※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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第15.00章:強くなりたいから
親子、外の世界へ


 ある日、次男霊魔から「もっと剣を使えるようになりたい」とお願いされた俺は、まずは見取り稽古という事で、俺の剣裁きを見せる事にした。

 とはいっても、俺の剣術は陣風丸流ではない方は棒術との合わせ技のようなもので、剣術と言えない代物だ。見取り稽古するだけ無駄ではなかろうかと思うのだが、まだ陣風丸流を完成させていないのでそちらを教えるワケにもいかない。

 迷いに迷った俺は、俺が普段から使っている方の剣術を教える事にした。

 その為に、暇そうにしていた次女霊愛を捕まえ、弾幕を放ってもらう事にした。

 

「霊符『夢想封印』ッ!!」

 

 妖魔雷霊剣、暗黒斬月剣を軽やかに振るう。俺の剣は速度重視なので、小傘に依頼した際には強度の他に軽さを最重視してくれと念を押して依頼した。

 だから、軽快な戦闘が可能になる。普通の剣でも吸血鬼の力を発揮すれば軽快な戦闘をこなすことも可能ではあるが、やはり軽い方が楽なのだ。

 

「フーッ。どーよ?妖舞とは全く違うだろ?」

 

「うん。お兄ちゃんは真っ直ぐだけど、お父さんは何と言うか……ふにゃふにゃ?」

 

「ふにゃふにゃって」

 

「お父さん……剣を使ってるとき、どこか楽しそうに見える……。空中だとそういう風には見えない……?ように思えるけど」

 

「お、良い所に目を付けた。じゃあもう少し深堀りしようか。どうして『そう』見えた?霊魔は、剣を振り回す俺のどこを見て『楽しそう』に見えた?」

 

「んー……と……」

 

「……霊愛、もっかいだ」

 

「はーい」

 

 霊愛に頼み、もう一度夢想封印を放ってもらう。俺は先程と同じように弾幕を斬る。霊魔は俺のある部位から目を離さない。しっかり見ているようだ。

 

「どうだ霊魔、何か掴めたか?」

 

「……気のせいかもだけど、お父さん、踊ってる?」

 

「ハ、何言ってんの霊魔、戦闘中に踊るバカなんて流石に……」

 

「うん、まぁ半分正解だな」

 

「「正解なの!?」」

 

「正しくは、リズムを刻んでるんだよ。こう、手と足で、1&2&(ワンエンツーエン)3(スリー)&(エン)4(フォー)&(エン)……ってね」

 

「エンって何?」

 

「アンド。ダンスにおいては、カウントはワンツースリーフォーじゃあないんだ。裏拍子とでも言えばいいかな?ワンツーの後にも間を入れるっつーか、まァそんな感じなんだよ」

 

「裏拍子……?」

 

「霊愛、寺子屋にでも行くか?最近は音楽の授業もやってる。慧音には話を通しておくぞ?」

 

「は!?や、やだし!」

 

「……まぁ話を戻すぞ。リズムを刻んでる俺を見て、霊魔は『楽しそう』に見えたんだろう。違うか?」

 

「うん……そう。間違ってない」

 

「ていうかそれ、どう動いてんの?弾幕発射してる私から見ると、お父さんそんな動きしてないように見えるけど。普通に避けて、斬ってない?」

 

「多分、これを凄く速くやってるんだよ。何となくこう動いてるように見えたもん」

 

「えー……流石吸血鬼、動体視力もイイね」

 

「まー……ね……」

 

「だから霊魔。俺から剣を学びたいのなら、まずはリズム感を身に付けよう。妖舞や妖夢の魂魄流は、きっと霊魔ののんびりした性格には合ってないよ」

 

「それは僕も思う。お父さんはどうやってリズム感身に付けたの?」

 

「俺は、ガキの頃からピアノ習ってたからなー……。でもピアノは一朝一夕に出来るようにならないし、効率良いとは言えないしなー……あ、そーだ。一つ、良い方法あったよ。それ実行しようか」

 

「……!うん!ありがとう、お父さんっ……!」

 

 目をキラキラとさせて喜ぶ霊魔。セックスなんか覚えたところで、まだまだ子供だ。本当に可愛い。霊夢にも俺にも似ているこのショタっ子は、将来のハーレム王かもしれない。息子に負けないように、全力でハーレムを広げ、維持しなければ。

 

「よし、ならまず着替えな。ちょっとだけオシャレしておけ。紫さんから貰ってる私服、あんだろ?」

 

