「……ン?オイオイ、お前の姉は鬼畜か?長女を回復させているように見えるのだが?そのまま休ませておけばいいものを……治して起こして戦わせるのか?人の心とか無いのか?」
「アリス姉ちゃんは俺より強い回復魔法を扱える。というか、戦わせるとか戦わせないとか関係なく、ダウンした夢子姉ちゃんを回復させるのは当然だ。兄弟姉妹なんだから」
「ふぅむ。くだらんな。強さが全てなのだからな、敗北者は捨ておけばよいのだ。────なぁ、お前もそう思うだろ?小娘」
「ッッ」
恋夜が建御雷の気を引いている隙に綺愛羅が彼に殴り込みをかける作戦だったらしいが、やはり作戦としては稚拙だったのか、建御雷は振り向きざまに裏拳で綺愛羅を吹っ飛ばし、再び恋夜を見やる。
「フン……幾ら神の子とはいえ、戦闘経験が浅ければこんなモノという事か。素手だ、痛くもなかろう」
「舐めんなよ!ブッ潰してやる!!」
「そういうキレ方は兄に似たのだな」
先程と同じように巨大で分厚い土壁を出現させる恋夜。しかし今回はその数が尋常ではない。まるでマトリョーシカのように、外側へ向かうにつれて、一回り、もう一回りと大きくなっていく。何重もの壁で様々な方向から建御雷を押し潰すようだ。
「『雷々拳』」
四肢に雷を纏う。ズゴゴゴ……と重い音と一緒に、壁が迫る。けれども、当然ながらそのまま潰されるような建御雷ではない。
迫り来る壁を殴っては壊し、殴っては壊す。もし振り向くのが少し遅れれば雷を飛ばして粉砕して、徹底的に壁と己の距離をある程度一定に保つ。
そして、恋夜は少なからず理解した。さっき彼の雷を壁で防げたのは、彼が皆に対しての雷攻撃では手加減していたからなのだ、と。
「〜〜〜〜〜〜〜ッ……クソッ!俺達は……アイツに手加減されてたってのかよ……!!」
「何を当たり前の事を。手加減せねば死ぬぞ、貴様如き小童。我は器と仲良くしたいのだよ。わざわざ恨まれるような事はせぬ。当然の事だ」
「ッ……じゃあ、なんだよ……兄ちゃんが怒らなきゃ俺らの事なんか殺してもいいってのかよっ!?」
「ルール上殺せないだけでな。特別な者以外に神が気を掛けると思うな。我にとっての『特別な者』は器であるエスカルゴ・スカーレットのみ。それ以外など、そんなのどうでもよい。生きるなり死ぬなり勝手にせよ。我には、なんら関係の無いことだ」
恋夜は、魔界神の子であるという事に強い自負がある。そんな自分、いや自分達が手加減されていたという事実が、受け入れ難いのだろう。
そんな恋夜を分からせるかのように、建御雷は、どこかわざとらしさを含めているように聞こえた。
《何も言うなよ、器。なまじ母が神だからなのか、大多数の神というものを履き違えている。だから、現実を見せてやった。恨むなよ?》
《分かってるよ》
《物分りの良い器で助かる。じゃあこのまま倒すが文句は無いな?》
《まぁ怪我の無い程度にしてくれよ。弟でもあり、息子でもあるんだ》
《……お前、本当に滅茶苦茶なヤツだな》
呆れたような声が本当に胸に刺さる。が、やはり建御雷は優しいヤツだ。通常のパワーでも綺愛羅を一撃で気絶まで追い込めただろうに、綺愛羅はまだ普通に立てている。フラついてはいるが……身体強化だってしているし、あれなら許容範囲内だろう。
「クククク……魔界の錬金術師……お前の攻撃はその押し潰し一辺倒なのか?」
「いっぺ……なんだって?」
「いや、いい。子供だものな」
「ッ!バカにしてンじゃ……」
「はああぁぁぁぁっっ!!」
「「ッッ!?」」
凄まじい雄叫びと共に、綺愛羅が建御雷の背中にヘッドバットを喰らわせる。建御雷が壊した恋夜の土壁の破片を空中で足場にしたらしい。
緋月がよく竹林で竹を足場に飛び回っているが、空中に足場を設定するというのは、かなり頭が良い立ち回り方だと言える。トンボでも無いのだから、空中では急激な方向転換は難しい。だから空中では足場を利用した方が機敏に動ける。綺愛羅は本能でそれを理解しているらしい。
