言霊の神、降臨
地上に
真宵からリサまでは比較的近かったが、次の子はほんのちょっぴり離れている。とはいえ、リサからせいぜい半年2、3ヶ月程度しか離れていない。
「来たぞー、サグメ。今日から永遠亭に住むから、よろしくな」
「っ!……まだ良かったのに。皆、大丈夫……?」
「リサ以外は大丈夫そうだったよ。特に博麗神社の面々なんてよ、『寧ろ早く行ってっ!何が起きるか分からないから!』ってさ。俺を追い出したぜ?」
「そんな大袈裟な……」
「まー、霊夢は出産を4回も経験してるし、霊愛は3回も妹、弟が生まれるのを経験してるからなぁ。予定より早まるのも困るけど、遅いってのはそれはそれで不安なんだろう。永琳先生は『まだまだ安定しているから大丈夫』とは言ってたけどな」
「……うん。中々、生まれそうにない」
「確か、今でもとっくに予定より半月は遅れてるんだったよな?」
「そう。かなり、お腹が張ってきた感覚がある……。肉割れも起きているし」
「あちゃー……。肉割れっつーと怪我じゃねーから、治癒魔法じゃ治せないな。さて、どうするか……」
「確か……あなたの治癒魔法の効果を得られるのは、出血を伴う怪我……?」
「もしくは細胞の損傷、だな。ヤケドとかは細胞の損傷というよりは『熱による変質』だから治せん。肉割れもといその妊娠線も、皮膚が引き伸ばされることによる変質だからな……もし治すとしたら皮膚を一度『リセット』する必要がある」
「リセット?」
「あぁ。……
「ふむ」
「とはいえもっと特訓すりゃあヤケドも変質も治癒できるようになると思うけどな」
「……頑張って。応援、してるから」
「おう!出産後、サグメの肉割れも消せるように、今から鍛えとくぜ!」
「ん……待ってる」
そう言いながら、膨らんだお腹を撫でつつ笑顔を見せてくれるサグメは、まさに女神のようだった。
◆
俺が永遠亭に居を移し、はや半月。彼女の妊娠が発覚してから約1年が経つ。あまりにも遅い。腹が破裂してしまうのではないか────。
誰しもがそう危惧するようになって暫くしてから事態は動き出した。
突如、凄まじい陣痛がサグメを襲う。それからはすぐに分娩室に移動となったがそこからが実に大変だった。確か、赤子の声が聞こえるまで、39時間は掛かっただろうか。
これまで経験してきた嫁、彼女達の出産が、幾ら人外だからとあまりにも安産過ぎたのだ。だから、サグメが難産過ぎた事には酷く困惑したし、同時にとても焦った。
人間基準で言うのなら、初産で30時間、経産婦で15時間以上掛かれば難産だとされている。だから、今回のサグメの出産は人間基準で考えても圧倒的に難産だと言える。
因みに、人間の出産の平均時間は14時間程度だとされている。俺の嫁、彼女達の平均は7時間すらも無いだろう。しかしそれが逆に異常だったのだと、改めて思い知らされた。……だからって、幾ら何でもこれは両極端過ぎる気がしなくもないのだが。
それからはサグメから赤子を預かり、一旦別々に休ませる事に。赤子は、赤子として見るならかなり大きかった。長い間サグメの子宮に居ただけある。
因みに赤子の翼は両翼だった。しかも天使の翼。サグメとお揃いである。片翼も厨二臭くて好きだが両翼なのも素晴らしいと思う。そして息子ではなく娘である。名前は、絶賛サグメと話し合い中だ。
「もしもし」
『もしもし?』
「おいレミリア、安産確定だったんじゃないのか?難産中の難産だったぜ?39時間だったかな?確か、それくらい掛かったよ。こんなの初めてだよ。俺はこれから仮眠するんだけど……眠くてしゃーない」
『未来が変わりつつあるってコトだわ。サグメには悪いけれど、見方によっては、良い傾向ね』
「何か地味に嫌だ……こんな形で未来が変わったこと知りたくなかったな……」
『そもそも、生まれるのも予定日通りだったのよ。予定日が遅れる、安産から難産に……既に2つは私の予知が外れているわ』
「……待て。どちらも
『そうね。だけど、
「……レミリアの発言じゃなきゃ、信じられねェよ」
『あら、それは嬉しいわね』
「また連絡するよ。んじゃ……おやすみ」
