「とうとう1回戦も折り返しだ!トーナメント表はこんな感じだよっ!ジャジャンッ!」
それなりに順調に進んでいるこのトーナメント。先程の茜と霊麗の戦いはそこそこ拮抗していたが、それ以外は殆ど圧勝・完敗な流れが多かったように思える。
しかしこのトーナメントの組み合わせを見るに、圧勝・完敗の流れが始まるのは、寧ろこれからかもしれない……。
「今回戦うのはこの2人ッ!!」
「『次代の巫女』こと博麗霊愛〜ッ!!高き理想を追い求め力を高めッ!今回の大会には、より一層の気合を入れて臨んでいるらしい!!」
「対するは小悪魔姉妹の姉の方!ここあ〜〜っ!!普段はサポート役に徹していて、集団戦でこそ力を発揮するが、大会に向け妹と共に力を高めてきた!次代の巫女に、どこまで通じるのかっ!?」
「「第5試合、始めッ!!」」
「いきます、霊愛お姉さ────かはっ……」
「隙あり」
「そ……んな…………ひ、酷い………………」
「喋ってる暇あんなら、魔法の詠唱でもしてな」
「あうぅ……」
「異変は待ってくれない。敵の準備が整うのを待つなんて、そんなの漫画の中だけだよ」
お祓い棒で腹を刺突されたここあは、呻き声と、霊愛を非難する言葉を漏らして崩れ落ちた。秒殺、瞬殺、圧勝。まさに、今の霊愛の為の言葉だ。
「幻想郷だってフィクションみたいな世界じゃないですかぁ〜……」
「フン。くだらないね」
◆
「それでは第6試合も張り切ってやってこ〜!今回戦うのはこの2人っ!!」
「宵闇の妖怪ルーミアと、山の英雄エスカルゴとの間に生まれ!闇を吸収し、成長し!今ではすっかり幼児から少女にまで!心の闇を吸収してしまえば、戦わずして敵を戦意喪失に追い込むことすらも!!楽しみにしてるぞっ、真宵〜〜〜〜ッ!!」
「対するは神の子!しかし持てる能力を鍛えるよりその身ひとつで戦う方が気持ちがノるらしいッ!?こう見えて武闘派だ!英雄の子供達は、天使の翼がある方が武闘派なのかっ!?綺愛羅、参戦ッ!!」
「「それでは第6試合、スタートッ!!」」
真宵はニコニコ顔で綺愛羅に手を向ける。彼女の闇を吸収して暢気に、お気楽にさせて、戦意喪失を狙っているのだろう。そうしてやれば、真宵は殆ど不戦勝で次の戦いへと駒を進める事ができる。
だが「よーいドン」で始まる戦いで心に病みなど抱きようがない────そう思いがちだが、心優しい真宵の事だ、きっと「姉が妹を殴り飛ばすなんて、少しくらい罪悪感が湧くはず」とも考えるだろう。
その罪悪感を
「……あれ?」
「私に闇なんて無いよ。罪悪感も。だって────」
「消えっ……」
「当て身」
魔法で身体能力を強化したのが見えた。吸血鬼に似た身体能力で真宵の背後に回り込んだかと思うと首筋に軽くチョップを食らわす。真宵は「くぅ」と呻き、その場に崩れ落ちた。
「────勝てればそれでいいもの」
◆
「あまりにも瞬殺……スピード狂達の戦いはまだまだ続くぞッ!!」
「第7試合を戦うのはこの2人っ!!」
「『最強』との呼び声の高い最強の娘ッ!自他共に認めるファザコン!父とはラブラブカップルッ!?だけど誰もそれに逆らえないくらい誰よりも強い!子供達のトーナメントでは優勝が当たり前な決勝の常連!巫月・優曇華院・スカーレット〜〜ッ!!」
「対するは紅魔館のリトルお嬢様!使う魔法は炎!悪魔の召喚もござれ!?最近では七つの大罪であるアスモデウスをも従え、主従的な意味でも割と万能らしいっ!レイチェル・スカーレット〜〜ッ!!」
各勢力の筆頭戦力と言えるこの2人が、1回戦でぶつかる。まぁレイチェルには悪いが巫月が勝つと思う。が、結末に至るまでの「過程」を楽しもう。
「……1秒で終わらせられるけど、流石にさっきからそんな戦いが続いちゃってるからねぇ。ちょっとは遊んであげるよ、レイチェル♪」
「ふふっ、それはありがと、巫月お姉様♪」
巫月の煽りも華麗に受け流すレイチェル。成程、レミリアに似てあまり煽りは受け付けないらしい。お嬢様らしいというか、なんというか。
「「それじゃ、第7試合、始め!!」」
「いくよ────『
巫月が早速結界を張る。これを発動した時点で、レイチェルに勝ちの目は潰えた。まず、術者である巫月以外の妖怪に特効の「浄化された空間」だが、俺やレミリア、そしてレイチェルのような「悪魔」相手だと、その効果は倍増する。
環境デバフとでも言うべきか、その場に「居る」だけで動きが鈍くなり、攻撃の鋭さは無くなる。
「まるで、高熱出した時みたいなダルさだね……」
「そうなんだ。そんな状態で戦える?」
「…………熱いのは慣れっこだよッ!魔弾『ファイアボール』!!」
