追記:2022年12月17日
緊急事態!囚われのお母様
「おらぁ霊魔、腰引けてんぞー、剣くらいしっかり構えなさい」
「ダメだよお父さん。霊魔、軽く勃起してるもん」
「お、お姉ちゃんッ!?」
「ったく、朝勃ちかぁ?特訓したらシガレットん所行ってラブラブして抜いてもらえー」
「〜〜〜〜〜ッ……」
「このままじゃあ、霊魔が博麗神社で最弱候補まであるかもしんねーぞー?」
「っ……それは、嫌だ!はあああああっっ……!!」
子供達の育児期間が終わり、のんびりした空気の中でのんびりと過ごしていたある日の朝。子供達の特訓風景を肴に、博麗神社の縁側で茶を啜っていた俺の元に、何やら血相を変えた様子で妹……ロリスが飛んできた。
「お兄ちゃあああんっっ!!」
「んー……ロ……じゃなかった、アリスどうした?」
「お母さんが……お母さんがぁっ……!!」
涙を流して縋り付く。そんな彼女の様子を見て、境内で特訓をしていた4人の子供達も、ポカーンと口を開けてこちらを見て硬直してしまっている。
「お母さんが……誘拐されちゃったの……!!」
「……?」
ゆうかい?ユウカイ?融解?誘拐?妹が一体何を言っているのかワケが分からず、思考が完全に停止してしまう。ロリスも涙を拭い、ガタガタと身体を揺さぶってくるくらいには停止してしまった。
「お兄ちゃんってば!」
「……!あ……悪い……。母さんが誘拐された……って、誰にだよ?」
「知らないよそんなのっ……!!夢子がね、お母さん起こしに行ったら、もう、お母さんは居なくて……。お母さんのベッドに『果たし状』としか書いてないお手紙が置いてあったんだって……」
「……誘拐犯が置いてった、か。夢子は?」
「私と恋夜、綺愛羅のことを起こしてから、ご飯の準備だけ済ませて、すぐお母さんを探しに行った……ご飯は食べなさいって念を押されたから、ご飯だけ食べて、お兄ちゃんに伝えなきゃって……」
「なら俺も行こう。アリスは恋夜、綺愛羅と留守番してなさい。アリス姉ちゃんに伝える必要は無い」
「私も行く!」
「留守番してなさい」
「でもっ……」
「頼むよ。母さんを誘拐した犯人を見付けたら俺……何をするか分かんねェからさ……」
「っっ……」
妹を脅してでも、危険には巻き込みたくはない。恋夜と綺愛羅は、魔界では便宜上俺の弟、妹として通してはいるものの、この幻想郷では2人も息子、娘として通している。どちらにせよあの2人もこの事件に巻き込むワケにはいかない。
ロリスをスキマで魔界に帰してから、俺は作戦を考える事にした。
しかし俺と母さんは守護神と被守護者の関係だ。脳内通信が可能なのでまずは会話を試みる。
《メーデーメーデーこちらエスカルゴ、母さん至急応答せよ、繰り返す、母さん至急応答せよ》
応答は無し。そして、母さんのそばを異世界だと仮定し、《異世界へ行く程度の能力》を行使するが何故だか能力は不発。何処にも転移はしなかった。
俺はますます考え込む。もしこのまま俺の能力に頼った解決が不可能だとしたら、俺にはもう、手も足も出せない。
「……今回は落ち着いてるのね」
「霊夢……」
「文が囚われた時は、我を忘れるくらい暴れてさ。色々大変だったのに」
「あの頃は暴れるしか能が無かったからな」
「まぁね」
「今回は……母さんを誘拐した犯人は、子供には絶対見せられないくらいの痛い目に遭わせてやるさ」
「目が笑ってない、目が笑ってない……怖いわー」
「俺にだって、霊夢並みとまでは言わないけども、それなりに冴えてる勘がある。そいつを使ってすぐ犯人を見付けて……跡形もなくブッ殺してやるよ」
◆
ある程度の作戦を練った俺は、魔界へ移動する。
魔界に来たのは、事件現場が魔界だからだ。それ以外に深い理由など無い。ただ何かしらの手掛かりくらいなら見付けられるかもしれない────そう、思いたかった。
まずは情報収集だ。と言っても、誰か俺の嫁カノ子供なんかを巻き込むつもりはサラサラ無い。絶対死なせたくない存在だとまで言える嫁カノ子供を、どうしてこんな事件に巻き込めるだろうか。
思えば、少し前に紫さんに頼まれて「古の妖怪」なんかを殺し回っていた時は、モルモーのことは、この「巻き込みたくない存在」にカウントなどしていなかった。懐かしい。
今ではモルモーも「巻き込みたくない存在」だ。全く、俺は何を考えているのやら。
「……しっかりしねーとな」
相手は、魔界神を連れ去る手練。ましてや夢子の警備は眠っていてもザルではないのだ。家族以外の第三者がパンデモニウムの近くに来ただけでも目を覚ますくらいの生きる警備システム。それが夢子。
そんな夢子の警備を掻い潜るなど……余程の手練と判断しない方がおかしいだろう。
