「何だこれ、城か……?」
感覚を研ぎ澄ませ、母さんの気配があるか探知。微弱にだが、母さんらしき気配が感じられた。だが少し変だ。母さんの気配が2つも感じられる。
1つはいつも通りの気配。しかしもう片方はその母さんの気配に禍々しさが混ざっているような……。
「最上階あたりか。まぁそうだよな、こういうのは大抵そうだ。テンプレ通りだな。手っ取り早く破壊しちまうか。母さんなら、突然城が壊れたって対応可能だろ。────破壊符『
不発。有り得ない。幾ら何でも破壊できない物があるなんて────人体ですら簡単に爆散させられるというのに、あんな物体が破壊不可能だなんて。
「なら窓か。窓を割りゃあ……あれ?」
窓を破り侵入しようとするも破壊不可能だった。破壊の能力も通じないし、スキマも通じない上に、異世界へ行く能力すらも通じない。
母さんの力を利用して建造されているのか、俺に破壊できない、通り抜けられない、といった能力が城そのものに付与されているかのようだった。
仕方ないのでご丁寧にエントランスから城に入り天井を壊そうとするが、それも通じない。諦めて、地道に登っていくことにした。
しかしその道中が大変だった。
「おわっ!?」
床はタイルのようなものが貼られているのだが、その中のとあるタイルを踏めばトラップが発動するようになっているらしく、電撃だの火炎放射だの、水が凄まじい勢いで飛び出して手足を切断したり、それはもう即死級トラップが散りばめられていた。
「────雷鎧『サンダーアーマー』」
防御しながら、そして床を踏んだり壁に触れたりしないよう、腕を組んだ状態で浮遊して移動する。これならトラップのスイッチも発動しないだろう。
そう思っていた俺をブン殴りたい。
「いぎゃっ!?」
人感センサーなどがあったのか、壁に挟まれた。サンダーアーマーはあくまで弾幕を防ぐものであり物理攻撃を防ぐ効果は望めない。両側から圧されてアーマーは砕けてしまう。咄嗟に瞬間移動魔法にて壁が迫り出してきていない前方へ移動する。
どうやら瞬間移動魔法は使えるようだったので、ついでに最上階に行こうとするが……それは叶わないらしかった。
「短距離でしか使えない、か」
2階。広い部屋が連続しているが、これといった特色は無い……と思っていると、どこから現れたのか絵に描いたような悪魔がワラワラと現れた。数こそ多いものの、1人1人は雑魚だ。秒で終わらせる。
「短絡『破滅の空中配線』」
極めて小粒の弾幕で円環を作って、チャクラムのように回転させつつ敵の中へ向けて放つ。すると、敵に触れた弾幕が爆ぜ、円環を成す他の弾幕も連続して次々に爆発する。
ギャアギャアと酷い声を上げて悪魔達は感電死。消し炭にするレベルの電流、電圧にしたはずだが、この死体を見るに、身体が焦げる程度で済んでいるらしい。耐久力はかなり強化されているようだ。
「面倒だ。壊すか。────『魔界断裂斬』ッ!!」
剣を抜き、ダイヤモンドをも砕く斬撃を城に当て内側から城を壊そうとするも、やはりと言うべきか斬撃は通用せず、ジーンと腕が痺れただけだった。
「コレ、マジで硬すぎだろ。どんな物質だよコレ。ダイヤよりもよっぽど硬いとか、ウルツァイト窒化ホウ素かよ。死ねよ」
硬い物質は一点集中型の衝撃に弱いのがセオリーなのだが、この城を生成している物質に関しては、そんなセオリーを完璧にガン無視しているようだ。因みにウルツァイト窒化ホウ素とは、ダイヤモンドよりも硬い物質だ。俺が幻想入りした辺りの当時はこの物質が世界一硬い物質だった。現代は知らん。
「雷神『龍雷閃』ッ!!」
次々に現れる謎の悪魔の集団を適当に殺し回る。城の大きさは外から見たサイズと相違ないらしく、着実に最上階へと近付けている。
蝋燭の光源すら失われ視界が完全に封じられれば反響定位を駆使して位置を補足する。もしくは着火するなどして仄かながらも明かりを確保してやる。
「ガキん頃にやったドラクエのゲーム思い出すな。今のドラクエどーなってんだろ。新しい呪文とか、出てるんだろうな。次に外の世界に行く機会ありゃ買ってみっかな……インスピ得られそうだし」
