※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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閑章:劇場版吸血鬼人間の幻想生活 極道の天馬(ペガサス)
若頭だぞ、コラァッ!


「────極彩組及び傘下達との抗争の戦果を認め、ここに勁牙組若頭見習い・驪駒駆翔を正式に勁牙組若頭とする!盃を受けろ!」

 

「へいっ!!」

 

「「「おめでとうございやす!坊ちゃん!!」」」

 

 ある日、畜生界某所の勁牙組本拠地では、祝いの席が設けられていた。数ヶ月前、幻想郷で起こった極彩組による侵攻を、妖怪の山勢力と組んで止めた抗争の戦果を認め、これまで「自称若頭」、「自称次期組長」だった駆翔を、正式にその座に着かせることとなったのだ。

 

「ヘヘッ……偶には抗争も悪かねェな!」

 

「ちょ、坊ちゃんっ!」

 

「ハハッ、たまには暴れたいものな!だがな駆翔、もう畜生界は平和になったんだ。勁剛霊三者同盟が統一してしまったからな。饕餮が労せず我々と同じステージに立っているのが気に食わんがな……。まぁ奴とはいずれぶつかる事になるだろう。それは殆ど確定事項だし、楽しみに待っておくといい」

 

 早鬼は脳筋だ。しかしバカではない。現在はまだ良好な関係を保っている霊長園、剛欲同盟。しかしいつの日かこの同盟関係が崩れるのは、誰の目から見ても明らかだった。

 それは、それぞれの組織の長がこのままの状態を受け入れたままで居られるような性格をしていないからだ。それは、各組織の末端の者達ですらも薄々感じ取っていた。

 

「さーて……若頭としての初めての仕事だァ駆翔……気張ってこいよ!!」

 

「え?仕事?何?」

 

「挨拶巡りに決まってるだろーが!1人でこなして来いよ!お供は連れてくな!カタギをビビらせる!期限は今日中!日付が変わって帰ってきたら勘当と破門だからそのつもりでな!」

 

「ウッソだろ、もう昼じゃねーか!あと半日!?」

 

「さぁ行け!幻想郷へ!有力者共に挨拶巡りだ!」

 

「チッ……とんでもねー無茶振りしてくれるよウチの組長は……ッ!!」

 

 駆翔は即、自身の出せる最高速度で飛び出した。地獄を越え、三途の川を越え、まず目指したのは、妖怪の山勢力の長、天魔の屋敷。

 エスカルゴのみならずその家族も顔パス同然だ。もう門兵に止められる事もなく、スムーズに通され天魔と対面する。

 

「おやおや勁牙組の若いの。久しぶりだの、元気にしておったか?」

 

「勿論。急な訪問、失礼した。この度、俺は正式に若頭になったんだ。勁牙組次期組長が確定したからその挨拶に来た」

 

「ほう……!極彩組とやらの襲撃の際は、勁牙組には世話になったな。改めて、山を代表して礼を言う。ありがとう、助かったよ」

 

「なに、奴等は俺ら勁牙組にとっても敵だったから潰しただけだ、気にする必要は無いさ」

 

「……幼いながらに堂々としとるのぅ。長の器じゃ」

 

「だと、いいんだけどな」

 

「主は見所がある。今後とも我ら妖怪の山勢力とは仲良くしていこうではないか」

 

「勁牙組(俺達)だけじゃない。父様共々、宜しく頼む」

 

「!……あぁ、そうじゃな」

 

 エスカルゴのバックには勁牙組、そして勁牙組のバックにはエスカルゴが。お互いに持ちつ持たれつという関係性であるこの2つの勢力は、どちらも、この妖怪の山勢力を懇意にしている。やはり幻想郷最大勢力というのは魅力的でしかないのだ。尤も、エスカルゴはそういう方向では見ていないが。

 

「さて次は……守矢神社かな。その次は紅魔館、博麗神社、永遠亭……まー、そんなモンだろ。神霊廟には母様が世話になってたらしいから向かうとしても、命蓮寺は別にいいよな?父様とも関わりは浅いし」

