※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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「な、な、なんと!第1試合目は大爆発の連鎖で、長女率いる雷三姉妹の勝利だ〜〜〜っ!!」

 

「壊れたステージは、毎度お馴染み神綺さんに修復して頂きましたっ!ありがとうございます!」

 

 観客を守ったのは、賢者達に加え霊夢の結界だ。毎度の事ながら、俺じゃあ一手遅れるせいで大して守れていない。情けないことだ。

 

「はーぁ、煤だらけになっちゃったね。緋月、まだ痺れは治らない?」

 

「んっ……だいじょぶ、たてる!」

 

「良かった。魅玖は?」

 

「私は大丈夫です!……それにしても流石です、巫月お姉様……!」

 

「そ、ありがと。でも大丈夫?熱くなかった?」

 

「ええ、動きを封じるだけだったので。もしかしてシガレットお姉様、ガッツリ戦う気は無いのかも……なんて思ったり。どう思いますか?」

 

「えー?たたかうのすきじゃないならこないよぉ。わたしもすきだし!ねー、おねーちゃんっ!」

 

「……これは予想だけどさ……シガレットはきっと、自分が戦うのは好きじゃないんだ。あの子はただ、強さを求め始めた霊魔のサポートがしたいだけなんじゃないかな……」

 

 

 ◆

 

 

「さぁ、2試合目もガンガンやってこ〜ッ!!」

 

「2試合目を戦うのはこちらの2チームです!次期博麗の巫女が約束されている幼巫女!霊愛ちゃん、そしてその妹の霊麗ちゃんのチーム名は、そうっ!

『博麗の巫女〜ず』!!」

 

「対するは、見た目も中身も幼い2人に、見た目は少女、頭脳は大人!?保護者に見えなくもない!!守矢神社の第4の祭神にして幼き風祝の率いるこのチーム!チームメイトは地霊殿の霊烏路姫、賢者の娘こと八雲茜っ!『ポニテ女子 with A』〜!!」

 

 そういえば樹理愛も姫もポニテだったか。そしてまさかの茜がおまけのような「with」扱いだとは。樹理愛、姫は共にサポートタイプ。

 茜だって火力はあまり高くはない。幼い頃の方が思い切りが良くて攻撃しまくっていたような気さえしてくる。

 はてさて、どのように戦うのだろうか。

 

「『博麗の巫女〜ず』vs『ポニテ女子 with A』っ!スタートッ!!」

 

 今度は誰も突撃しないようだ。霊愛も霊麗も姫も茜も樹理愛も、全員が遠距離から攻撃をしている。ただし博麗姉妹は自力で回避し、姫達は茜の結界に身を寄せ合うようにして防御している。下の妹達のその様は戦争で言うところの歩兵の塹壕戦のように見えなくもない。

 茜の結界はオールマイティ。生成速度は穹の移動速度、妖舞の居合より優れ、強度は霊魔に勝るとも劣らない。賢者の娘というのも伊達ではない。だがだからこそ不思議だ。

 何故、樹理愛達と組んだのか。親同士の繋がりで言うなら博麗姉妹と組む方が自然だ。確かに茜なら引率者として統率も引率もできるだろうが……。

 

「さて、コレどう攻める?」

 

「茜の結界、ゴリ押しでは壊せないくらい硬いし……私が吸血鬼パワー解放したところでだよ」

 

「ならそれを上回るパワーで、かな」

 

「それはお姉ちゃんの仕事でしょ」

 

「だね。んじゃまぁ、援護頼みますよっと」

 

「はいはーい」

 

 ゴソゴソと懐から陰陽玉を取り出す霊愛。そしてそれに霊力を乗せ、茜の結界を狙ってブン投げる。

 霊愛の陰陽玉は吸収力に長けたモノ。結界を通し茜の力を吸収してやる腹積もりだ。そしてそこに、霊麗が一気に襲い掛かる。

 

「……今だよ樹理愛!」

 

「たああああああぁぁっ!!」

 

 茜は結界で霊愛の陰陽玉や弾幕を受け止めながら樹理愛に指示を出す。すると樹理愛は神の子、いや神としての能力を使用し、風も無いはずの空間からヒュルヒュルと風を生み出し、やがて巨大な竜巻をコロシアム中央に作ってしまった。

 それは、もはや風の壁だった。霊愛達が少しでも前に動けば竜巻に巻き込まれる。魔法の竜巻などと違い、自然現象としての竜巻だからなのか、風の刃などを飛ばすのではなく逆に色々なモノを巻き込むような風が吹いている。

 

「おぉー!おねーちゃんすごーいっ!」

 

「シガレットの真似!えっへんっ!」

 

