2回戦が終わった10日後、トーナメントは再開。特訓の期間を置く事で、試合の激しさを高めるのが主な目的だ。互いに相手の対策を練られるのだからそりゃ激しさも一入だろう。
「とうとうトーナメントも後半戦に突入!そして、遂にベスト8が!上位8人が出揃ったぞッ!!」
「3回戦から準々決勝だから、決勝トーナメントと呼んで差し支えなさそうね!そして皆さん気になるトーナメント表はこちら!!」
「待って、8人中3人が霊夢さん所の子なんだけど何コレ!?パワーバランスどうなってんの……?」
「パワーバランスなんてのはとうに崩壊してるわ。それよりにとり、ドンドン進めていきましょ!」
「あまりのヤバさに
「それではやっていきましょう!栄えある準々決勝1試合目を戦うのはこの2人っ!それでは1人ずつ意気込みをどうぞっ!!」
「……俺が勝つ。それだけだ」
「どうしました、ヤケにクールぶって……」
「んなっ……」
「あまりカッコつけない方が、お兄様の為ですよ。この戦いは僕が勝ちますので」
「………………言うじゃねェか、三男」
「事実ですよ」
1試合目は虔魔vs妖舞か。
虔魔の煽りで妖舞の額には青筋が浮かんでいる。
ここまで来ると能力の発動の早さがカギになる。虔魔の能力の発動が早いか、妖舞の居合が早いか。それだけでこの勝負は変わるはずだ。
「バッチバチの煽り合いだーっ!これは盛り上がること、間違いなし!!」
「煽り合いというより、主に弟の方が煽ってる気がするけどね……」
「「それでは準々決勝第1試合、始めッ!!」」
時間が止まった。虔魔の能力が発動したのなら、妖舞の居合よりは速かったという事だろう。しかしその妖舞ももう虔魔の目の前まで迫っている────それなりにギリギリだったようだ。
虔魔も弦月姫のようなダメージ蓄積型の時間停止能力なので、このまま妖舞に手刀してやれば余裕で勝てるのだが、何故だか虔魔は硬直する妖舞を前に顎に手を当てて何やら考え込んでいる。
「……お父様」
「何だ」
「どうすれば妖舞お兄様を公衆の面前でボコボコにできますかね?時間停止しながら倒した所で……と、僕は思うのですが」
「そうだな、俺ら以外には知覚できないからな」
「勝つのは僕なので、大口を叩いたお兄様にはこの準々決勝の場にて負けてもらうつもりなんですが、どうも今の僕にはその方法が思いつかなくて……」
うーんこのクソガキ……。いや、虔魔の能力発動が早かったので実際に虔魔が勝つのは確定なのだが、それを口に出すのがコイツがコイツたる所以だ。
咲夜さんとて眉がピクリと動いている。そして、長年妖舞と切磋琢磨してきた弦月姫が、堪らず口を挟む。
「いや……待って虔魔、わざわざそんなにボコボコにする必要あるの?何を考えているの?」
「僕の方が強いのに、僕の方が下だと思ってバカにしてきたので。なので全力で倒してやるだけです」
「……じゃあ、並行世界のあんた達でも呼んで好きにボコればいいじゃないのよ!」
「いえいえ、多勢に無勢は最も恥ずべき行為です。野蛮な天狗でもあるまいし、そのような行為は慎むべきです。紅魔館の執事たるもの如何にスマートに敵を屠るか────そこを重視すべきです」
ギリリと弦月姫は下唇を噛む。もしここで虔魔が弦月姫の意見を受け入れ、多勢に無勢で妖舞を倒すならば、弦月姫も虔魔に「多勢に無勢だ」と煽っただろう。
「無惨に敵を屠る事に関しては、お父様の右に出る者は居ないと思うのですが……どうですか?何かしらヒントを頂ければと思いまして」
「そうだな。こういう場合はな、ムカついた事柄に対応した倒し方をすればいい。例えば、『俺の方がお前よりモテてる』と言われたとしたら、そいつの目の前で『モテてる様子』を見せてやるんだ」
「僕の場合は『余裕で勝てると思われている』のがムカつくので、逆に『余裕で勝ってみせる』のが、最上の復讐方法……という事ですね?」
「そういう事だ」
