※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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家族の絆と純粋な強さ①

 空気が重い。幻月の妊娠発言から、霊夢がずっと重苦しい空気を醸し出している。重力を強める能力なんかを掛けられているかのような重さだ。何なら吸い込む空気すら重くて、吸う度に口から漏れ出すように吐き出してしまう。

 皆の妊娠については逐一霊夢に報告し、隠し子を作らないというのが約束だった。破れば離婚、と。それなのに幻月は既に妊娠数ヶ月という体たらく。ブチギレられて離婚されても、俺は文句言えない。

 

「あの、霊夢……さん?」

 

「………………」

 

「……ごめんなさい」

 

「………………把握してた?してなかった?どっち?」

 

「してなかった」

 

「本当に?さっき、名前の由来を話す時、知ってたような反応だったけど?まさかこの期に及んで嘘をついたり……しないわよね?」

 

「あれは……『もし子供が出来たら』って幻月と色々話してた事があって。だから知ってただけで、実はもう子供が出来てるなんて、思ってなくて……」

 

「ヤッたら暫くは警戒して逐一確認するようにって前に言ったと思うけど」

 

「……ハイ」

 

「色欲に溺れてそれどころじゃありませんでした、なんて言い訳する?」

 

「しない」

 

「じゃあ原因は?原因を追求しなきゃ反省も無意味だからね?」

 

「幻月に逐一確認しなかった事」

 

「そうね、それから?」

 

「……何だかんだで霊夢は許してくれるって、少し、いや、かなり甘えてた事。…………本当に、ごめん。言いつけくらい守れるようになる」

 

 子供達の目の前で、こんなの……本当に情けない。あまりにも情けなさすぎて、霊夢にも子供達にも、申し訳なくなってきてしまう。

 幻月に隠されてたとはいえ、幻月に対してだって申し訳ない。これまでもそう。被害者ぶってたからまたこうやって同じ事の繰り返しになるんだ。

 

「そーね、言っとくけど株はダダ下がりだからね?仕方ないわよね?」

 

「……ああ」

 

「だから、2つ、アンタにしてもらう事があるわ。これを守れたら……許す方向で考えてあげる」

 

「!!なっ、何だよっ?分かった、必ず遂行する!教えろ!いや教えてください!」

 

「まず1つ目。私と『次に言いつけを破ったら離婚する』と契約しなさい」

 

「ッ!?」

 

「悪魔ですもの、アンタにも縛られてもらうわよ?

『契約』という鎖でね♪……分かる?次は無い(・・・・)。そう言ってるのよ。拒否するなら離婚よ、今ここでね」

 

 俺も悪魔の端くれだ。そして、霊夢もそんな俺の眷属だ。この「契約」という言葉は、決して軽々に口にしていい言葉ではない。それなのに、こうして契約と口にするという事は────。

 

「……良いのか?そんな契約、無意味になるぜ?何せ次から言いつけは守るからな」

 

「ふふ、その強気が何年続くかしら」

 

「何年でも保ってみせる」

 

「契約成立ね」

 

「2つ目は?」

 

「2つ目は────」

 

 

 ◆

 

 

「さぁいよいよ1回戦も大詰め!4試合目だよ!」

 

「今回バトルするチームはコチラ!『魔界家族』!チームリーダーは魔界皆の母!母なる神!魔界神、神綺さん!何でもアリなチートパワーは、どこまで発揮されるのかっ!?」

 

「チームメイトは、魔界の長女、夢子さん!!更に妹アリスちゃん!!そして魔界の双子!神と悪魔の混血児!恋夜くん&綺愛羅ちゃん!!合計5人ものチームとなってますっ!!」

 

「そんな魔界一家の相手は、こりゃまた強豪揃い!

