「壮絶だった1回戦を終えて、とうとう2回戦目に突入するわ!記念すべき最初のバトルはこちら!」
「『4人のサイキョウ』vs『最速最強勁牙組』!!どちらも攻守万能……というよりは攻撃に優れているチームだけど、人数は4人vs2人ッ!!4人の方が有利に見えるが、それをひっくり返しかねないのが
『速度』という武器だッ!!それに優れた親子は、その超スピードで4人を翻弄できるのかッ!?」
結局、魔界神である母さんも妖忌の超人的なその速度には手も足も出なかった。対策しようと思えば出来たのだろうとは思うが、やらないからには何か理由があったんだろう。
「問題は早鬼なのよねー。あの速度とパワー、どう対処する?霊夢、何か案は?」
「無いわね。ただ、防御に回ったら負ける……とだけ言っておくわ。駆翔くんのあの能力……恐らく結界も破壊可能よ。問答無用でね。魔理沙のマスパを力で捻じ曲げるなんて、相当よ?」
「……仕方ないわ、一瞬で終わらせましょ。この私の強さを観衆に見せ付けるのには、時間を掛けて倒すよりも一瞬で倒した方が良さそうだし?」
「だけど、4人で2人を倒すとなると、2人余るか2人掛かりで1人を倒す事になるよ?大丈夫なの?倫理的にというか、体裁的にさ」
「問題無いでしょ。それか、今回フランは休む?」
「というかフランちゃんには温存してて貰った方がいいでしょ、決勝は間違いなく激戦になるわよ?」
「私もそう思う。決勝に来るのは恐らく、さっきの武甕槌命と魂魄妖忌さんのコンビ。武甕槌命のあの攻撃に対応できるのはフランくらい。ここは、温存しておいた方がいいと思うわ」
「……皆がそう言うなら、分かった。今回は休むね」
「じゃ決まりね。フランは温存、霊夢は後方支援。鈴仙と私であの親子を倒す!」
「はーい」
「分かったわ」
「了解!」
驪駒親子の方も何やら作戦会議をしているように見えたが、あっちは談笑しているだけにも見える。彼らはどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみだ。
「それでは2回戦1試合目!始め!!」
やはり驪駒親子は同時に動く。駆翔は霊夢を狙い蹴り技を仕掛ける。ライダーキックのような格好で蹴りを仕掛けるその様はヒーローのよう。
早鬼はと言うと、徒手格闘を鈴仙に仕掛けているらしい。しかしそこは元軍人である鈴仙、弾幕すら展開せず互角以上に渡り合っている。
相手の力を利用して受け流したりするその様は、とある格闘漫画でしか知らないが合気のようなものだろうか。鈴仙らしい、パワープレイではないその戦い方……見惚れてしまう。
「だりゃあああああぁぁぁっっ!!」
「夢符『二重結界』……クッ」
「霊夢ちゃん!!」
霊夢の読み通り、駆翔は結界すらも無条件で踏み壊せるらしく、俺も斬るのに苦労した霊夢の結界を触れるだけで即破壊してしまっていた。モルモーは慌てて時を止め、霊夢、その背後のフランを救出。
思ったよりも駆翔の《踏み付ける程度の能力》が厄介だなと、モルモーも下唇を噛んでいた。
「やっぱダメね、足で触れられたらすぐ壊される……手加減はしてないんだけどね」
「霊夢ちゃんの結界を蹴り壊すとかヤバすぎでしょ幾らなんでもっ!……じゃあ仕方ないわね、ここは、パワー勝負じゃあなくって……搦手で倒すしかない!磁符『スィデロ・アナミクティル』!!」
「な……ッ!?」
駆翔を中心に竜巻が吹き荒れる。土を巻き上げ、中の砂鉄のみを抽出してナイフを生成する。駆翔は蹴り技で次々に壊していくが、やはり1本や2本の足では数を捌ききれないようで、グサグサと何本か受けてしまった。
「んぎっ……く、へへ、この程度は……んぎゃっ!?う、動けね……あ、足が……ッ!?」
「飛べなくて……歩けなくて不思議ぃ?」
「……!」
「私、時間魔法だけじゃなくて磁力魔法を極めてるからさ?誰かに磁力を付与するのもヨユーなの♡」