剣を片手にお城を攻略。まさに勇者ではないか。尤も今俺がやっているのはお姫様の救出ではなく、母親の救出なのだが。
そして城を登るにつれて段々中は狭くなり最後は螺旋階段が現れる。気配から察するに、この階段の先の部屋に居るのだろう。
「来たぜ母さん」
「あ、カルちゃん!来てくれたのね!」
「…………」
母さんは無事だ。広間のような何も無い部屋に、ポツンと置いてある2つの並んでる玉座────その1つに、優雅に腰掛けていた。
隣の玉座に座っているのは……何故だろうか、俺の視力を以てしてもその姿はよく見えない。真っ黒でまるで俺の影分身のように見える。シルエットは、何故だか母さんと全く同じ。
俺が感じた禍々しさが混ざった母さんの気配は、あの「黒い何か」から感じられる。
「……何してんの、母さん?」
「あ。やっぱり分かっちゃった?」
「今、分かった。これ自作自演だろ」
「ふふ、そーよ〜、即興にしては中々でしょ?」
「アリスとか心配してんよ?夢子だって、母さんを探しに飛び回ってるらしいし」
「あっ、夢子ちゃんやアリスちゃん、レンちゃんに綺愛羅ちゃんは知ってるわよ?」
「……え?」
「全てはあなたを誘き寄せる為の演技だったのよ。どう?アリスちゃんの真に迫る演技。私自ら、演技指導したのよ?」
「夢子の警備を通り抜けた時点で、『敵は超手練』だって判断したが……『内部犯』なら、そりゃ警備もクソも無いわな。てか、そもそもが共犯だとはね」
母さんが歩いて幻想郷へ向かった、という時点で何となく「自分から動いてない?」という気は薄々していた。だがまさか、ドストレートにそのままの意味で「自分から」動いていたとは。
「……あなたがいけないのよ?忙しさにかまけて全く構ってくれないんだもの」
「え」
「子育て期間だっていうのは分かってる……それでも一度でもあんな情熱的な交わりをしてしまったら……我慢し続けるなんてのは
「っ……」
「あなたの場合は他の女の子と交われば済むけど……私達はそうはいかない。それともあなたは、私達があなた以外の男と交わっていいの?」
「そんなの嫌だっ……」
「でしょう?わかってる。でもねカルちゃん、よく覚えておきなさい。クセになる事を覚えさせながら放置してしまうというのは、他者へと靡いてしまうキッカケとなりかねないことなの」
「……!」
「だからこれはお仕置き。弾幕ごっこで、みっちりお仕置きしてあげる。全力で抵抗なさい。その上で叩き潰してあげるから」
ズイッと前に出る「黒い何か」。すると表情から俺の疑問を汲み取ったらしく、その「黒い何か」について解説してくれる。
「あぁコレ?コレはね、私の闇。そして心の病みを具現化させたモノ。闇神綺とでも呼んで。あなたの影分身を真似させてもらったわ」
「……真似できちゃうんだから流石は魔界神だよな」
「いやまぁ、こうして闇の
「え」
「闇の人格を1つの形にして排出したことで、私はもう病んでないからそこは安心してね。……でも……ごめんなさいカルちゃん。その闇神綺……実は私でも制御できないの♡」
ちょっぴり黒い笑顔を覗かせた母さん。すると、その直後────闇神綺がドッと地面を蹴り凄まじい勢いで肉薄してきた。その速度は、まさに吸血鬼の移動速度と遜色ないレベルと言える。
「んがっ……」
アッパーが顎を掠めた。真っ黒とはいえ母さんのシルエットで肉弾戦だなんて違和感しかない。だが綺愛羅が肉弾戦を好むところから察するに、実は、母さんも肉弾戦はそれなりに出来るのかもしれないなどと漸く思い至った。
「さぁ、バトルスタートよカルちゃん」
こうして母さん達との1vs2の戦いが始まったのである。
YouTubeにショート動画を上げ始めました。
編集が少しだけ短縮できるので今の生活が安定するまではショートがメインになるかと思います。
現時点では霊子、真宵、駆翔の3本になります。
是非是非、ご視聴下さい。
https://youtube.com/@user-pn3dz4dd6p