「参考になりました。ありがとうございます」
妖舞の目の前にナイフを設置すると、時間停止を解除してしまった。妖舞は目の前に現れたナイフを全て刀で弾き落とすが、虔魔はその隙に距離を取り居合の範囲外へと出てしまった。
居合の範囲内でなら、妖舞の方が圧倒的に速い。しかし範囲外となるとグッと速度は落ちるし虔魔の身体能力が上回る。
「ヘェ、時間停止中に攻撃はしなかったのかよ」
「ええ。動かない的を攻撃したところで僕の強さを会場の皆様に理解して頂けるとは思えませんから。なのでここに誓いましょう。『僕がお兄様に攻撃を加えるのは時間停止中以外のみ』と」
「……あんまり舐めんなよ」
「舐めてなどいませんよ。ただ僕の方が強いので、それを皆様に魅せようと思っただけですから」
「そういう所が舐めてるって言ってンだよッ!!」
「『カットスロート・バトラー』」
時を止めてナイフを配置。ただし今回は全方位。量も密度も尋常じゃない。そして配置したナイフと妖舞との「距離」も……。
あんなに近いのではとてつもない反射神経が要求されるだろう。ナイフ1本分程度しか、余裕が無いように見える。
「────これはどうです?」
時間停止が解けると、全方位からナイフが妖舞を襲う。必死にナイフを弾き落としたが、虔魔のこのスペカは、まだ
「うおおおおぉっ!!」
「隙あり、ですね」
「ガハッ……」
この新しいスペカは、各々一波の終わりに虔魔がナイフを投げて一巡である。今回投げたナイフは、1本は妖舞の半霊へ深々と突き刺さり、もう2本は両翼を貫いた。
半霊のダメージは妖舞本人にもダメージはある。翼なんか刺されたって吐血しないが、半霊なら話は別である。吐血したという事は、それなりに強烈なダメージを負ったらしい。
「フィナーレです」
第二波。再度時間を停止させ、全方位にナイフを配置してから時間停止を解除する。妖舞はナイフを撃ち落とそうと刀を振り回すが半霊へのダメージもあって動きはかなり鈍くなっていた。
各ウェーブの終わりに虔魔は直接3本のナイフを投げるが、今回はそれを両足へ突き刺した。これも彼の動きを鈍くさせる要因足り得る攻撃だったのは言うまでもない。
「さ、これでお得意の居合は使えないワケですが。どう致します?」
「ンなモンなくたって……俺は戦えるんだぜッ!!」
「ええ、刀を生やせばいいですもんね。当然ながら存じておりますよ」
妖舞が全身から刀を生やして刺突しようとするがそれを大人しく喰らう虔魔ではない。身体を捻って回避するし、少しでも危ないと感じれば1秒にすら満たない時間だけ時を止めて回避。かすり傷すらも受けないつもりのようだ。
「ゔる゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!!」
「嗚呼、レーザーを踏み付ける駆翔の感覚は────おおよそ、こんなモノなのでしょうね」
雄叫びと共に一斉に放たれる刀の束。虔魔はその必殺技とも言えるレベルの技をバク宙で回避して、回転の勢いをそのまま利用し、刀の束をグシャリと踏み付けてしまう。
伸びる途中で
「しまっ……」
「チェックメイトです」
ひたと首筋に突き付けられるナイフ。ここから、更に刀を生やせば、虔魔を串刺しに出来ただろう。しかしそれをしようとしない所を見るに……あの刀を一度に沢山生やす技で消耗しきったに違いない。
「……降参はしねェよ」
「潔く負けを選ぶと。武士道というヤツですかね。僕には分かりかねます。それがお兄様の流儀なら、僕がそれに付き合う謂れはありませんが……。まぁ、気分がいいのでお兄様のやり方に則ってあげます」
ウッキウキかこの野郎と言ってやりたくなるが、以前の大会で霊魔と引き分けた妖舞に勝ったのだ、そりゃ饒舌にもなるだろう。
霊魔と虔魔────。因縁ある2人。もしかしたら今の実力は、俺達が思っているよりもずっと、拮抗しているのかもしれない。
◆