「クッ……クハハッ、ハハハハッ!何だ今のは、凄い動きをしたなァ!!直前に目にした軌道では上から仕掛けてくる気配だったのにも関わらず、その実、真後ろからとは!」
(っ!やっぱり、上から来るって読んでたんだ……。何となくそんな感じがしたから軌道修正したけど、それをしてなかったら…………バチッときてたよね)
「────だが、残念。お前達はもう、ここまでだ。爆撃『失われた
「きゃっ……」
「綺愛……ぎゃああっ!」
俺の
思わず席を立ち上がるも、母さんが、しっかりと結界で2人を守っていた。
「……神綺、様……」
「お母さん……っ」
「ごめんなさい、詠唱が間に合わなくって……2人を助けるのが間に合わなかったわ……。アリスちゃん、夢子ちゃん。レンちゃんと綺愛羅ちゃんを助けて」
「うんっ!!」
「はいっ!!」
「おやおや……おやおやおやおやおやおやぁ…………?とうとう真打の登場か、神綺ィ……!!」
「……カルちゃんの守護神であるあなたには、本来、敬意を払わなくてはならないけれど……」
「フン、構わんよ。今は勝負をしにきているのだ」
「そう、今は勝負だものね」
笑顔が消えた母さんは、怖い。普段怒らない人が怒るととんでもないと言う俗説があるが、本当だ。母さんは放任主義だし怒らないタイプの親なのだがもしキレると魔界神の力を奮いまくる。恐ろしい。
「魔界神『原始の焔』」
とてつもない強さ、密度、量の魔力が、黒紫色の焔となり母さんから溢れ出す。大小様々な大きさのその弾幕は弱いがホーミング性を備えており、全て等しく建御雷を襲い始める。
「凄まじい炎だ……!我が父、火之迦具土神は母親に大火傷を負わせた故に父に斬り殺されたと聞くが、神綺、お前のその炎は、我が父をも超えているやもしれんな……!!この熱、触れれば焼肉になるぞ?」
「なら魔獣の餌にしてしまいましょう。氷雪世界の手前には凶暴な魔獣がウヨウヨしているの♡」
「フン……神の肉を畜生に喰わせようとはな、唯一神とやらは随分と残忍な考えをお持ちのようだ」
「唯一神……嗚呼、あなたは八百万の神なのよね」
「そうだが?」
「カルちゃんから聞いた事があるわ。日本の神は、信仰がある限りは復活も可能だとか……?しかも分霊とかいう本人と変わりない分身も出せるとか。凄く便利ねぇ。そんなあなたなら、大丈夫……。きっと、無事に生きて帰ってこられるわ。────と言っても何回死ぬか知らないけど。創造神『異世界送り』」
「!?」
母さんと建御雷の間にブラックホールが現れたと思うと、彼のみを強烈な重力にて引き寄せ始めた。俺のサンダーウォールのように壁を出してブラックホールを囲むが、瞬時に吸い込まれてしまい、すぐ消え失せる。
遂には、妖忌を囲んでいる恋夜の土壁のドームに雷武器シリーズの雷槍を刺して耐えようとするが、母さんの本気の異世界送りの前には建御雷の抵抗も虚しく、あっという間に吸い込まれてしまった。
◆
「────やれやれだな。何だここは……暗くて何にも見えんぞ。目玉を潰されたのか?」
母さんにより異世界へと送られた彼は、真っ暗な平原に立っていた。目に入る限りの全てが真っ黒に塗り潰されており、完全に何も見えない。ただ足が地についている事と、身体の感覚はあるという事。それだけが確実だった。
建御雷は冷静に自己分析した。意識して瞼を開き眼球に触れてみる。それにより瞼の開閉ができる事だったり眼球が潰されていない事を指で確認した。
「いや、視覚そのものが奪われたか。嗅覚は、今は別に無くても構わんが……ん?」
突如、彼の視界に光が差す。地平線の彼方から、真っ白な光を放つ太陽が顔を出した。これまで暗く何も見えなかったのは、光源が何も無いせいで物が視認できなかったからだった。
「なん……だと……ッ!?」
太陽から弾幕が放たれる。上空も左右も、視界に入る全てが弾幕だらけで身動きすらままならない。建御雷は倒すべき者もここには居ないということでひたすら耐久するが、やがてそれにも飽き、弾幕の速度に合わせて後退を始めた。