「え、えぇ……アレ、外の世界の私服なんでしょ……僕には似合わないよ……」

 

「似合うよ。断言する。何故なら霊魔は、中性的で可愛い系の男子だからだ」

 

「えぇ……」

 

(まさかお父さん、霊魔を外の世界に……?まあ別に何でもいいけど、人見知り過ぎる霊魔に外の世界の雰囲気が耐えられるのかな……)

 

 

 ◆

 

 

「というワケでやってきました、外の世界〜ッ!!首都・京都!いやぁ雅だねぇ!そんな事ないね!」

 

「あふ……うぐぅ……人……お、多しゅぎ……」

 

 今の外の世界は京都が首都である。後ほど大学のメリーと蓮子に会いに行くとして、今は特訓だ。

 霊魔も俺も、俺の魔法によって人間に見た目だけ擬態している。凩に変身している時と違って、肉体そのものをいじっているワケではない。

 

「オラオラ、後ろに隠れてんじゃあねーぞ!もっとテンション上げてけ!」

 

「なッ、何で外なのっ……!?リズム感の特訓……」

 

「を、ここでやるんですよ霊魔くん。俺達はもう、目的地に着いてる。……とは言っても、幻想郷生まれ幻想郷育ちの霊魔が気付けないのも無理は無いな。いいか、よく聞け?楽しく、楽にリズム感を鍛える方法ってのはな、ここで遊ぶ事なんだ」

 

「……ここは何……?おっきい建物……紅魔館くらい?大きい……?」

 

「ゲーセン。ゲームセンターってんだ」

 

「ゲーム……遊ぶとこ?」

 

「まぁついて来な。見れば分かる。俺が手本見せてやるから、真似してやってみな。吸血鬼の身体能力だったら誰より正確なスコアを出せるだろうよ」

 

 霊魔の手を引いて俺が向かったのは、とあるVRゲームのコーナー。俺が幻想入りする前までこんなゲームがアーケード化されるなんてのは有り得ない事だった。しかし近年になって過去のゲームが次々アーケード化されるようになった。

 そして今ではワンコインでVRゲームが遊べる。素晴らしい時代になったものだ。

 俺の手持ちのお札は外の世界での旧札だったので仕方なく新札に交換してもらい、それを崩し幾らか霊魔に持たせた。そしてまずは俺がプレイする。

 

「俺の好きな曲は……お、まだあった。いいか霊魔、黒い弾幕は避けろ。赤い壁も避ける。後は、矢印が示してる方向に斬ればいい」

 

「黒いのは避ける……うん、分かった」

 

 このビートセイバーというゲームは、備え付けのVRゴーグルを使えば凄まじい臨場感を味わえる。それが苦手なら、ゴーグルを着けず大画面でも見ることが出来るのでそれでプレイすればいい。

 俺はゴーグルを使うが、霊魔には大画面から俺と画面を観察させる。当然、難易度はExpert+。人間時代の俺とは違う。それに加えて、何年こっそりとビートセイバーをやってきたと思っている。

 

「『Dragostea Din Tei(ドラゴニスタ・ディン・テイ)』、これ好きなんだよ」

 

「何語なの?これ……英語?」

 

「ルーマニア語じゃなかったか?知らんけど。ほらよく見てろ、始まるぞ。これはダンス譜面だから、プレイしててめっちゃ楽しいんだ」

 

 日本人には「恋のマイアヒ」の名で知られているこの曲は、楽しそうでノリノリな曲調からは想像も出来ないくらい悲しい曲だ。失恋の曲、今の俺には合わないし、不吉ではあるが、曲は好きだ。

 MV自体はとても楽しそうで失恋には見えないし聞こえないのだが……。

 

「1クレ3曲とか親切設計過ぎだろ……。過去の遺物だからか、プレーヤーもあんまし居ないからかな。前は1クレ2曲だったはずだが」

 

「わんくれ……3曲?」

 

「1回で3曲遊べるって事だ。だからあと2曲だ、次は何にしようか……『Daisuke』にしよっかな」

 

「誰?」

 

「いや曲名な。『Tony Igy - Astronomia』もイイ。棺桶ダンスって呼ばれて一時期めっちゃ流行ってた曲なんだ」

 

「不謹慎……」

 

「それがそうでもないんだよな。……やっぱりこれは外せないな。『Help me, ERINNNNNN!!』!!」

 

