※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

106 / 1140
十六夜

「…綺麗な月だなぁ…」

 

俺は紅魔館の屋根に座り、自分で淹れた紅茶を飲んでいた。ここなら湖も一望出来るので、かなり気に入っているスポットである。

 

 

あのあと、気絶したヒビキらを室内に運び、先に目覚めたヒビキに椛を連れ帰らせた。

その頃には、怒りはスッカリ収まってたようで。

見送った後、フランとレミリアと寝ようとしたのだが、既に寝ていたので夜更かしすることにした。

 

 

「はぁ…」

 

咲夜さんも居ないし…1人は寂しいなぁ…。

思えば今日は、色々あったな。

文と追いかけっこしてパンツ見て、ツボの位置知るために永遠亭へ行き、鈴仙と風呂に入った挙句、てゐに媚薬を注入され、そのまま鈴仙とセ○○○…。

帰ってきたら兄弟対決…か。

 

「ははは…」

 

疲れからか、体が重いぜ。アレやってみよう。

 

「よし…」

 

今気絶したら屋根から転げ落ち、ほぼ確実に骨折する上、カップも割れる。もはや賭けだな。

いや、カップは置こう。

 

カップを置き、首に指を当てて目を瞑り、電気を流す。

 

バチッ…

 

「…おお」

 

首を回し、屋根の上に立って跳ねてみる。

 

成功だ。体が軽い。

なんでさっきは失敗したんだろうな?

 

「………」

 

ふぅ、と短めの溜息をつき、もう1度座り込む。

 

寂しいなぁ…。

 

「短歌でも詠んでみっか」

 

何となくそんな気分だ。

そう、俺の行動原理のほとんどは何となくだ。

 

「十六夜の 光を返す 湖の

揺蕩う水面(みなも)の 美しきかな」

 

…いや、季語無いやんけ。

十六夜は毎月あるから季節の言葉じゃないし。

ま、所詮こんなもんか。

 

「十六夜……か……」

 

ふと湖を見つめ…

 

「………咲夜さん…」

 

何故かそう呟いていた。

 

「お呼びですか?」

 

!?

 

「うえぇ!?…っとっとっと…うわぁ!」

 

「きゃああ!!エスカルゴさんっ!!」

 

ゴロゴロゴロ…

 

突然背後から声がして、驚きのあまり屋根から転げ落ちてしまった。

 

「うあああああ!!……くっ…ハァッ!」

 

バサァッ

 

「ふぃ〜、あっぶねぇ…」

 

落ちかけてる所で羽ばたき、元いた位置に戻る。

そこには、お盆を抱えながら咲夜さんが立っていた。フワリと咲夜さんの隣に降り立つ。

 

「す、すいませんでした…」

 

ペコリと頭を下げる咲夜さん。

 

「いえ、驚き過ぎた俺が悪いんで…」

 

「ふふっ…。それで、何かご用でしょうか?」

 

「いえ、すいません、何でもありません。なんというか、知らず知らずのうちに呼んでたというか…」

 

「えっ…?」

 

咲夜さんの驚いた顔が月明かりに照らされる。

 

「いや、ほら…今日って十六夜なので…ね?」

 

ちっと苦しい言い訳だな…。

 

「十六夜…ですか?へぇ…」

 

呟くように言って月を見上げる。

 

「昨日は満月でしたからね」

 

と一言付け足す。

 

「なるほど…」

 

月を見上げる咲夜さん…絵になるな。

 

「?」

 

視線に気付いた咲夜さんが振り向く。

 

「……♪」ニコッ

 

「!」

 

ニコッと微笑んだその笑顔に、思わずドキッとしてしまった。

 

「あの…」

 

咲夜さんが話しかけてきた。

 

「はい?」

 

「今度のお散歩の件…何ですけど…。ダメな日とかありましたら遠慮無く言って下さいね?」

 

「ダメな日なんて…」

 

と言いかけてハッと気付く。

 

「毎週月曜はダメです。鈴仙の所に行くので」

 

「わかりました」

 

あとは…うん、大丈夫だ。

 

「咲夜さんとのデート…今から楽しみです♪」

 

あっ!!つい心の中で思ってたことを!!

 

「へっ!?で、デートだなんてそんな…!」

 

真っ赤になり、慌てふためく咲夜さん。

 

「あ、いえ、すいません!えーと…そーだ、お散歩!お散歩ですよね!!」

 

「そ、そうですよ!あくまでもお散歩ですっ!」

 

はぁ…つい言ってしまった…。俺の馬鹿野郎!

 

「それに…」

 

急に声を落とす咲夜さん。

 

「?」

 

「私みたいな従者がエスカルゴさんとデートだなんて…お嬢様や妹様に知られたら殺されてしまいます」

 

そう言って微笑んだ咲夜さんは、何故か酷く悲しげに見えた。

 

「大丈夫です。そんな事させません。もしフランたちが怒って暴れたりしたら…俺が咲夜さんを守ります。…命にかえても」

 

真っ直ぐ目を見据え、“守る”と言い切る。

 

「……あ、ありがとう…ございます…/////」

 

あ、あれっ?素直に頷いた…?

咲夜さんの事だから、「エスカルゴさんがそこまでする必要ありませんよ」とか言うものかと…。

ま、いっか。

 

「咲夜さんも一緒に月見ませんか?」

 

屋根に座り、隣に座ることを促す。

 

「わ、私もですか?」

 

「せっかくですしね」

 

「では…失礼します」

 

これまた素直に頷き、隣に座る咲夜さん。

 

「こうして、2人きりでゆっくりするのも…良いものですね」ニコッ

 

「そうですね」

 

どうした今日の咲夜さん…?

あ、深夜テンションってやつか?

 

「そういえば先程、詩(うた)を詠まれてましたよね。そういうのお好きなんですか?」

 

「えっ…聞いてたんですか?」

 

「あっ!」

 

慌てて口を塞ぐ咲夜さん。

 

「…咲夜さん?いつからそばに居たんですか?」

 

「…エスカルゴさんがここに来た時から…/////」

 

「え゙っ、かなり前じゃないですか」

 

全く気付かなかったぞ。

 

「尾(つ)ける様な真似をして申し訳ありません…」

 

座ったまま頭を下げる咲夜さん。

 

「いや、大丈夫ですけど…。ビックリしました」

 

「すいません…」

 

「大丈夫ですって。…まさか聞かれてたとは…。俺、詩(うた)詠むの下手なんですけど…」

 

「えっ?かなりお上手だと思いましたけど…」

 

「そう言って頂けると嬉しいですけど…外の世界だとバッシング受けますよ?」

 

「厳しいんですね…」

 

「いえ、厳しいのではなく俺がダメなんです」

 

「エスカルゴさんでダメって…」

 

────その時だ。

 

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

 

『!?』

 

夜風に乗って、雄叫びのような声が聞こえてきた。

 

「な、なんだ?」

 

たくさんの声が混ざったような…。

例えるなら、「エイエイオー」のような感じだ。

 

「妖怪の山の方からですね」

 

え…今の声の出どころわかったのか。

流石咲夜さんだな。

 

「うーん…祭りかなにかするんですかね?」

 

「幻想郷の行事は把握してるつもりですけど…そんな予定は無かったはずです」

 

「うーん…なんだろう?ま、俺たちには関係無いですよ」

 

「そうですよね。…あ、そういえば───」

 

 

 

しばらく話をし続け、ようやく2人が眠ったのは、夜が明けてからだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。