「ふむ……魔界を模した集落……なのか?だがアレは偽物だな。弾幕が透過しているのを見るに、アレも弾幕なのだな。……ム、曇り?……いや待てッ!!」
太陽光が弾幕である事から、上空に現れた雨雲、更には降り注ぐ雨も弾幕なのではと推測。もう身を隠せる場所は無い。
「……クソッ。こんなの回避不能ではないか……ッ」
◆
「ハァッ、ハァッ……はぁ、んぐっ……ハァッ……」
「おかえり。ボロボロね」
「お陰様でな……。地獄を見た気がしたぞ……!!」
瞬間移動のように戻ってきた建御雷は、これまで見た事が無いくらいにボロボロになっていた。一体何をどうしたら
「まだ戦う?私は構わないけれど」
「……」
ステージの壁にもたれ掛かると、彼はそのまま、死んだように倒れた。いつも、いつでも、あれだけ嫌味なくらい堂々としていて、実際にとてつもない強さを持つ……あの建御雷が、負けた。
「ククッ……残念、だな……我は……もう疲れたな……。後は、頼んだ…………妖、忌…………」
「御意」
土ドームから妖忌の重い声が響いたかと思うと、次の瞬間ドームに亀裂が走った。すると、腕利きの剣士に斬られた巻藁のようにゆっくり崩れ落ちた。
「武甕槌命様は日本最強の剣の神であらせられる。そのような神に……この私の剣が認められた…………。この悦び、この感謝、如何様に神に返すべきか……。勝利を献上する、唯一つのみである」
「……掛かってきなさい」
妖忌の姿が消えた。時間が飛んだような感覚は、今回は無かった。モルモーも俺と同じような反応をしている。気が付けば妖忌は母さんの背後にいた。敵に囲まれているかのように、背中合わせで。
「ッ……」
「魔界の神よ。不敬な私をお許し下され」
地面に座り込む。とうに倒れる寸前のダメージを受けているが、どうにかこうにか気力だけで耐えているようだ。しかしそれも長くは続かず、倒れた。
ロリスと夢子を守っていた結界も壊れ、2人は、母さんの様子を見に、
「お母さんっ!」
「神綺様ッ!!……お嬢様は神綺様へ治癒魔法を!!私は……彼を倒しますッ!!」
「分かっ……」
「無駄じゃ」
また、峰打ちなのだろうか。2人を一刀のもとに切り伏せ、瞬殺してしまった。「もう、妖忌1人でいいんじゃないかな」……そんな言葉が出そうだ。
「これで良かったのですな。……武甕槌命様」
原作でも妖夢は瞬間的になら文より速いようです。それを元にすると、そんな妖夢の師匠である妖忌はもっと速いんでしょうね。
4人のサイキョウ ──┐
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守矢神社を信仰せよ ─┘ │
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マジカル・ガールズ ─┐ │ │
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最速最強勁牙組────┘ │
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Top of the World───┐ │
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夢幻の悪魔たち────┘ │ │
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魔界一家────────┐ │
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師匠でございます ──┘
松井優征先生の「魔人探偵脳噛ネウロ」、読了。
個人的には暗殺教室より好き。泣ける箇所が多々。推しは葛西善二郎ですね。