「リサー、まだかー?」
「待ってよパパ、まだ準備が……」
「どっちも同じメイド服なんだから大差無いだろ?何をそんなに迷ってんだ?」
「ち、が、う、の!!」
「……オシャレに気を使う娘なんて初めてだよ全く」
今日は紅魔館に出掛ける日。メイドとして弦月姫という先輩に色々手解きを受ける約束も取り付けたらしい。幻月はそういったサポートも事欠かない。
リサは紅魔館に着ていく服を迷っているそうだ。なんでも、普段着のピンクのメイド服か、それとも夢月とお揃いの青いメイド服かで迷っているとか。どうして迷う必要があるのか、俺には分からない。
◆
「よーっす美鈴、毎度の事ながらお疲れさん」
「どうもですエスカルゴさん!……ふぉおっ……か、可愛いいぃぃ〜っ!!」
「デビリサエルです!よろしくね、門番さん♡」
「は、はい!よよよろしくお願いしますっ!!」
リサがパチンとウインクすると、美鈴は真っ赤になって照れた。リサの可愛さは美鈴すら照れさせるレベルらしい。魅了でも使ってるんじゃないかと、懐疑的になってしまうくらいだ。
その後、幻月とリサには先に中に入ってもらい、俺は外で美鈴と立ち話を楽しむ事にした。どこか、ボーッとしている様子が見受けられたからだ。
「美鈴、大丈夫か?」
「……え?何がです?」
「リサを目で追ってるが。大丈夫か?」
「ええ、ええ!勿論、大丈夫ですとも!」
「ふぅん……」
美鈴の目をジィッと見つめてやる。魔力の残滓が見える。俺の魅了の魔力じゃない。真新しい、俺と違う質の……娘の魔力だ。一先ずは俺の魔力で上書きしてやり、美鈴の視界を
「ぽへぇ……」
「空気が抜けたような声だね」
「えへへ……///」
「俺以外の目、ジッと見ちゃダメだよ?」
「……!はいっ♡」
「んじゃ俺も行くね」
「はいっ、行ってらっしゃい!」
一応誰も見ていない事を確認して、そっと彼女の頬にキスしてみた。門前でキスするなんてそれこそ付き合いたての頃以来だろうか。または門前で青姦するときくらいのものだろう。だからなのか美鈴は顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。
「ただいま……っと」
「おかえりなさいませ、ご主人様っ!」
「ただいま、シャロン」
「お風呂にしますか?ケーキとお紅茶にしますか?それとも、わ・た・し?」
「ここはシャロンで……と言いたいところだけどな。よし幻月、とりあえず……あれ、幻月達は?」
「はい、お2人はレミリアお嬢様とお話された後、幻月さんはお嬢様とお茶会へ、デビリサエルさんは虔魔さんに館内の案内と、それから副メイド長への顔合わせに向かわれました!」
「……アポ取ってたとはいえ、手際が良すぎないか?そんなに長い間、俺、外に居たっけ……?」
「えぇと……せいぜい2分くらいだったかと?」
「だよな?まぁいいや。幻月とレミリアはいつものテラスに?」
「はい!ご主人様も向かわれますよね?」
「うーん……2人は俺のこと待ってる様子だった?」
「え……あぁ……うぅん、と……」
「そんなこったろうと思った。まっ、ママ友同士、好きにさせるさ。子供は子供で遊んでるし、俺だけ手持ち無沙汰だな。……この時間だと、フランは読書してるだろうしな……パチュリーかモルモーか……。おしっ、部屋、行くか?」
「はいっ、ご主人様っ♡」
◆
「────そして、こちらが浴場になっております。平時は、上からの指示が無い限り、使用人は昼間は使用禁止になっています。お嬢様方やお父様などにいつでもご使用頂けるように、という処置ですね。使用人がここを利用できるのは、その日の業務終了直後のみ、または上から新たな指示があった場合となっています」
「ふむふむ、なるほど〜!」
「……聞いてます?」
「聞いてるよ!」
「それなら説明も無駄にならなくて良いのですが、何故僕の顔ばかり見るのです?」
「ん〜?お兄ちゃん、カッコイイからっ♡」
「……そ、そう、ですか……」
何なんでしょう、この妹の顔を見ているとヤケにドキドキしてしまう。まるで初めてお父様と妖精の交わりに遭遇してしまった時のような高鳴り……。
あまりジロジロ見ても怒られるでしょうし、目はあまり合わさないようにしましょうかね。
「ねーお兄ちゃん、どうしてすぐプイッてするの?リサのお顔、変……?」
「そんな事ありませんよ。とても可愛らしいです」
「えへへ、良かった♡」
