博麗神社にて霊魔に負けた後、駆翔は更にキツい特訓を重ねていた。そして、自身の能力を使うのにあたって、ある1つの結論に至った。
自分の発想だけでは、どうしても限界なのだと。
そこで駆翔は、似たような能力の使い方ができる妹である姫を訪ねようとしたが、まだ幼い彼女に、能力の使い方を説明などできるのだろうかと出発の前に考え直し、最終手段である、父親を頼るという方法を執る事にした。
両者の能力は「重力を操作する」という意味では似ている。駆翔は「力の流れを歪める」方法だが、父ことこの俺エスカルゴは「重力そのもの」を操作するというもの。似て非なる能力の使い方だった。
だからこそ参考にできると考えた駆翔は、若頭の仕事の合間を縫って幻想郷に来ては、父を探して、特訓の約束を取り付けようとしていた。
しかしいつ見ても女性と居る。話し掛けようにも話し掛けられない状況が続き、遂にキレた駆翔は、振り向いてもらうという意味も込めて、魔法の森の中で
「いつンなったら1人になんだよ父様はァァッ!!クソがァッ!!」
「うおっ、駆翔かっ!?」
「潰れろクソったれぇぇぇえええええええッ!!」
駆翔がドスンと足を踏み鳴らすと、まるで目には見えない何かが覆い被さったように身体が重くなり上から押し潰されそうになってしまう。
「エスカルゴ!?」
「近付くなルーミアッ!!……駆翔ォ、こりゃ一体、どういう風の吹き回しだ?クーデターかな?」
「父様がいつも誰かと一緒に居るからだろーがっ!いつんなったら、俺ら親子水入らずで話せるようになるんだっての!!」
「……そんならそうと話しかけりゃいいだろーがよ?オメーは思春期の中坊か!」
「イチャイチャしてる中に突っ込んで行けるほど、俺は無神経じゃねーよ!今は我慢できなくなった!それだけだ!」
「チッ。……明日の昼頃に、勁牙組の本拠地に行く。それでいいだろ」
「っ!おう!邪魔して悪かったな父様!じゃ明日の昼な!分かった!んじゃ!」
「……よしよし、身体も軽くなった。デートの続きといきますか?」
「帰る。雰囲気ブチ壊しにも程があるわ」
「えぇ〜」
結果としてルーミアと解散した俺は急いで駆翔を追い掛けて合流。すると流石の駆翔も申し訳ないと思ったのか、ヘドバンでもする勢いで頭を下げた。
まぁこんなのは仕方ないと諦めるしかないので、この話は水に流して、親子水入らずで話す事に。
「え?重力の能力の修行を?」
「おう!父様も地底で見てたろ、俺の戦い!」
「あぁ……魔理沙のマスパに踏ん登って曲げてたな」
「そーそーそれそれ。アレの他に、俺ぁ重力も多少操れるんだよ、踏ん付けたり蹴り飛ばしたりして。だけど重くするのはさっきもそうだけど一瞬だし、蹴り飛ばすのなんて初速だけ速くて、失速するのも早すぎるんだ。だから短距離じゃないと意味無い。どうすればいい?」
そんな事を言われても、俺だって、重力の能力の練度はそこまで高くはない。姫にもだが教えられるレベルには達していないと思う。
「この前、霊夢さんのこと振り回してたじゃんか。アレはどーやってんの?」
「振り回す時は、対象そのものに能力を掛け、手と重力の方向を連動させるんだ。これは、その能力者じゃないと理解も発動も無理だろう」
「うーん、じゃあ俺は……」
「連動が無理なら、ただ単に強く重力を掛けられるようになればいいさ。大丈夫、駆翔ならいけるさ」
「そうかな……俺……霊魔の兄貴にボロ負けした……」
「霊魔にィ?ハッ、そりゃそーだろうな」
「んなっ……」
「霊魔は男子の中で最強だぜ。俺の子供達の中では暫定第3位。巫月、霊愛に次いで霊魔だぜ、強さの順番としてはな。駆翔が負けるのも仕方ないのさ」
「で、でも妖舞の兄貴と引き分けたじゃないか!」
「今なら妖舞に勝てる。そのレベルだよ、霊魔は。アイツはヤバい。攻守万能、中でも『守』に重きを置いて戦う。攻撃しか手のない駆翔では勝てない。それは分かるな?」
「……うん……」
「じゃ、とりあえず、体験してみろ。重力の能力をメインに使うから俺と軽くバトルだ」
「……!!よっし、分かったッ!!」
魔法の森の上空にて、向き合って構える。当然、能力を掛けるとは言っても本気では掛けない。力の底を見せてやる気も全く無い。というのも、俺達の能力は根本から違うので、参考になるかどうかさえ分からないからだ。そして、間違った解釈で参考にされても困るし、能力の使い道を、その方向で固定してほしくないのだ。
俺の雷の能力もそうだが、能力と一口に言っても様々な使い方がある。プラスマイナスなどを利用し細かく操作できるようになれば、物を浮かせる事ができる。
このように能力の使い方というのは非常に多岐にわたっているので、どうか駆翔には、折角の能力を重力を歪ませる方向だけに使ってほしくはない。
そう考えていても……無駄になるかもしれないが。
「いくぜ。重符『ループするスケルトンボーイ』」
某RPGに出てくるスケルトンのように、対象に能力を掛けて手と連動させ、縦横無尽に振り回す。飛ぼうがホバリングしようが、そんなの関係無い。重力の強さと全く同じ強さで彼を振り回してやる。
ただし俺の場合は、重力を強める事も弱める事も可能なお陰で、振り回す強さを変化させる事が可能である。そこが俺と駆翔の最大の違いだ。
だからこそ先程のアドバイスで「もっと強く重力掛けられるようになればいい」と言ったのだ。
「うあっ……頭が…………グラグラする……」
「短時間で重力の掛かる方向が滅茶苦茶に変わって振り回されてるんだ、重力が強ければ強いほどその気持ち悪さもパワーアップする。ま、頑張れよな」
「かっ……くおおっ…………ダメだッ、止めて、止めて父様、無理だ吐く!吐くッ!!」
「ありゃ」
「おッ……おげぇぇぇぇ…………うごぇ………」
「ははっ、まぁ振り回される方としてはそんな風になるよな。しゃーなし、しゃーなし。じゃあ次は、駆翔が俺を吹き飛ばしてみな。能力でな」
「ッ……!!」
一通りゲロを吐いた駆翔は、それからは果敢にも俺に挑んできた。しかし、先程の力の差を実感し、それが能力にも反映されてしまったのか、いつものキレはそこには無かった。
それが悔しくて何度も何度も仕掛けるが、やはりキレは無さそうだ。寧ろ、キレが落ちるばかりだ。
しかし今回のこの挫折で、駆翔は最終的に何かを掴んだようだった。
そんな、更に一段階成長した駆翔を拝めるようになるのは、ほんの少しだけ先のお話である────。