「ほんっっっっっとに、このバカは…………ッ!!」
「まさか、会場に来るのは確実だからと勝手に申請するだなんて、まさに予想外だったわね……」
「棄権の申請してきなさいよッ!誰が参加するもんですか!あんたが責任もって棄権してきなさい!!分かった!?」
「逃げるんですか?負けるのが分かっているから?紅魔館に従事する者として、恥ずべき行為では?」
「あんたが……あんたが紅魔館を語るなッ!!勝手な行動ばかりして!分かってるの!?」
「分かりませんね。誇り高き紅魔館の従者……なら、出来るだけこういった機会は無駄にせず、力を誇示していくべきだと思いますけど。妖怪は……悪魔は、畏れられてこそ。僕にそう教えたのはあなたです。そうですよね、お姉様?お母様?」
「ッ……!ああ言えばこう言う……!!」
「口が減らないわね。そういう所は、少し旦那様に似たのかもしれないわね」
「お父様はこんなにムカつきません!」
「まぁ、ね」
紅魔館陣営からほんの少しだけ離れた会場の一角では、メイド服、メイド服を基調とした使用人服を纏った3人の親子が言い合いをしていた。
虔魔が勝手に弦月姫、咲夜さんを巻き込んで申請したらしい。勿論、弦月姫は怒り心頭。咲夜さんも眉間に刻んだ深いシワを中々消してくれない。
「ともかく申請した以上は出場せざるを得ないわ」
「え!?お母様、それでは虔魔の思い通りに……」
「今回だけよ。次、何かやれば、その時は旦那様に刻んでもらう。あの人は一度決めたら最後まで必ずやり通す人よ」
「「!!」」
「いい?虔魔。
「…………………………申し訳ありませんでした」
流石の虔魔も心から震えたようだ。咲夜さんは、流石に紅魔館に長年勤めているだけあって、本気で誰かを脅すとなれば関係無い者まで震え上がらせるくらいには怖い。
その脅しに俺を引き合いに出すのはどうかと思うけれども、それで虔魔の勝手な行動が減るのなら、まぁそれくらいの汚名なら背負ってやろうと思う。
「こ……今度は凄い組み合わせだぁぁっ!?」
「紅魔館に住まう、純・時間能力者が一堂に会す!メイド長十六夜咲夜さん!この人についてはもはや紹介することはないわね!異変の解決もござれ!!凄い万能で瀟洒な従者!」
「そんな咲夜さんの娘、十六夜弦月姫ちゃんっ!!母の技術の大半を受け継いでおり、更には植物まで操作できる能力持ち!エグさは母以上!?」
「そして弦月姫ちゃんの弟、十六夜虔魔くんっ!!館に侵入した妖精を容赦なく屠る、紅魔の
「夜道には気を付けましょー!そんな3人の相手はこの悪魔達!この地底コロシアムでの大会では常連だから、皆も知ってるよねっ!そう!!夢幻姉妹の登場だぁぁぁぁああああっっ!!」
にとりのテンションに反し、会場のテンションはイマイチ上がらない。今回のみ、大会のルールで、親族を中心と定められているからだ。
「っと……ん?幻月さんと夢月さんって彼女止まりでまだ……だったような?……申し訳ないですけれど、お……お子様、いましたっけ?」
「言ってなかった?居るわよ?ダーリンの子が♡」
「「えっ!?」」
待て、俺は聞いてないのだが。AV撮影したとき以降は確かにいつもと様子が違っていたが、まさかあの時の行為で孕んだとでも言うのだろうか。
霊夢との4番目の子供で暫く打ち止めにしようと思っていたのだが、まさか。
「ホントね。幻月のお腹、膨らんできてるわ」
「遠目でも分かるのか」
「ええ。って、まさか気付いてなかったの?」
「……いいや?」
「真顔で誤魔化すな」
「聞かなかった事にしてくれ」
産まれてからのサプライズ暴露は心臓に悪いから止めてくれ、と釘を刺しておくべきだったか。いや避妊しないのが悪いのだが、避妊なんてしたら色々面倒だし、そもそも、望まなければ妊娠しないのが俺の神徳なので、相手が孕めばそれは100%確実に
「望んだ妊娠」である事を考えれば別にそこまで嫌がる必要は無いのだが……。
とりあえず、孕んだなら教えてほしかったとだけ後から伝えておこう。
「ち、因みに男の子?女の子?」
「……女の子よ!名前も決めてるのっ♪」
「ほぇっ!?そ、そこまで!?教えて頂いても……?なんてダメですか?」
「んー、他の人と被らないように、敢えて今ここで公言しておくのもいいかも?……ねー、ダーリンは、ここで公表しちゃう事についてどう思うー?」
「い……う、うん、良いと思うぞ!うん!」
「あっ、そぉ?いいの?それじゃ、この場を借りてお腹の子の名前、発表しちゃいまーすっ♡」
幻月と夢月で考えたのだろう。俺は一切名付けに関与してないので、夢幻姉妹のセンスが試される。もしくは幻月1人で考えたとも考えられるが夢月が驚く様子なども無いし、やはり2人で考えたと予想する方が自然っぽく思える。
「Devilisael……『デビリサエル』よっ!愛称はぁ、とりあえず『デヴィ』、『リサ』あたりが候補ね!ダーリンはどっちがい〜い?」
「リサ」
「じゃ、愛称は『リサ』で!」
即答。当たり前だ、前者はダメすぎる。ダメだと言い張らなければダメだ。その名は大統領夫人だ、絶対に娘に名付けてはいけない。愛称でもだ。
「あ、因みに名前の由来は