両手の平を巫月に向けると、巨大な赤い魔法陣が現れる。巫月が身構えるのと同時に巨大な火の玉が出かかる。そして、更に魔力がチャージされると、ドンッと大砲のような音と共に放たれる。
弾道は極めて直線。巫月の結界にぶち当たるが、爆発こそするものの壊れる気配は特に無い。
「ひゃあっ!凄い爆炎だねレイチェ────」
「『炎獄一振』ッッ!!!」
「ッ!!」
巫月の飛び退いた先に、巨大なバトルアックスを持って縦に超速回転して飛び込んできた。博麗家の子供達と違い結界を小出しにできない巫月はまさに絶体絶命のピンチ────と思われたが……。
「スキマへGO♡」
「うああああああああああっ!?」
ぶつかるまで止まれないこの技。レイチェルは、呆気なく自分からスキマに突っ込んでしまい、その出口……即ちこの結界の中の、見当違いな方向から、ズガァンと鉄の塊でも高所から落としたかのような音と一緒に現れた。
「あ、来た来た。大丈夫?」
「〜〜〜〜ッ……召喚!アスモデウス!!」
「『七つの大罪』が1人、色欲の悪魔アスモデウス馳せ参じま────ぐあぁぁああっ!?」
「アスモデウス!?」
「あ、頭がっ、あたっ、あ、頭が、割れ、ううあぁああぁぁぁっっ…………」
レイチェルの魔法陣から元気よく飛び出すように現れたアスモデウスは、着地の直後に、頭を両手で抑えて地面でのたうち回っている。
その姿には、大悪魔としての格は感じられない。もはやギャグ漫画の世界だ。
「え、え!?どうしたのアスモデウス!?」
「レイ、チェル様はァッ……ご無事、なのですね……お逃げ、下さい……と、到底、敵う相手では……ッ」
「……何をしたの、巫月お姉様!」
「何も?強いて言うならこの空間、かな?これね、月の都の結界をモチーフにしてるんだけど。ただの妖怪でもかなりクるのに、大悪魔なら……尚更、強く効きすぎるんだよねぇ♡」
「────ッ!!ならこの結界を壊してやるッ!!」
「いいよ、頑張ってみて。霊魔の結界より硬いし、悪魔としての能力を発揮すればするほど、その身に掛かるデバフも強くなるんだけど」
「『獄炎爆神撃』ッッ!!!」
手に持つバトルアックスに炎を纏わせて、結界の端へ移動。目にも留まらぬ早さで連撃を繰り出し、結界を壊そうと試みる。
斧が結界に触れる度に爆発を起こす。その一方でアスモデウスは未だにのたうち回っている。元々が大悪魔なのだ、力を抑えるにしても限界がある。
「霊魔の結界を壊すには、フランさん4人分程度の攻撃力が必要なんだってね。私の結界は、それ以上なんだから……ま、単純計算でフランさん5人分とかそれくらいがあれば大丈夫だよ。勿論、
「〜〜〜〜ッ!無理に決まってんじゃんッ!!」
「大丈夫大丈夫っ!単純な腕力の話じゃなくって、あくまでも
「だったら、もう……これっきゃないじゃないッ!!魔弾『ヘビーレイン・オブ・フレイム』ッ!!」
「……わぁ……
結界を壊すのが不可能だと悟ったレイチェルは、悶え苦しむアスモデウスを庇うように前に立って、まさに雨のような凄まじい密度の炎の弾幕を展開。
しかも、弾幕が現れた地点には魔法陣が。それはまるで俺の「魔砲『
それを見た巫月はギラリと目を輝かせる。
「……ねぇレイチェル。気付いてる?私、この戦いが始まってから一度も攻撃していない……ってさ」
軽々と炎の雨の中を潜り抜けながら、ニヤニヤと試すような口調で話し掛ける。
「ッ……!?」
「わざわざ環境のデバフでレイチェルの動きを阻害して、何もしてない。どうしてだと思う?」
「まさか魔法の準備を────?」
「この戦いを一撃で終わらせる為に、レイチェルの隙が一番大きくなる瞬間を伺ってたからだよ」
「私に隙なんて……」
「今の私には、隙しか見えないね」
なんてドス黒い笑みだろう。メスガキのような、生意気な笑顔ではない。まさに邪悪な笑み。エビルスマイル。
巫月はパチンと指を鳴らすと、手元にフォークのような形の槍を作った。雷武器シリーズの派生だと巫月から聞いている。あれは確か────。
「神槍『スピア・ザ・トライデント』」
「ひっ……」
「────レイチェル様ッ!!」
全身の筋肉をバネのように使い全力で槍を投擲。アスモデウスがレイチェルの前に飛び出し庇うが、環境デバフでフラフラになっているアスモデウスは踏ん張りが効かず、そのまま槍の推進力に負けて、結界に磔にされてしまう。
「な……あ、アスモデウス……」
「余所見は禁物だぞっ♡」
レイチェルの背後に回り込むと、凄まじい勢いで手刀を食らわせようと振り被る巫月、しかし……。
「やぁあああああっっ!!
