悪魔的な天使 〜Demonic angel
真宵、霊子と続けて娘が生まれ、はやくも半年が経つ。季節は初冬。その頃になると、天使のような悪魔こと幻月のお腹もすっかり丸くなっていた。
予定日の1週間前から、俺は夢幻館に住むようになり、妊婦の幻月の介助をしつつ、夢月、くるみを日替わりで抱いては適当に時間を潰していた。
やがて予定日を1週間も過ぎて、幻月は予定通り女の子を出産。その際にもう一度名付けで悩んだが当初の予定通りに、「デビリサエル」と名付けた。幻月の提案で姓を与える事になったので、正式には
「デビリサエル・スカーレット」となった。純白の両翼に、ほんのちょっぴりのツリ目、薄めの金髪ロングヘアー。ツインテールが良く似合う子だ。
惜しむらくは、何処から覚えてきたのか、言動がメスガキっぽい所だけだ。……幻月のせいだろうなと思っている。
因みに普段着はメイド服だ。夢月のメイド服を、赤、もしくはピンク色を基調に作り替えた……言わば色違いだ。これは、夢幻姉妹の共通の趣味らしい。夢月は「着る」のが好きで、幻月は「着せる」のが好きとの事だった。だから、夢幻姉妹は夢月だけがメイド服を着ているのかと納得した出来事だった。
「パパ〜、今日の朝ご飯は何がい〜い?」
「んー……パパはリサが好きなご飯が食べたいな」
「もぉ〜、パパったら〜♡……で、何食べるの?」
「お、オムライスで……」
「は〜い♡」
見た目は天使、中身は悪魔。母親である幻月の、そういった要素をガッツリと継いでいる気がする。言動の一つ一つに天使と悪魔が同居しているような気さえしてくる。
今の発言もまさにそうだ。「パパったら〜♡」は思い切り甘々な態度で如何にも天使な感じだった。しかし、その直後に続く「で、何食べるの?」は、思い切り冷たかった。
表情がスンッと切り替わって、甘い態度が鳴りを潜めるような……。これがこの子の性格なら、きっと能力にも反映されるだろう。
例えば、巫月は真宵以外の子供の中では一番闇を孕んでいる。その結果として最近になって闇の弾幕なんてのも使えるようになった。
霊魔は子供達の中で一番「拒絶する心」が強い。そのせいで心の壁ことATフィールドが発現した。ちょっぴり羨ましい。
虔魔は、自分が悪い場合でもろくに理解せずに、正論にも思える発言で被害者を追い込む。つまりは責任転嫁だ。そんな性格通り並行世界の人物を召喚する能力に目覚めている。
駆翔はヤクザの若頭だけあって子供に似合わないリーダーシップもある。その上、部下を率いて道を切り開くような事もある。彼の「力を歪める」能力なんて、まさにそんな彼の性格を象徴しているようだろう。
「……ホント、リサは夢月と仲良いよなぁ」
「あの子にとって、メイドのイロハを教えてくれる師匠でもあるからじゃない?」
「かもな」
「……ダーリン、あと6日は居るんだっけ?」
「あぁ、そう考えてたけど、リサの成長が思ってたよりも早いしな……あと3日くらいで普段のローテに戻っていいような気もするんだ」
「うーん、寂しいような気もするけど、確かにね。出産予定日を大幅に過ぎたから、そのせいで、今の時点で予定の滞在日数を超えてるのよねぇ」
「1週間なら大幅って程でもない気がするけどな、まぁ他の子が大体予定日通りだもんな……」
「そーなのよねー……霊夢なんて寧ろ早いくらいなんでしょ?何で私だけ遅いのかしら、ムカつく〜」
頬杖をついてプックリ頬を膨らませる。予定より遅れた事で、現時点で滞在予定日数を1日オーバーしている。もし「出産後〇週間」の予定を守るなら合計で1週間オーバーする事になる。
「まぁ……あれだ。予定通り今後は夢幻館もローテに組み込んでるから大丈夫だ。会う頻度は高くなる。リサも分かってくれるさ」
「でもあの子、こうして料理してる時以外はヤケにダーリンにベッタリじゃない。大丈夫?」
「……大丈夫だろ?」
「疑問形って」
そう、リサはヤケに俺に対してベッタリだ。赤子時代の巫月のようで、リサの場合はこうして夢月と料理や掃除などの家事をしている時以外は常に俺のそばに居る。何を考えているのかは……分からない。
ルーミアは真宵も含めて3Pする予定のようだが俺は真宵よりリサの方が早く交わりそうで怖い気がしてくる。真宵は俺にベッタリではないからだ。