「えーっと、デビルは分かるんですけど、あるみ?さえる?いや、アルミミサイル?ってのは……」
「えっと〜……詳しい事は忘れちゃった☆」
「えぇ……」
「ダーリン、説明オ・ネ・ガ・イ♡」
「……アルミサエル、名前自体は『神の裁きの山』を意味する。妊婦や胎児を悪魔から守るという、所謂出産の天使だ。『子宮の天使』とも呼ばれていて、妊娠なども司っている。ま……
「そうそう!前にその天使の名前を聞いてたから、この名前にしようって思ったの!」
「な、成程……。しかし身重な身体で戦っても大丈夫なんですか……?」
「問題ないわ!霊夢と違って、こっちは安定期突入直後だもの!」
「姉さん、まだ安定期かどうかも分からない頃ってこの前あの医者に言われたでしょ……ほんの少ししかお腹も出てないし」
「あーそうだっけ。あの青いのそう言ってたっけ?えっと……八意先生だっけ?」
「担当医の名前くらいは覚えないと失礼だよ」
「そーね。ごめんねー、八意せんせー♪」
かかりつけ医はまさかの永琳。魔界の医者だとか予想していたのが馬鹿らしいくらい、いつも通りの展開だ。わざわざ永遠亭に行くより、魔界に行った方が早いように思えるのは気のせいだろうか。
「……と……とりあえず、衝撃発言もあったけれど、そろそろ3試合目、始めるよっ!……始めェッ!」
時間が止まる。止めたのは虔魔らしい。弦月姫と咲夜さんがギョッとした顔で虔魔を見る。すると、咲夜さんは、早速単独で動こうとする虔魔の首筋にナイフを当て、彼の動きを止める。
「……何のつもりですか」
「とぼけないで。あなた、何をするつもり?」
「さっさと手刀で終わらせるつもりですが。相手は妊婦……。余計なバトルは終わらせてあげるのがあの天使みたいな人の為です」
「あなた如きの手刀が、あの双子悪魔に通用すると本気で思っているのかしら」
「するのでは?同じ『悪魔』という括りでも、我々吸血鬼の方が上位種だと教育されてきましたが?」
「あの2人に関しては例外中の例外。強すぎるわ。ましてや子供の手刀なんて、あの2人にとっては、蚊が血を吸いに来たようなものよ。つまり無意味」
「成程。お母様はあの2人に手刀を食らわせた事がある、と」
「いや何でよ。無いわよ」
「では、経験も無い事をさも確実であるかのように語るのを止めて頂けますか?
「……ッッ!!」
「ちょっ……あんたってヤツは……」
呆れるような、今にも溜め息をつきそうな、暗く澱んだ目で、虔魔は咲夜さんを見やる。生意気で、およそ母に、上司に発言するような事ではないその言葉に弦月姫は遂にキレるが、他でもない咲夜さん本人が弦月姫を止め、普段通りの変わらない態度で虔魔に言い放つ。
「いいわ、虔魔。分かった。そこまで言うならもう何も言わない。好きに戦ってご覧なさい。私達は、一切邪魔しないから。手出しもしない」
「そうですか、分かりました」
虔魔は踵を返して、動きを止めている夢幻姉妹へ向かう。弦月姫は、焦りのあまり、母に詰め寄る。
「お母様!?何を考えているのですか!?どうしてあんな事を!」
「見てなさいって。どうせ通用しないもの」
十六夜母娘がそんな会話をしているうちに、既に虔魔は夢幻姉妹に対しビシッ、バシッと鋭い手刀を喰らわせている。人間なら首が吹っ飛ぶくらいには強い威力だが、やはりそこは悪魔。飛びはしない。
しかしそんなのは虔魔だって分かっている。首を斬り飛ばす為の手刀ではなく、気絶させる為の手刀である事から、流石に気絶くらいはするだろう、と彼は考え、ドヤ顔で時を動かす。
「────そして時は動き出す」
「イタッ。蠅でもぶつかったかしら」
「んっ」
「ッッッッ!?」
気絶させるつもりで放った彼なりに強気の手刀を
「虫がぶつかった」などと言われ、虔魔は思わず、目を剥いて驚きを露わにする。
そんな様子を見て思わず十六夜母娘の2人は口を手で押さえ、笑いを堪えている。
弦月姫は焦りこそしたものの、咲夜さんにはこの結果が分かっていたのだ。幾ら吸血鬼とはいえど、子供の手刀なんかは、世界を作ってしまうレベルの悪魔である夢幻姉妹には通用しないという事が。
「う、う、嘘だ……僕は……妖精だってこれまで……」
「ん?……あー……今のアレ、攻撃だったの?」
「ッ!!」
「だけどゴメンねぇ、私と姉さんくらいになると……あんなのじゃあ、薄皮1枚、傷付かないよ」
「咲夜ぁ?この子、倒していいの?」
「構わないわよ、幻月。虔魔を倒せば、あなた達の勝利。私達は降参するから」
「あっそぉ?んじゃ、遠慮なく♡」
「や、やめ────」
幻月は妊婦でありながら中々鋭く、重い手刀を、虔魔と同じく首筋にブチ当てた。
すると虔魔は、「かはっ」と小さい呻き声だけを上げて、一瞬で気絶してしまった。夢幻姉妹のその恐ろしさを、改めて思い知らされた一戦だった。
本当は「デヴィリエル」にしようと思ったのですが試しにググッてみたらオセロニアってゲームに全く同じ名前のキャラが居るみたいで、断念しました。
故に「デビル+アルミサエル=デビリサエル」に。
「デビエル」もググッて出てきちゃったので。
アルレコ、配信されましたね。
間違っても車の運転中などにプレイできなさそうなゲーム性ですね。やっぱロスワしか勝たん……のか?