「長男と三男による激しい戦いの次は!可愛らしい女の子対決だ!!」
「突然変異の吸血鬼!『レモン・ヴァンパイア』、博麗霊子!再び見参ッ!!初参加にして今も戦場に立っている2人のうちの1人!今回の相手は昔から猛威を振るっている『上の4姉妹』の1人だぞっ!一体、どんな結末を迎えるのか〜〜ッ!?」
「そんな幼い妹の相手は、紅魔館の副メイド長!!時間を操作してしまうメイド長の血を引く少女っ!十六夜弦月姫っ!それでは2人共、意気込みの方をお願いします!」
妖舞と虔魔の戦いから判断すれば弦月姫が勝つと思われる。寧ろ、虔魔より能力の幅が広く、操作も上手い弦月姫が無能力者の霊子に負ける道理は無いハズである。
「油断せず参ります」
「え〜?妹相手にガチるなんて怖いなー」
「それは挑発か何か?」
「かもね」
「『負けるのが怖いから軽く手を抜いてほしい』の間違いではなくて?」
「……は?いや、私が勝つけど?悪いけど、負ける気しないから。そんなに言うんなら本気出しなよね。その代わり負けても『私は本気じゃなかった』とか
『調子悪かったから』とか言い訳すんの無しね」
「元よりそのつもりよ。私はここであなたに勝ち、次の戦い……準決勝では虔魔に勝つ。そして決勝戦で巫月お姉様と戦うのよ!」
「ふぅん。ヤケに具体的な目標だね、お父さんから教わったのかな?」
「!」
クスクスと、バカにするような笑みを浮かべる。本当に可愛気の無い娘だ。外見は可愛らしいのに、性格が少し歪んでいるというか、なんというか。
虔魔の女バージョンを見ているような気分になる事もたまにあるくらいだ。
「弦月姫お姉ちゃんは、お父さんの子供達の中でも古参なだけあって、トーナメントでは毎回当たりが悪くて成績残せていないだけで本当は強いってのはお父さんから聞いて知ってるよ。私も、油断なんてしないから」
「……っ!そ、そう……」
確かに言った気がする。弦月姫の強さなら本来は上位に君臨していてもおかしくないのだ。しかし、実際はと言うと中堅レベルに位置しているだろう。
確かに他の子供達も強い。それは断言できるし、間違いない事だと自信を持って言える。けれども、その中でも弦月姫は上位なはずだ。そう言いたい。
「「それでは準々決勝第2試合、始めッ!!」」
「いくわよ霊子!」
「きなよ」
さっさと時間を止めて攻撃すればいいのにな、と思ってしまった俺は、虔魔と似たような思考回路と考えても良さそうだ。
いやしかし、実力者同士の戦いにおいては、開始直後に相手を叩きたいなら先手を打つのが何よりも大事な事だと言える。先手を敢えて手放すなんて、弦月姫は何を考えているのやら。
これ以降は手加減などしていなくとも、これで、負けても文句を言えなくなってしまった。
(時間停止には絶対に抗えない。となればもし仮に弦月姫お姉ちゃんが本気を出せば一瞬で負けるワケだから、私が勝つには……やっぱ、出し惜しみなんてしてらんないってワケだね)
ここまで霊子が勝利に執着するには理由がある。さっさと博麗神社を出て行く為だ。力をつければ、親の庇護下になくとも大丈夫だ、だから出ていくと説得もしやすくなるだろう。霊子はその為に今回のこの大会を本気で戦っている。
────そんな事とは露知らず、俺は俺でどちらも応援していた。霊子にイラッとする事だって、勿論あるにはあるが、それでも娘は娘だ。
「……こうしてお姉ちゃんの弾幕を避けてて……よく分かった」
「……?」
「弦月姫お姉ちゃんが手を抜いてるって事がね」
「手を抜いてなんて────」
「嘘つき。そっちがその気なら……私が先に、本気を出しちゃうよ」
ドッと滝のように魔力が溢れ出し始める。霊子は博麗家の子供達の中で唯一魔力が霊力より多い子。それ故に霊子だけは魔力弾も扱える。霊力の消費を抑えたい時は魔力弾を使うのがこれまでの常だった事もあり────俺は、霊子は今回もそうするのだと思い込んでしまっていた。