レイチェルは振り向きざまに逆に巫月の腹に己の拳を突き立てる。確実に巫月の腹を貫いていると、誰しもがそう見えていた。
しかしレイチェルの拳は、完全に巫月の腹を
「まさか……幻覚、だったの……?」
「そっ!アスモデウスを目で追った瞬間、私本体の姿を視えなくして、幻覚の私を出してたの」
「………………ここから私が逆転できる確率は?」
「「0%だよ♡」」
巫月の声がレイチェルの前後で被る。次の瞬間、ステージにはとてつもなく眩しい電撃が走り、光が収まるとそこにはレイチェルが1人で倒れていた。
◆
「は、激しい戦いだったね……!」
「1回戦の中では一番激しかったんじゃないかな!さぁ、壊れたステージは神綺さん他、創造魔法?の使い手の方々によって修復して頂いたので!」
「1回戦最後!第8試合に入りますっ!!」
「1回戦の最後を飾るのはこの2人!なんと今回は神の子対決だよ!!」
「肉弾戦が得意なように見せかけて!彼が使うのは錬金術!アタッカーに見えてもサポーターだッ!!魔界神の子!恋夜〜〜〜ッ!!」
「対するは自他共に認める言霊の神!口にした事は必ず実現するらしい!神の力、皆の前で見せて〜!言霊の神・稀神神愛!降・臨っ!!」
「手加減はしてやんよ!俺は兄ちゃんだからな!」
「……」
「「第8試合、始めッ!!」」
神愛は動かない。恋夜は神愛の動きを伺うらしく特に何の準備もする様子を見せない。神愛も神愛で恋夜の動きを伺うつもりのようで、何もしない。
やがて頭の中で何らかの結論を出したのか、まず神愛が口を開く。
「────恋夜お兄ちゃんは自滅する」
「……ん?俺が自滅するって?ははっそりゃねーな!まだまだ弱いけど……流石に自滅はしねェさ!」
「……それなら私を倒してみて。それができるなら」
「そうかい、それじゃ姉ちゃん達みたいに、神愛を行動不能にしてやる!とりあえず……地面を氷にッ!そんでもって、出でよ氷の雨!!」
「……私は被弾しない」
恋夜は地面を氷に作り替えた。続けて氷山を創造したかと思うと、地面から発射する。それは空中で弾け、氷の礫として降り注ぐ。しかしそれは神愛が宣言した通り、彼女に当たる気配は全く無い。
「んんんんっっ……クッソ、なんか当たんねぇ……?ランダム打ちでもこの弾数なら当たるはずだろ……。まぁいいさ、俺は大抵の属性の魔法も使えるんだ、この暴風の中で突っ立ってられるかな!?」
「っ……!」
恋夜は風魔法を使用。魔界神の血を継ぐ息子だ、属性魔法の適正なんてのはあってないようなもの。パチュリーほど鍛えてはいないのでレベルこそ低いものの、全体的にはどの魔法も使える。
────俺もそろそろ、月属性の魔法を鍛えよう。
「よし、氷弾の発射位置を固定した……後は神愛さえその場から動かせりゃ、この俺、恋夜の勝ちは……」
盛大に勝ち名乗りを上げた直後、打ち上げられた氷の弾がゴツンと恋夜の頭を直撃。キュゥ……と呻きその場に倒れてしまった。
言霊の神の異名は伊達ではない。この俺でさえ、修正には死ぬほど苦労させられるのだから。
この子供達、相性と力の差が極めて激しいのです。拮抗する組み合わせもありますし、本っ当に一瞬で決着がつく組み合わせもあります。