※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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お遊戯

「これにて、全試合終了〜ッ!!凄いね、皆、凄いバトルの連続だったね……!!」

 

「勝率の集計も終わりましたっ!7位から順番に、発表していきます!まず7位『Mad children』!!6位『ポニテ女子 with A』!!」

 

「5位『幻想スピードスターズ』!う〜ん、速度や数の利をもっと活かせたかもしれないね!」

 

「4位!……『雷三姉妹』っ!!意外にも、司令塔の率いるこのチームが4位!調子悪かったのかしら?もし次回があれば、次回に期待したいわねっ!」

 

「3位!『紅魔の幼姫たち』!これはダークホースだったね、いつものバトルとは大違いの戦績ッ!!まさかまさかの連続!予想とか見た目以上のナイスタッグだったね!」

 

「2位!『相思相愛』!愛ゆえに、共に最強を狙う2人!4勝1負1分という素晴らしい成績を残した霊魔くん、シガレットちゃんに、皆さん拍手っ!」

 

「そして栄えある1位!『博麗の巫女〜ず』ッ!!5勝1分という、飛び抜けた成績を残して、見事、巫女姉妹が優勝を飾った〜〜〜ッ!!」

 

「私にはもう、2人のどちらがパワー派で、頭脳派なのか……分からなくなっちゃったわ……」

 

「ど、どっちも頭脳派でパワー派なんだよ……多分!ということで、いよいよエキストラマッチの始まり始まり〜〜〜ッ!!」

 

「エキストラマッチには、子供達のチーム戦の優勝チーム……『博麗の巫女〜ず』が出場します!そしてその対戦相手は……!?」

 

「地獄の女神ことへカーティア・ラピスラズリ様の率いる『常識の破壊者(キノス・ヌース・アポリオン)』ッ!!」

 

「エスカルゴさんも参戦してますっ!」

 

 ワッと会場が沸き立つ。流石にへカーティアまで参戦となれば、そんな反応をするのも仕方がない。俺が参戦するのは割と皆に知られていたようだし、ここまでざわめく要素があるとするなら、それは、へカーティア参戦についてなのだろう。

 

「やっぱりアンタが参戦するのね」

 

「おう。行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

 霊夢に見送られ単身ステージに乗り込む。そして俺に視線が集まったところで地面に魔法陣を描き、へカーティアを地獄から召喚。素晴らしい演出だ。一気にそれっぽく(・・・・・)なる。

 

「仰々しい演出ご苦労様♡」

 

「どーも」

 

「というか何で私がリーダーなの?話を持ち掛けてきたのはあなただし、あなたリーダーでいいのよ?遠慮しなくていいのに」

 

「俺は『器』だからね、主人を立てるのは当然さ」

 

「フン、主人である私を何度も犯しておいて、何を今更『器』よ。全く調子の良いおバカさんねェ♡」

 

「ほっぺツンツンしないで」

 

 霊夢からの視線が本気で痛い。顔面に穴が開いて脳味噌が零れ落ちそうだ。

 俺と他の彼女達なら俺が頬をツンツンする側だがへカーティアに関しては逆転する。立場というのもあるだろうが、何故か、へカーティアだけは完全な例外的存在なのだ。

 

「意外だね、へカーティアだけなの?」

 

「だけ(・・)……とは?」

 

「ほら、部下繋がりでクラウンピースとかモルモーとか……そっちもチームに引き入れるものかと」

 

「へカーティアだけでも十分オーバーキルなのに、これ以上に増やせるかよ」

 

 明らかな挑発の色を声に含めてやると、ピクリと霊愛の眉が動いた。霊麗の表情に特に変化は無い。しかし姉が動くと霊麗も釣られてしまうことがあの2人の大きな弱点。

 それに気付ければいいな、と思っているのだが、果たしてどうだろうか。俺の意図を察してくれると1人の親としても嬉しい。

 

「か、開幕前から既にバッチバチだーッ!!これはさっきまでより凄い戦いになるぞー!!」

 

「心做しか、エスカルゴさんがいつもよりも強気な気がするわね……きっといつもと違う戦いになるわ、そんな気がする……!」

 

