全身を震わせている。
「き、切歌!」
「んんんっ! だ、ダメ……もぉ、限界……!」
「いやいや待て待てここはヤバイって! せめてどこか隠れられる場所に――」
「ん、はぁ……さく、やぁ……!」
「――あぁくそ! ちょっと我慢してくれよ!」
「んひぃっ!?」
もう一歩も歩けないだろう彼女を抱きかかえると、そのまま茂みの奥へと入っていく。この拍子で漏らされたらたまったものではないが、背に腹は代えられない。できるだけ人目の付かない奥まった場所までいって、そこで用を足してもらうしか。
全力で茂みの奥へと走り、周囲に誰もいないことを確認すると彼女を下ろす。幸いまだ決壊はしていないようで、顔は既に限界ながらも目の端に涙を浮かべて俺を見つめる切歌。どうやら俺の意図を若干図りかねているらしい。
俺が恥ずかしそうに彼女の視線から顔を逸らすと、ようやく理解したのか慌てふためいた様子で声を荒げる。
「ちょっ!? ま、まさか……朔也の前でしろって言うんデスか!?」
「ほ、他に方法ないだろ! 駐車場で漏らすわけにもいかないんだし!」
「そ、それはそうデスが……あたしにも羞恥心ってものが……」
「そんなこと言ってる場合か! 俺だって恥ずかしいんだから、早く済ませた方がお互いいいでしょ!」
「さ、朔也にはデリカシーってものが――んぁぁぁ! ぐ、ぅ……」
「言わんこっちゃない」
「く……あ、あっち向いて! 耳も塞いで!」
「はいはい……」
食い下がってくる切歌ではあったが、ようやく観念してくれたらしい。状況を客観的に鑑みてもはやこの道しか残されていないのは明白なのだが、そこはやはり年頃の女の子。最後の抵抗というか意地があるようで。最終的には尿意に負けて大人しく従ってくれはしたものの、おそらく後日仕返しされるのが目に見えていた。
ごそごそと衣擦れの音が鼓膜を打つ。浴衣がどのような着付けをされているかよく分からないけれど、どうやら裾を捲っているらしい。彼女の指摘に反して耳を塞いでいないのは……こう、男の下心というやつか。
「っや……っふ……」
何度かの息遣いが聞こえた後、その時は来た。
「っはぁ……ッ♡ で、るぅっ……!」
艶やかな声。まるで自慰の真っ最中であるような嬌声が俺の耳を打つ。相当我慢していたのか、近くの草を巻き込むような激しい水音。視界には入っていないはずなのに、どうしても脳内で映像を再生してしまう。
「んッぁ♡ んんっ……ふッ♡ 止まら……なぁ……ッ!」
あまりの量と勢いに自分でも困惑しているらしい。極度の緊張感から解放された為か、排泄の爽快感とは別に性的な快感も覚えているようで、日頃のセックスでしか聞けないような声が彼女の口から漏れ出していく。完全に情事の嬌声。俺の意思とは無関係に下半身へ血流が溜まっていく。やべ……ちょっと、むらむらしてきた。
何秒こうしていただろうか。俺の性的興奮を高めるように続いていた水音が徐々に弱まり始め、ようやく聞こえなくなる。最後に残ったのは排泄の余韻を楽しむかのような切歌の溜息。熱っぽい吐息にいっそう気持ちが高まってしまう。
「……終わったデスよ」
「あ、うん……」
「……耳、塞いでなかったデスよね」
「う。それは……」
「……変態」
「トイレしながら興奮していた切歌に言われたくないけどね」
「そ、そんなこと……」
俺の指摘に視線を泳がせる切歌だが、自分でも分かってはいるらしく、恥ずかしさで顔を真っ赤にする姿が非常に煽情的だ。きゅぅ、と握った手を下半身に当てながら身を捩らせている彼女の否定はもはや説得力を持たない。
……俺も結構、色々と限界だ。
決して目を合わせようとしない彼女の横髪を弄るように頬に手を添える。多少期待はしていたのか、俺の手が触れると熱を湛えた瞳でこちらを見上げた。
「へん、たい……」
「おしっこしただけでこんなになってるのに? ちゃんと拭いていたよね、ここ」
「そ、それは……んひぅッ!? ゃ、だめ……!」
「昼間は満足いくまで出来なかったからさ……せっかく浴衣姿だし、もう諦めて」
「こ、こんなところ、でぇ……ッ。誰かに、見られた、らぁッ」
「……興奮する?」
「し、知らないもん! そんなの知らない……あぐぁッ!? んっくぅぅううぁ!」
断固として認めようとしない彼女の股間を掴むと、一気に指を二本程突っ込んだ。腹の裏を引っ掻くように動かすと、面白いように身体が跳ねる。自分一人では立っていられないのか、手が真っ白になるくらいに力を込めて俺の肩を掴んでいた。口からはとめどなく唾液が溢れ出ていて、下の口も同様に。
カリ……と爪で引っ掻くと、喉を見せつけるように仰け反ってイく。
「んぉッ!? あッ! あぁんッ!」
「……ごめん、我慢できないや」
「へ、ぇ……? ま、待って、ぇ……や、らぁ……」
「お説教なら後で聞くから……ゴムも付けたし、諦めて……」
「そんら、勝手な……んぁぁ! あはっ、んはッ……あくぅッ!」
彼女の同意を待たずに裾をたくし上げると、腫れあがったソレを勢いよく挿入。綺麗に着付けられていたというのに、浴衣の襟ぐりを広げると肩まで下げ、窮屈そうに収まっていた膨らみを揉みしだく。一つ突く度に、切歌の艶やかな悲鳴が夜の森に響き渡る。
「んぁぁ……んくぁぁ……くぁはッ!?」
「切歌……声、抑えて……」
「そんなの、無理ぃ……! 気持ちよすぎ、てぇ……!」
「……だったら、いっそ我慢できなくなるくらい攻めるから……!」
「んむぅっ!? んへ……」
完全に思考がトんでいる切歌の唇を貪りつつ腰を振る。今、茂みの向こうでは賑やかな祭りが開かれているというのに。ある程度の距離で、大勢の参加者が歩いているというのに。いつバレてもおかしくはない状況。だが、そんな非日常な空間が俺達を一層燃え上がらせる。
もはや着ているか着ていないか分からないくらいに乱れた浴衣。着付け方を知らない俺がこの後どうやって誤魔化そうかなんて考えるのは無駄な気がした。てかたぶん切歌の様子でマリアさんと未来ちゃんあたりにバレるだろうし。
後が怖いなぁ、とか思いつつも腰を振る。近くの木に手を着いてこちらに尻を突き出している彼女を後背位で責め立てつつ乳首を抓ると、膣内がさらに締まった。こちらの精を搾り取らんばかりにぐねぐねと動いている。
「なんだかんだ……切歌も、楽しんでる……じゃんっ」
「んぁっ! さ、朔也のせいデスから……ねっ! ンンぁぁッ!」
「うっ……」
互いに息を切らしつつ、それでも腰を止めることはない。どちらともなく、貪るように相手を攻める。誰かに見つかる前に切り上げないといけないが、それまでにどっちが先に力尽きるのか。結局はそこまで続いてしまいそうだ。
――最終的には俺達を探しに来たクリスちゃんに見つかってこっぴどく叱られてしまうのだが、それはまた別の機会に。