「2回戦も中盤に突入!気になるトーナメント表はコチラっ!!ドドンッ!」
「進み具合もいい感じよねっ!というワケで今回は2回戦第3試合をやっていくわよ!」
「第3試合で戦うのはこの2人!」
「2人目の『博麗の妖怪巫女』、しかしその強さは未だに未知数だ!まだ本気を出していないと専らの噂だけど……殆ど末っ子に近いこの子がどんな戦いを見せてくれるのか、この戦いも含めて、今後に期待だよね!博麗霊子〜〜〜っ!!」
「対するは、地底の姫!珍しく父からの能力のみを強く継いだ地獄鴉と吸血鬼の混血!アイドルらしいその可愛らしさで、また我々を魅了してくれッ!!霊烏路姫〜〜〜ッ!!」
「おてやわらかにっ!よろしくねっ!」
「……悪いけど、容赦しないから」
霊子は相変わらず無愛想だ。いくら霊夢だって、ここまでの悪い反応は無い。せいぜい生理が死ぬ程重い時くらい、だろうか。基本的に霊夢は生理など軽い方なので、重い事は稀だし、それで機嫌を崩すなどというのは更に稀である。
こういう小さな違いからも、霊子はつくづく突然変異個体なんだなぁ、と思い知らされる。子供達の中でも随一の無愛想さだ。阿弥でさえも、その気になれば表面上は誰より明るく振る舞えるのに。
「「それでは第3試合、始めッ!」」
試合開始の合図が出された直後に、霊子は大口を開け、超音波1発。俺のような吸血鬼には叫び声が聞こえているが、それ以外には、霊子が口を開けて力んでいるようにしか見えないだろう。
しかし霊子が超音波を発した直後、姫は後方へと吹っ飛ばされて、ステージの壁に叩き付けられた。
「あゔっ……」
「降参したら?吸血鬼との混血と言っても、地獄鴉ベースのフィジカルで、私相手にどうこうできると思わないでね」
「……ままのほうが、こんなのより……もっともっとつよいもんっ!!やあああああぁぁっ……!!」
砂埃に塗れた姫が立ち上がり、霊子に手を向け、俺から受け継いだ《重力を操る程度の能力》を発動させる。霊子の身体がグンと沈み、地に膝をつく。
「っ……!?こ、れは……ッ」
「しずんじゃえ!!」
「そうか……ッ、重力…………くっ……そぉぉ……!!」
「ぱぱ、ゆってた!わるいやつは、
「ぐっ、あぐぁっ……んあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!」
沈み込む身体に逆らい、霊子は立ち上がる。足の骨が砕け、折れた骨が皮膚を突き破って飛び出す。しかし持ち前の超速再生にて、砕けながらも再生を繰り返している。
「っ……もっと、つよくしなくちゃ……なの……!?」
「〜〜〜〜〜ッッ…………痛い、痛いけど……この程度私にどうにかできないワケないでしょ……!!」
「いや、いやぁっ!こないで!」
「だったら、さっさと
血みどろのまま、一歩、また一歩と姫に近付く。威圧するような強気の瞳で姫を正面から見つめる。妹でありながら、まるで年の離れた姉のようだ。
そんな鬼気迫る様子の霊子に威圧され、すっかり心が折られかけている姫は後退りしようとするが、足が絡まりその場に尻もちをつく。更にガクガクと足を震わせ、その場から動けないでいる。
「解除、しないってんならァ…………!!」
「っ……!!」
思い切り拳を振りかぶる。すると、そんな2人に割って入るように、観客席から1つの弾幕が着弾。見れば、お空が制御棒をステージへと向けていた。弾幕を見るだけでも分かったが、今、2人の戦いの妨害をしたのは────お空だ。
「やめて!もういいでしょ!?もう、姫はボロボロだからっ……!負けでいい!強くなんかなくたって、姫は立派な子なんだから!」
「まま……」
「……ほら、姫。ママが、ああ言ってるよ。さっさと降参しなよ。じゃないとボコるよ」
ヒリついた空気が流れる。姫は地面に手をついてぐぬぬと考え込んでいる。お空は今にも姫を助けに行きそうなくらいに身を乗り出している。そして、霊子はそんな姫を見下ろしながら、握り拳をわざとらしく見せ付ける。
「……まま!」
「何!」
「あたし、つよくなる!こーさん、しないから!!重符『アンダーグラウンドの最奥』!!」
重力を込めた弾幕を放つ。喰らえば重力が2倍、もう一度喰らえば更に倍になるという悪魔のような発想からできた弾幕である。至近距離から喰らえば流石の霊子とてタダでは済まない。
一瞬で指数関数的に重くなり、最終的には肉体が崩壊するだろう。
「だから、弾幕なんか効かないっての────!!」
超高圧な超音波を発し、弾幕を掻き消した。が、極めて至近距離であった為か、姫の意識もすっかり消し飛んでしまった。
「ひっ……姫ーーーーッ!!」
「「勝負ありっ!!」」
お空は慌ててステージに突入し姫を抱えあげる。相変わらず見下ろすような目線のままの霊子を強くキッと睨み付けるが、特に何も言わず慌てふためくお燐とさとりの隣へ戻っていく。
