外に出て距離を取る3人。
椛はヒビキのそばについている。
ヒビキ「兄貴の強さは妖怪の山でも有名だ。本気でいかせてもらうぜ」
カルゴ「あぁ、本気で来い。じゃなきゃ折角の兄弟対決が楽しめないからな」
ヒビキ「ケッ、舐めてやがるぜ」
カルゴ「言っとくが、俺はこの前、星熊 勇儀さんを倒したからな」
椛「えっ…?」
手で口を抑え、目を見開く椛。
ヒビキ「う、嘘だろ? 兄貴が? あ、有り得ねぇ」
やっぱ鬼のことは知ってるんだな。
カルゴ「あん時は大変だったぜ?腕が吹っ飛ばされたんだからな。骨もかなり折れたし」
地底でのことを思い出す。
ヒビキ「へ…へぇ…」
カルゴ「だから、本気で来い。…殺す気でな」
あんな重そうな太刀を、俺が見切れないほどに早く振るう何て事は無理だろう。
ヒビキ「へへ…へ、わかったよ」
引き攣った顔のヒビキ。
そして太刀を構える白狼天狗2人。
カルゴ「そうだ。ルールはどうする?」
ヒビキ「あー…そうか。全く考えて無かったわ。兄貴が決めてくれよ」
カルゴ「そうか、わかった。……お前、弾幕出せるか?」
ヒビキ「まだ出来ない」
なん…だと…!?
いや、そんなすぐには出来ないか。
俺もそうだったし、言わないでおこう。
カルゴ「剣術も良いがそっちも練習しとけよ?」
ヒビキ「わかった」
あれ?案外素直に頷くもんだな。
あいつの事だから、「ケッ…わぁったよ、うっせぇなぁ」とか言うと思ってたが。
カルゴ「ルールは…そうだな、戦闘不能にさせた方が勝ち…ってのはどうだ」
ヒビキ「一向に構わn…」
椛「しかしそれではっ…エスカルゴさんがかなり有利では!?」
カルゴ「どこら辺が?」
椛「エスカルゴさんなら、たとえ四肢を切り落とされても即再生出来ます。しかし私たちは出来ません!これでは不平等です!」
カルゴ「不平等も何も、勝負を仕掛けてきたのはそっちなんだが…。そうだな、じゃあこうしよう」
椛&ヒビキ「?」
カルゴ「俺の勝利条件は、お前ら“2人を戦闘不能にする”こと。そしてお前らの勝利条件は、俺の首、腕、脚…どれか1つでも切り落とすこと。…いや、“身体のどこかから出血させたら”で良い」
ヒビキ「へっ、それだけとか楽勝過g…」
椛「ダメです!エスカルゴさんが本気を出せば、私たちなんて一瞬で戦闘不能になります!」
哨戒天狗じゃないんだから、そこまで弱く無いだろうに…。ましてや、俺の討伐を命じられるくらいなんだからさ。
カルゴ「…ならどうするんだ?」
椛「…エスカルゴさんだけ、スペルカードの枚数に制限をつけるというのはいかがでしょう?」
ほう。面白そうだ。
カルゴ「わかった。何枚にする?」
ヒビキ「0枚だ0枚、0枚で確定だ!!」
カルゴ「お前に聞いてない」
ヒビキ「ケッ…」
椛「…私が決めて良いんですか?」
カルゴ「良いよ、早く決めな」
ヒビキ「0枚って言え!」ボソッ
椛「なら…3枚で」
ヒビキ「んなっ…!?」ガビーン
カルゴ「3枚な、了解した」
少ないな。ならアレにしよう。
椛「えっ…良いんですか?」
カルゴ「良いよ。3枚だろ?」
椛「はあ…(余裕の表れかしら…)」
ヒビキ「俺らはそんな甘くねぇぞ!?」
カルゴ「だからどうした」
ヒビキ「たたっ斬る!おるぁぁぁあ!」
ヒビキが斬りかかってきた。
カルゴ「…やれやれ。ただ突っ込んでくるだけとは…なんとも華が無いな」
スペルカード戦には美しさもどーたらこーたら…と、レミリアから聞いている。
美しさも追求するということなんだろう。
そう考えると合点が行く。
みんなのスペルカードはとても綺麗なんだ。
魔理沙のマスパ、フランのスターボウブレイク、レミリアのグングニル…こんなの一例にすぎないが、どれもこれも、とても美しい。
…弾幕すら出せないヒビキには関係無いか。
ヒビキ「うおおおおおお!!」
ヒビキが目の前に迫っているのに気が付く。
おっと、もう目の前か。…足が速くなったな。
ヒビキ「フンッ!」
カルゴ「雷装備『勇者の纏い』」
バチバチバチ…
ヒビキ「うわわっ!…っとぉ、危ねぇ危ねぇ」
太刀を振り下ろすと同時に発動。頭から真っ二つに斬ろうとしていたヒビキは攻撃を中断し、踏み止まる。
ヒビキ「鎧に盾に剣かよ…。へっ、勇者かよ」
カルゴ「…そう言ったはずだが?」
ヒビキ「………」ニヤッ
何を笑っている?
椛「狗符『レイビーズバイト』!!」
背後から椛の声が。
カルゴ「───はっ!」
獣の…口…?