だから俺は、この捜査には俺の分身達に加えて、死んでも誰も気にしない奴らを投入する事にした。気にしないというより……もう死んでいる奴ら、だ。
「『
へカーティアから借りている地獄の力を利用し、地獄に落ちた亡者の魂を呼び戻すことで蘇らせた。中には、ゾンビのように身体が崩れ掛けている者も少なくない。
しかしここは魔界。元より人外の住まう土地だ。魔界の街中にゾンビが居ても「わぁゾンビだぁ」で済ませてしまうような魔界人が多数。問題は無い。
「さぁ、お前ら。俺の手となり足となれ。この地に散り、あらゆる情報を集めてこい。さもなくば無間地獄に落ちる事になるぞ」
前回このスペカを使った時は、創造魔法で創った肉体に俺の影分身を仕込む事で操作していた。今回それをしなかったのは目的が「情報を集めること」だからである。
影分身は、基本的に意思疎通する術を持たない。しかし死者の魂を利用するのなら、自我はあるので意思疎通も容易だし、その上、誰しも地獄の最下層なんかには落ちたくはないからと、術者である俺の命令を聞くのだ。
「────バッカじゃないの?私を殺した女の主人の言う事なんか、誰が聞くかってーの!」
「……あ?」
「感謝するよ、私を蘇らせてくれたことは。けど、私の命乞いを聞かなかったこと……後悔させてやる!死ね、バカ吸血鬼!!」
「あっ。お前は……!!」
「ケヒヒッ……蘇ったからにはこの世界も滅茶苦茶にしてやるっ♡」
◆
「四季様!四季様!大変です、緊急事態です!!」
「どうしましたか、久侘歌」
「地獄で奉公中の、または落下中の罪人達の魂が、突如、消え失せたとの情報が入りました!その数、少なく見積っても万は超えるとか…………!!」
「あぁ……それなら問題はありません。地獄の女神、へカーティア様の権能です。へカーティア様から、直々に連絡がありましたから」
「え゙ッ!?へカーティア様って……あの!?」
「え、えぇ、まぁ……」
「そんなへカーティア様が何故、罪人達の魂を……」
「『必要な事だ』との事でしたよ。我々には彼女の思惑など到底推し量る事はできませんが、必要だと仰せられるのであれば……我々地獄に勤める者は神の御心に任せるのみ。逆らわず、荒立てず、ね」
「……分かりました。ですがそれは、四季様から皆に御触れを出してくださいね。書類作成や裁判ばかりだから騒動に気付くのが遅れるのも無理は無いかもしれませんが、今の四季様は実質的に地獄のトップなんです。これ、かなり大きな騒動になっているんですからね?」
「分かりました、準備しましょう」
「ありがとうございます。それでは、私はこれにて下がらせて頂きます。仕事に戻りますね」
「ご苦労様です、久侘歌」
「四季様こそ。失礼致します」
久侘歌が映姫の部屋を出てから、その静寂の中、クスクスと笑い出す者が1人。
「……何が可笑しいのですか、阿求」
「いいえ?ただ、閻魔様も嘘をつくんだなぁ、と」
「嘘?私がですか?」
「だってそうでしょう?エスカルゴさんの行為を、さもへカーティア様の行いのように言うなんて……。大丈夫なんですか?」
「問題ありません。私は嘘をついていませんから、へカーティア様に責められる事もありませんしね」
「へ?」
「求聞持の能力を有する阿求でも、忘れましたか?私はこの騒動について『
「あ」
「そして、へカーティア様から私に連絡が来たのは事実です。テレパシーというヤツでしょうか、頭に直接彼女の声が響くような形で連絡が来ました……」
「あー……さっき頭を抱えていたのはそれですか?」
「ええ。地獄の英雄・エスカルゴさんが地獄の力を利用し、何か企んでいるようです」
「エスカルゴさんが罪人を、万を超える数……現世に蘇らせた……という事ですよね?」
「どうせ生死は術者である彼の思うがままですから関係ありません。しかもへカーティア様の権能にてこの世に蘇ってしまったが最後、次に落ちる地獄は元々落ちていた地獄よりも下層の地獄になります。無間地獄であれば輪廻転生の道を外れた存在になり転生は決して不可能になります」
「えっ」
「蘇生とは、それだけ業の深い行いなのです。人の生死や、神の心に逆らう行為と等しいのですから。術者のエゴで蘇った者をも巻き込むのが、特に酷いですね。術者は死後、無間地獄に落ちることが確約されてしまいますし」
「……よく覚えておきます」
「尤もエスカルゴさんは死にませんけどね」
「…………ふふっ」
「ふふっ……」
「「あははははははっ!」」
エスカルゴによって蘇生されたモブの1人、しかしエスカルゴと何か因縁があるようで……?
(AIの都合で彼女の作画はかなりコロコロ変わる恐れがあります。できるだけ統一感を持たせるよう努力はしますが、彼女に関してのみ「イメージ図」みたいに思ってください)