「いくよ────!!」
溢れ出すような魔力が、更に高まる。こちらまで息が詰まりそうな凄まじい密度の魔力を従え、目を見開いた霊子は
「✌☹☹ ✋☠ ✌☹☹ ❄⚐ ✌✡ ✋ ✌ ✌ ✌✡ ✋☼ ☞✌☹☹ ☞☹⚐ ☜☼ ✋❄☟☜☼ ✂ ☹✌✡✋☠☝ ☼☜❄☜☠ ✂ ✋❄☟ ✡⚐ ⚐☠ ✌ ✌✡ ☹✋ ☜ ❄☟✋ ✋ ☹☹ ✌ ☜ ✋❄ ❄☟☜ ⚐☼ ❄ ❄☟✋☠☝ ☞⚐☼ ✡⚐ 」
霊子が聞き慣れない言語を発する。すると彼女の全身から凄まじい魔力が込められた弾幕が溢れて、鋭いホーミング性を帯びて弦月姫を襲い始めた。
英語でもラテン語でも古代ギリシャ語でもない。俺が知っている言語ではないという事は、霊子は、一体誰からどのようにしてあのような言語を学び、モノにしたのだろう。
魔力の帯びた弾幕という事は、アレは霊子の魔法なのだろう。魔法という事は魔界の神である母さんならば知っているはず……。
《母さん、アレ何?母さんが教えたの?》
《え、私は何も知らないわよ?というか魔界の言語でもないモノだし……》
俺も母さんも酷く困惑していると、視界の端で、パチュリーがカタカタ震えているのが目に入った。恐れている……とは違う。だが確実に震えている。
引っ付いてくるモルモーを引き剥がしながら席を移動し、パチュリーに聞いてみる事にした。
「パチュリー、どうしたのさそんなに震えて」
「……そりゃ震えるわよ……!あなた、あの子に何を教えたのよ……!?」
「あの子ってのは霊子の事か?言っとくけど、俺は何も干渉してねーからな?」
「そんなハズは……あんな子供が完全自作で……!?私やフランでも……紅魔館の蔵書あってこそよ!?」
「何を言ってるんだかよく分かんないんだけど……。俺にも分かるように言ってくれないか?」
「あの子は自分で言語を作り、それを呪文の詠唱に設定してるってコトよ!」
「自分で言語を作った?……何で分かるんだよ?別にパチュリーだって、世界中の言語をマスターしてるワケじゃないんだろ?」
「それはそうだけど魔法との親和性が高すぎるわ!前に教えたでしょう?その魔法を高威力で使うにはそれにピッタリな詠唱の方がより高威力、高精度で扱う事ができるって!」
「そうだな」
「雷魔法なら雷関連、水関連なら水関連のワードを使う。魔法言語での詠唱なら特に高精度になるわ。これも前に教えたわね?」
「ああ」
「どんなに親和性を高めても9割がせいぜいよ……!それなのに、独自な言語のお陰で、その限界を突破している!通常なら有り得ないわ……!」
「マジか……」
「あの言語には規則性がある……。だから、どうにか翻訳できると思う。だけど、まだ材料が足りない。もう一度でもいい、あの子があの言語で詠唱したらそれらを参考に翻訳してみたいものね……」
「自作の言語、かぁ。トールキンみてェだな」
「トールキン……あぁ、『指輪物語』で有名な、外の世界の小説家……作家だったかしら」
「流石に知ってるか」
「まぁね」
────J・R・R・トールキン。己の書く小説に登場するエルフに、その種族の特有の言語として、エルフ語を話させた。その「エルフ語」とは、彼の完全なオリジナルの言語だそう。彼の人工言語群を指して「アルダの言語」とも呼ばれている。恐らくこちらの方が有名だろうか。
トールキンは、幼い頃から造語を始めたそうだ。そしてそれは、死ぬまで続けたとも言われている。
パチュリーはそんな彼が人生をかけた「造語」を霊子がやっている、と言っているのだ。そんなのは有り得ないだろうと一蹴したくなる。しかし、俺はこれまでに「有り得ない」と言われるような行為を散々実現してきたし、目の当たりにしてきた。今更子供がその「有り得ない」行為をしても、そんなに不思議は無いかもしれない。
「フラン、何か分かった?」
「話し掛けないで。……もう、分かる気がするの」