「……まぁ、大丈夫だと思うけどな。しっかりしてるだろ、リサは」
「そうね」
夢幻館の暮らしも楽しかった。流石の俺も臨月の幻月は危なすぎて抱けなかったが、夢月にくるみに順番に交わり、その後に嬌声を聞いて顔を赤らめたエリーを見に行くのも含めて楽しかった。
「うっし、じゃあ決まりな。あと3日で普段通りの流れに戻すよ」
「はーい」
直後、キッチンからドタバタと何かが走るような足音が聞こえてきた。そして、バタンとリビングの扉が開け放たれたかと思うと、リサが思い切り俺の背中に飛び込んできた。
「リ────」
「嘘だよね?」
「えっ」
「あと3日なんて嘘だよね?って言ってるの」
「嘘じゃな……」
「ウ・ソ・だ・よ・ね?」
「────ッ!?」
ひたと首に当てられたのは包丁。日光が反射してキラリと鈍色の光を放つ。
「こ、こらリサ!パパに何してんのっ!?」
「ママは黙って!パパが悪いの!あと6日だねって言ってたのに、急に、あと3日とか言うんだもん!約束破っちゃダメだよって教えたのパパじゃん!!なのにパパが約束破っちゃうの!?」
地獄耳も、ここまでくると一種の能力みたいだ。ドアなんて閉まっていたのに、しかも何故ここより遠いキッチンにいるリサに話し声が聞こえたのか。
「……パパぁ……嘘なんでしょ?ねぇ……?」
「う……」
うるうる目を潤ませるリサは、さながら小悪魔のようだ。罪悪感がとてつもない。俺は諦めて、首を絞めそうになっているリサの腕をポンポンと撫で、落ち着かせる。
「分かったよリサ、ごめん。パパが悪かったから。あと6日は居るから。許してくれ」
「ホントに?」
「ホントだよ」
「契約できる?悪魔の契約は絶対なんでしょ?」
「あぁ契約できる。絶対守るよ」
「えへへ……良かったぁ♡ パパ大好きぃ♡」
グリグリ〜ッと頭を押し付けてくるリサは本当に可愛い。だがこれで、予定は少し狂ってしまった。皆へ連絡するより前で良かった。
思えば最近の子は揃って成長が早めな気がする。一番手が掛かった子供と言えば恐らく霊愛だろう。彼女は半妖、しかも人間の血が強いので成長速度はかなり人間準拠だった。今でこそ、成長は緩やかになったが最初はかなり大変だったと記憶している。
アレはアレで育児の苦労も楽しめた気はするし、悪いことばかりじゃない気がする。だから、最近の子供達の成長の早さには少しだけ寂しさも感じる。
そんな時はまだまだ幼さの残る緋月や姫と話す。そうすると、どこか癒されるものがある。
「……近いうちに家族全員集まるか」
「あ、いいかも。うちのリサが最カワだって、皆に知らしめてやりたいしね♡」
「やだもーママってばー♡ ね、パパぁ♡」
「……ははっ、まぁリサも可愛いからな」
「ねぇパパ、私が最カワだよねー?」
「皆可愛い」
「私だってば!」
「皆」
「私!」
「皆だ」
「わ・た・しッ!!」
「分からずやさんは嫌いだぞー?」
「そんなぁ……」
「ダーリンってば、なにムキになってんのよ〜……。その場くらい話を合わせればいいじゃない」
「いやぁ、父親として中立でなきゃな」
俺の何処が中立だよ、と心の中で突っ込む。娘へ肩入れなんて当たり前、中でも巫月は特別な子だ。そりゃあリサも可愛いし、他人の子なら犯したい。しかし、これ以上は近親相姦は避けたいというか、なんというか。巫月、霊愛、霊麗と………………まぁ、とにかく、避けられるものは避けたいところだ、と考えている。
「リサ〜?どーしたのー?」
「あ……ほら、夢月に呼ばれてるぞ?」
「うん……行ってくるね」
「リサのオムライス、楽しみにしてるよ」
「……!はーいっ!楽しみに待っててねっ♡」
ぱぁっと笑顔になると、パタパタとキッチンへと駆けて行った。
この子と他の子供を会わせるのは、ほんの少し、危険な気がした。だが家族だし、阿弥も何だかんだ家族行事に参加しているように、この子もそうするべきだろう。
幻月と夢月は力を合わせれば世界を作れるような力を持つ謎の多い悪魔だ。そんな幻月の子供なら、どんな力を持っていようとも不思議ではない。
この子についての詳細を知っていきたい所だが、どのように探ればよいかは不明だ。……落ち着いて、焦らずやっていこう。