 雛のお察しの通り、いつも通りの戦いをする気はサラサラ無い。試してみたい事が山のようにある。娘を実験台にと言ってしまうと心象が悪いが、別の言い方をしてしまえば、娘達ほどの実力者を相手に(・・・・・・・・・・・・)どの程度まで通じるのか────という事だ。

 

「ど、どんな戦いになってしまうのかっ!?これは目が離せない戦いになりそうだぞ!?」

 

「どちらのチームも頑張ってください!」

 

 娘達が構える。2人共試合開始後はすぐこちらに向かってくるだろう。速攻タイプのあの2人だし、チマチマと魔法を放っていればダメだろうが、今回俺は魔法メインで戦うつもりなので、それなりには厳しい戦いになるかもしれない。

 

「ノッてイキましょ♡」

 

「だね、ガチらせてもらおう」

 

「……やるよ霊麗。本気で」

 

「うん」

 

 霊愛も霊麗も真面目そのものの顔つきだ。単純に嬉しい。父として、1人の親として、娘から本気で立ち向かってもらえるというのは、指導している身としては幸せなことこの上ない。

 

「「始めッッ!!」」

 

 2人の合図を聞き、博麗姉妹は同時に動き出す。霊麗はへカーティア、霊愛は俺に攻撃を仕掛ける。当然ながらそれをそう簡単に受ける俺達ではない。

 一歩前に出たへカーティアがドーム状のバリアを形成し、2人分の攻撃を受け止める。2人だって、子供でありながらもかなりの戦闘訓練、経験を経てかなり強くなっているというのに、へカーティアのバリアには傷一つついてはいない。俺の結界ならと考えると、ついつい溜め息が漏れてしまう。

 

「変身は待ってあげるのがお約束よん?」

 

「変身?何を言ってるの?」

 

「ま、見てなさい♡」

 

「お父さんが変身……まさか……!!お姉ちゃん!!来るよ、『擬似神化』!!」

 

「させない!!変身前に一気に畳み掛けてやる!!霊符『夢想封印 零』!!」

 

「霊符『夢想封印』!!」

 

 バリアに掌底し、そこからゼロ距離で夢想封印を放つ霊愛。霊麗も同時に夢想封印を放ち姉の援護をする。それでもへカーティアのバリアは壊れない。いや、傷すら付かない。

 

「さぁエスカルゴくん、見せてあげなさい」

 

「────肉体武装『第三の手』」

 

 悪魔のイラストにありがちな、トライデントにも似た尻尾を生やした。この尻尾は文字通りに第三の手としての運用が出来る。弾幕も放てるし三叉槍(トライデント)の見た目通り武器としても使える。手刀なんかよりも圧倒的に使える。そして手よりもリーチが長い。

 

「へッ、フォークみたいで刺すのに特化してそうな尻尾だろ?」

 

「まぁ!その辺に転がってる雑魚悪魔みたいね♡」

 

「雑魚って」

 

「でも性能は……飾り(・・)じゃなさそうね」

 

「……トーゼンさ♪」

 

 何よりこの尻尾は細い。靱やかで鞭のように速く振り回せる。

 ご存知だろうか。人間の力で振り回す鞭でさえ、物によっては音速を超える事があるということを。そしてそれを、妖怪の俺が振り回すのなら、衝撃波なんて容易に出せる程の速さで振り回せる。そう、風の刃さえも。

 

「さぁて、そろそろ俺もヤリますかァ!」

 

「ふふ、やる気満々?」

 

「あァ、ヤル気ムンムン♡」

 

「それなら、この場にいる皆に見せてあげなさい!私の器たるあなたの、完全詠唱の魔法を!!」

 

「おーよっ!」

 

 ヒュンヒュンと空を切る音がする速さで、尻尾を振り回す。嬉しくて堪らない。バカにこそされないものの、ずっとずっと「エスカルゴは魔法があまり使えない」と誰しもが知っていたこの現実を一気に塗り替える時が来たのだから。

 