フランはパチュリーからそう問い掛けられるも、真っ直ぐ霊子を凝視したままピシャリと言い放つ。フランもフランで考えているようだ。
パチュリーと双璧を成す紅魔館の魔法使いだし、魔法言語に対する造詣も当然のように深いだろう。この考察は、俺が考えるよりこの2人に任せた方が良さそうだ。
そして、霊子の詠唱の翻訳を終えた2人は同時に呟いた。パチュリーは英語、フランは日本語で……。
「All in all, today is a bad day. Birds fall, flowers wither. "Playing pretend" with you on a day like this……I'll make it the worst thing for you」
「────全く、今日は厄日だねぇ。鳥は落ち、花は枯れ落ちてさ。こんな日にやるあなたとの『ごっこ遊び』なんて……あなたにとって、最悪なモノにしてあげるよ」
既視感のあるセリフだが、黙っておこう。もしも霊子がソレを知っているなら、まず間違いなく俺の影響だ。まぁ……子供達に悪影響を及ぼすコンテンツでもないと思うし、大丈夫だろう。
「✋ ❄✋☼☜ ☜☼✋⚐ ☹✡ ⚐☠ ❄ ✡⚐ ☹⚐ ☜ ☜ ☠⚐ ✍」
「え?えっ?霊子、あなた何を言って……」
フランとパチュリーは今度はたった数秒しか間を置かなかった。殆ど同時通訳者みたいなレベルだ。今度もパチュリーは英語、フランは日本語に訳す。
「I'm tired. Seriously. Won't you lose me now?」
「ダッル。マジダルい。さっさと負けて?」
「霊子のヤツ……すっげぇ余裕そうな雰囲気だな」
「実際あの子、余裕はある方だと思うわ。このまま弦月姫ちゃんが本気を出さないままだとするなら、この戦い、霊子ちゃんが勝つよ」
「霊子が……」
否定したいのだが、恐らくフランの言う通りだと思う。弦月姫の性格上、妖舞のような長年共に研鑽してきた間柄だったり、虔魔のようなムカつく対象というワケでもないなら、本気が出せないのだ。
「あまりに破滅的な弾幕ね。あれがあの子の魔法……できることなら喰らいたくないものだわ」
「破壊力が普通の魔力弾より高いように見えるわ。力加減ができてないのとはまた違う。あの子、素の力がその辺の妖怪とは段違いよ。多分エスカルゴの子供の中でも飛び抜けて高い────」
パチュリーは顔を引き攣らせて霊子を見ている。対してフランは解析するようにまじまじと見つめ、何やら頭を働かせているようだ。
「レミリアはどう見る?」
「霊子ちゃんが勝つわね」
「即答か」
「ま……見ての通り、弦月姫ちゃん優しいからねぇ。その点、霊子ちゃんは憂さ晴らしでもするように、思い切り弾幕を使って暴れてるのよ?結果なんて、それこそ火を見るより明らかでしょうね」
「……」
どうにか弦月姫にも頑張ってもらいたいと思い、ステージで弾幕の回避に徹する彼女に視線を移す。先程の虔魔より短く、ほんの一瞬だけ断続的に時を止め、その度にジリジリ距離を詰めているようだ。
もう少し近付けたら弦月姫の奇襲の圏内だろう。しかしその前に霊子が気付き奇襲に対処するはず。
「これでトドメだよ」
「させない!種符『エクストラマシンガン』!!」
「……種?こんなの、効くワケないじゃん!!」
種のラッシュ攻撃を、弾幕と拳だけで対処する。けれども弦月姫は、種弾幕はあくまで囮としているようで、本命は霊子の背後────。美しい白百合を生やし、着々と準備を進めていた。
「いくわよ────花符『甘い息』」
「────ッ!?しまった……」
甘い香りで対象を眠らせる百合で霊子を背後から襲う。弾幕と弦月姫のナイフの回避に集中していた霊子は背後からの奇襲に気付けず、ガクンと体勢を崩して、膝をついてしまう。
「……今回私が発射したのは、白百合の種よ。全ての種をわざわざ当てる必要は無い……良い目くらましになったでしょう?」
「ッ!!
