「ッハァ〜〜〜……なんかもー、俺、自信無くなってきたよ〜〜〜パチュリー……」
「何に対してよ?主語抜かすのは止めなさいって。イマイチ意図が伝わらないわ」
「伝わってるクセにー。魔法についてだろー?」
ダルそうな口調のまま目の前で魔導書を読み耽るパチュリーにダル絡み。すると彼女はパタンと本を閉じ、軽く頬杖をついて会話に乗ってくれる。
「ま……レミィから話は聞いているわよ。満を持して完全詠唱の魔法を披露したけど、娘達を相手に到底満足とは言えない結果だったんですって?」
「んぐっ……れ、レミリアのヤツ、そんな事……」
「……擁護できなくもないわ。まず、相手が博麗姉妹であるということ。妖怪のあなたと妖怪を討つ者達という属性関係がまずあなたには不利に働くわ」
「おお……」
「次に五行の相性。あの子達は霊夢と同じく木属性だけれど、あなたも五行においては木属性。同様の属性という事は、弱点にも特効にもならないわね」
「ん?俺、木属性なの?何処に……あー、雷か」
「そう、雷は五行で言えば木属性に当てはめる事ができるわ。あなたと霊魔くんも木属性だから、今の博麗家は全員が木属性ね」
「わお」
「そして最後に戦闘スタイル。エスカルゴ、あなたホーミング弾幕は苦手よね?それなのに、あなたの攻撃魔法って……ホーミングばかりじゃないかしら」
「……あるぇ?言われてみりゃ、確かにそうかもな?何でだろ……全く意識してなかった」
「加えて、その博麗姉妹の師匠とも呼べる存在は、弾幕ごっこのエキスパート、博麗霊夢よ?暴力的な弾幕こそが持ち味のあなたがホーミング弾幕なんて使ったって、回避されまくりでしょう」
「てか相殺もされまくったしな」
「……以上の点から、完全詠唱したにも関わらず娘にむざむざと負けた事の説明はできるわ」
「まままま負けてねーし!?」
「実質負けよ」
「クソ……。けど……属性とかそんなの、言い訳にも等しいよなぁ」
「分かってるなら努力することね。あなた、無属性魔法の開発に
「……」
「雷、闇、月しか使えないからって、そう捻くれる必要は無いわ。頑張りなさい」
「つってもなー……うーん……はぁ……。なんか悩みが尽きねぇわ。まさか、あそこまで俺が弱いとはな。へカーティアからは『魔法だけで勝てるようにね』なんて言われちまうし、あーあ……」
机に突っ伏しつつあーだこーだと考えていると、突如、頭に鈍器のような物がぶつかったような重い衝撃が走る。
「ぎゃっ!?」
「いつまでもそうやってウジウジと悩むなっ!私が惚れたエスカルゴってヤツは、もっと単純思考で、好奇心の塊で、子供みたいに無邪気にはしゃぐ子供みたいな男なのよ!あなた本人が
「……パチュリー……」
「分かったらもう、魔界にでも行ってなさい。今のあなた、正直、見てられないわ」
「……」
◆
「……ってなワケで、絶賛自分探しの旅に出てるってワケです、はい。はぁ、頭ん中がグチャグチャだ。どうしような……。どう思う?」
「お兄ちゃんなら大丈夫!すぐ強くなれるよ!」
「全肯定義妹が最高すぎる件について」
「んふふ〜、お兄ちゃんは頑張ってるもんねー♡」
魔界に来るなりロリスに悩みを打ち明ける。もう1人で考えていてもどうにもならない気がするし、こういう時こそ子供の柔軟な発想力に頼りたくなるというもの。母さんでなくロリスに声を掛けたのもそれを狙ってのことだ。
だが、特に新しく得られたものは無かった。元々ロリスはブラコンだし、べったりな子供だからだ。
「あれ?そういえば、お兄ちゃんの弾幕って、大体真っ直ぐだよね?なのにどうして魔法の時ばっかりホーミングにしてるの?」
「知らん」
「『知らん』って、お兄ちゃん……。パチュリーさんそれを言いたいんじゃないかな……?」
「俺もそう思うよ。でも分からないんだ。何故か、俺の攻撃魔法はレーザーかホーミング弾なんだよ。そう設定してるせいだからって言っちまえばそれでおしまいだけどさ、意識して『魔法での弾幕攻撃はホーミング』って決めてるワケじゃないんだよな。全く、俺は無意識下で何を考えて……」
「……お兄ちゃん?」
「分かった気がする。なんか……喉まで出かかってる気がする……でも、何故かモヤモヤもする……」
「そんな時は思いっきり魔法を使っちゃお!!」
「……思いっきり、か」
「そう、思いっきりっ!ストレス発散は大事って、お兄ちゃんが教えてくれたんだよ?」
「なら────」
ボソボソと詠唱する。開発中にはパチュリーから
「詠唱内容が卑猥すぎるわ」と怒られたくらいにはモチーフがアレなのでロリスには聞かせたくない。いや、この前の試合では我が子の前で詠唱したのでそんな気遣いももはや意味など無いのだが。
「いくぜ、俺から離れんなよアリス!死ぬぜッ!!獄雷『
自分を中心に赤黒い魔法陣を広げ、破壊力抜群の地獄の雷を召喚する。魔法陣、吹き出す稲妻、この厨二病クサさが我ながらゾクゾクしてしまう。
「耳は塞いでろよォ、鼓膜イクぞ」
「う、うん!」