「でもでもっ、これだけじゃないんだよねっ!」

 

「もっちろん!姫、アレをよーく見てるんだよっ!暴風『ボルカニックタイフーン』ッッ!!」

 

 すると樹理愛の竜巻は、ギュッと圧縮されるかのように一気に細くなり回転速度が目に見えて上昇。やがて空気との摩擦のせいか観客席からでも分かるくらいの凄まじい熱を帯びるようになった。

 

「暑っ……いや熱い!」

 

「燃える風の刃……なんかヤバいね、まさか魔法すら使わずにシガレットみたいな攻撃が出来るとは……。てか絶対誰かを師匠に据えたよね。子供っぽすぎる樹理愛に、あそこまでの発想力があるとは……‪私には到底思えないんだけど」

 

「霊麗、サラッと妹をディスってんじゃん」

 

「事実でしょ。雨を降らす、雷を落とす……それだけだったじゃん、樹理愛の攻撃なんてさ。根っからのサポートタイプの樹理愛がこんな攻撃をするなんて誰かからの入れ知恵を疑わない方が変だよ」

 

「ま……気持ちは分かるけど」

 

 事実、建御雷を師匠に据えて特訓していたので、霊麗の予想は間違いではない。早苗は、他の家庭に比べれば相変わらず過保護だし、諏訪子は、誰かに戦いを教えるなどという事はしない。神奈子様なら能力の使い方を教える程度はするだろう。山の神、風神、そして軍神でもある神奈子様だから。

 別に諏訪子達から聞いたワケじゃないが、俺でも分かる。建御雷が助力した事くらい……。

 

「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」

 

「ッ!!お姉ちゃん、突っ込んでくるよ!!」

 

「問題なし!アレは宣言から発動までかなりラグがある!迎撃技の準備をするにゃ、ヨユー過ぎるね!あんな金属の塊なんて粉々にしてやるッ!!」

 

 これからスキマから電車を召喚されるというのに霊愛は霊麗を守るように前に立ち、ずっと相手方に飛ばしていた陰陽玉を手元に戻す。

 

「タマッてるねェ、パワー……!いくよ樹理愛、茜、姫……これでも喰らいなッ!『夢想天生』!!」

 

 電車が飛び出してくると同時に夢想天生を発動。凄まじい密度の弾幕で電車を受け止めると、見事、宣言通りに電車を破壊してしまった。

 

「ちょッ……スペカ用の廃電車、ストックがまた1つ減っちゃったじゃない……」

 

「爆弾とかにもしてるんだからいいじゃん」

 

「まぁね〜。外では寝台特急が完全に消えたから、次はアレを盗んでみようかな」

 

「サラッとエゲツナイこと……」

 

「さっ、樹理愛!姫!畳み掛けようっ!」

 

「「うんっ!!」」

 

 茜の合図と共にポニテ女子2人が動き出す。顔を見合わせ、ニッと可愛らしく笑うと、2人は揃って博麗姉妹を倒しにかかる。

 

「重符『アンダーグラウンドの最奥』!!」

 

「気象『観測史上初の無秩序な天気』ッッ!!」

 

「姫がスペカ!?」

 

「樹理愛が2枚目……こりゃちょっとマズイ?」

 

 姫は、まるで巫月や俺の闇の弾幕のように漆黒でかなり小粒の弾幕だった。それを無作為に全方位にバラバラと放っている。霊愛は、何の気なしにその黒い弾幕をお祓い棒を使い消そうとするが、突然、ガクンと霊愛は姿勢を崩す。

 

「ぐっ……!?」

 

「お姉ちゃん!?」

 

「霊麗、姫のこの弾幕、ヤバいッ!触ったらダメ、重くなる!」

 

「……重力を固めた弾幕(・・・・・・・・)みたいなモンなの……!?」

 

「多分!だから御札で空中で相殺するしかない!」

 

「でも……この天気じゃ……!!」

 

 コロシアムの真上に樹理愛による雷雲が生成されとてつもない勢いで雷が、雹が降ってきた。しかしこれだけならいつも通り。今回は貫くような雨まで降ってくる上に、先の樹理愛の炎の竜巻による熱で雨が蒸発し、凄まじい霧が発生してくる。

 

「視界が遮られた……!」

 

「落ち着いてお姉ちゃん。巫月お姉ちゃんじゃないなら、気配を追えばそれでいいじゃん。視界なんて広かろうと狭かろうと関係ないね」

 

「それはそーだけど、姫の弾幕と霧の相性がなー……しかもこのステージ、地底にあるだけあって決して明るくはないからね」

 

「……?あー……お姉ちゃん、私より夜目が効かないからか……」

 

「そ。暗いステージに黒い弾幕の相性の良さよ」

 