治癒魔法が必要な程の怪我はしていないようだ。気絶しただけだろうし、すぐ目覚めるだろう。
「あ、そうだ。司会?進行?の、そこの2人」
観客席へ戻る途中で、進行の雛、にとりへピッと人差し指を向ける霊子。
「「はひっ!?」」
「『博麗の妖怪巫女』は霊麗お姉ちゃんの二つ名。私は、巫女になるつもりなんてサラサラないから、私をそう呼ぶのは止めて。次そう呼んだら、司会席ブッ壊す」
「え、あ、はい……分かりました……?」
「えっと、それじゃなんて呼べばいいかな?何か、こちらで似合いそうなの考えていい?」
「『レモン・ヴァンパイア』、私の事を呼ぶなら、そう呼んで」
「あ、自己申告ありがと。レモンね、レモン……」
「レモン……何故にレモン……?」
「分かる人にだけ分かればいいよ。いちいち私から解説する気なんて無いし」
どういう意味だろうか。俺にはさっぱりだ。隣の子供達も同じように首を傾げているが……レミリア、フラン、パチュリーは苦虫を噛み潰したような酷く渋い顔をしている。
「酸っぱいの想像したのか?」
「んなワケないでしょうよ。……って、珍しいわね。あなたでも分からないの?」
「知らん。フルーツじゃないなら……曲名とかか?」
「そっちの方が知らないわ。『レモン』ってのは……その、なんて言うのかしら……」
「『欠陥品』だとか『出来損ない』っていう意味の英語のスラングだよ」
「主に車に対して使う事が多いスラングだけどね。車を指して『This car is a lemon』と言ったなら、意味としては『これはオンボロ車』とか、そういう意味になったりするわ。多少のニュアンスの違いはあるけれど」
「おぉう……」
レミリアは言い淀むが、フランはズバッと答えを教えてくれるあたり、性格がよく分かる気がする。パチュリーの補足も有難い。
それにしても、「レモン・ヴァンパイア」とは。数年前に「アマルガムの吸血鬼」を名乗った俺と、センスがあまり変わらない。やはり霊子は俺の娘。血は争えないと見える。
◆
「4試合目も張り切ってやってくよーっ!」
「激闘を制するのは一体誰!?4試合目を戦うのはこちらの2人……あーっと、これはどうした事だ!?片方はもうフラフラだーっ!?」
茜は、体温が上がっているのか赤く火照った顔をしている。そして賢者装束からラフな格好へ着替えしている。動きやすそうではあるものの、戦闘向きではない。……けしからん格好だ。
「2回戦に勝ち上がった賢者の娘!八雲茜!しかしその姿は既に満身創痍か!?休んでいる間に、一体何があったの〜〜〜っ!?」
「対するは紅魔館の副メイド長!母と遜色ない程に鍛え上げたその能力はかなり脅威だぞ!!弟よりも容赦のない攻撃を繰り出す!強さは『上の4姉妹』などと呼称される通り、頭一つ抜けている!紅魔館副メイド長、十六夜弦月姫!参戦ッ!!」
弦月姫は恭しくスカートの両端を摘み、膝を折り礼をして見せる。名前に「姫」の字が入るだけあり姫らしく見えなくもない。
「霊麗に吸血されたのが効いているのね」
「やっぱ弦月姫お姉ちゃんには隠しきれないよね。結構ガッツリ吸われたみたいで……クラクラするよ。死なば諸共の精神なのかな、霊麗お姉ちゃんって」
「棄権すれば良かったのに」
「タダでは勝ちを譲らないよ」
「そう────なら容赦しない」
「「それじゃ第4試合、始めッ!!」」
時間が止まった。茜が最速なのはあくまで結界の生成速度。時間が止まってしまったら、もう抵抗のしようがない。
「────なっ……!」
しかしフラフラでも茜は茜だ。開始と同時に攻撃されることを見越して、既に自身の周辺には結界を張り巡らせていた。
「……これじゃ手も足も出せないわね」
弦月姫も溜め息をつくしかない。それでも、茜は少しだけ抜かった所がある。それは、十六夜親子の時間停止は、ダメージ蓄積型であるという点だ。
俺のような時間停止の影響を受けない者に対してなら、普通の世界と変わらない挙動になるのだが、茜のような影響を受けてしまう者に対しては、時間停止中のダメージは蓄積してしまう。
ましてや、動かない「結界」なんて、モロにその影響を受けてしまうのだ。
例えば、そう、フラン4人分でないと壊せない、霊魔の結界や……それ以上に強い巫月の結界さえも。
「千里の道も一歩から。少しずつ、休み休みでも、的確にダメージを与えていけば……私程度の強さでも簡単に壊せるわね」
弦月姫の目論見通り、時間をかけて攻撃すれば、火力で劣る弦月姫でも茜の結界を破壊できた。無論咲夜さんと虔魔からは軽いブーイングはあったが、弦月姫はそんな2人のブーイングも意に介さないと言わんばかりに、剥き出しとなった茜の首筋へと、強烈なチョップを喰らわせた。
次回、「若頭」遂に参戦。
相手は準最強、「次代の巫女」────!!