「モノは試しだ!標的無しのホーミング発動!即ち完全なランダムッ!!制御不能の破壊の稲妻……!!さぁ何処に落ちるッ!?」
意気揚々と噴き上げた雷を落とす。すると近場で一番高いモノ────パンデモニウムの敷地内にある時計台に落ちたかと思うと、時計台は爆発と同時に粗方吹っ飛んでしまった。
「やっべ…………やっっっっっっっっべぇぇぇ……!!嘘だろ、
「わ……私、知ーらないっと……」
「あっ、コラ!」
◆
「で、流石に怒られて居づらくなったから地底に……お兄ちゃんも災難だねぇ」
「はぁ……なんかツイてね〜気がするのよな……」
「まぁまぁ、そんなに気を落とさないで!ほ〜ら、妹キャラの私が癒してあ・げ・るっ♡ 好きでしょ?妹キャラ♡」
「あ〜好き……こいしマジ推せる……良い匂い……」
「ふふふっ、夏だから汗臭いかもよー?あ、でも、お兄ちゃんは匂いフェチの変態さんだったかぁ♡」
「スー……ハー……幸せ……」
「よしよし♡」
今度は地霊殿にてこいしを抱いて癒されている。普通の意味で抱いているだけで別に隠語ではない。体勢としては対面座位なのだがまだ脱いでいないし問題は無い。断じて。
(軽くは興奮してるみたいだけど、頭の中は魔法でいっぱいか〜……。お兄ちゃんにとってパチュリーのあの言葉がよっぽど強烈だったんだね。仕方ない、今日はエッチ見送りかぁ)
「……こいし」
「んー?なぁに?」
「俺、無意識で何を考えてるか分かるか?もしも、こいしにそれが分かるなら、教えてほしい」
「どうして攻撃魔法の大半がホーミングになるか。その理由が『無意識下にある』と踏んでるんだ?」
「ああ」
「そっか。分かったよ、お兄ちゃんの
「分かった」
開眼したこいしは、読心能力の他に深層心理まで見通せるようになっているし、無意識も相変わらず自他共に操作可能だと言うから恐ろしいものだ。
さとりが広範囲、複数の読心が可能ならこいしはより狭く、深い読心が可能。さとりの上位互換にも思えるが、実際は、姉妹で相互互換になっている。つまり2人が手を組めば無敵である。
(……何故だかホーミングになっちゃうってコトは、つまりは
雑念を取り払おうと、猫吸いならぬこいし吸いをしながら心を落ち着ける。余計な事を考えない方がこいしとしても心を読みやすいだろう。
「……原因は意外と身近な所にあるね」
「っ!も、もしかして分かったのか?」
「うん、案外サクッと見付かったよ。お兄ちゃん……弾幕のバリエーションの無さが、コンプレックスになっちゃってるんだよ」
「え」
コンプレックス。まさかのコンプレックスだと。まるで頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた気がした。ファザコンでもブラコンでも、ましてやロリコンでもなく、ただのコンプレックス。
茫然としていると、申し訳なさそうな顔で、若干上目遣いになりながらこいしが言う。
「怒らないで聞いて欲しいんだけど、お兄ちゃんのスペカって範囲攻撃、耐久、武装、バフ、デバフ、レーザー、ばら撒き弾……ここら辺ばかりでしょう?しかも色もパターンも少ない上に見映えも良いとは言えない」
「ゔっ」
「だからこそ無理してでも魔法でバリエーションを補おうとしてるの。勿論、無意識での事ね。だけどお兄ちゃんは、魔法で戦うのがまだ得意でもない。そのせいで不得意な行為に不得意なモノを重ねてるだけになってるの。結果、良質なモノは生まれない負のスパイラルに陥ってるんだね」
「……俺は、どうすればいいのかな……」
「答えの1つとしては、いつも通りの攻撃を魔法で再現して、まずは魔法そのものの扱いに慣れる事、じゃないかな?だって『苦手+苦手=超苦手』ってそんなの当たり前じゃない。お兄ちゃんがやってるコトはつまりソレなのよ」
「成程……」
「それならほんのちょっとでもお兄ちゃんの弾幕を理想に近付ける為にも次は『得意+苦手=』の式でやってみたらどうかな……って私は思うかなっ!」
「……ありがとう。上手くいくような気がしてきた」
「えへへ、なら良かったっ!エッチと可愛さだけの彼女じゃないんだから、もっともっと頼ってくれて良いんだからね♡」
「あはは……ありがとな」
ぱちんとウインクした可愛いこいしを抱き寄せ、再びこいしを吸った。可愛らしく「きゃー♡」などと言って肩を竦めるのが可愛くて仕方ない。
「また今度、ご褒美に何でもしてあげる」
「そう?ならお兄ちゃんが魔法で子供達に勝てたらご褒美エッチしてあげる♡」
「……こいしへのご褒美が俺へのご褒美になってるぞそれは。他のにしなよ」
「いーのいーの、私がそれを望んでるのっ!」
「はいはい、分かったよ、じゃあこいしの……いや、俺達2人の為に、魔法で勝てるくらい強くなるよ。楽しみに待っててくれ」
「はーいっ♡」
確かに、へカーティアの器としても、魔法だけでもっとしっかり戦えるようにしなくてはならない。もっと強く、強くなれるように────。