『師匠でございます』っ!!そのチームリーダーは武甕槌命様で……ん?あれぇっ!?守矢神社側で参戦してません!?」

 

「ダブルエントリーなら禁止されていないからな。神奈子のチームは負けると予想していたからこそ、事前に登録しておいたのだ」

 

「え、えぇ〜……主催の霊夢さん、どーでしょーこの展開?」

 

「いいんじゃない?」

 

「え、あ、じゃあ、特例という事で……」

 

「フン、当然だ」

 

「き、気を取り直して!そんなリーダーに従うは、この方!突如、孫に全てを任せて頓悟した!久々に戻れば曾孫がデキていた!!斬れない物は無い!?魂魄親子の師匠!魂魄妖忌さん!!」

 

「なお、リストにあるへカーティアさんは、参加を辞退されました!『こんな所で最高神クラスと戦う予定は無いわよん』とのことですっ!」

 

「やっぱり神綺さんはそれくらいの神様なんだね……とんでもないね!」

 

「やだわへカーティアさんってば……。でもこれなら皆で楽しめるわね!」

 

「相手のせいで『楽しむ』なんて言っていられない気がするんだけど……。ねぇ、夢子?」

 

「ともかく相手の剣士は私がお相手致します」

 

「あ、ダメだこりゃ。アリスお姉ちゃんも居ないしお兄ちゃんも居ない……恋夜と綺愛羅もまだ頼りにはできない……あーあ……」

 

「でも皆で力を合わせればきっと勝てるわ!」

 

「……うん……まぁ、そうだね……」

 

 ロリスのテンションは低めらしい。いくら相手が2人だけとはいえその2人の強さはバカでもわかるくらいにとんでもないからだ。

 建御雷に関しては、フランとの肉弾戦を披露したばかり。綺愛羅は肉弾戦に対応こそしているものの到底あのレベルには及ばない。

 

「クックック……。此度の相手は女子供ばかりだな。気合いの方はどうだ?妖忌とやら」

 

「女子供、しかし相手の少女(・・)の方はかなりの手練とお見受けしました。建御雷様はどうされますか」

 

「クク、決まってる。あの刀剣使いはお前の獲物、それ以外は我の獲物だ。へカーティアが消えた分、存分に楽しむが良いぞ。互いの戦闘には、不可侵と定めようではないか」

 

「何と寛大なお心遣い……誠に有難う御座います」

 

「我は遊ぶ。せいぜい死ぬなよ」

 

「問題ありませぬ。 時、雷、斬れます故」

 

「ホォ。剣技は我の器の上位互換というところか。ふむ、なら儂の足を引っ張る事はなさそうだ」

 

「神のちぃむめいと……に相応しい働きをしてご覧に入れましょうぞ」

 

「期待している」

 

 本来はあの2人の他にへカーティアも居たのかと思うと、目眩がしてくる。どう考えたって強すぎるチームだ。相手チームに母さんが居るからどうにかバランスが取れているだけで。

 次の戦いの相手は夢幻姉妹なのだ、どう考えてもアンバランス過ぎる。それこそ、霊夢達のチームやそのレベルでないと釣り合いが取れないだろう。

 

「それでは4試合目!始め!!」

 

 開始と同時に両チームから1人ずつ消える。あの剣士2人が同時に居合を仕掛けたらしかった。既に夢子は両手に剣を創造しており、二刀流での居合を仕掛けていたらしい。妖忌は片手剣……刀だ。まだ、風来丸を使う気は無いらしい。

 

「なんて重い攻撃ッ……」

 

「重いな。小娘にしては……だがの」

 

「ッッ……ハアッ!!」

 

「ガラ空きじゃ」

 

「!!」

 

 峰打ち……なのだろうが、なにぶん妖忌が刀を振る速度が早すぎて普通に夢子を両断しようとしているようにしか見えなくてヒヤヒヤとしてくる。

 しかし夢子が腹で妖忌の刃を受け止めると、少し鈍い金属音が響いた。腹に攻撃され金属音、まさか肉体改造でもしたのだろうかと嫌な汗が噴き出すがそんな心配は無さそうだ。

 

(……?手応えが妙だ)

 

「仕込みナイフが役に立ちましたわ……ッ!」

 