それにしてもこのデビリサエルという妹、どこか得体の知れない所がありますね。目を合わせる度に魔力が流れ込んでくるような感覚がありますし。
これは……
「……デビリサエル」
「リサでいーよっ♡」
「リサ……あなたは僕に一目惚れでもしましたか?」
「え゙っ!?」
「どうなんです?」
「な、無い無い、そんなんじゃないよ!どうしたのお兄ちゃん、リサが可愛いからって────」
「ならば僕に
「……なんだ、気付いてたんだ?」
「
「ふぅん……一筋縄ではいかなさそうだねぇ」
不気味ですね。さっきまで子供のようにニコニコしていたリサが……悪魔のようにニヤニヤしている。いや、悪魔なのは分かっていますが……我が妹ながらどこか不気味ですね。
一応の警戒は、しておいた方が良さそうですね。敵対はしないでしょうが、何かあったらすぐに報告しておくべきでしょうし観察はしておきましょう。
(へぇ……お兄ちゃんって思ったよりしっかりしてんじゃん。魅了のコントロールの訓練かぁ、紅魔館の住人を籠絡して自由に遊ばせてもらおうとか思ったけど、無理っぽいなぁ。手強いなー……)
「あぁそうだ。今のうちに言っておきます。リサ、妖精のお客様には手を出してはいけませんよ」
「んぇ?妖精?……あぁ、フワフワ飛んでるアレ?」
「ええ。お客様なので……」
自身の経験も含め妹に言い聞かせようとすると、廊下の先の方に居た妖精達が3、4人ワッと一斉に走り、または飛んで寄ってきた。
あんまり煩いのは好きではないですが、妹の手前そうも言っていられない。兄というのは、どうにも面倒な立場です。
「虔魔さーん!」
「……どうも皆さん、こんにちは」
「ねーねー虔魔さん、この前のお菓子まだある?」
「マカロンでしたね。それでしたら、副メイド長に預けてありますよ。もしよろしければお召し上がり下さい」
「やったーっ!」
「あれ、虔魔さん、この小さいメイドさんは?」
「新入りさん?」
「僕の妹、デビリサエルです。リサと呼んであげてくださいね」
「リサちゃんって言うのね!よろしくー!」
「「「よろしく〜っ!!」」」
「よ、よろしく……」
「虔魔さん、まだ妹いたんだね!」
「ほら、お父さんがエスカルゴさんだから」
「そういえばそうだった……!」
「じゃあまだ増えそうだね!」
「あははっ、そうかも!」
「虔魔さんも皆と仲良くしなきゃダメだからね!」
「……そう、ですね」
過去には殺したくなる程に鬱陶しいと思っていた妖精も、最近……正確には真宵に闇を吸ってもらったあの時から、妖精を鬱陶しく感じる事は無くなり、寧ろ慈しむような気持ちすら出てきている……。
僕の愚かな行動がなければ、今頃は本当の意味で友になれていたのかもしれない。そう思わない日は無いですが、そんな事を考えていても、悔やんでも仕方がありません。僕に過去は変えられませんし、過去に戻ってやり直すにしても数ヶ月単位になる。お父様やメイド長達には、僕に過去をやり直させるメリットがありませんし、諦めるしかないですね。
だからこそ、これから彼女達には……いいえ、誰に対しても真心を以て、真摯に向き合わねば。
「……はぁ。それではですね、そろそろ副メイド長と合流しましょうか」
「はーい♡……どうしたのお兄ちゃん、凄い疲れた顔してるよ?」
「ええ、まぁ、自分が情けなくなってしまって……。自業自得なので、仕方ないのですけどね」
「?」
「いいですか、リサ。くれぐれも敵は作らないことですよ。兄として僕がまずあなたに教えられるのはそれくらいですね」
「え〜?そんなの蹴散らせばよくなぁい?ママも、パパも、夢月とかくるみとかも、目障りな奴は全員ブッ飛ばすって言ってるよ?」
「いいえ。それは違いますよ。強くとも弱くとも、関係なくです。そういった事は、後になって自分を苦しめるものなのです。まだ始まって間も無い僕の人生ですが、その中での経験則です」
「ふーん……?」
なお、この後、リサは副メイド長とメイド長にも無謀にも魅了を掛けましたが、アッサリ看破された挙句、ちょっぴりお灸を据えられたのでした……。
モルモーちゃん作ってみた!!①
https://youtu.be/DdcLzZiRB7k
モルモーちゃん作ってみた!!②(年齢制限アリ)
https://youtu.be/jktyi1rulS8
モルモーちゃん作ってみた!!③(年齢制限アリ)
https://youtu.be/MO-ekcSbqPg
次回はリサ作ります。