『はい、おやすみなさい。ゆっくり休んで、育児に備えなさいよね』
「ああ」
◆
「おはよサグメ、起きてるか?」
「おはよう。今、朝ミルク飲ませて寝かしつけた」
「おっと……じゃあまた後で来るよ」
「大丈夫。この子、眠りは深い」
「なら……小声で」
「分かった」
サグメの出産の、次の日。巫月を寺子屋へ送った後、さっさと永遠亭に戻りサグメの元へ向かった。どうやら朝のミルクを飲ませ寝かせた直後らしく、赤子はサグメの腕の中で眠っていた。
サグメの腕を腕枕のようにしていて、その大きな頭を支えているようだった。
「……抱っこ、してみる?まだ、殆どこの子を抱っこしていなかったでしょう?」
「お……いいのか?それじゃ……」
「んぐぅ……」
「うわ起きたッ……やべ……」
「大丈夫。殆ど泣かないから」
「あぅぃ?」
「この人がお父様よ……ほら、よく見て覚えてね」
「あぁ、もう目は開いてるんだな」
「昨日の夜には。私達にそっくりな……紅い目」
「ヘヘッ……可愛いな。あぁそうだ、忘れないうちに写真、撮っとこう。サグメ、こっち見て」
「ん」
パシャリと小気味よい音を立てて、シャッターを切った。赤子は何が何だか分からないようで、まだボーッとした顔で空を見ている。
「名前、決めよう」
「あー……そうだな。もう少しすればこの子も流暢に話し出すだろうし、早めに決めないと」
「候補はある?」
「1つだけな。カンナってどうかな?」
「……カンナ。私は良いと思う。あなたが名を与えるならば私は漢字を与える。……
「漢字持ちにするのか。それもまたイイね」
「……!そういえば私もあなたもカタカナだった……やはり名前も漢字にするのはやめておこう……」
「いやいや、やめる必要はないでしょ。子供は親のコピーじゃないってよく言うでしょ。そういう事で妙な規則性を持たせる事はないんじゃないか?」
「……うん……確かに。では……そうしよう。この子は神愛。稀神神愛スカーレット……!」
「チョイ待ち。スカーレットは要らないと思うよ」
「あれ……そう……?」
「いいんだよ。無理に両方の性をつけなくっても、この子は俺達の子供なんだからさ」
「うん……っ!」
そして俺は密かに母さんを神降ろし。母さんから力を借り、娘の能力を鑑定する。
レミリアによると、この子の能力でとんでもない事件が起きるとされているからだ。だから、事前に能力を把握し、どうにかできるならどうにかしたいところである。霊子は無能力だが、この子は能力を有している。そういう運命にあるとされているが、俺は自分や自分以外の運命をも歪曲させる吸血鬼。娘が事件を起こす運命など、事前に知っていれば、起こさせるワケがない。
「あー……」
「何か分かった?」
「かなりヤバい、とだけ。詳細は違うかもしれないけど、便宜上、名前をつけるとするのなら《発言した事を実現させる程度の能力》かな。《有言実行する程度の能力》とも言えるな」
「……!私のと似通っている……」
「サグメのはあくまでも『その対象』に話さないと意味無いでしょ?でも神愛のは……恐らく発言したら問答無用だと思う」
「な……っ」
「知能与えて無理矢理にでも知恵をつけさせるしか未然には防げないかもな。子供はいつ、何を言うか分からない……」
事件の原因が分かった気がした。知恵を持たない子供が不用意に発言したことによって、事件が発生したのだろう。口は災いの元、を地で行く能力だ。
「……」
「どうするよ、サグメ?」
「……あなたなら、事件を起こすという子供の運命も捻じ曲げられる。私はそう、信じてる」
「………………わぁった、余計な事は何もしねェ。全てこの子に任せよう。……責任を負い切れるかどうか」
「いい。私が責任を取る」
「2人で背負おう。全ての責任は、あくまで両親のものだから」
「うん……ありがとう」
「『ありがとう』は俺のセリフだよ。産んでくれてありがとう。全力で愛情を注いで育てよう」
「うんっ……そうしようっ……!」
なんか指が多いけど、AIだからね、仕方ないね。
これ以上にイイ表情してるサグメが作れなかった!
面目ねェ面目ねェ!!(ギン並感)