「……効かぬ」

 

 斬られたメイド服の隙間からナイフを取り出し、それを至近距離で複数本投げる。しかしそこは流石妖忌。慌てる事無く、投げられたナイフは全てもう一振りの刀、風来丸にて処理してしまっていた。

 

「『断絶時空』」

 

「か……はッ…………」

 

 ほんの一瞬だけ、景色が歪んだような、もしくは動画をコマ送りをしたような妙な感覚に襲われた。瞬間移動したとも違う、何かが「一瞬で変化した」ような感覚────。

 コンマ数秒前と何かが違う。某バラエティ番組で言う所の、アハ体験の動画後の、変化前後の画像を見せられているかのような……。

 

「変化前後?……まさか!」

 

 その違和感の正体に気が付いたような気がした。もしやと思いモルモーの方を見やると、彼女も俺の視線、考えに気付いたようで小さく頷いて見せた。

 そう、妖忌は斬ったのだ。時間をだ。

 俺は時間魔法においては時間スキップが得意だ。だから気が付けたのかもしれないが、時間スキップされる感覚というのはどうも気持ちが悪いものだと気付かされた。

 自分が戦っている間にやられた事はある。しかしそれをこうして客観視するのは初めての事だった。やはりこういうのは客観より主観の方が数倍良い。

 そしてやはり「時間を斬る」というのは「過程を消し結果のみを残す」というのと同義らしい。彼が残した結果というのは……。

 

「不覚……ッ」

 

 夢子の敗北だった。技を出す間も無く、あくまで一瞬のうちに、やられた。せめて技を出せれば少しくらいなら有効打を与えられたかもしれないのに、その隙さえ与えなかった。

 速度の妖忌と力の夢子……相性が悪すぎたらしい。夢子だって遅くはないのだが、妖忌は速すぎる。

 

「オイオイ妖忌、もう終わらせたのか?残りの時間全て暇になるぞ」

 

「構いませぬ」

 

「そうか。では我はお前で楽しむぞ……神綺よ」

 

「何という事……今の夢子ちゃんは間違いなく魔界人最強だというのに……まさか一瞬で……」

 

「ククッ、魔界人とやらは魔法に特化しすぎている存在だからだろう。近接攻撃に優れている夢子は、かなり特異な存在に違いあるまい。よもや、魔界人最強というのも『近接攻撃の使い手』が少ないからではないだろうな?」

 

「ッ!そんな事は無いわよ!失礼な子ね!!アリスちゃん、レンちゃん、綺愛羅ちゃん!もう、やっておしまい!!」

 

「「は、はいっ!!」」

 

「やああぁぁぁぁっっ!!」

 

 ロリスと恋夜は同時に綺愛羅へ身体強化を施す。

 そしてロリスは魔法の詠唱を始め、恋夜は錬金の能力を行使し、念の為なのか、妖忌を土のドームで包み建御雷と完全に分断する。

 

「『黄の魔法』!!」

 

「フン……クハハッ…………日本最強の雷神である我を相手に雷魔法か?……小娘よ。思い知るがいい。格の違い、そして、決して越えられぬ壁というものを。僅かでも相殺が叶うと思ったら大間違いだぞ!!」

 

「!?」

 

「姉ちゃんッ!!土壁『ソイルアルケミー』!!」

 

「……ン?壁、だと?我の雷を防ぐとは……」

 

「魔界の錬金術師……舐めンなよ!!」

 

「ほォう……イイだろう、最高神と戦う前の前哨戦としてやろう!!」

 

「ッ……!お前を倒したらあの髭ジジイだッ!!絶対許さねえ……夢子姉ちゃんの仇は俺が取る!!」

 

 真正面から建御雷に喧嘩を売る恋夜。しかし彼の足はガクガクと震えている。恋夜は馬鹿じゃない。相手が最強クラスの神だという事は分かっているのだろう。

 それでもやはり、姉を傷付けられた事については怒りが勝るようだ。

 建御雷には悪いが、応援せざるを得ない。

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