「『未知の楽園、立ち塞がる高き壁。壁の先は紅に彩られし既知の洞窟。泥濘に濡れ、溺れ、蠢く千の蚯蚓。最奥の深き暗がりは何人たりとも突き抜けること能わず。主は浸入せし者を防ぎ、拒み、僅かな突破さえ許さず。彼女が許すは打ち寄せる白き波、出ずる幼子。主は敵を須らく排除し楽園に再び尊き安寧を齎す。敵を赦し給うた彼女に溢れんばかりの光あれ』────獄雷『最凶落雷(ジゴデイン)』ッッ!!!」

 

 へカーティアのバリアをも巻き込む勢いで地面に魔法陣を展開。そしてそこから地獄の雷を召喚し、溢れた赤黒い雷はバリアを粉砕した上で博麗姉妹に襲いかかった。

 

「嘘、私達の夢想封印でも壊せなかったのにっ……」

 

「瞬間的にだが強度を弱めてくれたんだよ。流石にそうでもねーと俺でも壊せないからな。……ね?」

 

「いいえ?博麗姉妹の夢想封印を受けてる時と特段強度は変えてないわ?」

 

「え」

 

「完全詠唱だもの、そりゃ普段より威力出るわよ。なに?これ以下だと思ってた?」

 

「ま、まーね……」

 

「魔法はね、しっかりと詠唱すればするほど効果は上がるの。……とはいえ、この試合はあくまでデモンストレーション。娘達を傷付ける目的は無いから、2人にとってはそこまでダメージに変化は無いとは思うけれど」

 

「……と、俺も思ってたんだけど、中々にダメージがあるようだね」

 

「あらあらあらあら……♡」

 

 ぴくんぴくんと身体を震わせていて、それなりに麻痺しているようだった。その2人からは先程までバリアに向かい弾幕を放っていた鬼神の如き気迫が失われ、見た目通りのただの少女のようだった。

 

「というかこのまま終わったら私の出番がほぼ皆無でしょ。少しは手加減しなさいよ」

 

「いや俺の魔法を見せ付ける為のバトルでしょ」

 

「そ〜だけどさ?」

 

「不完全燃焼なら俺で良ければ後で相手するから」

 

「やぁん♡ その言い方はちょっとやらしーわー♡」

 

「何でだよ!?」

 

 なんてコントじみたやり取りをしている内にまず霊麗が回復。流石に純血の吸血鬼なだけある。目がギラリと瞬いたような感覚があった次の瞬間には、霊麗はお祓い棒を閃かせ俺に向かって襲いかかってきていた。

 

「はぁッ!!」

 

「んっふっふ……効かない、効かないねェ」

 

「ッ……!」

 

 尻尾でサッと受け止めてやると、霊麗は俺に特にダメージを与えられていない事を表情から察する。実際には、焼けるように痛いのだが……もう痛みには慣れている。

 

「じゃ、私は霊愛ちゃんを襲お……」

 

「霊符『夢想封印 夢幻』ッ!!」

 

「あら、復活した♡」

 

「戦力を分断する機会を伺ってただけッ!!あんな雷程度、私ならすぐ復活すんだから!!」

 

「あっはっはっ、威勢のいいこと!ほらほら、娘に言われてるわよォ?エスカルゴくん?」

 

 霊愛の弾幕を笑いながら回避して、または球体を振り回して相殺していく。やはり戦闘に優れているへカーティアを正攻法で打ち負かすなんてのは今の娘達には厳しいか。俺でもできないし、仕方ないと思うが、悔しそうな顔を見ているとやはり少しだけ心が痛まなくもない。

 

「宝具『陰陽鬼神玉』!!」

 

「……へぇ、大きいわねぇ♪」

 

 力押しでへカーティアを潰そうと仕掛けるも、その巨大な陰陽玉さえ鎖付きの球体で受け止め、勢いを殺したかと思うと濃密な霊力に手を焼かれながらも力任せに投げ返した。

 

「そ、そんなのってアリ!?うわっ……!」

 

「うーん、やっぱり日本の神じゃないからかしら、もしかして私って霊力との相性悪い?」

 

「なのに投げ返すとか意味分かんない!霊麗!!」

 

「うんっ!!」

 

 俺をかち割ろうと仕掛けてきていた霊麗は、姉の号令で彼女の元に戻り、息を合わせ、力を合わせ、姉妹のスペルを発動。

 

「姉妹符『緋想封印』ッ!!」

 

「……エスカルゴく〜ん」

 

「はいよ。……『祓え』、霊剣『布都御魂剣』ッ!!