「なっ……!?」
「『地球は大きな磁石』って言葉、知ってる?今、駆翔くんには超ぉ〜強力な磁力を付与してるの♡」
「そ、そんな────なんてなっ♪」
「ッ……!?」
足が埋まったかのように動けないでいた駆翔は、ニヤリと笑ったかと思うと難なくジャンプしてみせ上空からモルモーを襲い始めた。
「なっ!?何でよ、何で動けるのよ!?」
「忘れたかァ!?俺の《踏み付ける程度の能力》は力を踏み付けるッ!磁力なんつーのも……踏み付けの対象なんだ!!」
「っっ……親子揃って、このモルモーちゃんの魔法を無効化するだなんてこんなの……こんなの屈辱よ……ふざけるんじゃ………………なんてねっ♡」
「?……え……うぇ…………はれれ……」
ニマァ〜ッと嫌らしい笑顔を覗かせるモルモー。直後、駆翔は力が抜けたように地面に墜落。どうも様子がおかしい。ピクピクと身体中を痙攣させて、更には肩を大きく上下させ……過呼吸に陥っている。
「鉄欠乏性貧血。さっきのナイフ攻撃で足にできた傷口から、鉄分のみガッポリ抜いてやったわ♡」
「!?」
「クラクラするでしょ。エスカルゴくんの例から、妖怪の活動に酸素が不必要である事も確認しているけれど、血と一緒に魔力も流れ出してるし……活動も鈍くなっちゃうわよねー♡」
「なん……らと……ぉ…………」
「駆翔ォォオオオーーーーーーッッ!!!」
早鬼が雄叫びを上げる。鈴仙を突き飛ばし、更に弾幕で牽制しながら息子の救助に入ろうとするが、それを見逃す霊夢ではない。
「大丈夫よ早鬼、駆翔くんの怪我はすぐ私の旦那がどうにかするから。一先ず、大人しく負けなさい。
『夢想天生』」
「ちょっとくらい待ってくれてもっっ…………」
早鬼の制止も聞かず、霊夢は容赦の無い攻撃で、早鬼を吹っ飛ばしてしまった。「夢想天生」はただ回避しただけでは決して回避しきれない攻撃。普段より無防備だった早鬼に回避できるはずがない。
人数の差、それとも能力の相性のせいか、やはり勝ったのはあの4人だった。
◆
「……お、お疲れ様」
「はいどうも。次はあの双子と武甕槌命、妖忌ペアだけど、エスカルゴはどっちが勝つと思う?」
「そりゃ後者だな、夢幻姉妹は負ける。夢幻姉妹も本気を出さないだろうしな。あの双子もスピードはえげつないんだけど……無理だ、妖忌のスピードには勝てねえよ」
「吸血鬼以上だっけ?」
「そーそー。俺だって、能力をフル活用してやっと勝てるかどうかくらいの相手だぜ。スペカだったら無効化できるがただの物理攻撃は無効化できない。それがあの夢幻姉妹の長所であり、短所なんだよ」
「成程ね。武甕槌命への対策はできても、妖忌へは対策のしようがないと。ふぅん……じゃあ私達4人と武甕槌命、妖忌のチームはどっちが勝つと思う?」
「霊夢達4人が勝つだろ……と言いたいところだが、妖忌のあの殺人的スピードを攻略できるか?それで全てが決まると思うんだけど」
「対策が無いワケではないわ」
「マジか」
「でもまぁ、とりあえず夢幻姉妹の戦いぶりを見て結論を出そうと思……」
「えぇー、ご来場の皆様にご連絡です!たった今、進行に入った情報によりますと、次の2試合目にて試合する予定だった『夢幻の悪魔たち』は棄権するそうです!」
「棄権理由は『敗北確定な勝負はしない主義なの』とのことです!……そうは思えないくらい、こちらも強いけど……そう思わせてしまえるくらいの気迫が、山の冥王にはあるわよね……っ!」
「ま、まぁ、片方は妊婦さんだからね仕方ないね!というワケで、『師匠でございます』、不戦勝にて決勝進出が決定致しました!」
「それでは続きまして、とうとう決勝を始めます!
『4人のサイキョウ』vs『師匠でございます』!!両チーム、ステージへどうぞ〜〜〜ッッ!!!」
こちらを振り向きニッコリと笑った霊夢は、額にうっすらと青筋を浮かべて、握り潰さんばかりに、ミシミシ音を立てる程お祓い棒を握り締めていた。