 

 まずは同じく妖怪の山にある守矢神社へ。そこで祭神の八坂神奈子に挨拶を済ませた。ただ普段から

「エスカルゴの子供」として接されているので早苗からの母ならではの絡みに辟易したのは秘密だ。

 建御雷は何か思う所があったのか、屋根の上で、駆翔と神奈子のやり取りを聞いていた。

 

「フーッ、お次は紅魔館だ……俺の第二の実家……。ほんの少し前まで住んでたはずなのに、なんかもうかなり前の事みてーに感じるなァ……」

 

 駆翔は紅魔館で生まれ育った。だから彼にとって紅魔館は実家のようなもの。どの兄弟姉妹より深く付き合いのある勢力、それが紅魔館だった。

 だから挨拶には早めに行きたかった。しかし守矢神社を出発する際、建御雷に呼び止められた駆翔は少々不機嫌になってしまう。

 

「オイ駆翔、ちょっと待て」

 

「あー?何だよ中身オッサン」

 

「んなっ」

 

「急いでんだ。用なら手短に頼むぜ」

 

「……お前、いやお前らは、この山を戦火に巻き込むつもりではないだろうな?」

 

「ねーな。極彩組の時もそうだがアイツらが勝手に山を利用しただけ。俺らはそれを止める役回りだ。俺達が巻き込みやしねーよ。ましてや組の関係者が山に居るワケでもねーし。俺ら勁牙組はカタギには手も足も出さねェヤクザだ。山に挨拶に来たのも、天魔には極彩組の時に世話になったからだし、守矢神社は天魔との繋がりがある上に、樹理愛の姉貴が居るから来ただけだ。……俺らは『繋がり』を大事にしてんだ」

 

「何だお前……器から聞いてた様子と全然違うぞ」

 

「器?……あぁ父様か。父様は……その……子供らしい子供が好きっぽいから……父様の前では、子供っぽく振る舞うようにしてんだ。……嫌われたくねーしさ」

 

「そうやって表を取り繕う方が、逆に奴を傷付けるかもしれんぞ?」

 

「……ッ!」

 

「ククッ、まぁ、そこら辺は好きにするがいいさ。お前をそこまで大人な考えにさせるのは……やはり、

『責任感』というものなのかもしれんな」

 

「責任感……」

 

「組を背負って立つ男……お前はそう自負している。だからこそ我の問いにもハッキリ答えられるのだ。ヤクザはその全てが悪とまでは思ってなかったが……お前らは、正義寄りなのかもしれんな」

 

「やめてくれ。ヤクザは正義か悪かだなんて二極化できねーし、ましてや一般人から見りゃ問答無用で悪だよ。普通じゃない……からな」

 

「普通ではない、即ち異端であり悪……そこまで理解しているのに、何故そこに身を置く?我は、それが知りたい。まだ子供だぞ、お前は」

 

「そんなの決まってる。俺が驪駒駆翔だからだ」

 

 

 ◆

 

 

「くぁ〜ッ……思い出す度に顔が熱くなる……ちっとクサ過ぎたかあのセリフ……うぅ……くそー……///」

 

 守矢神社を出た駆翔は、生まれ育った紅魔館へ。そこでは相変わらず、門番の美鈴がたったの1人で太極拳を嗜んでいた。型の練習だろうか、駆翔では見ただけで詳細などは分からないが、彼女が相当の強さを持つのは駆翔でも読み取れた。

 

「どーも美鈴さん」

 

「久しぶりですね、駆翔くん!今日はどうされたんですか?」

 

「アポ無しですまない。今日は勁牙組の駆翔として(・・・・・・・・・)紅魔館に用があって来た。レミリアさん、居る?」

 

「ッ……は、はいっ!少々お待ちを!!」

 

 普段のおちゃらけた様子とは違うと、美鈴もまた肌で感じ取っていた。先に述べた通りだが、駆翔は紅魔館で生まれ育った。美鈴もまた、赤子の頃から駆翔を見てきている。だからこそ彼の纏う雰囲気の変化に心底困惑しているのである。

 彼のこの変化はハッキリ言って異常だった。ついこの前まで「俺と最速をかけて勝負しろ!」などと言っていた、かけっこ好きの子供だとは思えない。

 

「ど、どどどどうぞ、お入り下さいっ!応接室まで私がご案内致しますっ!!」

 

「いいよ。紅魔館(ここ)で育ったんだからさ」

 

「は、はいっ!失礼しましたっ!」

 

(そんなビクビクしなくても……。レミリアさん何か余計なこと美鈴さんに言ったのか……?)