 やはり盛り上がる。東方オタクとして歌わずには居られないがここはゲーセンだ、歌は自重しよう。しかし腕振りは全力も全力でやる。それこそが俺。それこそオタクだ。

 

「何これ……永遠亭の永琳先生の歌?なの??」

 

「あー、いや……エリン先生な?永琳先生とはまた別だから気にするなよ?ゲームのキャラの曲な」

 

「だよね」

 

「うんうん。てか考えてもみろ、永琳先生がこんな筋肉マッチョな絵で描かれるはずねーだろう?」

 

「あはは……確かにそうだね」

 

 霊魔には悪いがそこら辺は誤魔化させてもらう。詳細な説明は面倒だし、幾ら頭のイイ霊魔だって、理解できないだろう。俺もよく理解できていない。

 難易度は相変わらずのMAXだが、次にプレイするダンス曲はこれだ。俺の最後の曲は……。

 

「『TheFatRat-Unity』……これも好きなんだよね。よく見ておけ霊魔、これもダンス出来る曲だから」

 

 この可愛らしい曲調からはあんまり想像できないようなキレキレなダンスができる。表示される通り斬るだけでだ。後は迷いのない動きをするだけで、多少間違えてもカッコよく見える。「魅せる」のは得意だ。それが俺、吸血鬼だ。

 

「お父さん……凄い汗……」

 

「ははは、気合い入れてるからな。よし、次は霊魔だな、ゴーグルは着けるか?」

 

「ううん、要らない。頭が重くなりそうだから」

 

「ん、そうか……。ちょっとコントローラー貸して。オススメは、この『ナイト・オブ・ナイツ2040年版

Remix』だけど……とりあえず霊魔には最初はこれをやってもらうよ。『Megalovania Camellia Remix

2050年版』だな。『No Fail』に設定してと。よし、念の為、幾ら失敗しても強制終了しなくしたから。

『No Arrows』にすれば、飛んでくるノーツをどの方向から斬ってもいいから安心しときな。難易度はとりあえずHardで良いだろ」

 

「とりあえずでハードにしないで!」

 

「霊魔の実力に見合ってる。安心しろ。こんなの、俺ら吸血鬼の動体視力と反射神経を以てすれば初見フルコンボできない方が珍しいくらいだから」

 

「あうぅ……」

 

「いいか?赤いノーツ……いや弾幕を赤い剣で、青い弾幕を青い剣で斬るんだ。それだけ気を付けろな。後は黒い弾幕や赤い壁を回避するだけでいいから」

 

「分かったっ……!」

 

 いざプレイを始めると、最初こそは戸惑っていたようだが案外やれるものだ。動体視力も反射神経も優れている吸血鬼だし、人間レベルのゲームなんてプレイ出来て然るべきではあるので寧ろ安心した。

 スコアとしてはそれなり。悪くはない。あと数回プレイすればフルコンボすら余裕だろう。わざわざ

「No Fail」に設定する必要もないかもしれない。

 

「『Bad Apple!! Remix 2050年版』これはExpertもExpert+も簡単だぞ。気分もノリノリになれるし、普通にオススメ。次はこれやってみ?」

 

「う、うん……」

 

 1曲目を難しくしてしまえば、次の曲が簡単ならより正確なスコアを出せる。先に難しい問題を解き後から簡単な問題を解くようなもので、これは割とゲームにも通用する話である。

 黒いノーツを斬ってしまい惜しくもフルコンボに届かなかったが、本人は楽しそうにプレイしているようで、良かった。

 

「あふぅ……暑い……」

 

「2曲目だぞ、ほらあと1曲だ」

 

「とは言っても、僕は外の曲とか分かんないし……。またお父さん選んで」

 

「じゃあ……ここはやっぱ『Caramelldansen』か。これはヤバい、最高にノれるよ。スウェーデンって国の曲が元ネタなんだが、とりあえずやってみな。ダンス譜面だ。これは最高。最高of最高」

 

(目が凄い輝いてる……そんなに凄いんだ……)

 

 外の世界では「ウッーウッーウマウマ」で有名なこの曲。ビートセイバーに入っていると知った時は最高に興奮した。

 霊魔も見事に譜面に踊らされてダンスしている。にしても笑顔が隠しきれていないのが可愛らしい。子供らしさが垣間見えた。

 

「っふぅ〜〜〜〜〜……テンション上がった……!」

 

「だろぉ!?最高だろ?」

 

「うん……!またやりたい!!」

 