後ろを振り返ると、口をモチーフにしたと思われる、黄色と赤の弾幕が現れているのが目に入る。
まずい、挟み撃ちに───。
ジュウッ…ジュジュウ…
椛&ヒビキ「なっ…!?消えた!?」
カルゴ「ふぅ、助かったぜ」
鎧のおかげで助かった。
やはり霊夢ほどの攻撃力は無いな。
椛「くっ…!山窩『エクスペリーズカナン』!」
さらにスペルカードを発動する椛。
カルゴ「!? うわわっ!? 避けにくっ!?」
なにやらグルグル周りながら…追いかけてくるようにも感じられる。
なんだこれ!?追尾型!?
俺にも出来ないのに…!いや、やってやる!!
そして…美しく…か。
…やれやれ、ここまで考えたのは初めてかな。
避けながら刀を弓に変形させ、盾を解除する。
そして、心を落ち着ける。
強く…そう、強くイメージするんだ。
俺なら出来る。……よし。
カルゴ「『天昇雷龍』!!」
空中にいる椛目掛け矢を放つ。
すると、矢はイメージ通りに矢が龍の形になり、弾幕を破壊しながら椛を追尾する。
椛「くっ…追ってくる…!?」
椛はスペルを中断し、逃げる。
そして龍は大きく口を開け……
椛「きゃああああ!」
ヒビキ「椛!!」
椛を助けようと、ヒビキが椛を追いかける。
ガブッ…ズバァッ!
椛「────ッ!!」
ドサッ…
龍に噛まれ、貫かれた椛は力なく落下する。
ヒビキ「椛ぃぃぃ!!…おい、しっかりしろ!おい!」
椛「………」
ヒビキが駆け寄り、椛を抱き起こして揺するものの、椛からの反応は無い。
カルゴ「気絶させただけだ、怪我は無い」
ヒビキ「……そうかよ。気遣い感謝するぜ」
フラッと立ち上がったヒビキ。
何やらいつもと気配が違うような…。
この感じ…怒気?
カルゴ「戦闘不能にするのが条件だからな。それに、殺すなんて物騒な事はしないさ」
ヒビキ「…潰す!!!」
太刀を捨て、地面を蹴り、飛び込んでくる。
────速い。
ヒビキ「うるぁぁ!」
ビュオッ
高速で右ストレート繰り出してくるが───
パシッ…ピリピリッ
ヒビキ「!?」
難なく受け止められ、驚きの表情を浮かべる。
カルゴ「遅い。お前のパンチなんか、そこらの幼女にすら劣る」
そこらの幼女…というのは、もちろんフランとレミリアの事である。
カルゴ「フンッ!」
ボグッ…メリメリッ…
ヒビキ「がはっ…」
4mほど舞い上がるヒビキの肢体。
ドサッ…
カルゴ「おい、まさかそんなんで俺のこと倒そうとしてたのか?」
ヒビキ「…ゲホッゲホッ…ゲホッ…」
カルゴ「白狼天狗最強…なんだよな? そんなだから鴉天狗や大天狗に馬鹿にされるんじゃねぇのかよ?」
以前レミリアから、妖怪の山の組織図について少し聞いたことがある。白狼天狗は鴉天狗や大天狗など、位の高い天狗に馬鹿にされてる…見下されてる、と。
鴉天狗が多く居るのは知ってたが白狼天狗も多く居たとは…。まぁ、2人なんて事は無いだろうとうすうす勘づいては居たのだが確信が持てなかった。
それがさっき確信に変わったのだ。
ヒビキ「うる…せぇよ…!ゲホッ…2度と椛を傷付けさせねぇ…!」
ヨロヨロと立ち上がる。
やれやれ。
任務の事なんかスッカリ忘れてんじゃねぇか。
恋人を傷付けられたら怒る。それはわかる。
だが、痺れさせただけで内側も外側も傷付けてはいないのだが…。気絶させられたってだけだろ。
いや。俺もフランがこれやられたら怒るな。
ヒビキ「はぁっ!!」
飛び蹴り…喰らってみるか。
ゴッ
カルゴ「ぐっ…」
鎧越しとはいえ、そこそこの衝撃だな。
アザになるかもな。
ヒビキ「はぁぁぁ!!」
いつの間に太刀を拾ったのか、斬りかかってくるヒビキ。
カルゴ「ふんっ!」
ガキィィィン………ザクッ
弓を刀に変形させ、ヒビキの太刀を振り払う。
振り払われた太刀は地面に突き刺さる。
ヒビキ「あっ…!」
背中を見せ、武器を取りに行く。
カルゴ「敵に背中を見せるとは…愚か者め」
そう呟き、刀を構える。
カルゴ「抜刀居合壱式……『神罰虎閃』」
ダッ!
地面を蹴り飛び出す。
ヒビキ「──っ!」
反応した時には時すでに遅し…音速で切りつけられていた。
ヒビキ「ぐぁぁっ…!…くっ……そ……!」
ドサッとうつ伏せに倒れ込む。
カルゴ「まだ動けるか」
こいつ…意外としぶといな。
ヒビキ「まだ終わりじゃねぇぞ…兄貴ィ…!」
太刀を地面に突き刺し立ち上がる。
息は上がり、足は震えていて…とても戦える状態では無い。
カルゴ「ゆっくり休め。上司に
何にしようか…?
カルゴ「一閃 ────」
優しく囁き、2枚目のスペルカードを発動させた。
エスカルゴがヒビキにガンガン言えるのは兄弟だから。兄弟なら普通は言い難い事も言えるしね。
(椛を初めとする、白狼天狗全般を馬鹿にすることなので椛が気絶しているうちに煽った。)