『覚醒(おき)ろ』、妖刀『陣風丸』ッ!」

 

 目には目をだ。霊力には霊剣、妖力には妖刀を。あの『緋想封印』、紅の弾幕は霊麗の妖力弾、白の弾幕は霊愛の霊力弾。それを霊剣と妖刀、それぞれ別の刀剣で切り伏せる。

 なんてことはない。これぞまさに実戦型のビートセイバーだ。色が2色、武器も2種。まさに(・・・)、だ。

 目を瞑れば、脳内は音楽で溢れる。ノリノリで、身体が勝手にリズムを刻んでいく────。

 

「おやおやおやおや……不意討ちとは卑怯ねぇ」

 

「お父さんにはそれくらいしないとダメだし。邪魔しないで」

 

 お祓い棒でのスキマは、近距離なら移動が可能。博麗姉妹は、弾幕を放った直後にスキマにて弾幕を切り伏せる俺の背後に回り込むも、へカーティアに見付かってしまったようだった。

 

「ほらほらエスカルゴくん、それくらいはさっさと斬り終わりなさいよ」

 

「えー、ちょっとは楽しませてよ」

 

「だーめ」

 

「ちぇっ。爆撃『失われた生存可能領域(ハビタブルゾーン)』」

 

 広範囲の爆撃の如き攻撃にて一気に掻き消した。面白味の欠片も無い行為だが、へカーティアからの指示だ、仕方ない。彼女をリーダーに据えたのは俺なのだ、甘んじて受け入れるしかない。

 

「っ……!こっちの攻撃、殆ど聞いてない……!!」

 

「どうしよ……もう肉弾戦しか……」

 

「冗談でしょ?そんなの通じる相手じゃないよ」

 

「私はともかくお姉ちゃんは特にね」

 

「くっ」

 

「ねぇエスカルゴくん、まだ初見の魔法のストックある?あるならそれ使いなさいよ」

 

「いいね、そうしよ」

 

「……来るよ霊麗!」

 

「備えとこ」

 

「……さてと。『へカーティアの部下を引き入れると思った』、さっきそう言ったな?霊愛」

 

「……?うん」

 

「お望み通り引き入れてやるよ。ただし、死んでる状態でな!!『星核(しょうかく)・炎塊(えんかい)・火海(ほっかい)・氷海(ひょうかい)・地底の孔・獄の口。十六の夜を超えた者へ、女神の祝福を』────腐符『肉人形の悪趣味な宴(コープスパーティ)』!!」

 

 へカーティアの力を借り、地面に魔法陣を描く。すると魔法陣から滅紫の禍々しい光を放ちながら、1人の少女がゾンビ映画のゾンビのような動きで、モゾモゾと地面から這い出してきた。

 

「オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ォ゙ォ゙ォ゙ッッ!!!」

 

「おーおー、元気だねエンプーサ。俺、結局、ほぼお前と話せなかったもんなー。罵って終わりだった記憶。……ま、神話通りの弱点を突いただけだしな」

 

「なっ……なに、これ……ゾンビ!?」

 

「冥界から死者を呼び戻したのさ。肉体が喪われているのなら中途半端な肉体が形成される。そして、蘇った者に理性らしい理性は無い。地獄……いいや、冥界の女神たるへカーティアらしい権能だろう?」

 

「ア゙ァ゙ー……」

 

「よしよし、とりあえず敵はあの2人だ。お前ならいけるよな?」

 

 俺が召喚したのはエンプーサだ。グングニルにて心臓を貫かれたからか、胸元には大きな穴がある。それ以外は、ゾンビにしては綺麗な方ではと思う。ぶっちゃけヤレるかどうかで言えばヤレる。余裕で犯せるレベルにはかなり綺麗な状態を保っている。それでも「本人が眠っているのでは」と思える程の幽々子さんには遠く及ばないが……。

