「2試合目は『博麗の巫女〜ず』の勝利だ〜〜ッ!流石は次代の巫女、鬼神の如き強さだったね……!」
「ゼロ距離で妹に夢想封印を打ち込む次代の巫女もそうだけれど、あれ程に強力な結界を拳で破壊する博麗の妖怪巫女も流石というか……」
「……あれ?待って?ずっと次代の巫女がパワー型で博麗の妖怪巫女の方が頭脳派だと思ってたんだけどもしかして逆だったり?」
「……かも、ね……」
2試合目は博麗姉妹の勝ち。流石に茜と樹理愛がアタッカーでは火力不足なのは否めないが、中々に博麗姉妹を押していたように思える。
姫の重力の弾幕も霊愛には結構な痛手を与えた。だからこそ今の戦いで霊愛はお祓い棒という長めのリーチを失って戦っていたのだから。
それにしても、重力の弾幕だなんて、俺でさえも最近になってやっと出来るようになったのに、まだ幼い姫がそれをやってのけるなんて思わなかった。
恐らく理屈で考えちゃダメなんだと思う。運に、勘に、自分の本能に任せる。それでこそ能力のフルスペックを引き出せるというもの。
とはいえ樹理愛の能力はそれなりには理屈が必要というか、適用されてしまうというか……ちょっぴり厄介な仕様になっているようだ。
「さてさてぇ、3試合目やってこーかー!お次は、紅魔館の執事見習いこと十六夜虔魔くんの率いる、
『Mad children』!!チームメイトは、茜ちゃんと同じく賢者の娘である、摩多羅阿弥ちゃん!!」
成程、確かにあの2人は「mad」だ。ちょっぴりマッドな要素がある。阿弥は実験と称してフランを唆して叛逆させようとしたし、虔魔は相手の気持ちなんか全く考えないで動く。
「……チームリーダーが虔魔だなんていつ決めたの」
「申請時に」
「はぁ。あんたに任せた私が馬鹿だった」
「それはどうもありがとうございます」
「煽ってんの?」
「いえ?」
早速チームに亀裂が入っているような気がするがどうだろうか。凸凹コンビどころか、アンバランス過ぎるというか、あまりにも酷すぎるというか。
最近は阿弥にも感情の起伏が見え隠れしているし悪いことでは無いのだろうが、感情が出てくる事で他の子と喧嘩するくらいなら……。
「対するは、今大会一番人気!幼き姫と幼き従者の超絶バランスの取れたチーム!こちらも2人組だ!そう!レミリア・スカーレットの愛娘、次期紅魔館当主ことレイチェル・スカーレット率いる『紅魔の幼姫たち』!!」
「チームメイトは姉の十六夜弦月姫ちゃんです!」
これは流石に虔魔&阿弥に勝ち目は無さそうだ。時間を止めるくらいしかできない虔魔と、その他の技術も会得済みの弦月姫……流石に力の差が大きい。
そして阿弥は、戦闘力が皆無に等しいのだから、どのように戦うか想像すらできない。運動会だって結局はバトルではなく口論だったし、結界すらまだまともに張れないはずだ。
「さぁ、サクッと屠ってやるわよ、お姉様!」
「そうですね、プチお嬢様」
「ふふ、お母様と咲夜の真似事みたいで楽しいわ!美しく華麗に……エレガントに終わらせる!」
「プチお嬢様、ご命令を」
「私が命ずるわ!
「御意」
あの2人の主従ごっこも、ちょっと前に比べたら少しは板についてきたようにも見える。おままごと以上
「それでは3試合目、スタートッ!!」
止まった。合図が出た直後に、時間が止まった。止めたのは虔魔────ではなく弦月姫だった。実際同能力を持つ者としてのランクは弦月姫が上だし、仕方ない。
「やれやれ、本当に瞬殺するつもりですか?」
「そういう『命令』だから」
「妹が姉に『命令』……不思議ですね」
「別に?身分で見れば明白でしょう。メイドの子の私と、当主の娘のレイチェル。どちらが上かなんてまともな知能があれば理解可能よ」
「つまり僕にはまともな知能が無いと」
「あら、そう言ってるように聞こえた?なら、少しくらいはあるんじゃない?まともな知能が」
「ッ……勝負です、弦月姫お姉様」
「もう勝負はついてるわ。足元を見なさい」
「なっ」
トゲトゲのツルが生えてきたかと思うと、瞬時に虔魔の足を縛り上げた。弦月姫の植物は全て彼女の妖力で強化してあるので、時間停止の影響は受けず妖怪の力でもそう簡単には千切ることができない。
「ジワジワとあんたの妖力を吸い上げて成長する。そして、成長する毎に妖力を吸い上げるスピードも上がる。あんたにそのツルがどうにかできるのならどうにかしてみなさい」
「くっ、こんなモノ……こんなモノ……ッ!ナイフが通らないなんて、そんなバカな……ッ」
「私、薔薇を品種改良するのが趣味なの。知らないでしょ?実の姉の趣味を。あんたっていつもそう、自分以外は全て他人で、興味の対象外だものね」
「……」