「それにしても……強いわね。本当ならもうとっくにオチているはず、なの……に…………」
改めて花から霊子に目を移し、彼女が全く眠りに落ちない理由を目の当たりにした弦月姫は、思わず絶句してしまう。
霊子は目を覚ます為に自らの腕を食いちぎって、自分の血にまみれながら肉を食べていたのである。
「あなたっ……何をしているの!?」
「見て分からない?目覚ましだよ?」
「やめなさい!そんな事をしたって……」
「やめないよ?再生力は生まれつき優れてるから、こんなの、すぐ治るしさぁ……。もう目は覚めたし、私を倒したいんなら、こーやって首を絞めないと。真っ当な方法じゃあ、私の事、倒せやしないよ?」
血に濡れた手で、自分の首を絞めるフリをする。あまりに悪趣味だ。霊夢の方を見てみれば、霊子の自傷と弦月姫への脅しにドン引きしている。平気な顔をしているのは霊麗だけ。霊愛も霊魔も、霊夢と同様にドン引きしているのが遠目からでも分かる。
「ほらほらどーすんの?真っ当な方法で私を倒す?何か方法でも模索するの?私は別にいいよ?体力も再生力もまだまだ……。再生力に限界は無いんだし?魔力もまだまだ有り余ってる。私を倒せないんなら大人しく降参すれば?」
「わ、私はっ……紅魔館の副メイド長としてこの場に立ってるの!降参……逃げなんて許されないのっ!!だから…………意地でも大人しくさせてみせる!!」
「……バカだね。じゃ、そんな事ができるってんならやって見せてよッ!!」
「ひっ……は、花符……」
「そんなの効かないってのッ!!」
霊子を白百合で囲み一斉に睡眠ガスを放出する。しかし通じないと豪語するだけあり、霊子は更なる弾幕で花を刈り取り、彼女の凄みで動けなくなってしまっている弦月姫へ強襲を仕掛ける。
「……あ…………」
「私の勝ちだよ」
ボグッと鈍い音を出して弦月姫の腹を殴り彼女の肉体を上空へ打ち上げる。弦月姫はそのまま抵抗も叶わず、地底の天井……天蓋まで叩き付けられた。
天蓋の欠片と共に落ちてくる弦月姫を、誰よりも早く、虔魔が受け止めに向かった。仲が悪くとも、やはり姉と弟。こういう時はしっかりしている所を見せてくれるらしい。
そんな様を、霊子はウンザリしているような顔で見ている。何を考えているのかまでは分からないがよからぬ事なのは間違いない。
霊愛や霊麗、霊魔も妹である霊子のことを温かく迎えてくれるというのに、霊子は、あの家族の何が不満なのだろう。
阿弥に頼んでみて、霊子の本音を無理矢理にでも聞き出してみてもいいかもしれない。
やめて!博麗姉弟のガチ戦闘で本気で暴れられたら大人達が結界で防御してても地底のコロシアムまで破壊され尽くしちゃう!
お願い、壊さないで博麗姉弟!あんた達が今ここで本気を出しちゃったら、決勝でガチ戦闘する約束はどうなっちゃうの?まだ霊力に余裕はある。ここを耐えれば、今度こそ巫月にだって勝てるんだから!
次回、「外界かぶれの子供達」
デュエルスタンバイ!!
霊子の独自の言語は、便宜上ウィングディングスで書きますが、「ウィングディングスであること」に何か意味があるワケではないです。
姫、リサについての紹介動画です。
https://youtu.be/ZYpRtddDhWc
本作を読んでいて、新たに推しが増えたという経験はありますか?
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ある(書籍原作キャラ)
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ある(ゲーム原作キャラ)
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ある(秘封)
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ある(旧作キャラ)
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ない