 

「やれ、エンプーサ」

 

「ガァッ!!」

 

「やばっ……」

 

「お姉ちゃんっ!!」

 

 青銅の脚にて霊愛を蹴り飛ばそうとするがそこに霊麗が割り込み、強化してあるお祓い棒にて彼女の蹴りを受け止めた。悪魔vs悪魔のこの競り合いは、パワーだけなら拮抗している。しかし属性的な相性なのかエンプーサが押されているようだ。

 そこに霊愛が参戦。パワーに優れる霊麗は一旦、エンプーサの攻撃を受け止める役に徹して、霊愛が攻撃をしていく。すると、面白い程にエンプーサが押され始めた。引っ掻き攻撃など当たりもしない。

 

「ゾンビ……いやアンデッド&悪魔……そして霊力。成程、エンプーサにとっては4倍弱点みたいなものなのかな?相性最悪って感じかなコレ」

 

「どーするの?エンプーサ、姉妹からフルボッコにされてるわよ?」

 

「……まさかここまで相性が悪いとは思わなかった。エンプーサには悪いが、もう還(かえ)らせるか」

 

「そうね。おやすみ、エンプーサ」

 

 へカーティアが指を鳴らすと砂のようにサラサラ身体が崩れ、消えていった。攻撃をスカした2人はすぐに体勢を整えて次の攻撃に備える。

 

「……まさかお父さんがあんな攻撃をするなんてね」

 

「意外か?」

 

「まーね。なんであんな攻撃を?」

 

「属性魔法が使えない代わりに、俺は無属性魔法、そしてへカーティアに許された地獄の力の使い方を極める事にしたのさ。時間魔法は元より、もっと、世界の根幹に触れるような……大規模で、滅茶苦茶なえげつない力を使えるようになる為にな」

 

「……ッ!」

 

「お父さんはホントに野心の塊だよね。そんな所が好きでもあり、引く所でもあるけど、さ」

 

「はは、ナマ言うねぇ。へカーティア、我が娘達に神罰与えちゃって、どうぞ」

 

「「!?」」

 

「はいはーい。神罰『ノアの方舟』!!」

 

「しまっ……うわぁっ!!」

 

「きゃっ……」

 

 地面は底が抜けたように一気に消え失せた。砂も土も全て水に変換され、2人はドボンと大きな音と一緒に水に落ちてしまった。飛ぶ暇も無いくらいに急な事だったようで、流石に2人でも反応できないらしい。2人にとっての課題が見えたと言える。

 

「……!水はヤバイ(・・・・・)よ!!」

 

「巫月お姉ちゃんみたいに爆発させてくる……!!」

 

 残念。娘が見せた物をそれ以上の規模で踏襲するなんて事はしない。愛娘巫月の技術より上だと誇示しているみたいで、あまり良い気はしない。

 どうせ誇示するなら、魔法でそうしてやる所だ。

 

「安心しろ、爆発はさせねぇよ。そんな事よりも、次の魔法いくぞ……!」

 

 創造魔法を行使してやった。キラキラと光を放つ白い結晶をパラパラ降らせると、霊愛と霊麗はその結晶を回避しようとする。

 しかし弾幕ではないので、降り注ぐ際の密度は、雪のような、雨のようなものだ。

 

「何コレ?舐めても大丈夫なヤツ?」

 

「無臭だね……舐めるのはやめとこ。念の為に、水で手ぇ洗っちゃお。『お水は電気を通さない』って、お父さんも前に言ってたし、大丈夫だよね」

 

「そだね」

 

 2人がトプンと水に手をつけた直後、俺は水面に雷を落とした。途端に2人は全身を硬直させ体勢を維持できなくなり水中に落下して行った。

 そう、この白い結晶は塩だ。それが水に入って、解けたなら、それは塩水。真水は電気を通さないが塩水は電気を透す。へカーティアが土から変換した水を有効に活用してやった。

 

「あららら、沈んでく……溺れちゃうわよ?」

 

「大丈夫、もう助けてる」

 

「……あら♡」

 