「待て待て、次は俺だ。『回レ!雪月花』ッ!これもノリノリだぞぉ!あ、次は霊魔も斬る方向指定な!今度は

『No Arrows』を設定しないようにしようか。足で斬るダンスモードもあるがそれはまた今度だ。今はとりあえずリズム感を身に付けろ」

 

「うん!」

 

 実際にブン回せる譜面は最高に楽しい。ダンス、ダンス、ダンスに次ぐダンス譜面。汗はかくし喉も渇くがやめられない、止まらない。それがゲーム。

 

「よぉーし、ヘビロテ入れますかヘビロテェ!!!うっひょああああああああああッッッ!!!」

 

「ちょ、お父さ……」

 

「あいうぉんちゅーー!!あいにーじゅーー!!!あいらーびゅーーー!!!!」

 

「ちょっと……お父さん……」

 

 

 ◆

 

 

「はぁ……はぁ……疲れた……!!」

 

「なんでお父さんは叫んでるのに……他の人達は特に反応無しなの……?」

 

「ん?防音の結界を張ってるに決まってるだろ?」

 

「!!」

 

「いやあ、ヘビロテって俺がガキの頃の曲なのに、未だに色褪せない名曲だよなぁ!てか、最早この曲巫月と霊愛のキャラソンにも聞こえちまうぜ!!」

 

「きゃらそん……?」

 

「いいか霊魔、覚えとけ。結局のところね、好きに暴れられるのは『力』のある者だけなんだ……。俺が公共の場で発狂できるのもそういう事なんだ……」

 

(それっぽい事を言って誤魔化してるだけのような気がするけど……確かに……!)

 

「次は霊魔も歌いながらやってみな、割とリズム感鍛えられるはずだ。空耳で良いから聞こえた通りに歌ってみるといい。最初は誰でも歌えない、そこは安心しとけ」

 

「やってみる!!」

 

「ついでに曲とノーツ速度も上げよう。動体視力で考えると200%は余裕かな?これくらい速いと弾幕の速さに限りなく近付くと思うぞ」

 

「2倍!?」

 

「霊愛の夢想封印くらいの速さだと思っておけよ。避けるよりは簡単なはずだ。知らんけど。それと、ノルマはSSランク。90%以上を目指せ」

 

「や……やってみるっ……!!」

 

 

 ◆

 

 

 それからは、数時間ゲーセンでビートセイバーをやり込んだ。霊魔が要領を掴んでからは、隣同士の別の筐体で親子揃って遊んだ。

 尚、数時間外の世界で過ごしても幻想郷時間ではその4分の1程度なので、何ならあと1日くらいはこのまま遊んでも問題は無いが……、霊魔がそろそろ疲れたそうなのでゲーセンから撤退する事にした。

 

「腕、疲れたぁ……でも楽しかった……!」

 

「はは、そーだろ。また来るか?」

 

「うん……!人も少ないし……」

 

「昔のゲームだからかな」

 

 幻想郷では、俺と霊魔が神社を出て1、2時間が経過したかしてないかくらいだろう。

 博麗神社に戻ると、霊愛がダルそうに欠伸しつつ境内を掃除していた。掃いても掃いても中々綺麗にならない境内の石畳に苦戦しているようだった。

 

「あ、おかえり……って、2人共なんか凄い汗だね。シャワーでも浴びてきたら?」

 

「おう、俺はそうするぜ」

 

「それより……お姉ちゃん。僕に夢想封印、撃って。特訓の成果……少しでも確認したいから……ッ!」

 

「へぇ……へぇ?あっそォ、言ったね?掃除ばっかでイライラしてんだよね!ストレス発散に思いっきり撃たせてもらうよ!霊符『夢想封印』ッッ!!!」

 

「雷武器『雷刀』」

 

「何の特訓してきたかしらないけど、剣にもろくに慣れてない霊魔が、結界も使わず防げるワケッ!?言っとくけど容赦しないから!!」

 

「ウッーウッーウマウマ……ウッーウッーウマウマ、あぁ♪……ウッーウッーウマウマ♪」

 

(ウソ……ろくに見ないで踊るだけで……!?)

 

「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ♪」

 

「そんな、ワケない……!そんな簡単に強くなれて、たまるもんですか……!!はあああぁっっっ!!!」

 

「Daisuke☆」

 

 ここに、弾幕捌きの天才が誕生したのであった。




なお霊愛はこの後めちゃくちゃ悔し泣きしました。
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