 

 駆翔が館に入ると、それはそれは、異様な光景が広がっていた。ここで育ったので全て見慣れているなどと思っていた駆翔の予想を尽く裏切ってくる。

 館には野良の妖精が跋扈していて、メイド妖精と戯れている。エントランスの端の方では兄、十六夜虔魔が表情筋をヒクヒクさせて客と思われる野良の妖精と話しているようだった。作り笑顔があまりに不完全過ぎる。

 いつもの駆翔なら「何やってんだ虔魔の兄貴〜」などと突っ込んだが、虔魔が妖精嫌いなのは駆翔も知っていたので、バチが当たったんだと思いスルーしておく事にした。

 ましてや今は「勁牙組の駆翔」として来ている。遊びに来たのではない。そう思い直し虔魔が妖精に苦しめられているのを見て見ぬふりした。

 やがて応接室前に到着し丁寧に扉を叩く。手短に

「どうぞ」とだけ返事が返ってきたので、まるで、何かの入団試験を受けるかのように静かに、そして丁寧に扉を開け、入室した。

 

「久しぶりね、駆翔くん。元気にしていた?」

 

「勿論です」

 

「そう、良かった。ま、立ち話もあれだし、かけてちょうだい」

 

「ウス、失礼しやす」

 

「咲夜が極上のハーブティーを淹れてくれたのよ、是非飲んで。お口に合うといいけれど」

 

「……頂きます」

 

 一口、また一口と紅茶を口に運ぶ度に入室前から続いていた緊張が解けていくような気がした。雪が溶けゆっくり地面に染み込んでいくように、解けた緊張が溜め息となって口から出ていく。

 

「……落ち着いた?」

 

「ええ。ありがとうございます」

 

「それは良かった。……それで、今日はどうしたの?遊びに来た……というワケではなさそうだけれど」

 

「挨拶に来ました」

 

「挨拶?」

 

「本日をもちまして、この俺、驪駒駆翔は……正式に勁牙組の若頭に昇進しました。次期組長が確定したというワケなんで……組長になれた暁にはまた挨拶に伺わせて頂きますけども」

 

「凄いわね。勁牙組は、畜生界でもトップクラスの組織なのでしょう?そんな組織のナンバー2なんて並大抵の事じゃないわ。そんなあなたが……あなたの母が、この紅魔館に身を置いていた事……当主として私は誇りに思うわ」

 

「……若頭まで登り詰めた俺ですが……また紅魔館に遊びに来ても……いいですか……?」

 

「何を言ってるの。あなたの実家のようなものよ?いつでもいらっしゃい。それに、力になれるのならできるだけ力になるから、その時は頼りなさい?」

 

「ッ……ありがとうございます!!恩に着ます!!」

 

「恩に着るだなんて、そんな……。ま、ゆっくりしていきなさいよ」

 

「……いえ。それは、またの機会にさせて頂きます。今日はその……まだまだ、挨拶巡りがあるので……」

 

「あら。じゃあ、またゆっくり遊びに来なさいね」

 

「はいっ!!」

 

 レミリア、美鈴に見送られて、駆翔は飛び立つ。そして彼は見事、半日のうちに挨拶巡りを終えて、本拠地に帰還……見事、組長早鬼からの課題に全力で答えてみせたのだった。




漫画版儚月抄のレミリア、凄くヤクザっぽいシーンありましたよね。あれめっちゃ好き。

Gルート始めて114分、ふじみのアンダイン撃破。
緊張し過ぎで腹壊しました。
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