「何か興味を持った事があれば手段を選ばず真実を追求……美しさの欠片もないわね」
「では、今回のように『事前に不意討ちの為の種を仕込んでおく』のは美しいとでも?成程、お姉様の美学もその程度ですか」
「目前に水溜まりがあれば、主人がそれを踏んでも大丈夫なようにカバーをかけるもの。そう、絨毯のような、ね。『主人に迂回させない』事こそ従者の美学と知りなさい」
「分かりませんね。そんな行為は……無駄でしょう。それに、不意討ちとの関連性も分かりませんが」
「『主人に手を煩わせないで戦えるのなら、それに越したことはない』。それだけよ」
「……」
そういえば虔魔は、暗殺術ばかりに長けていて、吸血鬼の特性である蝙蝠化などの技能はそれなりのものだったか。足が固定された程度、蝙蝠化すれば抜け出せるのにどうして……と思っていたが、成程、虔魔に限っては拘束が有効ということか。
「さて。虔魔を倒したら次は解除した瞬間に阿弥に手刀で気絶させて、この遊びはジ・エンドよ」
「降参です、僕はもう勝負を降ります」
「やっぱりあんた、バカなの?紅魔館の者に逃げは許されない。腹、括りなさい。そんな軟弱者には、紅魔館の執事など務まらないわ」
虔魔の妖力を吸って開花させた花から種の弾幕を放ち、彼を全身滅多打ちにする。相変わらず弟にも容赦の無い姉だ。ほんの少しだけ虔魔が可哀想にも思えてきてしまう。
「……解除」
「やっぱそー来たかぁ」
「ッ!?」
時間停止の解除と共に阿弥に手刀を繰り出そうとする弦月姫、しかし阿弥はぐりんと振り向いたかと思うと、身をかがめ、その勢いのままレイチェルへ向かう。
樹理愛と違い、神の子であるにも関わらず強靭な肉体を持ち、強烈な打撃技をも繰り出せる阿弥は、レイチェルに肉弾戦を挑むらしい。
「レイチェル!!」
「まずっ……油断し────」
阿弥の細腕は深々とレイチェルの胴体を貫いた。
「なーんちゃって」
「……!?」
「ふっふっふ……手応え無くて不思議?」
「!!」
「阿弥さ、『トンネル効果』って知ってる?」
「……壁にぶつかり続ければすり抜ける事ができる、とかいう机上の空論でしょ」
「さっすが賢者の娘ね!だけど残念、それは机上の空論じゃないの。私の《確率を操る程度の能力》を以てすればね!」
「いや……確か『トンネル効果』は不可能なはず」
「いいえ?不可能じゃないわ?だって不可能って、確率が0%って事だもの。たとえ実現可能な確率が10の100乗分の1とかだとしても……、この私なら、確率を100%に引き上げる事ができる」
「
「残念、可能なのよね〜。それでなくとも私は純血吸血鬼だし、それなりに技能もあるし、胴体だけを蝙蝠化させればいいんだけどね」
「ッ!?う、腕が抜けないッ……いや動かない!?」
「
「…………ッ!!」
次の瞬間、弦月姫の手刀が阿弥の細い首に強かに打ち付けられ、力の抜けた阿弥はドサリと倒れた。確率といった「完全に0な事自体が珍しいもの」を操作できるレイチェルに、時間の能力者の弦月姫。誰しもが、この2人が組めば最強かに思えた。
「お疲れ様っ、お姉様!虔魔、瞬殺だったわね!」
「阿弥まで倒せず申し訳ありません」
「楽しかったからイイわ、アレで。そ・れ・にっ!能力の幅広さを見せ付ける事もできたようだし♡」
圧巻だった。2人の能力のチートさが他の兄弟の誰よりも飛び抜けている気がしてならない。だが、そんなレイチェルでも、弦月姫でも……どうしてだか個人戦だと巫月には勝てないのだから面白い。
「弦月姫、レイチェル、よくやった。2人共、今度俺とも手合わせしよーぜ」
「はいっ、お父様!」
「……弦月姫。さっきの花の攻撃、時間を止めた世界じゃなくて普通に使えばよかったんじゃない?あの美しさを見せないのは勿体ない気がするぞ」
「いえ。あれでいいんです」
「そう……なのか?」
「綺麗な花には棘があるもの。私はそんな、綺麗な花になってみせます。そして、その綺麗な花で私の大切な人を美しく着飾ってあげられるように…………日々、隠れて成長し続けるだけですから」
「……成長過程はあくまで見せない……か。イイね。俺は嫌いじゃないよ。ま、これからも頑張れ」
「はいっ!!」
◆
「やべぇよやべぇよ……弦月姫、早苗みてーに妖力を吸い取れるようになってるけど、そんなのアリ?」
「アリなんじゃない?」
「妖力スポイラーマジ勘弁……早苗のアレ、ちょっとトラウマなんだけど……」
「でも、勝ち上がるのはきっと『紅魔の幼姫たち』じゃないのよねぇ……」
「おっ、親バカ霊夢さんは誰が勝つと予想する?」
「は?そんなの『博麗の巫女〜ず』でしょ。霊魔とシガレットちゃんのチームは2位ね」
「……」