 水中で尻尾を2人に巻き付けている。とはいえ、息はできないだろうからどちらにせよ溺れかけてる状況は変わってはいないが。

 

「ほれほれ高い高〜い……ウエスト細いなぁ」

 

「ゲホッゲホッ……がはっ……」

 

「んぐぅぅっ……手が痺れた……ッ」

 

「リタイアするか?」

 

「リタイアをオススメするわよん♡」

 

「誰が……」

 

「リタイアなんて……ッ!!」

 

 息ピッタリの博麗姉妹。霊力で強化した手で己の身体を縛る俺の尻尾に思い切り手刀を喰らわせる。焼けるような痛みが走りつい尻尾を解いてしまう。

 

「イイ目だ。でも残念、俺、もう完全詠唱の魔法はネタ切れなんだよねェ。あんな長い詠唱、セリフを覚えるのが苦手な俺には覚えるのでやっと。だから仕方ないから────これにて幕引きだ」

 

「いーよ、じゃあこれで終わらせてあげる!やるよ霊麗ッ!!」

 

「うんっ!!」

 

「「姉妹符『緋想封印 零』ッ!!」」

 

 零シリーズなら、まず距離を詰めてくるはずだ。へカーティアは下手すれば俺より打たれ強いので、ハナから狙ってはいないようだ。博麗姉妹は揃って俺目掛けて飛び込んでくる。

 

「これでトドメとしてやんよッ!『溢れ出す具象化した想い、想い想われた2つの依代、燃え上がり、冷める故もなく、穢し・孕み・眠ることを忘れる。暴れる肉の塊、桃に塗り潰される自我。結ばれよ、障壁を破壊せよ。護るべきものを知り己を高めよ』

────闇符『ネグロ・ムルシエラゴ』!!!」

 

 俺が使える属性魔法は雷、そして闇、月。これは闇属性の魔法で、蝙蝠を模したホーミング性の闇の弾幕を放つ。ネグロは黒、ムルシエラゴは蝙蝠だ。直訳で「漆黒の蝙蝠」。

 

「────ダメね、まだまだ押し負けてるわよん♪」

 

「え」

 

 やはりダメなのか。ホーミングが弱すぎるのか。神綺母さんの「たくあん弾幕」のような強烈すぎるホーミングでないと、ホーミング弾としての意味を成さないのだろうか。

 博麗姉妹は俺の弾幕を弾き、尚も突撃してくる。するとへカーティアは地球と月の球体を振り回し、思い切り博麗姉妹の顔面へとぶつけた────。

 

「へぶっ……」

 

「ッッ……」

 

 姉妹は目を回し再び水の中にドボン。土左衛門の如く浮かんでくるのを、またもや尻尾で回収した。軽く気絶しているようだが、この2人のことだし、すぐ目を覚ますだろう。

 風邪を引かないようにすぐ脱がせて……いや、服を乾かしてやろう。

 

「……これは、もし今後父娘で対決したら引き分けでオワるかもしれないわね♡」

 

「魔法だけに限ればね」

 

「バカね。幻想郷準最強を狙う父親たるもの、そのたった1つの分野だけでも娘くらいにはラクラクと勝てなくちゃならないのよ」

 

「っ……まぁ、ね……」

 

 結局、今の博麗姉妹の攻撃は不発だった。しかしもしヒットしていたら気絶していたかもしれない。そうなったらへカーティアの1人勝ちだ。そんなの嫌だ。

 

「にしても、パッとしねぇ決着だなー」

 

「あなたの魔法がパッとしないからよ」

 

「うっ……それを言われちゃ……」

 

 結果的にはへカーティアに庇われた形だったが、どうにかこうにか勝てた。しかし俺にとって不完全燃焼極まりない戦いとなってしまったのであった。




ギガースと神々の戦い、ギガントマキア。その中でバリバリ武闘派だったり肉体派の神々でさえ知略を張り巡らせてる中ヘカテーは「松明でぶん殴る」をやっています。
「魔法の神らしく魔法で戦え」などと突っ込みたくなりますよね、分かります。

なのでうちのへカーティアはあの球体で殴ります。
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