「とりあえず樹理愛の気配は追いやすいね。けど、姫がなぁ……。まだまだ幼いせいかな、小さいせいで観客の気配と混同しかねないよね〜」

 

「確かに。じゃ、手っ取り早くホーミングでも……と思ったら……」

 

「その手を使うのは茜に読まれてるしねー……」

 

「はてさて、パワー型の私が火力不足で困るときが来るなんて思わなかったねぇ。どうしよっか霊麗、何か案はある?」

 

「勿論、抵抗するしかないよね。拳で」

 

「アハッ……だね、それしかないね!!」

 

 コツンと姉妹は拳をぶつけ合いステージに散る。別々の方向から3人を襲うつもりのようだ。しかし茜はそう来るのも読んでいた。自分も含めて3人を覆うようにドーム状の隙のない結界で囲んでいて、とてもではないが侵入も突破も不可能だった。

 

「避けながらの攻撃で私の結界が壊せる?」

 

「私は無理。でも、霊麗ならね……!」

 

「ッ!樹理愛、そっちはどう!?霧で見えないから実況して!」

 

「霊麗お姉ちゃんの物凄いラッシュ攻撃で、ヒビが入ってきてる!!」

 

「なん……ですって……!?」

 

 霊愛の攻撃は気休め程度で、茜の結界には傷一つ付かない。そんな攻撃で壊せやしない事を知りつつ霊愛は結界の中の誰かの気を引く為にも攻撃は継続する。

 やがて、戦闘が長引く事で、怪物が目を覚ます。

 

「あはぁ……♡ キたキた……この感覚っ……♡」

 

「……おはよう霊麗、久しぶり」

 

「ふふ、モルモーの部下を殺した時以来だねぇ♡」

 

 別の人格が出てきたとか、そういう事ではない。ただ単に、霊麗が吸血鬼らしさを発揮できるのが、今やモルモーの襲来のときのように長時間戦闘した場合のみという事だ。

 普段でさえ霊愛に比べれば吸血鬼らしさが表面に出ているのに、それさえ一部でしかなかったのだ。凶暴さ、残忍さ……巫女として生活しているからこそ普段はこれらを押さえ込んでいる。

 しかし、長時間に及ぶ戦闘は、そのリミッターを徐々に解除していくもの。霊麗はウットリした顔で結界を殴り続け、遂に結界は砕け散った。

 

「嘘、茜お姉ちゃんの結界が!!」

 

「……壊されたらまた張ればいいだけの事だよ」

 

「!!」

 

 繰り返しになるが、茜の結界の生成速度は穹より妖舞より速い。故に、霊麗が結界を壊したところで霊麗に攻撃されるより前に再度結界を張ればそれで事足りる。

 現に、再び結界により遮断されてしまい、霊麗は結界の中の3人へ攻撃ができなくなってしまった。

 

「あ、あっぶな〜い……。あかねおねーちゃんって、すごいんだね!じゅりあおねーちゃん!」

 

「う、うんっ……そーなんだよ姫!茜お姉ちゃんは、優しいように見えてエゲツナイくらい強いよ!でもこの結界を壊す霊麗お姉ちゃん……エグいね……!」

 

「私は、お母さんやお父さんと違って、スイッチを切り替えるみたいに吸血鬼の能力を引き出せない。だけどこうして……長時間、戦ってればね……!覚醒するんだ、私の吸血鬼の血がね……!」

 

(戦闘を長引かせる事で霊力を削ろうとしたけど、それが裏目に出てる……!!霊麗お姉ちゃんならまだ分断できているけれど、霊愛お姉ちゃんは────)

 

「残念。私達の勝ちだよ」

 

「「ッ!?」」

 

 霧の中で霊愛の声だけが木霊する。目を凝らすと姫は霊愛の腕の中でオチており、霊愛は茜の結界の内側に侵入していた。

 

「な……ッ!?スキマも開けないような術式にしてるはずなのに……どうして……!?」

 

「霊麗が壊した瞬間に侵入しただけ。この霧だし、目視不可だよね?自分を中心に樹理愛と姫の距離を測り、ノールックで結界を張る。……だよね」

 

「ッッ!!……樹理愛、もっと寄って!」

 

「うぇっ!?」

 

「遅い。霊符『夢想封印 零』」

 

「キャアアアアッ!!」

 

「茜お姉ちゃ……んやああぁぁぁっ!」

 

 霧に紛れて、姫を小脇に抱えたままで霊愛は茜に腹パン。同時に夢想封印をゼロ距離で放ち、同時に樹理愛を巻き込み、2人一気にぶっ飛ばした。茜の結界によって逃げ場を無くし、負けたのだった。

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